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授業後の特別講習開始
しおりを挟むシェイルは昼食後、上級生らの態度が…柔らかくなったと感じた。
以前はイロモノ扱いで、興味本位に嫌らしい想像され、ニヤニヤ笑われ、見られてる感じだったのに。
シェイルが歩くと、上級生が道を空ける。
まるで…そう、まるで…。
「女王様扱い?」
ヤッケルが言うと、フィンスが頷く。
ローランデが、笑顔で囁く。
「私の耳に聞こえたのは、ディアヴォロスの片思いじゃなくなって、ほっとした。
って言葉だけど…。
ディアヴォロスって、誰に片思いしてたのかな?」
ヤッケルは、本気?と目を見開き、フィンスも黙して顔を下げた。
けれどシェイルも、ローランデに振り向き言う。
「ディアヴォロスが片思い?
あり得ないよ。
彼の事振る相手なんて、頭おかしい」
フィンスとヤッケルはますます、顔を深く下げた。
「あいつら…」
ヤッケルが言いかけると、フィンスが“皆まで言うな"とばかり、頷き倒して呟く。
「天然同士で。
きっと凄く気が合ってると思う」
ヤッケルはその言葉に、頷くしか無かった。
翌日の授業後、一年、二年は広場に集ってた。
シェイルはそこに、オーガスタスやローフィスの姿が見えて、顔を輝かせた。
けど、グループ分けでシェイルはオーガスタス、そしてディングレーのグループへ。
ヤッケルとフィンスが、ローフィスのグループに入ってた。
ローランデはリーラスのグループで、別れ別れ。
シェイルが落ち込んでると、オーガスタスは笑う。
「俺の方が、体がデカくて押し出しが効く。
いっくらディアヴォロスの“愛の誓い”で牽制出来ても、実際お前が側に居ると、不届き者も出かねないからな」
シェイルはそう言う、頼もしいオーガスタスを見上げた。
オーガスタスは横に立つ、ディングレーを顎でしゃくる。
「それにディングレーまで居ちゃ。
手出しする馬鹿はいない」
ディングレーはつい、ディアヴォロスと抱き合ってたシェイルを、じっ。と見る。
そして頬染めて、こほん。
と咳払った。
オーガスタスは目を見開き、ディングレーに告げる。
「お前にとってシェイルっ…て、弟同然なんじゃないのか?」
ディングレーは顔下げる。
「どっちかってーと、妹?」
言った途端、シェイルに足を蹴られ、蹴られた足を持ち上げる。
「痛いほど蹴るなんて、反則だぞ?」
ディングレーに言われ、シェイルは睨んだ。
「なんで妹?!」
「だって…」
ディングレーは俯く。
「…その、妹と彼氏がデキてるって、見せつけられた感じがしたか…ら?」
「…見せつけるって?」
シェイルに聞かれ、ディングレーは目を見開く。
「…そーゆートコは、変わってないな」
「どーゆートコ?
…ディングレーさ、オーガスタスと居ると、僕の知ってるいつものディングレーになってる?」
オーガスタスは愉快そうに笑った。
「俺の前では、窮屈な王族の仮面、付けなくていいもんな!」
ディングレーは無言で頷き、それを認めた。
オーガスタスはグループにいる他の一・ニ年を見、言う。
「さて。
だがチンタラやってたら、叱るぞ」
皆、オーガスタスの体格の迫力に飲まれ、ごくり。
と唾を飲み込んで、揃って頷いた。
シェイルにとってディングレーは、ディングレーがここに入学する前まで、剣を教えて貰った相手。
それでつい、剣の講習で二人で打ち合う時、ディングレーの前に立つ。
ディングレーはオーガスタスとやりたそうだったけど。
シェイルに剣を振る。
凄く、気を遣って、優しく。
「ディングレー。
以前より更に、弱く当てるって、どういう了見?!」
とうとうシェイルに怒られ、ディングレーは項垂れた。
「ローフィスに…入学出来るほど鍛え上げたと、怒られたし。
お前に傷つけると、ディアヴォロスに睨まれる」
シェイルはぷんぷん怒って他の生徒の前に立つけど。
結局ディングレーの元へ、戻って来た。
「俺に、怒ってた癖に」
「…他はもっと、ディアヴォロスに気を遣って、女の子に剣振るより弱い剣しか、当ててこない」
ディングレーにぷっ。と吹き出され、シェイルはムキになってディングレーの本気を誘おうと、鋭い剣を突き入れた。
けど先に一年『教練』で訓練積んだディングレーは、軽く弾く。
シェイルはムキになって必死に斬りかかるけど。
ディングレーはどれも軽く捌いてくる。
だからシェイルはもっと、ムキになって斬りかかる。
とうとうディングレーは、見回りに来たオーガスタスに泣きついた。
「シェイルには訓練に成るだろう。
が、俺の訓練は?」
オーガスタスはため息交じりに、ディングレーに告げた。
「シェイルの相手しといてくれたら、時間が空いた時。
俺が相手に成る」
そう言われたディングレーが、凄く嬉しそうで。
シェイルはもっと怒って、叫びながらディングレーに斬りかかった。
「僕じゃ、全然訓練に成らないなんて!
絶対侮辱だ!」
カン…。
それも軽くディングレーに弾かれ、シェイルはもっともっともっともっと、ムキになって斬りかかった。
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