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ディングレーの、過去の出会い
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中央に、そのまま残ったのはローランデ。
誰もが、背を向け席に戻って行くディングレーを、信じられず見つめる。
ディングレー自身も、何が起きたか今だ分からなかった。
席に座り、四年席のローフィスに振り向く。
が、ローフィスの横の大柄なオーガスタスが席から立ち上がり、遮られてローフィスが見えない。
ディアヴォロスに剣を教えて貰ったのは…とても幼い、幼年期の頃。
一族の集まりの場所で、ほんの少し。
ディアスもまだ年少で、愛らしい美少年だった。
けれどもうしっかりした体格で、年よりはうんと大人びて見えて。
剣の握り方。
振り方…。
そう、ほんの初心者向きの教授。
けど無理も無い。
それは二つか三つそこらの出来事。
大抵は四つになった頃、本格的な講師の教習が始まるのが決まり。
けれど殆どの「左の王家」の子供は、一族の集まりで年上の男の子達が剣を交えてるのを目にし、憧れてねだるのが常。
「どうやって、剣を振るの?」
けれど講師が付いた頃、ディアスはもうもっと上に行き、一族の集まりで悪戯に剣を振ることは少なくなっていた。
もっと大人びた顔付き。
その頃には「左の王家」の護り手、守護神ワーキュラスがディアスと共にあると。
一族中に知れ渡っていた。
それから…ディアヴォロスは遠い人になって行った。
会えば微笑んでくれる。
けれどいつも人に取り巻かれ、忙しくて…。
七歳になった頃、家に男の子が来た。
父の…愛人の息子。
けれど母を亡くして、城に引き取られた。
母はとっくに父に愛想尽かし、別居していたから。
ディングレーは
「お前の弟だ。
色々教えてやってくれ」
と父に託され、嬉しかった。
可愛い子だった。
愛らしくて綺麗で、そして素直で。
大事に、大事にした。
けれど離れの塔に住む滅多に会わない兄、グーデンが…ある日捕らえ、自室に連れ込み…。
ひどい、扱いをした。
ディングレーが兄の悪癖を目の当たりにしたのは、それが始めて。
けれど一度グーデンに酷く扱われて以来、ヴィオレットは…少年らに良く絡まれるようになった。
城の外の草地によく、遊びに行ってた。
けれど一度、体の大きな少年六人に絡まれ…。
ディングレーは思い返しても身が震う。
自分一人では取り返せなくて、目の前で…ヴィオレットは衣服を剥がされ、大勢に犯されそうになり…どれだけ叫んでも飛びかかっても、殴られて止められない。
王族の威光の届かぬ場所で、どれだけ自分の力が弱いか。
思い知らされる出来事だった。
助けてくれたのは…通りがかった、まだ少年のローフィス…。
自分と背は同じ位。
なのに遠くから
「よう!
お前ら、最低の卑怯者だな!!!」
そう叫んで、振り向く奴に石つぶてを投げる。
けれど腹に喰らった子は、一人、また一人と、身を折る。
ローフィスは石垣を飛び越えて姿を現し、目配せしてくれた。
突進して、ヴィオレットにのし掛かる少年を引き剥がし、泣くヴィオレットの、手を引いて逃げる。
目前を阻まれ、また殴られる!
目を閉じたけど、そいつは後ろに突然転ぶ。
ローフィスが横に滑り込んで、足を思いっきり、蹴って薙ぎ払ってた。
「とっとと逃げろ!」
ローフィスに言われ、ヴィオレットの手を引いて、走る。
追いつかれそうになった時。
ローフィスは振り向き、また石を投げる。
追っ手の腹を直撃し、追っ手は消えた…。
安全な場所へ、逃げ切った時。
ローフィスに言われた。
「お前、馬鹿か?
助けたかったら、少しはアタマ使え!
