若き騎士達の危険な日常

あーす。

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日暮れ

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 日が暮れ始め…ディラフィスがシェイルを見つめ、頷く。
「さあ。
俺達は帰ろう」

シェイルはシェリアンを、寂しそうに見上げる。
シェリアンは微笑んで、言い聞かせた。

「…もう少ししたら…母様の居るコテージに移れる…。
だが今俺が居る部屋は、光が…通常の人間には、濃いから…」

シェイルは尋ねる。
「濃いと…どうなるの?」
シェリアンは少し、悲しげな表情をした。
「君はきっと、泣きづめになるだろうな…」

それを聞いて、シェイルは俯く。

ディラフィスはシェイルの背に触れ、促す。

「シェリアンはまだ、“癒やし”の部屋で病人向け。
通常の人間には…活性化が進みすぎて、精神の制御ができなくなる。
健康な人間は、泊まれない。
ここでは人間が泊まれるような場所は、限られてるんだ」

シェイルは名残惜しそうに、シェリアンを見上げる。

ローフィスが、ため息交じりに囁く。
「シェイル。
ともかく今夜は、ディアヴォロスのコテージに泊まって。
明日また、来られるから」

ディラフィスは肩を竦める。
「正式には、アドラフレンのだろう?
アドラフレン、今大変で、ディアヴォロスは付きっきりだろう?」

ローフィスはディラフィスに振り向いた。
「大変?!」
シェイルも尋ねる。
「どう…大変?!」

ディラフィスは二人に聞かれ、目を見開く。
「…アドラフレンを失脚させようとした勢力の、隠れた大物が捕まって…。
身分が高いから裁判沙汰で、犯行の証明のため、アドラフレンらは証拠を集めまくってるけど。
証人が先回りされて次々、殺されてるそうだから」

「…それでディアヴォロスが?」
息子に尋ねられ、ディラフィスは頷く。

「証人保護で、駆け回ってるみたいだ。
わざわざ俺の所に、ディアヴォロスは使者寄越して。
ここに来れないかもしれないから、二人を頼むと」

ローフィスは、頷く。
シェリアンが口を挟む。
「そいつが監獄に居続けないと。
アドラフレンは常に、身に危険が降りかかるって…聞いた。
ここの能力者は…まるで劇のように外界の色々なニュースを、私たちの脳裏に見せて伝えるから」

三人は、振り向く。

ディラフィスが、それ聞いて呻く。
「マジか…」
そして、シェイルとローフィスに振り向く。
「アドラフレンのコテージは直ぐそこ。
送らなくて、いいな?」

シェリアンも、シェイルに微笑む。
「明日また…会えるね?」

シェイルは名残惜しそうに…シェリアンを見つめ、抱きつく。

まるで小さな息子を抱きしめるように…。
シェリアンは愛情込めて、離れがたい愛息を優しく両腕で、包み込むように抱きしめた。



 ローフィスはシェイルを後ろに乗せ、暮れかけた丘を下る。
けれどシェイルは殆ど口を利かず、ローフィスはどう声をかけていいか、困った。

けれどシェイルが、背に顔を埋め…身をぴったりと、寄せて来る。

ローフィスはその温もりを感じると、愛しさと…。
そして熱が上がってきて、自制した。

「(…男って、しょうもない…。
シェイルは父親を恋しがってるってのに!)」

ディアヴォロス…正確にはアドラフレンのコテージが、直ぐ見えて来る。

鉄の門は直ぐ開き、ローフィスとシェイルは馬に揺られて、中へ入った。

やっぱり直ぐ、召使いがやって来ると、馬の手綱を預かった。

シェイルは馬の後ろから滑り降りると、前に降り立つローフィスを見上げ、囁く。
「今日は、二人だね」

さりげない言葉だったけど。
ローフィスの心臓は炙りまくり、必死に自制した。

召使いに扉を開けられ、ステンドグラスの美しい、玄関ホールを抜ける。

廊下に入ると、以前来た直ぐ横の扉では無く、更に奥へと案内される。

扉を開けられ室内へと入ると、二人がけソファと椅子。

その奥に、天蓋付きの寝台。
鏡台にクローゼット。

召使いは頭を下げると
「あの奥に。
浴室に続く扉がございます」
と言う。

「夕食は、直ぐお運び致しますか?」

ローフィスは迷った。
けど振り向くシェイルの顔は…さほど食欲が無さそう。

けど自分は…減っていたので
「頼む」
と告げた。

召使いが、一礼して下がる。

「(流石アドラフレンのコテージ…。
行き届いてる)」

シェイルに振り向くけど、シェイルは突っ立ち、俯いてるから…寄って
「風呂に入るか?」
と聞く。

するとシェイルは顔を上げ、じっ…と見るから…。
ローフィスは顔を傾げ、少し屈んでシェイルの顔を伺う。

するとシェイルは両腕首に巻き付けて来て、ローフィスは苦笑した。
「寂しいのか?
言ったろう?
明日また…」

けれど突然シェイルの唇で唇を塞がれ、ローフィスはその後の言葉が言えず、焦った。

抱きしめてキスを返すべきか。
男の自分は、すっごくそうしたい。

けど…義兄の自分は…。

シェイルは顔を離し、ローフィスを見つめると、また顔を傾け、そっと唇を、ローフィスの唇に寄せる。

今度…ローフィスはもう我慢できず、結局抱きしめて…シェイルの唇に、自分の唇をそっと押し当てた。



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