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回復したローフィス
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その日授業が終わる度、ディングレーとその取り巻き達が現れては、次の講義室へと送り届けるため、教室の戸口でシェイルを出迎える。
その行列を、一年達は目を見開いて見つめた。
シェイルは恥ずかしかったけど、ローランデが微笑んでディングレーらに礼を言うのを聞いて、落ち着いた。
結局ローランデやフィンスらと一緒に、ディングレーのエスコートで次の教室に移動する。
木立の道を通る時、がさっ!
と音がして…木々の間に、グーデン護衛の三年の姿が見える。
シェイルがびくっ!とすると、ディングレーは落ち着き払い、大貴族の護衛らは威嚇するように睨み付けた。
結果、グーデン護衛は木立から、出ては来なかった。
そんな…光景が何度かあって、ディングレーも
「奴ら隙をうかがってるな…」
と呻いたものの、一度もディングレーの前に立ち塞がる様子も無く、結局全ての授業を終えて、一年宿舎前でローランデとフィンスに別れを言い、後から仲間と来るヤッケルにもシェイルは礼を言い…ディングレーとその取り巻きらと一緒に、二年宿舎のディングレー私室へと、戻って行った。
シェイルが待ちかねた様に、奥部屋のローフィスの元に駆けつける。
けど…ローフィスは死んだように眠っていて、シェイルは不安になって少し、揺すってみる。
がローフィスは、目覚める様子も無い。
シェイルはびっくりして、必死にローフィスを揺する。
ディングレーが後から奥部屋の扉を開け、泣き出しそうな表情でローフィスを揺するシェイルの、細い肩に手を乗せて囁く。
「ディアヴォロスが来て、癒して行ったらしいから…」
けれど揺すってもピクリとも動かないローフィスに半狂乱のシェイルは、涙を溜めた瞳を背後のディングレーに向ける。
その時、ローフィスが目をうっすらと開け
「…どうか…したのか?」
とつぶやく。
シェイルは嬉しくって、目を輝かせてローフィスを見た。
そのあと、ローフィスが何でも無いように上半身を起こすのを見て、ディングレーもシェイルも目を見開いた。
「…何か、やたら寝たな…。
まだ眠気で…」
けれどディングレーとシェイルが目を、まん丸に見開いてるのを見て、ふと上半身起こしてる自分に気づく。
「…あれ…?」
次にローフィスは、左右に上体を軽く捻る。
「…痛くない」
その後思いっきり、左右に捻ってようやく。
「いてっ!」
ディングレーはため息吐くと、言った。
「ディアヴォロスが。
軽く癒したけど、完治はしてないから、無茶はしないように。
と召使いに言い残して言ったそうだ。
だから…動くな」
ローフィスはディングレーにそう言われて、何か言いたげだったけど、素直に頷く。
ディングレーも頷き返して言った。
「食事はここに運ばせる。
シェイルの分も」
シェイルはその言葉に頷き、嬉しそうな顔をローフィスに向けた。
「良かった!
少しも動かないから、死んでるのかと思った!」
とてもはしゃいでそう言って、ローフィスに
「勝手に殺すな」
とぼそりと言われ、それでもにこにこと、とても嬉しそうに笑った。
ディングレーは部屋を出ると、今日一日、自分に付き合ってシェイルの送り迎えをしてくれた大貴族らと、夕食を共にすると召使いに告げ、シェイルとローフィスの分は彼らの部屋に用意するよう、言い含めた。
召使いは頷き
「お風呂は…」
と言いかけ、ディングレーは
「俺は食後でいいから、先にシェイルに使わせろ」
と命じた。
召使いがノックし
「ディングレー様が、シェイル様に先にお風呂を、と」
と伝え、シェイルは
「もう少ししたら使わせて貰います」
と返事した。
シェイルはローフィスに、思いっきり抱きつく。
「これ、痛い?!」
ローフィスは華奢なシェイルに両腕回して抱きつかれ、温もりを感じながら囁く。
「いや…」
「じゃ、これは?!」
シェイルはもっと…きつく抱きついた。
朝までは、こんな風に抱きつくと、ローフィスは凄く痛そうにしていたから、そっ…と顔を上げてローフィスの様子を伺う。
ローフィスは、微笑っていた。
「…痛くない」
「ホント?!
