若き騎士達の危険な日常

あーす。

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楽しげな宴

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 シェイルは、背を向け自分から去って行く、ディアヴォロスを見つめる。
男らしく堂として頼り甲斐のある…素晴らし過ぎる彼を。

ディアヴォロスは戸口まで来ると、ふ、と歩を止め振り向く。
シェイルの背後で自分を見つめる、ローフィスへと。

ローフィスは…光の加減でグレーにもグリンにも、ブルーにも見えるディアヴォロスの瞳が青く鋭く輝き、自分を見つめてる事に気づく。

まるで
“これで君の要望に応えた。
この後、どう出るかは君次第。
君を選ぶか私を選ぶか。
それを決めるのは、シェイル”

そう、告げているようで…胸が震えた。

正直ディアヴォロスは、恋敵にするには最悪の男。

高貴で誰よりも強く、更に光竜の守護まで備えてる。

グーデンに対して感じるのは、怒りだけ。
けれどディアヴォロス相手だと。

…自分がシェイルの義弟あにでは無く、ただの恋する男に成り下がりそして…。
嫉妬で胸が焼けるのを、激しく自覚する。

“本気…なんだな?
だからもし…俺が恋する男に戻ったなら。
対等に張り合おうと。
あんたはそう…俺に告げている”

ディアヴォロスはまるでローフィスの心の声が聞こえたように。
ふい、とローフィスから視線を外し、その後シェイルとシェイルの横に居るローランデに
“今夜を、思い切り楽しんで”
そんな素晴らしい微笑を向け、さっ!と扉から、その姿を消した。

ローランデは暫く…突然の一連の騒動や事の成り行きに呆然としてたけど。
本当は王の主催する、豪華な宮廷舞踏会よりこの素朴そぼくな宴で、シェイルと踊りたかったディアヴォロスの気持ちを察し、シェイルにそっと囁きかけた。

「一緒に、踊る?」
シェイルはまだ、ディアヴォロスの誓いが良く分かって無くて、彼の姿が消えた今も彼の残した微笑が瞳に浮かび上がり、茫然自失だったけれど。
ローランデに優しく微笑まれて、楽の音に合わせて楽しげに飛び跳ね、踊る先輩達に視線を向ける。

シェイルは…踊りの場に、辿り着こうとした直前。
身の程を思い知らせるようなグーデンの登場で、一度は諦めた、普通の一生徒として楽しむ事が、自分に許されたのだと突如とつじょ思い出す。

そして、それをさせてくれたのはディアヴォロス…。

シェイルは心の中で、ディアヴォロスにありったけの感謝を叫び、差し出すローランデの手を取った。

けど振り向くと、ローフィスにそっ…と尋ねる。
「…ローフィスは…?
踊らないの?」

ローフィスは気づいて、シェイルに振り向く。
そう尋ねるシェイルはまるで
“僕、楽しんでも、いいの?”
そう許可を求めるみたいで、苦笑した。

「俺は酒が飲みたいから、お前、踊って来い」

けれどシェイルがまだ。
尋ねるように見つめるから、ローフィスは微笑んだ。

「今夜の酒は軽めの果実酒だが。
普段大貴族が飲んでる、かなり高級な質の良い酒で、平貴族の俺達はそうそうたしなめない酒だ。
俺を始めオーガスタスと仲間達は。
この機会にたらふく飲むと決めてる」

シェイルはそれを聞いて、ふくれっ面で言った。
「僕と、一曲も踊らない?」

“一緒に、楽しんで欲しいのに”

シェイルの内面の言葉はローフィスに届き、ローフィスはまた、笑った。
「酔っ払い過ぎて足がフラつかなきゃ。
後で踊りに加わる」

シェイルは
“約束だよ?”
そんな目をローフィスに残し、ローランデに振り向くと、ローランデと一緒に踊りの輪の中へと、加わって行った。

楽の音はどんどん賑やかになり、声が自慢の男らが美声を披露し、踊りの場では周囲の男らが飛びはね、中心では踊り自慢の男らが、アクロバットのような見事な踊りで皆を魅了し、場を盛り上げてる。

講師を始め、校長までもが踊りの輪に入り、中心に引き出されて講師相手にかなりな上手さを見せつけ、怒鳴る。

「ご婦人相手の時は、俺を見習って男らしくリードしろ!」

皆が一斉にはやし立てる。

「ゴツいご婦人相手の見本じゃ、参考に出来ませんよ!」

校長の相手の講師はムッ。として。
架空のドレスの裾を上げ、優雅に気取ってご婦人のマネをし、校長と踊って生徒の爆笑を誘った。

オーガスタスは次々に盃を開ける悪友らと飲み比べをしていたけれど。
ローフィスがふらりとやって来て、飲もうとした悪友の盃を横からひったくって飲み干す様を見る。

「てめぇローフィス!」
「怒るな!
大事な可愛い可愛い弟に、ディアヴォロスが『愛の誓い』じゃ、飲みたくもなるさ!」
「ホラこれをやるから!
ローフィスに絡むのは止めろ!」

ローフィスはオーガスタスの隣に、項垂れて腰を落とす。

「…どっちみち、ディアヴォロスにお出ましされないと、グーデンと決着は付けられないと。
分かってたんだろう?
あっちは千里眼。
で、お前の要望に応えた」

ローフィスは無言で頷く。
そしてテーブルの盃を取り上げ、また煽った。

「…で実際ディアヴォロスが応えてくれたら。
思ったより、ショックだったんだな?」

ローフィスはまた、無言で頷いて、盃を煽った。

「…見ろよ」

オーガスタスの声に促され、ローフィスは踊りの輪を見つめる。
その一端で、シェイルはローランデと。
そしてフィンスとヤッケルらと。
とても楽しそうな笑顔で、一緒にステップを踏み、飛び跳ねていた。

「あれがお前の望みだ」

ローフィスはシェイルの笑顔を見つめ、目を細めオーガスタスに告げる。

「…それ以上を望むなんて、俺は馬鹿だ」
「実質望んでるのがお前だろうが。
事態として望んでるのは、シェイルの方だ」
「…あれが続けば、いずれ忘れる」

オーガスタスは、うんと声を落として、囁いた。
「それが本当は…寂しいんだろう?」

ローフィスは弾けるような笑顔を浮かべ、友達と踊り跳ねるシェイルの幸福そうな姿を見。

小さくこっくり。
頷いた。


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