若き騎士達の危険な日常

あーす。

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疑問に答える神聖神殿隊騎士ナースタス

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 室内から全ての能力者達が、突然消えたかと思ったら、入れ替わるように一人の神聖神殿隊騎士が姿を現す。
深紅のローブ。
そしてフードを被ってた。

見知った男なのか。
ディラフィスは気安く話しかける。

「…ナースタス…。
神聖神殿の皆は、大騒ぎか?」

ナースタスと呼ばれた、やはり2mを超す長身の、ローブ同様長い赤毛の男らしい顔立ちをした神聖神殿隊騎士は、頷く。

「お前の対応まかされるのは、いっつも俺だな」
「貧乏くじ引いたような言い草だ」

「貧乏くじだろう?」

ナースタスは、どっか!
とディラフィスの向かいに腰下ろし、また腕組みし、シェイルを見、ディラフィスに尋ねる。
「シェリアンの息子か?」

ディラフィスが、頷く。

次にナースタスは、シェイルの横で、励ますように手を握るディラフィスの息子、ローフィスを見て、囁く。
「お前の息子もお前に似ず、可愛いと思ったが。
シェリアンの息子はそんな域を遙かに超えてるな」

ローフィスはシェイルの手を握ったまま、固まって思った。
「(…可愛い…俺が…可愛い………?)」

ディラフィスは横に座るローフィスをチラ見して、唸る。
「神聖神殿隊騎士は、神聖騎士と違って行儀が最悪だし、口も態度も悪いから。
俺みたいに、普段から口が悪く奴らの態度にもめげない男が、神聖神殿隊付き、連隊騎士になる」

ローフィスは凄く、納得した。

ナースタスも頷く。
「タマに近衛連隊の騎士にも会うが。
奴ら、融通きかないし、やたらゴツいな」

ディラフィスはため息吐いた。
「…心を読んで、バラされたら体面傷つくような事言って、からかった?」

ナースタスはまた、無言で頷く。

ローフィスは内心、思った。
「(神聖騎士と違って、神聖神殿隊騎士ってめちゃめちゃ、性格悪い…)」

ディラフィスはローフィスの内心の言葉に気づいた様子で、ナースタスを見た。
ナースタスは無表情で呟く。

「お前、俺達おれたち神聖神殿隊騎士のほぼみんな、心読むと知ってて、それ、思うかな…」

ローフィスは、ぎくっ!と身を揺らした。

ディラフィスは頷きながら言う。
「こいつらと付き合ってると、心なんて隠してもムダだと分かるから。
言いたい事があったら、口に出して言った方がマシだぞ?」

ローフィスは、その忠告に頷いた。
ナースタスに振り向くと、尋ねる。

「『闇の第二』は、出なかったな」

ナースタスはため息交じりに告げる。
「光竜に力、削ぎ取られたんだろう?
光竜の気配感じた途端、逃げ出したさ。
迂闊に戦って力をもっと失うと。
封印された『影』の世界で、別の『影』に喰われるからな」

ずっと悪夢に出続けていた伯父の姿を見て、項垂れてたシェイルは。
一辺に顔を上げ、尋ねる。

「別の影に、喰われるの?!」

ナースタスは頷く。
「弱い『影』は大物の『影』に喰われ…もしくは手下にされ、自分を維持するには余程強大な力を持っていないと、喰われて消え去る。
『闇の第二』は『影』の世界でも、一番強大な力を持つ『影』。
力を失えば、部下として操ってた『影』らに反旗をひるがえされ、よってたかって喰われ、力を奪われ消え去る。
が、正直我々も、心を操るあいつは強敵だから。
同族の『影』に喰われてくれたら凄く、嬉しい」

ディラフィスも、ため息交じりに呟く。
「…俺も迂闊に『闇の第二』の“障気”に触れた仲間を、護符で封じ何度もここに、運び込んだしな」

そして顔を上げ、自分を目を見開き見てるローフィスとシェイルに、告げる。

「ちょい、触れただけで。
護符が無ければ瞬時に操られ、ヘタすればこっちに斬りかかり、殺そうとする。
だがもし俺が『闇の第二』にとって、役立つと分かれば。
殺されず心を乗っ取られて操られ…。
奴の“障気”をまき散らす手伝いさせられる」

