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幸運
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おおっ!!!
今まで正体の掴めなかったローランデの、信じられないほど素早くしなやかな動きが、赤い獅子の剣でくっきりと浮かび上がる。
場内は、息を飲む。
ディングレーは無言で見入り、ローフィスは…ため息を吐いた。
ディアヴォロスは横に座るカッツェが、呟く声を聞く。
「…どうしてあの体勢から、瞬時に…」
「体がとても柔らかく、しなやかで足腰が強い。
上体がどれ程傾こうが、直ぐ立て直せる。
…猫のように」
カッツェはつい、自宅の飼い猫を思い返し…微かに頷く。
“けれどあれは猫だから出来る事で、人間が出来るなんて…”
心の中で呟いた言葉だったけれど、まるでディアヴォロスにはそれが聞こえてるように、頷いてた。
がっっっ!!!
オーガスタスは襲い来る剣を、たちどころに剣を当て、叩き斬る!
ローフィスははっ!と気づく。
「(…ヤツは狙ってる!)」
ローランデはしなやかに着地し、着地したところにオーガスタスが剣を豪速で振り下ろす。
が、ローランデは落ち着き払って身を剣の届く紙一重、横にずらし避け、直ぐ駆け出して間合いを一気に詰める。
身を左右に波打つように揺らしながら、どこから剣を飛ばすのかを読ませない。
オーガスタスはいきり立つ。
大きな怒れる赤い獅子に、それでも果敢に突っ込んで行くローランデは最早誰も…気品溢れる優雅な貴公子だなんて思わず、見せかけの優しげな印象など、捨て去るに十分な勇姿だった。
がっっっ!
宙飛ぶローランデの振り下ろす剣を、オーガスタスはぶつけ止める。
宙で互いの目が合い、火花散る。
ローランデは着地し直ぐ飛び上がると、二度剣をオーガスタスに振り下ろす。
オーガスタスは外されて軽くなった剣を、直ぐ様飛び来る、ローランデ目がけ振る!!!
ローフィスは思わず立ち上がって、叫んだ。
「狙い澄ましてる!
オーガスタス!
そいつはディングレーに、幸運で勝ってない!
今までのどの対戦も、狙い澄ましてるぞ!!!」
がっっ…っちん…。
互いの剣は激しくぶつかり…。
ローランデは直ぐ剣を引いて、しなやかに着地する。
オーガスタスは暫く。
剣を合わせたまま、動かなかった。
視線を自分の、剣先に向ける。
落ちて、床に転がっていた。
場内が、直前オーガスタスに叫んだ、ローフィスに一斉に、視線を向ける。
まるで
“お前が馬鹿なこと叫んだせいでオーガスタスの気が散って、当てる剣の角度僅かにズレ、折れたじゃ無いか!!!”
…と言わんばかりに。
オーガスタスは剣振り下ろした姿勢から、ゆっくり腰を上げて剣を下げ、床に転がる自分の剣先を見つめ…。
戦意を解いた、ローランデに振り向く。
次に講師に目を向ける。
講師はまだ。
床に落ちたオーガスタスの剣先を、目を見開いて見つめていた。
が、オーガスタスの視線を感じ、慌てて叫んだ。
「勝者、オーガスタス!!!」
ざわざわざわざわざわ…。
別の講師が、慌てて怒鳴る。
「訂正!!!
勝者、ローランデ!!!」
けれどやはり。
がたん!!!
と長椅子から音立てて立ち上がり、けたたましく拍手したのは、シェイル一人。
場内はざわめき渡り、殆どの者が、ローフィスを睨み付けていた。
オーガスタスは先の折れた剣を下げ、三年席へと戻りつつ…。
ふと気づいて振り向いた途端、ローフィスを睨み付けてる場内の男らに気づき、目を見開く。
その後、空いた自分の席の横に座る、ローフィスの様子を伺う。
ローフィスは、俯いていた。
場内の、オーガスタスとディアヴォロスの対戦を期待してた男らは尚一層激しく、ローフィスを睨み付ける。
「…ローフィスは…」
オーガスタスが口を開くと、皆徐々に静まり返る。
年上の、四年の男達ですら、彼の声を聞こうと口を噤む。
「…悪くない。
ヤツのせいで俺の剣は、折れてない。
俺が未熟にも思い切り腹を立て、教練ルールの剣だときっちり忘れ、思い切り振り回したせいだ」
「だとしても…!!!」
四年の男が拳握って叫び、他の男らもが、憤懣やるかたない表情を向ける。
「ディアヴォロスは貴様と戦うべきだ!!!」
「お前、体も態度もデカいが!!!
