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ガーナデットの城
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神聖騎士が頷くと、ディアヴォロスが立ち上がる。
シェイルもローフィスも、立つ神聖騎士とディアヴォロスが、突然姿を消して行くのを、ぎょっとして見守った。
その時室内に、二人の東の聖地の能力者が姿を現す。
一人は茶のマントのような足元まであるローブで身を覆い、もう一人は青だった。
顔はフードを被っていたから、半分しか見えない。
けれど二人共が神聖騎士同様、2mを超す長身。
しかし神聖騎士と違い、神々しさよりも、とても荒っぽい雰囲気を纏っていた。
一人は前に手をかざし、シェイル、ローフィス、ディラフィスの目前に、移動した神聖騎士とディアヴォロスの姿を、映し出す。
もう一人が、ディラフィスの横に立つ。
「悪いが、君の意識の中の情報を、使わせて貰うよ」
ディラフィスは横に立つ神聖神殿隊騎士を見上げ、囁く。
「俺はあの城には不案内。
数えるぐらいか、出入りしてないからな。
大して役に立てないと思うが」
が、神聖神殿隊騎士はにやり。
と笑う。
「神聖神殿隊付き、連隊騎士が不案内?
一度で探索を終え、城の見取り図が書けるだろう?」
ディラフィスは見抜かれて、肩を竦めた。
「…それじゃまるで俺が。
これから屋敷に押し入る、盗賊みたいじゃないか…」
ローフィスは呆れてそうぼやく、頬も顎も男らしくてゴツい、ワイルドな父親を見た。
けれどシェイルが目前の、空間に浮かび上がる映像を真剣に見つめてるのに気づき、ローフィスも視線を向ける。
目前の白く少しぼやけた映像の中の、神聖騎士とディアヴォロスは、城の中を歩き出していた。
“ライラアンとシェリアンの意識の情報も貰えるか?
ガーナデットの力の源が知りたい”
ワーキュラスの声に従って、神聖神殿隊騎士らが次々に映像の中に、城の見取り図を送る。
幾つもの見取り図が、映像の上に重なる。
次に神聖騎士が光り、ディアヴォロスをも包み込み、二人は一気に城の地下室へと移動した。
その部屋は薄暗く、三方の壁は本棚だらけ。
ずらりと古書が、並んでいた。
ディアヴォロスが本の一つを指さす。
すると神聖騎士は、手も使わずその本を書棚より抜き出し、宙に浮かせた。
本は宙に浮いたまま、光に包み込まれる。
その途端、透けた…禍々しい顔付きの少年の幻が、本の上に浮かび上がる。
ローフィスは少し離れた場所に立つ、青のフードを被った神聖神殿隊騎士の顔付きが、厳しく引き締まるのを見た。
映像は、幽霊のような少年の姿とその周囲から強大な黒い靄が、部屋いっぱいに広がる様を映し出す。
さらにその黒い靄は、高い塔を二つ持つ、大きな城をほぼ全て、覆い尽くしていた。
高い塔の近くの幾つかの部屋は、とても濃い、黒い靄に覆われ、城の出入り口や一階の召使いらの部屋に行くほど、黒い靄は薄くなっていた。
が、地下室周辺は、真っ黒に見える程の濃い靄で、ロクに周囲が見えぬほど。
少年の幻が、本を光に包み込まれ、咆吼する。
“ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!”
