若き騎士達の危険な日常

あーす。

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ワーキュラスの功績

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 ディアヴォロスと神聖騎士は、ディラフィスに頷く。

「『闇の第二』の痕跡を消さないと」

ディアヴォロスがそう言うと、神聖騎士も頷く。
「放って置けばガーナデットの城は、『影』巣くう“障気”満ちる場所になって、普通の人が立ち入ると憑かれかねず、大変危険だ」

シェイルに見つめられ、ローフィスは促されるように尋ねた。
「…ガーナデットは今、そこに?」

神聖騎士は、頷く。
「多分」

ローフィスは、ディアヴォロスを見て、囁く。
「本来は、神聖神殿隊騎士か神聖騎士の仕事だろう?
あんたも…行くのか?」

神聖騎士はため息を吐く。
「そうだが…『闇の第二』が長く巣にしていた城。
我々なら数回かかる浄化作業も、ワーキュラス殿の御力を借りれば…一度でほぼ、完全に浄化出来る。
だから、ディアヴォロス殿に同行頂ければ、我々も大変助かる」

ローフィスは顔色も変えない、ディアヴォロスを見つめた。
「けどあんたには…かなり負担がかかるんじゃ無いか?」

その時、ワーキュラスの荘厳な声が響く。

“ローフィスはとても君の事を心配してる。
彼の心から、ずっと君への、感謝の呟きが聞こえているから”

ローフィスはそれを聞いた途端、頬染めて顔を下げたし、ディアヴォロスは目を見開く。

「…私に腹が立たないのか?
君の留守にシェイルに手を出したのに?」

ローフィスは顔を下げたまま、呟く。
「それだって、シェイルが酷く不安だったからだろう?
あんたシェイルには凄く優しいから、そんなの見たら、放って置けない」

ディアヴォロスが顔を下げるのを見て、ローフィスは言葉を続けた。
「俺は…シェイルの兄貴の立場から、動く気が無かったが…。
辛かったのは確かでその…。
あんたや光竜の光が無ければ、今でも自分の心を封印したままだった。
けど…」

ディアヴォロスが、顔を上げてローフィスを見つめる。
まだ少年っぽさを残した青年になりかけの、成人男のゴツさが、控えられた顔立ち。

が弱々しい未熟さの中、男としての強い意志を示す、強烈に輝く青い瞳があまりにも印象的に目に飛び込む。

愛らしく可憐なシェイルは、そう告げるローフィスを心配げに見つめたし、無頼風のディラフィスは、顔色も変えず、息子の言わんとする事を聞いていた。

ローフィスは、自分の気持ちをなんとか言葉にしようと試みた。

「…激しい思いは封印したままだと、いつか…よどみ、腐る…。
そんな先行きが見えたから…。
自分では…大丈夫と思ってたが、その…思ったより…ずっと…。
なんて言うか」

ディラフィスが、ローフィスから顔を背け、呟く。
「そんな激しく重いの抱えて、『闇の第二』に好かれてるシェイルの側に居たら。
…いつか『闇の第二』の“障気”に飲まれたな」

ローフィスは、顔下げたまま頷く。

ディラフィスはため息交じりに告げる。
「自分の想いも、敵が『闇の第二』だって事も。
思ってたより、かなりな大事おおごとだったんだな?」

ローフィスはチラ…と父親を見る。
「『闇の第二』って…気づいてた?」
「…『影』じゃないかと随分探ったが…まるで尻尾掴ませない。
だから『影』じゃなく、ガーナデットの妄執が半端ない。
そう、思うしか無かった。

城は監視が厳しくてそうそう入り込めなかったし、俺の元に逃げ出したライラアンも、過労と心労が酷いと。
ここの“癒す者”に言われた。
『影』に憑かれてたらそう言う筈だが、そんな形跡は無いと言ってたしな。

…だからシェイルも、幼いながら心の中で必死に『闇の第二』に囚われまいと戦っていたなんて…。
気づきようも無い。

ガーナデットがシェイルをさらおうとしつこく寄越す追っ手だって、金で雇われたごろつきや盗賊の、憑かれてない普通の人間じゃ…」

ここ東の聖地では、身の内から発する光で姿がぼやけて見える程の、光を纏う神聖騎士もが、頷く。
「気づかないでしょうね…」

ディラフィスは頷き、ローフィスに振り向く。
「シェイルを狙ってるのが『闇の第二』だって。
ここの連中も分からなかったし、もし判明してたら、シェイルも母親のライラアンと共に、ここに置いてた」

だが神聖騎士が囁く。
「けれどそれでも…相手が『闇の第二』の場合、危険でした。
あなたの息子さんが、ずっと側に居て必死にシェイルを救おうとしたから。
『闇の第二』も、シェイルを捕らえられなかった」

ローフィスは、頷く。
「親父が神聖神殿隊付き連隊騎士だったから。
常に護符や呪文で、『影』を遠ざけ…。
それで俺まで『闇の第二』に取り込まれず、それが出来たんだろうな…」

シェイルは真っ暗なぞっとする感覚と戦い続け…疲れてきって自分を明け渡しそうになるたび、ローフィスの暖かい笑顔に引き戻された事を思い起こす。

とても…輝いて見えた。
まだ小さく幼い、ローフィスの笑顔は。

その場の誰もが…暗闇を照らす幼いローフィスの笑顔を、やはり幼いシェイルが不思議そうに見上げている姿の映像が、浮かび上がって見えた。

シェイルから見たら、ローフィスは小さくても光、そのものだった。

ディアヴォロスが、一つ吐息を吐く。

神聖騎士はそんなディアヴォロスを見つめ、囁く。
「…けれど、払うまでには…及ばなかった。
シェイルだけを見ていたら、普通の能力者では気づかない。
私たちですら、微かな痕跡を見つけ、引きずり出して初めて、『闇の第二』と気づいたでしょうから。
だが『闇の第二』が相手では…。
引きずり出したあと、激しい戦いになり、例え戦いに勝っても。
一度では。
シェイルに絡みつこうと狙う幾本の『闇の第二』の触手を、完全に払うことは難しかったでしょう。

ディアヴォロス殿と出会えて、シェイル、君は幸運だ。
ワーキュラス殿の、濃密で力ある光で無ければ…『闇の第二』をあれほど一気に、退ける事は出来なかった」

けれど言われたシェイル当人では無く、ローフィスが。
顔を下げたまま頷き倒すのを、ディラフィスは見た。


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