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小休止
しおりを挟む一行は神聖騎士に頷かれた途端、周囲の景色が変わり、とても雰囲気の良い応接室に移動してるのに気づく。
地色がスモークグリーンに花柄のお洒落なソファの横に居て、ローフィスはため息吐いて、ソファに寄り、ディラフィスと並んで腰掛けた。
神聖騎士とディアヴォロスも向かいに腰掛ける。
シェイルだけが、暫く佇んで、皆に振り向く。
「…ここでは…僕、軽いの?」
神聖騎士が微笑んで頷き、ディアヴォロスが手を差し伸べて座るようシェイルを促しながら、囁く。
「西の聖地や東の聖地は、光の結界内。
能力者らは結界外と違い、存分に能力が使える」
神聖騎士も、頷いて言った。
「結界外には光が満ちてないから。
使える力に限界がある。
人一人を移動させるには、手持ちの光を使い果たしても、まだ足りなくなってしまう」
シェイルはディアヴォロスの指し示す一人掛けソファに腰掛け…顔を上げてまた、ぎょっ!とした。
ディーポットが宙に浮いてて、やっぱり宙に浮いてるカップに、お茶が注がれていたから。
「ここではみんな、手を使わないの?!」
ローフィスとディラフィスに見つめられ、白銀の淡い光に覆われて見える、神秘的で美しい神聖騎士は…気づいたように戸惑った後、シェイルに説明した。
「つい習慣で…。
能力者も、使える能力はそれぞれ。
物を動かす能力の無い者は、手を使ってお茶を注ぐけれど…」
ディアヴォロスは宙を浮いて手元に届いたカップを受け取り、口に運びながら告げる。
「彼は物を動かせる」
シェイルは、自分の手元に浮いて来たカップを受け取る。
ディラフィスとローフィスも、見たけど。
やっぱり宙に浮いたカップの取っ手を、無言で表情も変えず、受け取ってた。
シェイルはかつて昔、ここを訪れた時の記憶を、思い返しながら囁く。
「以前…ローフィスが大怪我した時は…突然移動なんて、しなかった…」
神聖騎士は、微笑む。
「普通の人間や、移動能力が無く、瞬間移動が苦手な者には、あまり行わないから。
凄く、びっくりした?」
神聖騎士に問われ、シェイルは頷く。
ディアヴォロスが、優しい口調でシェイルに説明する。
「大抵人間は、来客用の館で応対を受ける。
対応を受け持つ担当の能力者は、能力の無い人間に気を使える者で、能力を使うことを極力控えてる。
だから私や神聖騎士と共に居なければ、君たちは大して驚くことも無かった」
シェイルはディアヴォロスの、長く黒い細かな巻き毛の周囲を、光が零れるように輝かせ、男らしく美しい顔に浮かべた微笑を見、頬を染めて微かに頷いた。
ディラフィスも、頷いて言う。
「流石に俺は慣れてるが」
ローフィスは父親を見た。
「俺はびっくりした」
ディラフィスは横のローフィスに振り向き、口を開く。
「お前がここに滞在した時は、瀕死の怪我だったから。
殆ど光の治癒結界内で、寝てたもんな」
ローフィスはハーブティをすすりながら呻いた。
「…それでか…」
が、ローフィスはディアヴォロスと神聖騎士が、目配せしてるのに気づく。
横の父、ディラフィスは表情も変えないが、やはり気づいてる様子に見えた。
「…で、ガーナデットにケリ付けに行くのか?」
そう、切り出したから。
「(…さすが親父…)」
ローフィスは目端の利く、ワイルドな父を、お茶をすすりながらチラ見した。
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