若き騎士達の危険な日常

あーす。

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ワーキュラスの介入

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 けれどディアヴォロスはそれでも言った。
「だが君の姿が消えれば。
シェイルの心は絶望に沈む。
まるっきり消えるのは無理だ」

「じゃあどうすればいい!
シェイルの側に居ながら!!!
あんたにシェイルを託し、それを…我慢しろと?!」

叫んだ後、ローフィスははっ!と気づいた。

ディアヴォロスが私的に見えるのも。
時おり野性味を帯びて、いつもの神秘的な瞳が青く鋭く、輝いて見えるのも…。

ディアヴォロスが本心凄くシェイルに惹き付けられ、自分との情事に嫉妬してるからだと。
気づいたから。

ディアヴォロスが今、してる事を自分もする。

ディアヴォロスはまるでそんなローフィスの気持ちが、分かってるように睨み付けて尋ねる。
「…分かってるのか?
シェイルが望むのは君だ」
「でもあんたなら…シェイルは受け入れる。
現に実際、以前してる」

ディアヴォロスはふてくされたようにそっぽ向く。
「私だってシェイル相手だと理性がどれだけ保つかは、分からない。
こんなに激しく嫉妬した試しが、今まで無いし。
恋敵を斬り殺したいとまで感じたのは、初めての事だ」
「どうして斬り殺したい恋敵の退校処分を助ける」

ディアヴォロスはそれを聞かれ…俯いて囁く。
「君を斬り殺したかった時の私は…。
愚かにも君が消えればシェイルが私に、気持ちを向けてくれるのでは無いかと単純に、思ってしまった」
ローフィスはそう呟くディアヴォロスの整いきった…けれど自分の未熟さを、無言で見つめてるような横顔を見、そっと囁く。
「でも、気を変えた?」
「…ワーキュラスが…。
君を斬り殺したらシェイルは一生私を、恨みはしても。
…決して愛さないと…言ったからだ」

ローフィスは俯く。
ディアヴォロスは腹立たしげに畳みかける。
「つまりそれ程、シェイルにとって君は無くてはならない相手で…。
君なしでは、生きて行けないほどだと」

ローフィスはまた、がくん!と身を揺らす。

ディアヴォロスはそんなローフィスを、気の毒そうに見つめる。
「…君はシェイルに…普通に幸せになって欲しいと願ってる。
女性を愛し、結婚して可愛い子供を持つような。
けれど無理だ」
「どうして?!!!!」

ローフィスは激しく髪を振って、ディアヴォロスに噛みつくように問い正す。

「…シェイルの父親が、彼の目前で死んでる。
その事に負い目を負ってるから…シェイルは人生に後ろ向きだ」

ローフィスは、それを聞いて目を見開く。

「…シェイルは自分の父親の話も、母親の話も…。
した事が無い」
「自分が二人を不幸にしたと…ずっと苦しんでいる。
だから…人間の普通の営み全てを、拒絶してる」

ローフィスは暫く俯いて…そして、顔を上げる。
「それだけ何でも見通せて…なのにシェイルの心を捕らえられない?
そんな事、信じられるか!」

ディアヴォロスはそう言われて、ローフィスを軽く睨んで言い返す。
「私になら、シェイルを奪われてもいいのか?
本当はシェイルに愛する女性が出来る事を望んでるのに」

ローフィスも、憮然と呟く。
「少なくともあんたなら。
俺と違ってシェイルをボロボロにしない」

ディアヴォロスは呆れて尋ねる。
「分かるのか?
私を、買い被ってないか?
幾ら体を鍛え上げようと…こんなに恋い焦がれ、しかも相手に振り向いて貰えない経験は、初めての私に?」
でもローフィスはムキになって叫ぶ。
「でもワーキュラスが止めるだろう?
もしシェイルを辛い目に合わせるとしたら。
俺にはしちまった、後で。
俺がどんな最低な事をしちまったか、教え、慰めてくれる相手しかいない!」
ディアヴォロスはぼそり。と呟く。
「…それでも普通の人間からしたら、贅沢な事だ」
「だがあんたは!
もっと贅沢だろう?!
間違いを犯す、前に、警告してくれる相手が居るんだから!」

ディアヴォロスはチラ…とローフィスを見る。

その時ワーキュラスが、ローフィスにすら聞こえる声を発した。

“どちらも抑止として相手が必要。
ディアス、君は試すべきだ。
ローフィスは、嫉妬で気が狂いそうになっても耐えると。
そう心に決めているから”

ディアヴォロスがローフィスを見つめて何か、言いかけ…。
けれどワーキュラスが再び、口を挟む。

“シェイルが危険だと。
知らせると君は血相変えて駆けつける。
学内でシェイルが安全に過ごせるよう、誓いまで立てる。
そこまでしてるのに、シェイルが望むのはローフィス唯一人で、自分はシェイルの視界に入ってない…。
試してみればいい。
それが本当か。
シェイルの視界に君は、入ってないか。
試して君がシェイルにとって不快な相手なら、私が彼の記憶を消そう”

ローフィスはそれを聞いて、ふてくされる。
「お試しが出来るのか?!
やっぱあんた、贅沢者だ」
「言えるのか?!
シェイルに惚れられてる最高の贅沢者の癖に!」
ディアヴォロスに即座にそう怒鳴られ、ローフィスは黙った。

ワーキュラスはローフィスに囁く。
“君の望みでもあるんだから、ディアヴォロスが…殆ど夢だと思ってるシェイルと寝ても、文句は言わないな?”

ローフィスはディアヴォロスの胸元で輝く、ワーキュラスを睨んだ。
「さすが神。
きっちり釘指してくるやり方は、恐れ入るぜ」

ディアヴォロスが促す。
「文句を言うか?」

ローフィスは、項垂れた。
「…言わない」

ディアヴォロスは一瞬躊躇い、けれどすっ!と立ち上がる。

そして段を上がりソファを後にし、掃き出し窓横の右の白い扉の向こうにその姿を消す。

ローフィスはふと、突然気づく。

「(…今度は俺…が。
ここでやけ酒煽る番か………)」

手に持つグラスを一気に煽り、ディアヴォロスが置いてった瓶からなみなみとグラスに注ぎ、再び煽って一気に飲み干した。
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