ほんとに…ホント?!」
「ほんとにホント」
「…ディアヴォロスが…来たの?」
「ああ…昼前だったかな…。
これなら諦めてた数日後の剣の試合も、出られるな…」
シェイルはむくれた。
「それが、嬉しいの?!」
ローフィスは…その時突然、なんでディアヴォロスが治してくれたか。
はっきりと会話を思い出して、頬を赤らめた。
けどノックの音がして、召使いが告げる。
「お風呂の準備が出来ました」
ローフィスが
「シェイル、お前さ…」
そう、ディアヴォロスとのいきさつを尋ねようと、口火を切った時。
シェイルは召使いに振り向き
「今行きます!」
と返事をし、そして…ローフィスに、笑って言った。
「剣の試合が近いせいか、剣の授業が多くって…。
今日はヤッケルといっぱい剣を振ったから、凄く汗かいたんだ!
待ってて。
直ぐ…いい匂いにして来る!」
そう寝台から跳ね退いて、戸口に向かいながら聞く。
「ここのお風呂、ローフィスも入った?
凄く良い香りの香料がいっぱいあるよね?」
ローフィスは頷く。
「ああ…召使いはかなりな数を用意してるのに、ディングレーは一番控えめなのしか使わないって、文句聞かされ…」
けれどもう、扉は開いてシェイルの姿は消えていた。
ローフィスはため息を吐くと、そろり…と寝台を出てみる。
痛みは消えていて、支えなく歩ける。
ローフィスはまた、ため息を吐いた。
「(…つまり激しく動かなければ痛まない程度に…治ってる訳か)」
それでローフィスは色々あちこち体を傾けてみて…どの程度動けば痛むのかを、試し続けた。
シェイルはローフィスが元気になって、ウキウキでディングレーの豪華な浴室に入る。
衣服を脱いで大きな陶器のバスタブに浸かり、ほっ…と吐息を吐いた。
不思議だったけど、どうしてディアヴォロスが来たのかも分からなかったけど…。
でもローフィスが、痛まなくてすごく、嬉しかった。
けどその時、召使いが出入りする側の戸が、そっ…と開いた。
シェイルは微笑んで告げる。
「お湯加減は、大丈夫…凄く気持ちいいです」
そう声をかけたけど…開いた戸から姿を現した人物が、長身で銀髪で…。
「?」
不審に思った時、さっ!と男は入って来る。
その男を見て、シェイルは反射的にバスタブから立ち上がり、悲鳴を上げかけた。
アルシャノンは素早くシェイルの腕を掴むと、一気に引き寄せ悲鳴を上げられる前に、手で口を塞いだ。
その行列を、一年達は目を見開いて見つめた。
シェイルは恥ずかしかったけど、ローランデが微笑んでディングレーらに礼を言うのを聞いて、落ち着いた。
結局ローランデやフィンスらと一緒に、ディングレーのエスコートで次の教室に移動する。
木立の道を通る時、がさっ!
と音がして…木々の間に、グーデン護衛の三年の姿が見える。
シェイルがびくっ!とすると、ディングレーは落ち着き払い、大貴族の護衛らは威嚇するように睨み付けた。
結果、グーデン護衛は木立から、出ては来なかった。
そんな…光景が何度かあって、ディングレーも
「奴ら隙をうかがってるな…」
と呻いたものの、一度もディングレーの前に立ち塞がる様子も無く、結局全ての授業を終えて、一年宿舎前でローランデとフィンスに別れを言い、後から仲間と来るヤッケルにもシェイルは礼を言い…ディングレーとその取り巻きらと一緒に、二年宿舎のディングレー私室へと、戻って行った。
シェイルが待ちかねた様に、奥部屋のローフィスの元に駆けつける。
けど…ローフィスは死んだように眠っていて、シェイルは不安になって少し、揺すってみる。
がローフィスは、目覚める様子も無い。
シェイルはびっくりして、必死にローフィスを揺する。
ディングレーが後から奥部屋の扉を開け、泣き出しそうな表情でローフィスを揺するシェイルの、細い肩に手を乗せて囁く。
「ディアヴォロスが来て、癒して行ったらしいから…」
けれど揺すってもピクリとも動かないローフィスに半狂乱のシェイルは、涙を溜めた瞳を背後のディングレーに向ける。
その時、ローフィスが目をうっすらと開け
「…どうか…したのか?」
とつぶやく。
シェイルは嬉しくって、目を輝かせてローフィスを見た。
そのあと、ローフィスが何でも無いように上半身を起こすのを見て、ディングレーもシェイルも目を見開いた。
「…何か、やたら寝たな…。
まだ眠気で…」
けれどディングレーとシェイルが目を、まん丸に見開いてるのを見て、ふと上半身起こしてる自分に気づく。
「…あれ…?」
次にローフィスは、左右に上体を軽く捻る。
「…痛くない」
その後思いっきり、左右に捻ってようやく。
「いてっ!」
ディングレーはため息吐くと、言った。
「ディアヴォロスが。
軽く癒したけど、完治はしてないから、無茶はしないように。
と召使いに言い残して言ったそうだ。
だから…動くな」
ローフィスはディングレーにそう言われて、何か言いたげだったけど、素直に頷く。
ディングレーも頷き返して言った。
「食事はここに運ばせる。
シェイルの分も」
シェイルはその言葉に頷き、嬉しそうな顔をローフィスに向けた。
「良かった!
