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堪えるローフィス
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デルアンダー
テスアッソン
シェイルはローフィスの手が…暖かい布で辱められた場所を拭いていくのを感じてやっと…落ち着きを少し、取り戻す。
「…ヤッケル。
顔を拭いてやってくれ」
そう告げると、戸口で室内を覗いてる顔の一つ。
ディングレーに振り向くと
「風呂…使わせてやってくれ」
と頼む。
ディングレーは直ぐ頷くと、背後の召使いに
「風呂の湯を足してくれ」
と頼む。
ローフィスは気づき、二度ディングレーに振り向く。
「お前の…一階の召使い専用入り口…」
「既に召使いが実家に使者を送って護衛を依頼し、護衛の男らはもう来て見張ってる。
狼藉者はもう入れない」
ローフィスは頷く。
「シェイルにそう言って、安心させる」
ディングレーは頷いて…ヤッケルに顔を拭かれながら、けれど切なげな視線をローフィスに向ける、シェイルを見た。
ローフィスはヤッケルにガウンを放り、ヤッケルは片手で受け取る。
シェイルに手渡し、代わりに羽織ってた上着をローフィスに放る。
ローフィスは飛んで来る上着を両手で受け取り、戸口で覗く顔を、見回す。
テスアッソンに見つめられ、デルアンダーが
「あ、私のです」
と名乗り出て、ローフィスに脱いだ上着を手渡された。
ローフィスは振り向くと、ヤッケルに
「シェイルを風呂に入れてやってくれるか?」
と聞き、ヤッケルは
「いいけど…」
と、シェイルを見た。
けれど泣き濡れたシェイルの美しいエメラルドの瞳は、ずっとローフィスに注がれていて…ローランデが見かねて、口を出す。
「シェイルはでも…貴方に側に居て欲しいんじゃないんですか?」
寝台から離れた室内にいるフィンスも、ローランデの提案にほっとした。
同意見だったから。
が、ローフィスは苦しげな表情で俯く。
デルアンダーがその顔を見て、助け船を出した。
「けどローフィス殿は…確かアバラに大怪我されてましたよね?」
ディングレーがため息吐く。
「ディアヴォロスが来て、癒して行ったから…グーデン私室に先に、乗り込めたんだ」
テスアッソンが、せっかく差し出した助け船が沈んで俯くデルアンダーを、慰めるように見た。
オーガスタスがディングレーを見る。
「ディアヴォロスがわざわざ王族の葬儀抜け出して、ほぼ面識無いローフィスを、癒したのか?」
ディングレーは俯く。
「俺を通じて、ローフィスの事は知ってる。
けどホラ…あんたやローフィスって…ディアヴォロスを別格扱いして、避けてるじゃ無いか。
あっちは…話そうとかしても、あんたら直ぐ、目前から逃げる」
デルアンダーやテスアッソン。
フィンスにローランデにまで見つめられたオーガスタスは、アタマ掻く。
「…だって…大抵会うのは全校生徒集う昼食時だろ?
あんだけ高貴な男が側に居ると…せっかくの食い物の味が分からない」
テスアッソンが、びっくりして尋ねる。
「貴方でも…緊張するんですか?」
オーガスタスは一級下の、彼からしたら小柄な大貴族を、ジロリと見た。
「…俺、でも?」
途端テスアッソンは、平貴族とはいえ大層長身で逞しい、事実上の三年筆頭に睨まれて、顔を下げる。
ローランデがそっと尋ねた。
「威厳があって、近寄り難いからですか?」
けれどデルアンダーもテスアッソンも。
オーガスタスにディングレーですら、上品そのもので、どこか常人離れしたローランデを見て、口を噤む。
ディングレーが、その場を取り繕うように言った。
「だが、嫌ってる訳じゃないんだろう?
避けてても」
オーガスタスは頷く。
「尊敬はしてる。
が、同じ人間に思えない」
デルアンダーとテスアッソンが頷く。
フィンスはそっと、立つようシェイルに促してるヤッケルに近寄ると
「オーガスタス殿ですら、ディアヴォロス様は苦手…。
君とローランデと同じだな」
と囁く。
ヤッケルは頷く。
「俺もローランデは、同じ人間だと思えない」
けれどヤッケルの言葉は全員に聞こえ、ヤッケルに同意するように、デルアンダーとテスアッソン。
更にディングレーまでが、同意して頷いた。
オーガスタスは頷くディングレーを見る。
「何でお前まで頷く。
お前、ディアヴォロスとはいとこだし。
幾ら北領地の大公子息のだろうが、お前は王族。
ローランデより位が高いじゃないか」
ローフィスがそれを聞いて、ため息吐いた。
「だがディングレーは、俺と居ると王族の威厳、無くなるだろう?
