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学年無差別、剣の練習試合の繰り上げ
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どの宿舎でも朝食のまっただ中、講師が回って今日、剣の練習試合が行われると告げて回ったので、皆は蜂の巣をつつく騒ぎとなった。
誰もが慌てて朝食を終え、自室に戻って剣を振り回し、自身の剣のコンディションを確かめた。
一年だけは特別、講師が説明をして行った。
「明日の予定が一日繰り上がったため、三時間目の講習時間より開始する。
それまでは各自、練習場を自由に使える。
昼食は試合が長引けば、先延ばしになるかもしれない。
食べられそうなら、なるべく腹を膨らませておくことだ。
が、食べ過ぎると動けなくなるから要注意!
…通常は試合が終わった後、昼食を取る大食堂で宴会騒ぎだが、今回は延期。
校長の予定が立ち次第、夕食を全校生徒で取り、試合の疲労をねぎらう事となる!」
皆、ざわざわと練習場へと足を運ぶ。
ヤッケルはたまたま、目が覚めた後着替えを取りに戻り、それを聞いて二年宿舎につっ走った。
ディングレーは私室で使者からの手紙を受け取った。
ディアヴォロスからで、そこには
“アドラフレン暗殺”の知らせが来ても、動揺しないで剣の試合で立派な成績を残せ”
としたためられていて…愕然とした。
宮廷警護の長と言う、国にとっても大変重要な役職の第一候補者、アドラフレンが暗殺されれば…凄まじい騒ぎが巻き起こる。
どの貴族も浮き足立つ程の、大ニュースだった。
長が変われば、宮廷内の勢力図も変わる。
明日は没落と言う貴族も、少なからず現れる…。
そんな危機の為、試合も繰り上げられたのかと、ディングレーは推察した。
ヘタをすれば情勢が安定するまで、延期の憂き目に遭う。
そしていつ、安定するのか。
誰も先が読めない。
アドラフレンが没すれば、ディノス公が第一候補となる。
が、アドラフレンら一派は、アドラフレンが没すれば新たな対抗馬を担ぎ上げる…。
長は昔から、「左の王家」から選ばれていた。
つまりディングレーの父も、アドラフレンが亡くなれば、新たな対抗馬の勢力を確固としたものにするため、駆けずり回ってると思われた………。
が、ディングレーはディアヴォロスの文面より、直ぐ思い当たる。
「(…つまり詐欺師アドラフレンは、自分が死んだ事にして…暗殺する側を油断させ、ひっかける作戦中ってことか…)」
間もなく父からの使者で
『埋葬は宮廷護衛の長が決定するまで、延期となった。
グーデンは埋葬まで葬儀の館に居座り、試合には出ないから、見事な試合を見せて家名の栄誉を護れるのは、お前の肩にかかってる』
と脅してきた。
ディングレーはしばし、沈黙する…。
近衛に進むのに、この試合は大事。
例え負けても、立派な戦い様を見せることで、皆の尊敬を得られる。
またそれ無くしては、近衛ではやっていけない。
羊皮紙を眺めていると、ヤッケルが扉を開けて文字道理、転がり込む。
「け…剣の練習試合が、今日だってさっきそこで…!」
ディングレーはため息を吐き、羊皮紙から顔を上げる。
「転ぶなよ。
怪我すると試合で不利だ」
ヤッケルは顔を上げる。
「…試合中、シェイル、まだ…拉致される?」
ディングレーはため息吐く。
「試合が始まれば、試合場にいれば安全。
試合は三時限目からだろう?