少しも動かないから、死んでるのかと思った!」
とてもはしゃいでそう言って、ローフィスに
「勝手に殺すな」
とぼそりと言われ、それでもにこにこと、とても嬉しそうに笑った。
ディングレーは部屋を出ると、今日一日、自分に付き合ってシェイルの送り迎えをしてくれた大貴族らと、夕食を共にすると召使いに告げ、シェイルとローフィスの分は彼らの部屋に用意するよう、言い含めた。
召使いは頷き
「お風呂は…」
と言いかけ、ディングレーは
「俺は食後でいいから、先にシェイルに使わせろ」
と命じた。
召使いがノックし
「ディングレー様が、シェイル様に先にお風呂を、と」
と伝え、シェイルは
「もう少ししたら使わせて貰います」
と返事した。
シェイルはローフィスに、思いっきり抱きつく。
「これ、痛い?!」
ローフィスは華奢なシェイルに両腕回して抱きつかれ、温もりを感じながら囁く。
「いや…」
「じゃ、これは?!」
シェイルはもっと…きつく抱きついた。
朝までは、こんな風に抱きつくと、ローフィスは凄く痛そうにしていたから、そっ…と顔を上げてローフィスの様子を伺う。
ローフィスは、微笑っていた。
「…痛くない」
「ホント?!
ほんとに…ホント?!」
「ほんとにホント」
「…ディアヴォロスが…来たの?」
「ああ…昼前だったかな…。
これなら諦めてた数日後の剣の試合も、出られるな…」
シェイルはむくれた。
「それが、嬉しいの?!」
ローフィスは…その時突然、なんでディアヴォロスが治してくれたか。
はっきりと会話を思い出して、頬を赤らめた。
けどノックの音がして、召使いが告げる。
「お風呂の準備が出来ました」
ローフィスが
「シェイル、お前さ…」
そう、ディアヴォロスとのいきさつを尋ねようと、口火を切った時。
シェイルは召使いに振り向き
「今行きます!」
と返事をし、そして…ローフィスに、笑って言った。
「剣の試合が近いせいか、剣の授業が多くって…。
今日はヤッケルといっぱい剣を振ったから、凄く汗かいたんだ!
待ってて。
直ぐ…いい匂いにして来る!」
そう寝台から跳ね退いて、戸口に向かいながら聞く。
「ここのお風呂、ローフィスも入った?
凄く良い香りの香料がいっぱいあるよね?」
ローフィスは頷く。
「ああ…召使いはかなりな数を用意してるのに、ディングレーは一番控えめなのしか使わないって、文句聞かされ…」
けれどもう、扉は開いてシェイルの姿は消えていた。
ローフィスはため息を吐くと、そろり…と寝台を出てみる。
痛みは消えていて、支えなく歩ける。
ローフィスはまた、ため息を吐いた。
「(…つまり激しく動かなければ痛まない程度に…治ってる訳か)」
それでローフィスは色々あちこち体を傾けてみて…どの程度動けば痛むのかを、試し続けた。
シェイルはローフィスが元気になって、ウキウキでディングレーの豪華な浴室に入る。
衣服を脱いで大きな陶器のバスタブに浸かり、ほっ…と吐息を吐いた。
不思議だったけど、どうしてディアヴォロスが来たのかも分からなかったけど…。
でもローフィスが、痛まなくてすごく、嬉しかった。
けどその時、召使いが出入りする側の戸が、そっ…と開いた。
シェイルは微笑んで告げる。
「お湯加減は、大丈夫…凄く気持ちいいです」
そう声をかけたけど…開いた戸から姿を現した人物が、長身で銀髪で…。
「?」
不審に思った時、さっ!と男は入って来る。
その男を見て、シェイルは反射的にバスタブから立ち上がり、悲鳴を上げかけた。
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