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自分より実力が上の相手に、どうしても勝つ方法
しおりを挟むローフィスはランドルフと数度剣を交え、思う。
ランドルフの剣は重い。
マトモに受け続ければ、剣が折れるか腕が痺れるか。
どちらが先かは、分からなかった。
リーラスも消えたから、今決勝戦でも無いのにたったの一組で、注目受けまくってる。
…つまりすれ違い様、引っかかったと見せかけて足をかけて転ばす得意技なんて使ったら、たちどころに反則負け。
自分よりデカい男を転ばした、爽快感が残るだけ。
つまり足を使って揺さぶるしか無い。
がその時、ディングレーが叫ぶ。
「勝てよ!!!
あんたに50マール賭けてる!!!」
場内からどっっ!!!と笑いが湧く。
ローフィスは叫び返す。
「勝ったら俺にも半分寄越せ!」
ディングレーは即答した。
「勝ったらな!」
ローフィスは頷くと、真正面から突っ込むと見せかけて横に飛ぶ。
飛び様背後に回ると、片足で着地して飛び上がり、真上から剣を振り下ろす。
ランドルフは振り向く。
そして剣を持ち上げるから、ローフィスは直ぐ剣を下げて着地し、下に沈む。
ランドルフが剣を振り下ろす。
横に転がり直ぐ起き上がり、ランドルフが振りきったその時、真っ直ぐ腰に向けて剣を突き入れる。
今度は、ランドルフが避けて床に転がる。
ローフィスは追いかけて転がるランドルフに、剣を突き立てた。
ブツける直前にまた転がるから、突くのを止めて剣を上げる。
ランドルフの転がる先にまた、剣を突く。
ランドルフはまた、転がって避け、起き上がってくる気配無く、とうとうローフィスはまた、剣を突き刺しながら怒鳴る。
「逃げるなと人に言っといて、自分は逃げまくりか!!!」
「逃げてない!!!」
「俺に床突かせて、剣折ろうとか、思ってるだろう?!」
怒鳴ると、ランドルフはピタ。と転がるのを止め、すっ!と起き上がる。
ローフィスは剣下げて立ち上がるランドルフに、頷いて言った。
「その手には乗らん」
「…お前、面白味の無い男だな…」
「ディングレーが賭に勝たないと、俺の小遣いが増えない」
ランドルフは目を見開いた。
「お前、マジで俺に勝つ気でいるの?」
ローフィスは、頷く。
ランドルフは剣を下げたまま、柄を握り返して呟く。
「俺をペテンにかけるの、至難の業だぜ?」
ローフィスは頷く。
「お前も大概、ペテン師だしな」
ランドルフが剣を、持ち上げた。
「ペテン師はお前だ!
だが俺はお前のテを、知り尽くしてる!」
ローフィスより、頭半分高い背。
栗毛の巻き毛。
ヘイゼルの瞳の、割と顔のいい男。
以前はそこそこ金のある中流の、けっこう真面目な坊ちゃんだった。
が、ふとオーガスタスの悪友の一人が酒場に誘ったのがきっかけで、どんどん砕け…。
とうとう仲間になった。
以前はローフィスと肩並べてたが、背も伸び体格も良くなると、かなり荒っぽい事も平気でするように…。
元は結構真面目に剣の腕を磨いての入学だったから、正統派の剣士。
が、仲間として連むウチに、荒技にも引っかけにも精通するようになり…。
つまり相当、手強い。
で、ローフィスはもう…これしかない。
と、軽く剣を振り入れる。
カン!
ランドルフが弾く。
ローフィスは剣を弾かれるまま飛ばし、そこから一気に柄に力を込めて、振り込む。
しゅっ!
がっ!
ランドルフはまた、自分に届く前に弾く。
ローフィスは直ぐ斜め上に剣を引き上げると、再びランドルフ目がけ、振り込む。
がっ!!!
かん…かんかんかん…っ。
ランドルフは自分の剣先が、折れて床に転がる音を聞き、剣を振り切ったままの姿勢で、固まった。
反対にローフィスは剣を肩に担いで呟く。
「勝っちまったぜ…。
ディングレー!!!
賭け金、半分寄越せ!」
けどランドルフは、まだ固まった姿勢のまま。
ローフィスが振り向くと、ランドルフはすっ。と立ち、真顔で問い詰める。
「…お前今、何やった?」
「ナニって…剣の1カ所、狙い澄まして折った」
「…つまり俺に、剣を振ってたんじゃ無く…」
「そう。
お前の剣狙って、振ってた」
ランドルフは講師を見る。
講師は
「反則じゃ無い」
と言い返す。
ランドルフは“けど!”の代わりに、ローフィスを指指す。
講師は一つ、ため息吐いて気の毒げに言った。
「諦めろ」
ランドルフは無言で三年席へとだかだか歩き出し…。
そして、階段状の長椅子に座ってる、三年らの顔を見た途端、怒鳴った。
「あんなん、アリか!!!」
場内はそれで今までの静けさが突如破られ、皆一斉にざわめき出す。
「…あんな技、あるのか?」
「どう考えても普通の戦いじゃ、通用しないぞ?」
「『教練』の剣だから、折れるんであって!!!
普通は狙っても、剣は折れない!!!」
「もしかして…ローランデもやってないか?
その技」
「…でも一振りで剣が、折れるか?」
「…だよな………」
ローフィスが勝ち組、オーガスタスとユネックのいる列へとやって来ると、オーガスタスが声かけた。
「格好いい勝ち方じゃ無いな」
ユネックも、頷いて吐き捨てる
「…姑息な手を使いやがる」
ローフィスはそう嫌そうに呟く、ユネックの横に並んで、頷いた。
「自分より力も技も上の相手に、どうしても勝つとなったら、カッコ悪くてもあれしかない」
オーガスタスが、ため息交じりに告げた。
「お前そんなに小遣い不足してるのか?」
そしてローフィスの返答を待つ。
が、ローフィスは二年席のディングレーを見ていた。
ディングレーは背後の平貴族へ振り向き、賭けの取り分を受け取っていた。
金を差し出す平貴族は、めちゃくちゃ悔しそうだった。
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