若き騎士達の危険な日常

あーす。

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突然の出立

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 笑っていた神聖騎士とディアヴォロスが突然、はっ!と目を見開き、神聖騎士は一気にその場から姿を消し、ディアヴォロスはソファから立ち上がり、戸口へと駆ける。

ディラフィスも立ち上がり、ローフィスだけが。
一瞬皆に遅れ、ディラフィスの背を追った。

ディアヴォロスが食堂室へと飛び込む。
ディラフィス、ローフィスが続いて飛び込んだ時。

神聖騎士はもうその場にいて、泣くシェイルの腕の中で気絶する、シェリアンの様子を見ていた。

シェイルが神聖騎士に、必死に語りかける。

「突然…突然、気を失って…!」

神聖騎士は手をかざし、手の平から白銀の光を発し、目を閉じるシェリアンの全身を光で包む。

そしてシェイルの腕の中から、気絶するシェリアンの体を引き受け抱き止め、横で見上げるシェイルに微笑む。

「疲れただけだ。
君と会って記憶がだんだんよみがえり、随分気力を使ったようだから。
『闇の第二』は、人の気力を奪う。
そうして操る。
ずっとシェリアンは君の伯父、ガーナデットを通じ『闇の第二』に気力を奪い取られていたから。
まだ、疲れやすい」

シェイルは、ほっとしたようにそう告げた神聖騎士を見つめた。

「では、大事だいじ無いのですね?」

神聖騎士は微笑んで頷く。

「今、私が光で包んだし、彼は長い間東の聖地にいて光が満ちているから、光竜と神聖神殿隊騎士の力を借りて運べる。
悪いが、彼に会いたくば東の聖地まで、君が来て欲しい」

シェイルは呆けたが、神聖騎士はディアヴォロスに視線を送る。

ディアヴォロスは頷き、彼の胸から黄金きんの光が放射され、光の中、フードを被った神聖神殿隊騎士の上半身が浮かび上がる。

「…では、ご一緒に」

それだけ言うと、シェリアンを抱いた神聖騎士は、フードの神聖神殿隊騎士と共に、一気に姿を消して行った。

「……………凄い」

ローフィスが呟き、ディラフィスも頷く。

「神聖騎士と光竜神、そして神聖神殿隊騎士の連携プレーだ。
が、シェリアンが長く東の聖地にいるから運べる」

シェイルが、ディラフィスに振り向く。
「僕…やディラフィスはダメ?」

ディラフィスは頷く。
シェイルは今度、ディラフィスの前に立つ、ディアヴォロスを見つめる。
「貴方…でも?」

ディアヴォロスは頭を少し横に傾けて、光が零れるように微笑んだ。
「無理だな…。
余程緊急な時は…運んで貰える。
だが神聖騎士が言ったように、光が満ちてる者は軽くて運べる。
私は…かろうじて運んで貰える。
だが君やディラフィス、ローフィスは…無理だろう」

ディラフィスも頷く。
「人間は、光が満ちてないからとても重いそうだ。
しかも生き物だから、壊さないよう運ぶには、山を一つ移動させるぐらいの“気力”と繊細な配慮が要るそうだ」

シェイルは目を、見開いた。

「僕…でも、重い?」

ローフィスは真顔で説明した。

「体重じゃない。
能力者は光が満ちてるか、そうでないかで見るから」

シェイルは頷く。
そして、消えた空間を見つめるから…ローフィスもディラフィスもが、ディアヴォロスを見た。

「…シェイルを東の聖地に連れて行くつもりだが…」

ディラフィスが口火を切ると、ディアヴォロスは頷いた。
「付き添おう」


厩にはディアヴォロス所有の見事な馬が、5頭はいた。

ローフィスが、自分の愛馬の横に付いて尋ねる。

「馬車じゃ無いのか?」

ディアヴォロスがディラフィスに手渡し、ディラフィスは二つあるペンダントの一つをローフィスに手渡す。

ローフィスは渡されたペンダントを見る。

「神聖騎士の護符か?
だが発動させる呪文を知らない」

ディアヴォロスは自分の馬の手綱を取り、振り向く。
「必要無い。
もう既に呪文がかけられてる。
付ければそれで…」

そう告げて、一気に飛び上がって馬に跨がる。

「姿は人から消えて見える。
追っ手は誰も我々の姿を見ない。
だが行きだけだ。
帰りはここには戻るな」

そして、シェイルに手を差し伸べる。
「私の後ろに」

シェイルは、それぞれ馬の横に立つ、ディラフィスとローフィスを見る。

ディラフィスが、頷く。
「この中で、彼の馬が一番早い」

シェイルは父親代わりのディラフィスにそう告げられ、頷いてディアヴォロスの手を取り、身軽にディアヴォロスの後ろに跨がり、ディアヴォロスの腰に腕を回す。

ディラフィスが馬に乗り、ローフィスも飛び乗ると、ディアヴォロスは見もせずに馬の首を戸口へと向け、拍車をかけて一気にうまやから、飛び出した。

ディラフィスも慣れた手つきで馬の首を戸口に操り、軽く拍車かけ、最速で戸口を駆け抜ける。
ローフィスもディラフィス譲りの馬術で、軽く拍車をかけ、軽やかに飛び出す。

三騎はディアヴォロスを先頭に、矢のようにつっ走った。

シェイルはその凄まじい速度に、背後を振り向く。
ディラフィスもローフィスも、遅れずぴったりと、後ろに付けていた。

「(…二人にとっても…きっと最速…)」

が、ディラフィスもローフィスも、顔色も変えない。

身を前に倒していたディアヴォロスが振り向く。

「我々の姿は消え、周囲の者らには見えてない!!!」

叫ぶと、ディラフィスが応えた。

「通行人も向かいから来る馬車にも!
けてもらえないんだな?!」

ディアヴォロスは鮮やかに笑うと、その通り。と頷いて、再び馬を飛ばした。

ディラフィスは斜め横の、半馬身遅れるローフィスに叫ぶ。
「こっちから避けないと、ぶつかる!」
「理解した!」

愛息ローフィスの即答にディラフィスは嬉しそうに笑い、馬の首へと頭を倒し前傾ぜんけいし、更に速度を上げた。

ローフィスが遅れずピタリと、半馬身後ろに続く気配に。
ディラフィスはまた、嬉しそうに微笑を零した。

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