若き騎士達の危険な日常

あーす。

文字の大きさ
上 下
57 / 171

怒鳴るヤッケル

しおりを挟む

 ヤッケルは風呂にシェイルを導く。
事情は何も知らなかった。

ただ…食堂にいたら、ローフィスが凄い勢いで二年、王族召使い用扉から出て、三年王族の召使い専用扉へ突っ込んで行ったと。
見た一人が、駆け込んで叫ぶ。

ローズベルタは良く姿を消していたし、ローズベルタがいない間はグーデンが狙うシェイルの話題で持ちきり。

グーデンは執拗で、ディングレーはシェイルを守り切れるのか?
の王族兄弟バトル話があちこちで囁かれていただけに。

シェイルの義兄、ローフィスが血相変えて走って行く姿は、目撃者の目を引いた。

ヤッケルはそれを聞いた途端、二階大貴族宿舎に駆け込んだ。

階段上は短い廊下でその先に、広い食堂があった。
けど一階大食堂と違い、テーブルは一つで椅子も家具も洒落ていて…。

食堂を囲んで扉が多数あり、各自の部屋に続いてるらしかった。

ヤッケルはどの扉にフィンスとローランデがいるのか。
首を振って探す。

「…探してるのは、ローランデ?フィンス?」
感じ良く聞かれて、ヤッケルはその落ち着き払った大貴族の割に素朴な感じの…同学年に振り向く。

“確か…シュルツ…だっけ?”

「フィンスは?」
ヤッケルが尋ねると、シュルツは微笑んで背後の緑の扉に振り向いた。

ヤッケルは直ぐ扉に飛びつき、ノックしまくる。
扉を開けたのはフィンスの召使い。

ヤッケルは…一般宿舎とはまるで違う、大貴族宿舎の敷居の高さを思い知らされた気がした。
が、フィンスの召使いだけあり、どう見ても平貴族の服装の自分に、態度を変えずにっこり優しく微笑む。

「ご主人様にご用ですか?
お名前を伺っても?」
「ヤッケル!」

彼は頷いて、扉を少し開けたまま、背後に下がりすぐフィンスが姿を現す。

覗き見た室内は深緑色を基調にした、落ち着いた部屋だったけれど、家具類はどう見ても高価で使い込んだ歴史を感じさせる。

ヤッケルはごくり。
と唾を飲み込む。が、出て来たフィンスはいつも出会う、優しげな笑顔と控えめな態度。
頼もしさを醸し出す、身分の差を見せつけないいいヤツだった。

「シェイル?」
そう聞かれて
「多分。
ローフィスがグーデンの部屋の召使い用扉へ突っ込んで行ったって」
「…王族私室は…特にグーデンの部屋はヤバくない?」

ヤッケルは目を見開いた。
「俺相手だから砕けてる?
口調」

フィンスは笑う。
「そうかもね。
ともかくディングレーの部屋に様子を伺いに行く?」
ヤッケルは頷き、フィンスはその後部屋を出て、ローランデ私室の扉をノックする。

やっぱり召使いが扉を開けてる。
チラと見えた室内は、銀が基調の淡い優しい色彩で、とても美しい部屋で…。
その趣味の良さにヤッケルはまた、ごくりと唾を、飲み込んだ。

「(…部屋からこうだから…タメ口聞けないはずだ…)」

ヤッケルは、ほんっとに貴族の端くれで。
屋敷は一応はデカいけど、農家みたいな茅葺かやぶき屋根で。
ボロで子だくさんの子供が、いつもそこら中を走り回り、どこかで誰かが泣いては、喧嘩しまくる騒がしい自宅を思い浮かべる。

兄や姉らが手に負えない妹や弟らの世話をし、いつも誰かが喋ってて、静けさとは無縁。
勿論、家具は傷だらけで、必ずどこかが壊れてた…。

ローランデが間もなく姿を現す。
慌てた様子で、乱れ髪で。
「ごめん。
シェイル、どうかした?!」

フィンスとヤッケルは部屋を出るローランデと一緒に。
とりあえず二年王族の私室へと出向く。

けど大貴族用の食堂には誰も居なくて。
ディングレーの私室をノックしそびれていた時。
みんなが厳しい顔で戻って来て。

一番迫力ある大貴族青年の腕の中に、シェイルがいて…。

泣いて…顔を伏せて…。

ローランデは顔を曇らせ、フィンスと一緒にヤッケルは思った。

「(…グーデンの王族私室から、奪還したんだ!!!)」

平貴族のヤッケルですら、その重大さは分かったし、フィンスの表情はいっぺんに、厳しくなった…。

王族私室は、迂闊に立ち入る事の出来ない…禁止区域。

ヘタをすれば処分で退校…。

だからグーデンは今度こそと。
私室にシェイルを閉じ込めたんだろう。


ちゃぽ…。
シェイルはまだ、ガウンを脱がない。
指先をお湯に浸けて、ぼんやり湯面を見つめてる。

ヤッケルはため息吐いた。
「俺の前で、脱ぐのが恥ずかしいとか言うなよ!!!
さっさと入らないと、俺の弟にいつもするように、ひん剥いて突っ込むぞ!!!」

シェイルはエメラルド色の大きな目を見開く。

「最も弟は、走り回るし捕まえようとすると、喜んで逃げまくるから。
ひっ捕まえて、強引に湯船に叩き込むが!!!」

シェイルはほうけた顔をした後、おずおずとガウンを脱ぐ。

その…恥ずかしげに脱ぐ様子が…初々しい色香に溢れてて…ヤッケルはまた、ため息吐いた。
「そんな風に、なよなよ脱ぐから!!!
グーデンは喜ぶんだ!!!
俺を見習え!!!
俺っくらい下品だったら、間違いなくグーデンに部屋から放り出された!!!」

シェイルはまたびっくりして、ヤッケルを見る。
そして…思わず頷いた。

「さっさと浸かれ!!!
風邪引くぞ!!!」

シェイルはやっぱり呆けた表情で。
それでもおずおずと、バスタブに浸かった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

短編エロ

黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。 前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。 挿入ありは.が付きます よろしければどうぞ。 リクエスト募集中!

甥の性奴隷に堕ちた叔父さま

月歌(ツキウタ)
BL
甥の性奴隷として叔父が色々される話

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

処理中です...