それまではここで休ませる。
ローランデとフィンスに伝えてくれ。
ここに来るなら…あまり広く無いが、練習場もあるから、そこを使えと」
ヤッケルは目を見開き、頷き…そして、駆け出して行った。
ディングレーはその後、オーガスタスを覗いたが、昨夜割と遅かったのでまだ寝ていて。
むっつりと目を開け
「起こすな」
と呻かれた。
ディングレーはローフィスとシェイルの眠る寝室をも見た。
が…。
「(寝かせておこう…)」
と面倒事を避けるように、背を向けて朝食の、大貴族用食堂へと、歩き出した。
誰もが慌てて朝食を終え、自室に戻って剣を振り回し、自身の剣のコンディションを確かめた。
一年だけは特別、講師が説明をして行った。
「明日の予定が一日繰り上がったため、三時間目の講習時間より開始する。
それまでは各自、練習場を自由に使える。
昼食は試合が長引けば、先延ばしになるかもしれない。
食べられそうなら、なるべく腹を膨らませておくことだ。
が、食べ過ぎると動けなくなるから要注意!
…通常は試合が終わった後、昼食を取る大食堂で宴会騒ぎだが、今回は延期。
校長の予定が立ち次第、夕食を全校生徒で取り、試合の疲労をねぎらう事となる!」
皆、ざわざわと練習場へと足を運ぶ。
ヤッケルはたまたま、目が覚めた後着替えを取りに戻り、それを聞いて二年宿舎につっ走った。
ディングレーは私室で使者からの手紙を受け取った。
ディアヴォロスからで、そこには
“アドラフレン暗殺”の知らせが来ても、動揺しないで剣の試合で立派な成績を残せ”
としたためられていて…愕然とした。
宮廷警護の長と言う、国にとっても大変重要な役職の第一候補者、アドラフレンが暗殺されれば…凄まじい騒ぎが巻き起こる。
どの貴族も浮き足立つ程の、大ニュースだった。
長が変われば、宮廷内の勢力図も変わる。
明日は没落と言う貴族も、少なからず現れる…。
そんな危機の為、試合も繰り上げられたのかと、ディングレーは推察した。
ヘタをすれば情勢が安定するまで、延期の憂き目に遭う。
そしていつ、安定するのか。
誰も先が読めない。
アドラフレンが没すれば、ディノス公が第一候補となる。
が、アドラフレンら一派は、アドラフレンが没すれば新たな対抗馬を担ぎ上げる…。
長は昔から、「左の王家」から選ばれていた。
つまりディングレーの父も、アドラフレンが亡くなれば、新たな対抗馬の勢力を確固としたものにするため、駆けずり回ってると思われた………。
が、ディングレーはディアヴォロスの文面より、直ぐ思い当たる。
「(…つまり詐欺師アドラフレンは、自分が死んだ事にして…暗殺する側を油断させ、ひっかける作戦中ってことか…)」
間もなく父からの使者で
『埋葬は宮廷護衛の長が決定するまで、延期となった。
グーデンは埋葬まで葬儀の館に居座り、試合には出ないから、見事な試合を見せて家名の栄誉を護れるのは、お前の肩にかかってる』
と脅してきた。
ディングレーはしばし、沈黙する…。
近衛に進むのに、この試合は大事。
例え負けても、立派な戦い様を見せることで、皆の尊敬を得られる。
またそれ無くしては、近衛ではやっていけない。
羊皮紙を眺めていると、ヤッケルが扉を開けて文字道理、転がり込む。
「け…剣の練習試合が、今日だってさっきそこで…!」
ディングレーはため息を吐き、羊皮紙から顔を上げる。
「転ぶなよ。
怪我すると試合で不利だ」
ヤッケルは顔を上げる。
「…試合中、シェイル、まだ…拉致される?」
ディングレーはため息吐く。
「試合が始まれば、試合場にいれば安全。
試合は三時限目からだろう?
それまではここで休ませる。
ローランデとフィンスに伝えてくれ。
ここに来るなら…あまり広く無いが、練習場もあるから、そこを使えと」
ヤッケルは目を見開き、頷き…そして、駆け出して行った。
ディングレーはその後、オーガスタスを覗いたが、昨夜割と遅かったのでまだ寝ていて。
むっつりと目を開け
「起こすな」
と呻かれた。
ディングレーはローフィスとシェイルの眠る寝室をも見た。
が…。
「(寝かせておこう…)」
と面倒事を避けるように、背を向けて朝食の、大貴族用食堂へと、歩き出した。
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