お前が助けなきゃ、最悪な目にあってたぞ?!」
そう…ローフィスにヴィオレットを目で指され、見るとヴィオレットは泣いていた…。
胸があれ程、痛んだことは無い。
城に帰った後、父にグーデンがヴィオレットにした事を話し、その後ヴィオレットは城を去り…それでも、安全な場所で男の子として、剣の訓練を始めてる。
そう父に聞き、安心し…。
あれは八つの誕生日、直後の出来事。
ヴィオレットを訪ねる事をせず、ひたすらローフィスの姿を探し求め、城から抜け出ては彼と会った。
ローフィスは…会いに行くと、ぶっきらぼうな態度と言葉で…けど自然に、受け入れてくれてそして…。
面倒、見てくれた。
それが妙に居心地良くて、ある日気づいた。
常に召使いに囲まれ、しょっ中大勢の人と会いながらもとても、孤独なのだと…。
だからローフィスやローフィスの父ディラフィス、そしてシェイルらと居る時が…泣きたいほど温かく感じ、大切で去りたくないんだと、思い知った。
以来、時間が空くとローフィスに、会いに行く。
城とは違い、質素で。
いつも居場所を変え、宿を変え…。
それでも、どんな場所でも、彼らの温かさは変わらない………。
数ヶ月後、とうとうローフィス達が居場所を決めて以来、ディングレーは彼らの小さな邸宅に、入り浸るようになった………。
オーガスタスが中央に立つ。
ディングレーは縋るように、ローフィスを見た。
ローフィスは気づき、険しい表情で
“油断するからだ!”
と、口だけ動かして言った。
ディングレーはしゅん。と項垂れ…横の負けた自分を気遣うデルアンダーの遠慮がちな視線を感じ、“素”になってる。
と気づき、慌てて王族の仮面を被る。
「…すまない」
威厳を含めた声音でそう、デルアンダーに告げると、デルアンダーは慌てて首を横に、振った。
「いえ…。
不運でした」
ディングレーは返答出来なかった。
だって未だに、なんで負けたのかが良く、分かってなかった。
ローランデが剣を折ろうと狙いすましたのか。
それとも本当に、不運だったのか。
だって自分は、ローランデと戦ってなかった。
オーガスタスとディアヴォロスしか、脳裏に無かった。
ローフィスに言われても、無理無いと。
改めてディングレーは、こっそり落ち込んだ。
誰もが、背を向け席に戻って行くディングレーを、信じられず見つめる。
ディングレー自身も、何が起きたか今だ分からなかった。
席に座り、四年席のローフィスに振り向く。
が、ローフィスの横の大柄なオーガスタスが席から立ち上がり、遮られてローフィスが見えない。
ディアヴォロスに剣を教えて貰ったのは…とても幼い、幼年期の頃。
一族の集まりの場所で、ほんの少し。
ディアスもまだ年少で、愛らしい美少年だった。
けれどもうしっかりした体格で、年よりはうんと大人びて見えて。
剣の握り方。
振り方…。
そう、ほんの初心者向きの教授。
けど無理も無い。
それは二つか三つそこらの出来事。
大抵は四つになった頃、本格的な講師の教習が始まるのが決まり。
けれど殆どの「左の王家」の子供は、一族の集まりで年上の男の子達が剣を交えてるのを目にし、憧れてねだるのが常。
「どうやって、剣を振るの?」
けれど講師が付いた頃、ディアスはもうもっと上に行き、一族の集まりで悪戯に剣を振ることは少なくなっていた。
もっと大人びた顔付き。
その頃には「左の王家」の護り手、守護神ワーキュラスがディアスと共にあると。
一族中に知れ渡っていた。
それから…ディアヴォロスは遠い人になって行った。
会えば微笑んでくれる。
けれどいつも人に取り巻かれ、忙しくて…。
七歳になった頃、家に男の子が来た。
父の…愛人の息子。
けれど母を亡くして、城に引き取られた。
母はとっくに父に愛想尽かし、別居していたから。
ディングレーは
「お前の弟だ。
色々教えてやってくれ」
と父に託され、嬉しかった。
可愛い子だった。
愛らしくて綺麗で、そして素直で。
大事に、大事にした。
けれど離れの塔に住む滅多に会わない兄、グーデンが…ある日捕らえ、自室に連れ込み…。
ひどい、扱いをした。
ディングレーが兄の悪癖を目の当たりにしたのは、それが始めて。
けれど一度グーデンに酷く扱われて以来、ヴィオレットは…少年らに良く絡まれるようになった。
城の外の草地によく、遊びに行ってた。
けれど一度、体の大きな少年六人に絡まれ…。
ディングレーは思い返しても身が震う。
自分一人では取り返せなくて、目の前で…ヴィオレットは衣服を剥がされ、大勢に犯されそうになり…どれだけ叫んでも飛びかかっても、殴られて止められない。
王族の威光の届かぬ場所で、どれだけ自分の力が弱いか。
思い知らされる出来事だった。
助けてくれたのは…通りがかった、まだ少年のローフィス…。
自分と背は同じ位。
なのに遠くから
「よう!