ローランデはシェイルやフィンス、ヤッケルと居ようが…常人離れした、気品溢れる貴公子のままだ」
全員が頷く中、ローランデだけが言った。
「確かにディングレー殿は見た目よりも話しやすいですけど…私は見た目も、話しやすくないですか?」
が、全員がローランデを見、揃って首を横に振るので…ローランデは顔を下げた。
けれどヤッケルが、ガウンを羽織ったシェイルをようやく立たせて連れてくると、全員が傷ついた小鳥のように不安げな、今では艶を纏ったシェイルの消沈した可憐な姿を見、一斉に同情で口を閉じた。
シェイルは室内にいる、立って俯いてるローフィスを、乞うように切なげな瞳で見つめる。
が、ローフィスは振り向かなかった。
シェイルはがっかりし…ヤッケルに支えられて浴室に向かう。
扉が閉まると、デルアンダーが囁いた。
「…私なら…あんな視線であんな…傷ついた美しい少年に見つめられたら…ほだされて何でも言うこと、聞きますけどね…」
全員が一斉にデルアンダーを見つめる中、デルアンダーは皆に問い返す。
「貴方方は違うんですか?」
テスアッソンは俯き、ディングレーも顔を下げて頷く。
「俺だってお前と同じだ」
フィンスも
「そうですよね」
と言い、ローランデだけが
「…どうしてローフィス殿は、シェイルに応えてあげないんですか?」
と直球で聞いた。
全員が、ローフィスを見つめる。
が、事情を知ってるオーガスタスだけが
「そりゃ兄貴として、あれだけの美形の弟を、強く逞しく育て上げたいと思うのは…愛情だ。
甘やかすだけが、愛じゃ無い」
が誰も納得せず、頷く者はいなかった。
テスアッソン
シェイルはローフィスの手が…暖かい布で辱められた場所を拭いていくのを感じてやっと…落ち着きを少し、取り戻す。
「…ヤッケル。
顔を拭いてやってくれ」
そう告げると、戸口で室内を覗いてる顔の一つ。
ディングレーに振り向くと
「風呂…使わせてやってくれ」
と頼む。
ディングレーは直ぐ頷くと、背後の召使いに
「風呂の湯を足してくれ」
と頼む。
ローフィスは気づき、二度ディングレーに振り向く。
「お前の…一階の召使い専用入り口…」
「既に召使いが実家に使者を送って護衛を依頼し、護衛の男らはもう来て見張ってる。
狼藉者はもう入れない」
ローフィスは頷く。
「シェイルにそう言って、安心させる」
ディングレーは頷いて…ヤッケルに顔を拭かれながら、けれど切なげな視線をローフィスに向ける、シェイルを見た。
ローフィスはヤッケルにガウンを放り、ヤッケルは片手で受け取る。
シェイルに手渡し、代わりに羽織ってた上着をローフィスに放る。
ローフィスは飛んで来る上着を両手で受け取り、戸口で覗く顔を、見回す。
テスアッソンに見つめられ、デルアンダーが
「あ、私のです」
と名乗り出て、ローフィスに脱いだ上着を手渡された。
ローフィスは振り向くと、ヤッケルに
「シェイルを風呂に入れてやってくれるか?」
と聞き、ヤッケルは
「いいけど…」
と、シェイルを見た。
けれど泣き濡れたシェイルの美しいエメラルドの瞳は、ずっとローフィスに注がれていて…ローランデが見かねて、口を出す。
「シェイルはでも…貴方に側に居て欲しいんじゃないんですか?」
寝台から離れた室内にいるフィンスも、ローランデの提案にほっとした。
同意見だったから。
が、ローフィスは苦しげな表情で俯く。
デルアンダーがその顔を見て、助け船を出した。
「けどローフィス殿は…確かアバラに大怪我されてましたよね?」
ディングレーがため息吐く。
「ディアヴォロスが来て、癒して行ったから…グーデン私室に先に、乗り込めたんだ」
テスアッソンが、せっかく差し出した助け船が沈んで俯くデルアンダーを、慰めるように見た。
オーガスタスがディングレーを見る。
「ディアヴォロスがわざわざ王族の葬儀抜け出して、ほぼ面識無いローフィスを、癒したのか?」
ディングレーは俯く。
「俺を通じて、ローフィスの事は知ってる。
けどホラ…あんたやローフィスって…ディアヴォロスを別格扱いして、避けてるじゃ無いか。
あっちは…話そうとかしても、あんたら直ぐ、目前から逃げる」
デルアンダーやテスアッソン。
フィンスにローランデにまで見つめられたオーガスタスは、アタマ掻く。
「…だって…大抵会うのは全校生徒集う昼食時だろ?