空気を震わす、人の耳には聞こえぬしゃがれ声。
召使いらは声は聞こえなくても、その不気味さに怖気、不気味な気配に周囲を伺う。
女中らも、厩番も。
下働きの男らも、コック達も。
気味悪そうに、周囲を見回した。
そしてその時。
地下室の部屋に、ガーナデットが慌てて飛び込んで来る。
バタン!!!と扉を蹴立てて。
室内の二人の男の目前で、光に包まれ宙に浮く本。
そして本の上に浮かび上がる、幻の少年を、血走った狂気を宿す目で、見た。
「何…なにをしている!!!」
光輝く神聖騎士と、胸に濃い金の光を抱くディアヴォロスとに、視線を送り問い正す。
けれどその時。
神聖神殿隊騎士らが一斉に、城の各場所に姿を現す。
西の塔。
東の塔。
塔の中間にある渡り廊下に続く部屋。
そして…シェリアンの落ちたバルコニー。
石牢のような、飾り気の無いシェリアンが攻められていた部屋にも。
神聖神殿隊騎士らはフードを被り、瞬時にその姿を現した。
シェイルは石牢の部屋を見た途端、はっ!!!と目を見開く。
石牢の部屋の端には、足の長い子供用の椅子が。
手すりと腰に革ベルトを渡し、固定出来るように設えられていた。
シェイルはその椅子を見た途端、震える手で斜め横に座るローフィスの、膝の布を掴む。
ローフィスはシェイルのその手の上にそっと手を置き、握る。
シェイルは指が食い込むほど強く、ローフィスの手を握り返し、縋り付いた。
ディラフィスも、今にも泣きそうなシェイルの表情を見、映像に振り向く。
その石牢の部屋に、フードを被った二人の神聖神殿隊騎士が姿を現していた。
神聖神殿隊騎士らは神聖騎士と違い隊服は無く、各自思い思いの格好で、赤や緑、紺と言った色とりどりの長いフード付きローブを纏っていた。
ガーナデットの後ろ、戸口を塞ぐ位置に神聖神殿隊騎士の長が、ゴージャスな長い金髪をなびかせ、明るい青のローブを纏い、立つ。
ガーナデットは目を見開き、振り向いた。
「お前達…」
神聖騎士は光で包んだ本を見、心話を響かせた。
“日記か?”
ガーナデットは怒鳴る。
「放せ!!!
光を…避けろ!!!」
そう叫ぶガーナデットは、腰まである長い栗毛で背が高く、黒衣を付けた身は痩せこけ、目は窪み、顔色はどす黒い茶色。
最早人の姿と言うには、あまりにも化け物じみて見えた。
ワーキュラスは日記から“障気”の流れを読み取り、呟く。
“なる程。
お前の妄執はシェリアンに対して。
そしてその息子、シェイル。
この二人を捕らえ、気力を奪った時だけ。
力に変えられる様子だ”
神聖神殿隊騎士の長は顔を上げ、城を覆う靄を見つめる。
“十年以上、シェリアンの人生を奪った対価が…これか”
ワーキュラスがディアヴォロスの胸で瞬き、神聖騎士の白銀の光は、ディアヴォロスを包み込む。
眩い白銀の光の中。
神聖騎士は神聖神殿隊騎士の長に、頷いた。
シェイルもローフィスも、立つ神聖騎士とディアヴォロスが、突然姿を消して行くのを、ぎょっとして見守った。
その時室内に、二人の東の聖地の能力者が姿を現す。
一人は茶のマントのような足元まであるローブで身を覆い、もう一人は青だった。
顔はフードを被っていたから、半分しか見えない。
けれど二人共が神聖騎士同様、2mを超す長身。
しかし神聖騎士と違い、神々しさよりも、とても荒っぽい雰囲気を纏っていた。
一人は前に手をかざし、シェイル、ローフィス、ディラフィスの目前に、移動した神聖騎士とディアヴォロスの姿を、映し出す。
もう一人が、ディラフィスの横に立つ。
「悪いが、君の意識の中の情報を、使わせて貰うよ」
ディラフィスは横に立つ神聖神殿隊騎士を見上げ、囁く。
「俺はあの城には不案内。
数えるぐらいか、出入りしてないからな。
大して役に立てないと思うが」
が、神聖神殿隊騎士はにやり。
と笑う。
「神聖神殿隊付き、連隊騎士が不案内?
一度で探索を終え、城の見取り図が書けるだろう?」
ディラフィスは見抜かれて、肩を竦めた。
「…それじゃまるで俺が。
これから屋敷に押し入る、盗賊みたいじゃないか…」
ローフィスは呆れてそうぼやく、頬も顎も男らしくてゴツい、ワイルドな父親を見た。
けれどシェイルが目前の、空間に浮かび上がる映像を真剣に見つめてるのに気づき、ローフィスも視線を向ける。
目前の白く少しぼやけた映像の中の、神聖騎士とディアヴォロスは、城の中を歩き出していた。
“ライラアンとシェリアンの意識の情報も貰えるか?
