若き騎士達の危険な日常

あーす。

文字の大きさ
上 下
120 / 171

ワーキュラスの介入

しおりを挟む
 けれどディアヴォロスはそれでも言った。
「だが君の姿が消えれば。
シェイルの心は絶望に沈む。
まるっきり消えるのは無理だ」

「じゃあどうすればいい!
シェイルの側に居ながら!!!
あんたにシェイルを託し、それを…我慢しろと?!」

叫んだ後、ローフィスははっ!と気づいた。

ディアヴォロスが私的に見えるのも。
時おり野性味を帯びて、いつもの神秘的な瞳が青く鋭く、輝いて見えるのも…。

ディアヴォロスが本心凄くシェイルに惹き付けられ、自分との情事に嫉妬してるからだと。
気づいたから。

ディアヴォロスが今、してる事を自分もする。

ディアヴォロスはまるでそんなローフィスの気持ちが、分かってるように睨み付けて尋ねる。
「…分かってるのか?
シェイルが望むのは君だ」
「でもあんたなら…シェイルは受け入れる。
現に実際、以前してる」

ディアヴォロスはふてくされたようにそっぽ向く。
「私だってシェイル相手だと理性がどれだけ保つかは、分からない。
こんなに激しく嫉妬した試しが、今まで無いし。
恋敵を斬り殺したいとまで感じたのは、初めての事だ」
「どうして斬り殺したい恋敵の退校処分を助ける」

ディアヴォロスはそれを聞かれ…俯いて囁く。
「君を斬り殺したかった時の私は…。
愚かにも君が消えればシェイルが私に、気持ちを向けてくれるのでは無いかと単純に、思ってしまった」
ローフィスはそう呟くディアヴォロスの整いきった…けれど自分の未熟さを、無言で見つめてるような横顔を見、そっと囁く。
「でも、気を変えた?」
「…ワーキュラスが…。
君を斬り殺したらシェイルは一生私を、恨みはしても。
…決して愛さないと…言ったからだ」

ローフィスは俯く。
ディアヴォロスは腹立たしげに畳みかける。
「つまりそれ程、シェイルにとって君は無くてはならない相手で…。
君なしでは、生きて行けないほどだと」

ローフィスはまた、がくん!と身を揺らす。

ディアヴォロスはそんなローフィスを、気の毒そうに見つめる。
「…君はシェイルに…普通に幸せになって欲しいと願ってる。
女性を愛し、結婚して可愛い子供を持つような。
けれど無理だ」
「どうして?!!!!」

ローフィスは激しく髪を振って、ディアヴォロスに噛みつくように問い正す。

「…シェイルの父親が、彼の目前で死んでる。
その事に負い目を負ってるから…シェイルは人生に後ろ向きだ」

ローフィスは、それを聞いて目を見開く。

「…シェイルは自分の父親の話も、母親の話も…。
した事が無い」
「自分が二人を不幸にしたと…ずっと苦しんでいる。
だから…人間の普通の営み全てを、拒絶してる」

ローフィスは暫く俯いて…そして、顔を上げる。
「それだけ何でも見通せて…なのにシェイルの心を捕らえられない?
そんな事、信じられるか!」

ディアヴォロスはそう言われて、ローフィスを軽く睨んで言い返す。
「私になら、シェイルを奪われてもいいのか?
本当はシェイルに愛する女性が出来る事を望んでるのに」

ローフィスも、憮然と呟く。
「少なくともあんたなら。
俺と違ってシェイルをボロボロにしない」

ディアヴォロスは呆れて尋ねる。
「分かるのか?
私を、買い被ってないか?
幾ら体を鍛え上げようと…こんなに恋い焦がれ、しかも相手に振り向いて貰えない経験は、初めての私に?」
でもローフィスはムキになって叫ぶ。
「でもワーキュラスが止めるだろう?
もしシェイルを辛い目に合わせるとしたら。
俺にはしちまった、後で。
俺がどんな最低な事をしちまったか、教え、慰めてくれる相手しかいない!」
ディアヴォロスはぼそり。と呟く。
「…それでも普通の人間からしたら、贅沢な事だ」
「だがあんたは!
もっと贅沢だろう?!
間違いを犯す、前に、警告してくれる相手が居るんだから!」

ディアヴォロスはチラ…とローフィスを見る。

その時ワーキュラスが、ローフィスにすら聞こえる声を発した。

“どちらも抑止として相手が必要。
ディアス、君は試すべきだ。
ローフィスは、嫉妬で気が狂いそうになっても耐えると。
そう心に決めているから”

ディアヴォロスがローフィスを見つめて何か、言いかけ…。
けれどワーキュラスが再び、口を挟む。

“シェイルが危険だと。
知らせると君は血相変えて駆けつける。
学内でシェイルが安全に過ごせるよう、誓いまで立てる。
そこまでしてるのに、シェイルが望むのはローフィス唯一人で、自分はシェイルの視界に入ってない…。
試してみればいい。
それが本当か。
シェイルの視界に君は、入ってないか。
試して君がシェイルにとって不快な相手なら、私が彼の記憶を消そう”

ローフィスはそれを聞いて、ふてくされる。
「お試しが出来るのか?!
やっぱあんた、贅沢者だ」
「言えるのか?!
シェイルに惚れられてる最高の贅沢者の癖に!」
ディアヴォロスに即座にそう怒鳴られ、ローフィスは黙った。

ワーキュラスはローフィスに囁く。
“君の望みでもあるんだから、ディアヴォロスが…殆ど夢だと思ってるシェイルと寝ても、文句は言わないな?”

ローフィスはディアヴォロスの胸元で輝く、ワーキュラスを睨んだ。
「さすが神。
きっちり釘指してくるやり方は、恐れ入るぜ」

ディアヴォロスが促す。
「文句を言うか?」

ローフィスは、項垂れた。
「…言わない」

ディアヴォロスは一瞬躊躇い、けれどすっ!と立ち上がる。

そして段を上がりソファを後にし、掃き出し窓横の右の白い扉の向こうにその姿を消す。

ローフィスはふと、突然気づく。

「(…今度は俺…が。
ここでやけ酒煽る番か………)」

手に持つグラスを一気に煽り、ディアヴォロスが置いてった瓶からなみなみとグラスに注ぎ、再び煽って一気に飲み干した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい

パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け ★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

処理中です...