ナースタスも項垂れる。
「“障気”程度なら払えるが。
気を抜くとあいつの黒い触手がいつの間にか心に滑り込み、過去の嫌な映像に囚われ、そのまま『闇の第二』の支配下に置かれる。
ほんっとに!
厄介だぜ『闇の第二』の“障気”って!」

ダン!と足で床を踏みならすナースタスに。
シェイルとローフィスは、びっくりして目を見開いた。

ナースタスは気づくと、言って退けた。
「ああ、すまない。
神聖騎士クラスなら、俺達ほど動揺しないが。
俺達と神聖騎士は…お前ら人間で言うなら、近衛連隊と神聖神殿隊付き連隊騎士の差だ。

俺達は器用で小回りが利く。
が、光の強さと濃密さでは神聖騎士にかなわない」

「態度とお行儀と、口の利き方もな」

こっそり付け足すディラフィスに、ナースタスは振り向いて睨み付けた。

「さて。
この後の要望はあるか?」

ナースタスに聞かれ、ローフィスとディラフィスが顔を見合わせていると。
シェイルが尋ねた。

「ディアヴォロス…は?
まだ結界内に居るの?」

ナースタスは頷く。
「…いつ回復するか、聞きたいようだが…残念ながら今はまだ、目覚めない。
いつ目覚めるかも、不明。
ワーキュラス殿が、もう『教練キャゼ』に戻っても安全だから。
ディラフィスに送って貰えと」

ディラフィスはナースタスを見つめる。
「…光竜と話せるのか?」

ナースタスははすにディラフィスを見た。
「そりゃ、ワーキュラス殿は自分を身に降ろすディアヴォロスが大切。
その大切な思い人のシェイルの安全には、気を配ってる様子だから…俺みたいな下っ端にも、必要とあらば話しかけて来る」

シェイルがナースタスを見つめ、ナースタスは立ち上がりながら、シェイルが口を開く、前に言った。

「残念ながら、東の聖地内では、君をどこにでも送れる俺でも。
結界外の『教練キャゼ』には、送れない。
馬で移動しろ」

シェイルは、しゅん。
とした。

「…ディアヴォロスをガーナデットの城に送ったから」

ローフィスが、シェイルをフォローするように囁く。
ナースタスはローフィスに振り向き、呟いた。

「いいか。
ディアヴォロスは人間だ。
ワーキュラス殿の光は濃密で強力すぎて、繊細な作業は難しい。
だが光で覆うことは出来る。
だからここの転送能力者多数で、彼を城に送れる。
重大な件だから。
が、君らを『教練キャゼ』に送ることは」

ローフィスが、もう分かった。
と言うように、幾度も頷く。

「重大事項じゃない」

ナースタスが、頷いた。

シェイルはまだ、納得出来ない様子だった。

「僕…も、光で包まれたら…」

ナースタスはすげなく却下した。

「結界外に移動出来るぐらい光に包まれる。
って事は。
結構あんたらには負担がキツイ。
こっちも、慣れてないヤツを光に包んで送るには、かなり気を遣う。
トマトなら、移動途中で例え潰れても、料理に使えるが…」

そこまで聞いて、シェイルもローフィスも、ぞっとして顔を下げた。

けどシェイルはまた、顔を上げる。

ナースタスもまた、シェイルが尋ねる前に。
説明を始めた。

「ガーナデットは大勢の神聖神殿隊騎士が光で包み込み、運んだから」

ディラフィスが、シェイルに取りなす。
「大技終えたばかりで、神聖神殿隊騎士らは皆、疲労困憊。
それに出向かなかった者らも、戻った騎士らの世話でてんてこ舞い。
俺達送るのに、業務で大変な大勢の騎士らに、運ぶことを頼むなんて、出来ない」

シェイルは、頷いて呟く。
「…僕って、喋るのトロいから、言う前にナースタスは答えるの?」

ナースタスとディラフィスは、揃って頷いた。
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