ガーナデットの力の源が知りたい”
ワーキュラスの声に従って、神聖神殿隊騎士らが次々に映像の中に、城の見取り図を送る。
幾つもの見取り図が、映像の上に重なる。
次に神聖騎士が光り、ディアヴォロスをも包み込み、二人は一気に城の地下室へと移動した。
その部屋は薄暗く、三方の壁は本棚だらけ。
ずらりと古書が、並んでいた。
ディアヴォロスが本の一つを指さす。
すると神聖騎士は、手も使わずその本を書棚より抜き出し、宙に浮かせた。
本は宙に浮いたまま、光に包み込まれる。
その途端、透けた…禍々しい顔付きの少年の幻が、本の上に浮かび上がる。
ローフィスは少し離れた場所に立つ、青のフードを被った神聖神殿隊騎士の顔付きが、厳しく引き締まるのを見た。
映像は、幽霊のような少年の姿とその周囲から強大な黒い靄が、部屋いっぱいに広がる様を映し出す。
さらにその黒い靄は、高い塔を二つ持つ、大きな城をほぼ全て、覆い尽くしていた。
高い塔の近くの幾つかの部屋は、とても濃い、黒い靄に覆われ、城の出入り口や一階の召使いらの部屋に行くほど、黒い靄は薄くなっていた。
が、地下室周辺は、真っ黒に見える程の濃い靄で、ロクに周囲が見えぬほど。
少年の幻が、本を光に包み込まれ、咆吼する。
“ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!”
空気を震わす、人の耳には聞こえぬしゃがれ声。
召使いらは声は聞こえなくても、その不気味さに怖気、不気味な気配に周囲を伺う。
女中らも、厩番も。
下働きの男らも、コック達も。
気味悪そうに、周囲を見回した。
そしてその時。
地下室の部屋に、ガーナデットが慌てて飛び込んで来る。
バタン!!!と扉を蹴立てて。
室内の二人の男の目前で、光に包まれ宙に浮く本。
そして本の上に浮かび上がる、幻の少年を、血走った狂気を宿す目で、見た。
「何…なにをしている!!!」
光輝く神聖騎士と、胸に濃い金の光を抱くディアヴォロスとに、視線を送り問い正す。
けれどその時。
神聖神殿隊騎士らが一斉に、城の各場所に姿を現す。
西の塔。
東の塔。
塔の中間にある渡り廊下に続く部屋。
そして…シェリアンの落ちたバルコニー。
石牢のような、飾り気の無いシェリアンが攻められていた部屋にも。
神聖神殿隊騎士らはフードを被り、瞬時にその姿を現した。
シェイルは石牢の部屋を見た途端、はっ!!!と目を見開く。
石牢の部屋の端には、足の長い子供用の椅子が。
手すりと腰に革ベルトを渡し、固定出来るように設えられていた。
シェイルはその椅子を見た途端、震える手で斜め横に座るローフィスの、膝の布を掴む。
ローフィスはシェイルのその手の上にそっと手を置き、握る。
シェイルは指が食い込むほど強く、ローフィスの手を握り返し、縋り付いた。
ディラフィスも、今にも泣きそうなシェイルの表情を見、映像に振り向く。
その石牢の部屋に、フードを被った二人の神聖神殿隊騎士が姿を現していた。
神聖神殿隊騎士らは神聖騎士と違い隊服は無く、各自思い思いの格好で、赤や緑、紺と言った色とりどりの長いフード付きローブを纏っていた。
ガーナデットの後ろ、戸口を塞ぐ位置に神聖神殿隊騎士の長が、ゴージャスな長い金髪をなびかせ、明るい青のローブを纏い、立つ。
ガーナデットは目を見開き、振り向いた。
「お前達…」
神聖騎士は光で包んだ本を見、心話を響かせた。
“日記か?”
ガーナデットは怒鳴る。
「放せ!!!
光を…避けろ!!!」
そう叫ぶガーナデットは、腰まである長い栗毛で背が高く、黒衣を付けた身は痩せこけ、目は窪み、顔色はどす黒い茶色。
最早人の姿と言うには、あまりにも化け物じみて見えた。
ワーキュラスは日記から“障気”の流れを読み取り、呟く。
“なる程。
お前の妄執はシェリアンに対して。
そしてその息子、シェイル。
この二人を捕らえ、気力を奪った時だけ。
力に変えられる様子だ”
神聖神殿隊騎士の長は顔を上げ、城を覆う靄を見つめる。
“十年以上、シェリアンの人生を奪った対価が…これか”
ワーキュラスがディアヴォロスの胸で瞬き、神聖騎士の白銀の光は、ディアヴォロスを包み込む。
眩い白銀の光の中。
神聖騎士は神聖神殿隊騎士の長に、頷いた。
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