お前ら、最低の卑怯者だな!!!」
そう叫んで、振り向く奴に石つぶてを投げる。
けれど腹に喰らった子は、一人、また一人と、身を折る。
ローフィスは石垣を飛び越えて姿を現し、目配せしてくれた。
突進して、ヴィオレットにのし掛かる少年を引き剥がし、泣くヴィオレットの、手を引いて逃げる。
目前を阻まれ、また殴られる!
目を閉じたけど、そいつは後ろに突然転ぶ。
ローフィスが横に滑り込んで、足を思いっきり、蹴って薙ぎ払ってた。
「とっとと逃げろ!」
ローフィスに言われ、ヴィオレットの手を引いて、走る。
追いつかれそうになった時。
ローフィスは振り向き、また石を投げる。
追っ手の腹を直撃し、追っ手は消えた…。
安全な場所へ、逃げ切った時。
ローフィスに言われた。
「お前、馬鹿か?
助けたかったら、少しはアタマ使え!
お前が助けなきゃ、最悪な目にあってたぞ?!」
そう…ローフィスにヴィオレットを目で指され、見るとヴィオレットは泣いていた…。
胸があれ程、痛んだことは無い。
城に帰った後、父にグーデンがヴィオレットにした事を話し、その後ヴィオレットは城を去り…それでも、安全な場所で男の子として、剣の訓練を始めてる。
そう父に聞き、安心し…。
あれは八つの誕生日、直後の出来事。
ヴィオレットを訪ねる事をせず、ひたすらローフィスの姿を探し求め、城から抜け出ては彼と会った。
ローフィスは…会いに行くと、ぶっきらぼうな態度と言葉で…けど自然に、受け入れてくれてそして…。
面倒、見てくれた。
それが妙に居心地良くて、ある日気づいた。
常に召使いに囲まれ、しょっ中大勢の人と会いながらもとても、孤独なのだと…。
だからローフィスやローフィスの父ディラフィス、そしてシェイルらと居る時が…泣きたいほど温かく感じ、大切で去りたくないんだと、思い知った。
以来、時間が空くとローフィスに、会いに行く。
城とは違い、質素で。
いつも居場所を変え、宿を変え…。
それでも、どんな場所でも、彼らの温かさは変わらない………。
数ヶ月後、とうとうローフィス達が居場所を決めて以来、ディングレーは彼らの小さな邸宅に、入り浸るようになった………。
オーガスタスが中央に立つ。
ディングレーは縋るように、ローフィスを見た。
ローフィスは気づき、険しい表情で
“油断するからだ!”
と、口だけ動かして言った。
ディングレーはしゅん。と項垂れ…横の負けた自分を気遣うデルアンダーの遠慮がちな視線を感じ、“素”になってる。
と気づき、慌てて王族の仮面を被る。
「…すまない」
威厳を含めた声音でそう、デルアンダーに告げると、デルアンダーは慌てて首を横に、振った。
「いえ…。
不運でした」
ディングレーは返答出来なかった。
だって未だに、なんで負けたのかが良く、分かってなかった。
ローランデが剣を折ろうと狙いすましたのか。
それとも本当に、不運だったのか。
だって自分は、ローランデと戦ってなかった。
オーガスタスとディアヴォロスしか、脳裏に無かった。
ローフィスに言われても、無理無いと。
改めてディングレーは、こっそり落ち込んだ。
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