あんだけ高貴な男が側に居ると…せっかくの食い物の味が分からない」
テスアッソンが、びっくりして尋ねる。
「貴方でも…緊張するんですか?」
オーガスタスは一級下の、彼からしたら小柄な大貴族を、ジロリと見た。
「…俺、でも?」
途端テスアッソンは、平貴族とはいえ大層長身で逞しい、事実上の三年筆頭に睨まれて、顔を下げる。
ローランデがそっと尋ねた。
「威厳があって、近寄り難いからですか?」
けれどデルアンダーもテスアッソンも。
オーガスタスにディングレーですら、上品そのもので、どこか常人離れしたローランデを見て、口を噤む。
ディングレーが、その場を取り繕うように言った。
「だが、嫌ってる訳じゃないんだろう?
避けてても」
オーガスタスは頷く。
「尊敬はしてる。
が、同じ人間に思えない」
デルアンダーとテスアッソンが頷く。
フィンスはそっと、立つようシェイルに促してるヤッケルに近寄ると
「オーガスタス殿ですら、ディアヴォロス様は苦手…。
君とローランデと同じだな」
と囁く。
ヤッケルは頷く。
「俺もローランデは、同じ人間だと思えない」
けれどヤッケルの言葉は全員に聞こえ、ヤッケルに同意するように、デルアンダーとテスアッソン。
更にディングレーまでが、同意して頷いた。
オーガスタスは頷くディングレーを見る。
「何でお前まで頷く。
お前、ディアヴォロスとはいとこだし。
幾ら北領地の大公子息のだろうが、お前は王族。
ローランデより位が高いじゃないか」
ローフィスがそれを聞いて、ため息吐いた。
「だがディングレーは、俺と居ると王族の威厳、無くなるだろう?
ローランデはシェイルやフィンス、ヤッケルと居ようが…常人離れした、気品溢れる貴公子のままだ」
全員が頷く中、ローランデだけが言った。
「確かにディングレー殿は見た目よりも話しやすいですけど…私は見た目も、話しやすくないですか?」
が、全員がローランデを見、揃って首を横に振るので…ローランデは顔を下げた。
けれどヤッケルが、ガウンを羽織ったシェイルをようやく立たせて連れてくると、全員が傷ついた小鳥のように不安げな、今では艶を纏ったシェイルの消沈した可憐な姿を見、一斉に同情で口を閉じた。
シェイルは室内にいる、立って俯いてるローフィスを、乞うように切なげな瞳で見つめる。
が、ローフィスは振り向かなかった。
シェイルはがっかりし…ヤッケルに支えられて浴室に向かう。
扉が閉まると、デルアンダーが囁いた。
「…私なら…あんな視線であんな…傷ついた美しい少年に見つめられたら…ほだされて何でも言うこと、聞きますけどね…」
全員が一斉にデルアンダーを見つめる中、デルアンダーは皆に問い返す。
「貴方方は違うんですか?」
テスアッソンは俯き、ディングレーも顔を下げて頷く。
「俺だってお前と同じだ」
フィンスも
「そうですよね」
と言い、ローランデだけが
「…どうしてローフィス殿は、シェイルに応えてあげないんですか?」
と直球で聞いた。
全員が、ローフィスを見つめる。
が、事情を知ってるオーガスタスだけが
「そりゃ兄貴として、あれだけの美形の弟を、強く逞しく育て上げたいと思うのは…愛情だ。
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