若き騎士達の危険な日常

倒れるディアヴォロス

　アドラフレンは取引終了後、二人きりになった途端崩れ落ちるディアヴォロスの、身を支える。
「…どうすればいい?!」

アドラフレンの問いに、ディアスは苦しげに囁く。
「神聖騎士を…呼んでもらえるか？」

アドラフレンは頷く。
ディアヴォロスを長椅子に寝かせ、扉を開けて使者を呼び、叫ぶ。
「直ぐ、西の聖地に使者を！」

が、ディアスは囁く。
「それでは間に合わない。
神聖神殿隊付き連隊騎士を呼び、神聖神殿隊騎士から神聖騎士に、連絡を取ってもらってくれ…」

アドラフレンは神聖神殿隊付き連隊騎士が、この城にいる事を突然思い出す。
「ジャービスを直ぐ呼んでくれ！」

呼ばれた神聖神殿隊付き連隊騎士、ジャービスは、ペンダントを介して『光の民』の末裔、神聖神殿隊騎士の一人を、頭の中で呼び出す。

神聖神殿隊騎士のフードを被った姿が空間に浮かび上がり、騎士は用向きを尋ねようとし…。
ディアヴォロスとその中にさざめく光の、光竜ワーキュラスの姿を見つけ、ワーキュラスの指示を受けてつぶやく。
“直ぐ、神聖騎士をここに送ります”

アドラフレンはその神秘な様子を、息を飲んで見つめる。

ほんの僅かしか、待たなかった。

間もなく空間が光り、光の中から白地に金飾りの隊服を纏った、長身の“騎士の中の最高の騎士”と呼ばれる神聖騎士の、まばゆい姿が浮かび上がる。

彼がすっかり姿を現した後、光は彼の周囲を覆った。

長椅子に横たわるディアヴォロスを見つめ、直ぐ口を開く。

「…これは…突然強引に、力を使いましたね？」

ディアヴォロスは横たわったまま僅かに顔を起こし、頷く。

神々しい『光の王』の末裔、神聖騎士は、ディアヴォロスに手をかざす。

が、手だけでは無く、全身からの光が、眩いばかりに流れ込み、ディアヴォロスの全身を包み込む。

神聖騎士は光でディアヴォロスを包んだまま、アドラフレンに告げた。

「寝台に。
暫くは光っています。
けれど光が消えて暫く後、彼は目覚めるでしょう」

「傷は癒えていますか？」

アドラフレンの問いに神々しい神聖騎士は、にっこりと微笑む。
「幸い、大怪我はしていないので。
癒えています」

アドラフレンは、ほっとして頷いた。

が、神聖騎士は真顔で言った。
「厨房に、貴方の敵の手の者が潜んでいます。
直ぐ、食べ物を調べ…当分の食事は、ここでされてはいけません」

アドラフレンは、はっ！と顔を上げる。

ディノス公は、祖父ならず後継者の自分までをも、葬り去ろうとしていると気づいて。

「忠告、感謝いたします」

そう告げている間にもう、神聖騎士は光の中、その神々しい姿を微笑と共に消していく。

そしてすっかり光が消えた時。
そこには誰も居ず、アドラフレンは改めて…光の結界内で暮らしてる、『光の王』の末裔の偉大さに、頭こうべを垂れた。