若き騎士達の危険な日常

あーす。

文字の大きさ
上 下
129 / 171

朝の一時

しおりを挟む
 ディアヴォロスは朝食を知らせに来る召使いの気配に、目を覚ます。

向かいのソファにはローフィスが、目を閉じて沈んでいて、いつの間にかここで、ローフィスと果実酒をあおりながら寝てしまったのだと気づいた。

召使いは目覚めるディアヴォロスに、にっこりと微笑む。
「朝食は、いつでもお召し上がりになれます」

ディアヴォロスは頷き
「ありがとう。
直ぐ行くから」
そう告げて、ローフィスを起こすかどうか迷い、結局立ち上がるとそのまま居間を出て、寝室のシェイルの様子を見に行った。

シェイルは目を閉じ、安らかに眠っていたけど。
戸口でディアヴォロスが見つめていると、ゆっくりと夢から覚めて、目を開ける。

そっと身を起こすと、ディアヴォロスに振り向く。

ディアヴォロスは銀の髪を胸に流す、愛らしくも美しいシェイルに微笑みかける。

「食事が出来るけど…」
シェイルは頷き、けれどディアヴォロスを見つめていると、長身で黒く長い縮れ毛を肩に胸に流し、整いきった男らしくも美しい顔立ちと均整の取れた逞しい体躯が視界に入り、次第に彼と過ごした時間を思い出して、恥ずかしげに頬を染めた。

その初々しい艶にディアヴォロスは見惚れたけれど、囁いた。

「湯に浸かった方がいい。
一人でも入れる?」

シェイルは真っ赤な頬で頷くから、ディアヴォロスは微笑んで頷き返した。

ディアヴォロスが食事用の部屋へ、ガウン姿で入った時。
客が二人、既にテーブルについて、先に食事を取っていた。

その二人を見た途端、ディアヴォロスは神聖騎士の“届け物”が何か分かって、微笑んだ。

ローフィスはディアヴォロスが居間を出て言った後直ぐ目覚め、浴室へと向かう。
一風呂浴びて眠るつもりだったのに。
いつの間に眠ってしまったのかの、意識すら無かった。

軽く湯に浸かって、湯に含まれる薬草で体の汚れを落とし、湯から出て体を拭いていた時。
扉が開いて、シェイルが姿を見せる。

「よぅ」

ローフィスにいつもの感じで言われ、シェイルは真っ赤に頬染めて俯いた。

「…なんで朝っぱらから過激な反応してる?」
「(…いつもの、ローフィスだ…)
え…と。
昨日なんか…ローフィスが出かけた後、急に凄く不安になって。
でその…」

ローフィスには…繰り返し辛い夢を見ていたシェイルを、ワーキュラスに幻で見せて貰っていたから。
つい囁いた。

「…不安、沈めて貰うためにディアヴォロスと寝たのか?
お前、ちゃんと彼だと認識してたか?
よそ事考えてたりすると、相手に失礼だぞ?」

シェイルはびっくりして、顔を上げる。

「…失礼…したかも…僕あの…」

ローフィスはため息吐く。

「ディアヴォロスはお前に惚れてるから。
抱きつかれたりしたらきっと、単にお前が不安だから。
って理由で、“彼の事が凄く好き”
ってワケでなくても、きっと優しく抱いちまうんだろうな」

シェイルは頬を赤く染めてたけど。
ローフィスがいつもの毒舌で。
ついぷうっ。と頬を膨らませ、ふてて言った。

「確かに失礼だったかもだけど!
ちゃんと…彼だと相手は分かってたし、第一ディアヴォロスは凄く、存在感あるから!
ローフィスと間違えたりしない!」

「そんなの、基本だ。
第一俺とディアヴォロス?
どう間違えようがある?

それで間違えたりしたらお前、ディアヴォロスに合わす顔無くなるぞ」

シェイルはまた、ふくれっ面をしたけど、じっ…と、ローフィスの顔を見た。

見つめられて、ローフィスはシェイルを見返す。

緩やかにくねる銀の髪を首筋に巻き付け、大きなエメラルド色の瞳は潤み、小さく柔らかな唇は薔薇色。
ガウンを纏った色白の肌はほんのりピンクで、ディアヴォロスに愛された後のシェイルは圧倒的な艶と仄かな色香を纏い、美しかった。

けれどローフィスの表情は変わらず、無言。
シェイルは一生懸命、ローフィスを見つめる。

少し伏せた、印象的な青の瞳。
明るい栗毛を纏い付かせたローフィスの顔立ちは、まだ少年っぽさを残し、鼻筋も頬も顎も、まだすんなりした曲線であどけなさが残ってるのに。
首筋や肩、腕には青年の力強さが伺い見れて、見つめているとつい、どきっ!としてしまう、初々しい男っぽさがあった。

ローフィスは熱い瞳でシェイルに見つめられ、ようやく口を開く。
「…“抱いて”おねだりか?
『悪いが俺は、腹ペコだしディアヴォロスじゃないから。
さっさと浸かって朝飯のテーブルに来い。
俺は先に食ってるが』
って返事しか、今は出来ない」

シェイルは、心からがっかりして囁いた。
「……ディアヴォロスには、利いたのに」

「残念だったな!」
ローフィスは常備してあるガウンひっかけ、着込むと。
シェイルを残し、さっさと浴室を出て行った。

「ローフィスの、馬鹿っ!」

扉を閉め、ローフィスはその言葉を聞き、思った。

「(…分かってない…。
『今始めちまったら、昼まで放さない自信があるぞ。俺は。
…だから出来ない』
…とは、言えないな)」

ローフィスはため息吐くと、本当に空腹で鳴る腹をなだめ、食堂室へと向かう。

扉を開け、ガウン姿のディアヴォロスの向かいに、座る二人の男を見て、目を見開いた。

親父ディラフィス…!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

PMに恋したら

秋葉なな
恋愛
高校生だった私を助けてくれた憧れの警察官に再会した。 「君みたいな子、一度会ったら忘れないのに思い出せないや」 そう言って強引に触れてくる彼は記憶の彼とは正反対。 「キスをしたら思い出すかもしれないよ」 こんなにも意地悪く囁くような人だとは思わなかった……。 人生迷子OL × PM(警察官) 「君の前ではヒーローでいたい。そうあり続けるよ」 本当のあなたはどんな男なのですか? ※実在の人物、事件、事故、公的機関とは一切関係ありません 表紙:Picrewの「JPメーカー」で作成しました。 https://picrew.me/share?cd=z4Dudtx6JJ

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

処理中です...