若き騎士達の危険な日常

あーす。

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勝ち上がる者

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 シェイルとヤッケルの二人が中央を去っても、フィンスはまだドッデルフと戦っていた。

ぐらぐらの剣。
だから…一撃必殺しか、勝つ手は無い…。

ドッデルフはそういう意味では、油断していたのかもしれない。
フィンスはマトモに打ち合わない。
剣を振っても、剣が重なり合う直前で外し、避ける。

幾度も、幾度もフィンスは本気で振り込む気合いを見せ、だが寸止めして外して来る。

ドッデルフはもう、ひっかかるまい。
そう思いながらもつい、三度に一度はフィンスの気合いに引きずられ、剣を思い切りブツけ止めようと振り上げ…外されて振り切る。

が、フィンスは振られる剣を予想し、直ぐ一歩下がって避ける。

大振りすればフィンスの剣の餌食となる事を、熟知してるドッデルフは、直ぐフィンスの位置を確かめ、振った剣を戻し隙を消す。

その、繰り返しだがフィンスは諦めない。
足場を幾度も変えながら…フィンスは剣の不利を、気合いで埋めて来る。

とうとうドッデルフはフィンスより先に、攻撃に打って出る。
フィンスが避けられないように、剣を思い切り振り入れ始めた。

フィンスは剣筋を読み切って、避ける気配も無く、すっ…と振った先から姿を消す。

ドッデルフはとうとう本気でフィンスを仕留めようと、逃げる先を読んで、剣を振り始めた。

がギリギリ、フィンスの衣服を掠りながらも、フィンスは避けていく。

「(…これは?
これなら避けられまい!!!
くそ!今度こそとどめ!)」

ドッデルフは幾度もフィンスの逃げ場を塞ぐ。
囮の剣を振った後、直ぐフィンスが逃げる方向へと、剣を振り入れた。

がどれも、ギリギリで交わされ続け…。

それでも間を詰め、フィンスが避ける先、先へと、剣を振り入れ続ける。

凄まじい緊迫感の中。
一歩間違えばフィンスは討ち取られる。
その最中に、とうとうフィンスは吐息と共に剣を下げ、緊張感をふっ…。
と解く。
疲れた表情で。

その一瞬の隙を、ドッデルフは見逃さない。
思い切りフィンスの喉元目がけ、剣を突きつける!

が、寸止めしようとした瞬間、突いた先のフィンスの身が、ふっ…と下に、沈み、目を見開く。
“決まった!”
そう思ってただけに…。
思いっきり腕を伸ばして突き刺していた。

結果、動きを止めたのはドッデルフの方だった。

腕を伸ばし剣を突いた姿勢のまま。
真下から。

下に沈み前へと滑り、顎の下に寸止めの剣を突き刺した、フィンスにドッデルフは負けた。


ぅおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっ!!!

誰もがフィンスがもう、負けると思っていただけに。
目を疑い、そして熱狂的に叫んだ。

防戦一方に見えたフィンスの、逆転勝利。

皆、その見事な勝ちっぷりに、大歓声を送った。

フィンスは俯く。
確かにもう、剣は限界だった。

講師はフィンスに、寄って囁く。
「別に変えてもいい」

が、フィンスはここに来る前の、剣の専属講師に言われた言葉を思い出す。

『本当に強い男は、剣を変えず戦い続ける。
また、その男に賞賛と尊敬は集まる。
ただ、勝てばいいんじゃ無い。
どう、勝つかだ。
不利な剣でそれでも戦い抜き、勝利すればそれは、真の勝利。
教練キャゼ』の男達に真の英雄とあがめられる』

フィンスはそれを思い返し、講師に微笑む。
「ええ、分かってます。
けれど…これで行きます」

講師も微笑む。
「見上げた心意気だ」

フィンスは周囲をゆっくり、見回す。

上級らが叫んでた。

「凄かったぞ一年坊主が!」
「やるな!」
「大した根性だ!」

フィンスはほっ。
と吐息を吐く。

専属講師はこうも、言った。
『が、それは俺の時代。
お前が入った時でもまだ、その風潮なら剣を変えず戦うお前は英雄。
が、違えばお前は、勝利を不利な剣にこだわり、捨てる馬鹿。
場内の空気を読んで、どちらを選ぶか決めろ』

フィンスは微笑み…心の中で、専属講師に囁いた。

「(…変わってません。
貴方の居た時代と同じ。
不利な剣で戦う者を、ちゃんと賞賛してくれています)」

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