見応えある戦いをすると、期待してたんだぞ!!!」
四年らが一斉に抗議し始めるので、下級生らは目を見開いて、貫禄ある体格のそれは立派な最上級生らを、困惑して見つめた。
オーガスタスは一つ、ため息吐く。
「…認めて貰ってありがたいが。
凄い手練れの一年がたった今、見事勝ち上がった。
なのにそれを祝うのは…」
そう言った後、今だたった一人微笑浮かべ、一生懸命ローランデに向けて拍手してる、シェイルに視線振る。
「…あいつしか、いないのか?
保証する。
ローランデはディアヴォロスと、対戦するに値する手練れだ」
ざわざわざわざわざわざわざわ…。
場内のざわめきは一層大きくなり、オーガスタスはまたため息吐いて、シェイルに顔を向け
「お前は、正しい」
そう一言声かけると、どっかと席に腰を下ろした。
それでも場内の、ざわめきは止まらない。
四年席最前列の、ディアヴォロスが立ち上がる。
途端、場内は全員が。
立ち上がって雄叫ぶ。
「ディアーーース!!!」
「ディアスっ!」
「ディアス!!!」
声の限りに怒鳴り、その名を叫ぶ。
次第に皆が声を揃え
「ディアス!!!」
「ディアス!!!」
「ディアス!!!」
…大合唱へと変わる。
自分への声援を背負いながら、オーガスタスと並ぶ程の長身のディアヴォロスは、中央に残り待つ、ローランデに微笑を向ける。
場内の男らの声が圧倒的に、ディアヴォロスを讃える中。
ローランデは対戦相手のディアヴォロスに微笑まれ、嬉しそうににっこりと、微笑み返した。
今まで正体の掴めなかったローランデの、信じられないほど素早くしなやかな動きが、赤い獅子の剣でくっきりと浮かび上がる。
場内は、息を飲む。
ディングレーは無言で見入り、ローフィスは…ため息を吐いた。
ディアヴォロスは横に座るカッツェが、呟く声を聞く。
「…どうしてあの体勢から、瞬時に…」
「体がとても柔らかく、しなやかで足腰が強い。
上体がどれ程傾こうが、直ぐ立て直せる。
…猫のように」
カッツェはつい、自宅の飼い猫を思い返し…微かに頷く。
“けれどあれは猫だから出来る事で、人間が出来るなんて…”
心の中で呟いた言葉だったけれど、まるでディアヴォロスにはそれが聞こえてるように、頷いてた。
がっっっ!!!
オーガスタスは襲い来る剣を、たちどころに剣を当て、叩き斬る!
ローフィスははっ!と気づく。
「(…ヤツは狙ってる!)」
ローランデはしなやかに着地し、着地したところにオーガスタスが剣を豪速で振り下ろす。
が、ローランデは落ち着き払って身を剣の届く紙一重、横にずらし避け、直ぐ駆け出して間合いを一気に詰める。
身を左右に波打つように揺らしながら、どこから剣を飛ばすのかを読ませない。
オーガスタスはいきり立つ。
大きな怒れる赤い獅子に、それでも果敢に突っ込んで行くローランデは最早誰も…気品溢れる優雅な貴公子だなんて思わず、見せかけの優しげな印象など、捨て去るに十分な勇姿だった。
がっっっ!
宙飛ぶローランデの振り下ろす剣を、オーガスタスはぶつけ止める。
宙で互いの目が合い、火花散る。
ローランデは着地し直ぐ飛び上がると、二度剣をオーガスタスに振り下ろす。
オーガスタスは外されて軽くなった剣を、直ぐ様飛び来る、ローランデ目がけ振る!!!
ローフィスは思わず立ち上がって、叫んだ。
「狙い澄ましてる!
オーガスタス!
