若き騎士達の危険な日常

あーす。

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更なる騒動

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 残ったのは11名で、奇数だったのでオーガスタスが列から出された。

残り10名が五名ずつ向かい合う。

四年達がざわざわと囁き合う。
「…これだけ大貴族が最終に残らない学年も、珍しいよな」
「去年はもう少し、出てなかったか?」
「…平貴族に負ける不名誉に、耐えられないんだろう…」

二年らも、ざわめく。
「10人中で大貴族が、たったの一人だぜ?」
「…逆に、大貴族はほぼグーデンに組してるのに、組せずいるなんてエライ」
「…だな。
グーデン一味はあるじに習って、一斉に欠席だもんな」
「それに例え出たとしても、反則されて負けちゃ、やる気も無くなるよな…」
「…確かにこっちが真っ当に頑張ってんのに反則されると、アタマ来るよな」
そう呟いて、二年の大貴族らが一斉に首下げてるのを見て、一年達はつい注視してしまい、いけないものを見てしまったように、慌てて顔を背けた。

シェイルは五組と数が減って、やっとローフィスの対戦をゆっくり見ることが出来た。

が…。
ローフィスの向かいに来るのは、グーデン一味の平貴族ダランドステ。
竜のようなゴツい顔。
体格もかなりデカい。

ローフィスは一つ、ため息を吐いて顔を下げ、剣の具合を確かめる。

「始め!!!」
と講師が怒鳴ると、ローフィスは横のリーラスに腕を掴まれ、突然立ち位置を変えられて、対戦相手を見る。

相手はリーラス目がけて剣を振ろうとし、ローフィスに変わって突然剣を止め、目を見開く。
「…なんで可能だこんなことが!!!」
怒鳴った後、ローフィスも呆気にとられて隙だらけだと分かると、剣を振り切った。

「もらった!!!」

ローフィスは目を見開き、横にすっ飛んで避ける。
「逃げるな!」
ローフィスの対戦相手は剣を振りながら追いかけて来て、ローフィスは剣を、持ち上げる間もなく頭を下げては逃げ回る。

「…追いかけっこになってるぜ…」
「最終五組で、これか?」

四年の、呆れ声がシェイルの耳にも聞こえて、思わず拳を握ってローフィスを応援する。

が、ローフィスは場内を逃げ回り続ける。

ダランドステはローフィスをやっつけてやろうと剣を構えていたのに、突然リーラスに変わって剣を振られ、がつんがつん喰らって背を反らせて後ろに引かされ、歯を食い縛って耐えていた。

各学年の最前列を、走り回るローフィスは途中、転がる。
対戦相手は転がるローフィス目がけ、剣を振った。

がつん!
床に当たる。
がっつん!
またまた床を叩く。

そしてとうとう…がっっっカチン!

剣先が折れる。

普通はそこで、止める。
が、折れた剣先で、起き上がるローフィス目がけ、尚も剣を振る。

ローフィスは笑う。
「剣が縮んだから、届かないな!」
「ふざけやがって!」

カンッ!
とうとう剣を投げ捨て、ローフィスに飛びかかる。
ローフィスは慌てて背を向け、そして…横に飛んだ。

どったん!
今度、床に突っ込んだのは対戦相手。
が、起き上がると、立って見ているローフィス目がけ、また追いかけ始める。

講師らは追う気も失せて、腕組みして首を横に、振りまくってた。

ディングレーが見かねて二年最前列から立ち上がり、対戦相手の上級生の腕を掴んで、怒鳴る。
「負けたろう?!」
「放せ!
勝負に負けても喧嘩で勝ってやる!」

ディングレーが必死に腕を両腕で挟み込む。
相手は、引き抜こうと揺さぶる。

やっと講師がやって来て
「喧嘩は後でやれ!
お前は戻れ!!!」
と、背をどんっ!と押して対戦相手を、三年席へと強制的に促した。

ディングレーは顔を下げ、背を丸めてぜーぜー言い、講師に
「良くやった!」
とぽん。と背を叩かれた。

ディングレーは俯いたまま
「…試合より疲れる」
と呟き、去ろうとした講師に
「俺もだ」
と言われて、更にがっくり、顔を下げた。

見ていた一年は囁き合う。
「…王族も、三年が絡むと…」
「うん、なんか…笑える?」

ローランデがつい横のシェイルを見ると、シェイルが呟く。
「ホラ、あれが僕の知ってる、ディングレー」
ローランデは無言で、頷いた。


リーラスの猛攻が止んで、ダランドステは思いっきりリーラスに剣を振る。
リーラスは笑い、剣を斜めに傾け、受けた。

カンッ!!!
ダランドステの剣先が飛ぶ。

「てめぇ!!!計ったな!!!」
ダランドステまでもが、剣を捨ててリーラスに掴みかかる。
が、素早く逃げるリーラスと、追うダランドステの間に、オーガスタスが割って入った。

途端、自分より大きなオーガスタスの姿に、すくむダランドステ。

ダランドステより、顔一つ分高い背。
長いくねる赤毛は奔放に肩に背に跳ね、広い肩幅に広い胸。
引き締まりきった腹。
そしてとても長い、足。
顔はとても小顔だった。
が、鳶色の瞳が相手を見据え、時折光の加減で黄金きんに光る。

まさしく、赤い獅子を彷彿とさせる畏怖堂々とした、野性味溢れる立ち姿。

皆が、事実上学年筆頭オーガスタスのそのど・迫力に、目を見開く。

が、オーガスタスは朗らかに笑って言った。
「喧嘩なら俺が、相手になる」

ダランドステは唇を噛み、髪を振って背を向け、床に落ちた剣を拾い、肩を怒らせて三年席へと戻って行った。

リーラスは、自分を背に庇うオーガスタスにぼやく。
「別に助けて貰わなくても、俺はやれたぜ?」

オーガスタスは背後に振り向き、リーラスに眉下げて言った。
「庇ったのはお前じゃ無く、講師だ。
この試合で既に声枯らしてるし、疲れ果ててる。
まだこのあと四年の試合が控えてるのに、気の毒だろう?」

リーラスは、周囲で
『もうこんな騒ぎ、収めたくない』
と腕組みして顔下げてる講師らを見、ぶすっ垂れた。

「嘘でも、俺庇ったって言えよ!!!
友達甲斐の無いヤツだな!!!」
と怒り、オーガスタスは両手広げて
「助けるなと言ったのはお前だろう?
…どうしろってんだ」
とぼやいて、場内の皆の失笑を買った。

「オーガスタスってなんか…」
「うん。
体格凄すぎて怖いかと思ったら…」
「親しみ易いな!」
一年達は誰より高い背の、凄く体格良いオーガスタスの太陽を思わせる朗らかな笑顔を目にし、ほっとして囁き合った。

シェイルはローフィスを見る。
ローフィスは勝ち列…リーラスの横に並ぶ。

間もなく、相手の悪剣を技でねじ伏せた、唯一の大貴族ユネックが並ぶ。
そしてオーガスタスとローフィスの悪友ら、二人が勝ちを決めて、勝ち列に並んだ。

勝ったのは五人。
ここでようやくオーガスタスが、対戦に戻った。



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