そいつはディングレーに、幸運で勝ってない!
今までのどの対戦も、狙い澄ましてるぞ!!!」
がっっ…っちん…。
互いの剣は激しくぶつかり…。
ローランデは直ぐ剣を引いて、しなやかに着地する。
オーガスタスは暫く。
剣を合わせたまま、動かなかった。
視線を自分の、剣先に向ける。
落ちて、床に転がっていた。
場内が、直前オーガスタスに叫んだ、ローフィスに一斉に、視線を向ける。
まるで
“お前が馬鹿なこと叫んだせいでオーガスタスの気が散って、当てる剣の角度僅かにズレ、折れたじゃ無いか!!!”
…と言わんばかりに。
オーガスタスは剣振り下ろした姿勢から、ゆっくり腰を上げて剣を下げ、床に転がる自分の剣先を見つめ…。
戦意を解いた、ローランデに振り向く。
次に講師に目を向ける。
講師はまだ。
床に落ちたオーガスタスの剣先を、目を見開いて見つめていた。
が、オーガスタスの視線を感じ、慌てて叫んだ。
「勝者、オーガスタス!!!」
ざわざわざわざわざわ…。
別の講師が、慌てて怒鳴る。
「訂正!!!
勝者、ローランデ!!!」
けれどやはり。
がたん!!!
と長椅子から音立てて立ち上がり、けたたましく拍手したのは、シェイル一人。
場内はざわめき渡り、殆どの者が、ローフィスを睨み付けていた。
オーガスタスは先の折れた剣を下げ、三年席へと戻りつつ…。
ふと気づいて振り向いた途端、ローフィスを睨み付けてる場内の男らに気づき、目を見開く。
その後、空いた自分の席の横に座る、ローフィスの様子を伺う。
ローフィスは、俯いていた。
場内の、オーガスタスとディアヴォロスの対戦を期待してた男らは尚一層激しく、ローフィスを睨み付ける。
「…ローフィスは…」
オーガスタスが口を開くと、皆徐々に静まり返る。
年上の、四年の男達ですら、彼の声を聞こうと口を噤む。
「…悪くない。
ヤツのせいで俺の剣は、折れてない。
俺が未熟にも思い切り腹を立て、教練ルールの剣だときっちり忘れ、思い切り振り回したせいだ」
「だとしても…!!!」
四年の男が拳握って叫び、他の男らもが、憤懣やるかたない表情を向ける。
「ディアヴォロスは貴様と戦うべきだ!!!」
「お前、体も態度もデカいが!!!
見応えある戦いをすると、期待してたんだぞ!!!」
四年らが一斉に抗議し始めるので、下級生らは目を見開いて、貫禄ある体格のそれは立派な最上級生らを、困惑して見つめた。
オーガスタスは一つ、ため息吐く。
「…認めて貰ってありがたいが。
凄い手練れの一年がたった今、見事勝ち上がった。
なのにそれを祝うのは…」
そう言った後、今だたった一人微笑浮かべ、一生懸命ローランデに向けて拍手してる、シェイルに視線振る。
「…あいつしか、いないのか?
保証する。
ローランデはディアヴォロスと、対戦するに値する手練れだ」
ざわざわざわざわざわざわざわ…。
場内のざわめきは一層大きくなり、オーガスタスはまたため息吐いて、シェイルに顔を向け
「お前は、正しい」
そう一言声かけると、どっかと席に腰を下ろした。
それでも場内の、ざわめきは止まらない。
四年席最前列の、ディアヴォロスが立ち上がる。
途端、場内は全員が。
立ち上がって雄叫ぶ。
「ディアーーース!!!」
「ディアスっ!」
「ディアス!!!」
声の限りに怒鳴り、その名を叫ぶ。
次第に皆が声を揃え
「ディアス!!!」
「ディアス!!!」
「ディアス!!!」
…大合唱へと変わる。
自分への声援を背負いながら、オーガスタスと並ぶ程の長身のディアヴォロスは、中央に残り待つ、ローランデに微笑を向ける。
場内の男らの声が圧倒的に、ディアヴォロスを讃える中。
ローランデは対戦相手のディアヴォロスに微笑まれ、嬉しそうににっこりと、微笑み返した。
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