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ヤッケルの安堵
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ヤッケルは一年宿舎に戻る。
ローランデとフィンスは二階大貴族宿舎に戻り…夕食の為、食堂に行く。
ローズベルタもいて、振り向いて見られたけど…ふい。
と背を向けられて無視。
ヤッケルは顔を下げて、クス…と笑う。
あいつ…ローズベルタ。
四年シャンクらに言いつけたけものの結果、ディングレーは二級下ながら王族の気迫で引かず…沈められなかったから、もしディングレーに言いつけられたら。
…って怖くて、デカい面できないんだ。
ヤッケルはそう思い、手招きする気安い友の横にトレーを置いて座る。
「どう思う?」
突然言われて首を振る。
「ローランデさ!
フィンスとどっちが強い?!」
「今日のフィンス、凄かったよな!」
「けどさ。
『教練』の試合は剣が折れたら負けだろ?
強いヤツでも、最終前に同じ強いヤツと対戦だと、そこで剣が折れて終わり。
って事もあるらしいぜ?」
「運が無ければダメか…」
「逆にヘタな相手ばっかとやって、剣の消耗少ないと、大して強く無くても最終に残るってさ!」
ヤッケルはそれを聞いて呟く。
「…もしくはよほど…卓越してるか」
言った後、テーブルの全員に見つめられ、ヤッケルは呆けた。
一人が、そっと口開く。
「…ローランデってさ…」
「うん、あの勝ち方…」
「…強いのかな?」
「…態度は流石だよな?
三年相手でも全然余裕」
「でも嫌味無いぜ」
「ごっついヤツはさ、拍子抜けするよな」
「凄く品が良くて?」
ヤッケルはまた一斉にしゃべり出す、仲間を見つめる。
“ローランデは多分…別格”
そうは感じたけど…確信が無かったから、黙った。
食事の後、みんなと共同浴場に出かける。
屋外の、だだっ広い温泉。
冬は走って帰らないと、温まった体も冷える程の距離。
わいわい言いながら、裸になって飛び込む。
「シェイルってさ…いつかここに来るのかな?」
誰かが言うと、みんなもぞ…とし出した。
ヤッケルは意識する仲間に言った。
「裸見たらお前らだって、シェイルも自分らとおんなじモン付いてるって、安心するぜ?」
「だけど男の子だってさ…。
色っぽいと…なぁ?」
「なぁ?」
「何が『なぁ』だ」
ヤッケルが突っ込むと皆、顔を見合わせる。
「俺最近、ちょっと…なダケで勃つ」
「俺も」
「ヤッケルお前、シェイルといて良く平気だな?」
何気にヤッケルはみんなの顔を見て、問う。
「…シェイル見て、勃つのか?」
「裸も見てないし、まだだけど」
「俺はこの間勃った」
「実は俺も」
それを聞いて、ヤッケルはため息交じりに忠告する。
「…シェイルに襲いかかったら、ディングレーかオーガスタスに顎割られるぜ。
強烈に、痛いだろうな…。
勃ったらそれ、思い出せ」
言われた子は、湯の中の自分のムスコを覗き込む。
「…一発でしぼむな」
「………うん」
「画期的だろ?」
ヤッケルに問われて、『勃った』組は首をがっくり落とした。
わいわい喋りながら、部屋に戻る。
シェイルのベットは空。
けれど…今日、シェイルは笑った。
ヤッケルは思い浮かべ、枕を抱き込んで思う。
“うん。
お前、笑ってる方がいい”
そして…あの時のことを思い出す。
ローフィスに怒鳴られ…駆け出し…。
オーガスタスの居場所を探し、見つけられなくて気が狂いそうになった時。
フィンスとローランデに出会って、そして四年の教室を一緒に探し…。
二人がいなかったら、オーガスタスを探し出せなかった。
剣の授業中のオーガスタスに、教室の戸口で叫ぶ。
オーガスタスは直ぐ剣を放り出して駆け出し…そしてリーラスも、他の三年三人も。
ローランデとフィンスも後から来たけど、みんなオーガスタスに置いて行かれた。
オーガスタスに、ちょっと場所を説明しただけなのに。
オーガスタスは間違えず…真っ直ぐあの小屋へ駆けていった。
逞しい…頼もしい背中が、遙か遠ざかり、道を知ってるヤッケルはローランデとフィンスを置き去りにしてでも、必死に駆け続けた…。
そして…。
真っ先に飛び込むオーガスタス…。
リーラスも三人も飛び込み、その暫く後にやっと、辿り着いた時。
殴られようとするローフィスを見、息切れを押して決死でダッシュした。
力の限り飛んで…ぶつかり、阻止した…。
ヤッケルはそれを思い出すと、笑った。
それが出来て。
凄く、嬉しかった。
殴られた腹はその後、ちょくちょく痛んだけど。
見ると打ち身のアザで真っ黒になってて。
今はもう殆ど無い…。
僅かに黒いだけ。
ヤッケルはその夜、シェイルの笑顔を抱いて寝た。
良かったな。ローフィス…。
怪我した甲斐が、あったな。
見ろよシェイル、笑ってる…。
夢の中でローフィスにそう言うと、夢の中のローフィスは笑った。
本当に、嬉しそうに。
寝てるヤッケルの、寝顔も笑顔。
シェイルを守ろうと必死になるみんなの顔が、笑顔で次々脳裏に浮かんだ。
『そう…きっと、大丈夫…。
シェイルは、大丈夫だ』
ヤッケルは夢の中でそう思いながら、深い眠りに就いた。
ローランデとフィンスは二階大貴族宿舎に戻り…夕食の為、食堂に行く。
ローズベルタもいて、振り向いて見られたけど…ふい。
と背を向けられて無視。
ヤッケルは顔を下げて、クス…と笑う。
あいつ…ローズベルタ。
四年シャンクらに言いつけたけものの結果、ディングレーは二級下ながら王族の気迫で引かず…沈められなかったから、もしディングレーに言いつけられたら。
…って怖くて、デカい面できないんだ。
ヤッケルはそう思い、手招きする気安い友の横にトレーを置いて座る。
「どう思う?」
突然言われて首を振る。
「ローランデさ!
フィンスとどっちが強い?!」
「今日のフィンス、凄かったよな!」
「けどさ。
『教練』の試合は剣が折れたら負けだろ?
強いヤツでも、最終前に同じ強いヤツと対戦だと、そこで剣が折れて終わり。
って事もあるらしいぜ?」
「運が無ければダメか…」
「逆にヘタな相手ばっかとやって、剣の消耗少ないと、大して強く無くても最終に残るってさ!」
ヤッケルはそれを聞いて呟く。
「…もしくはよほど…卓越してるか」
言った後、テーブルの全員に見つめられ、ヤッケルは呆けた。
一人が、そっと口開く。
「…ローランデってさ…」
「うん、あの勝ち方…」
「…強いのかな?」
「…態度は流石だよな?
三年相手でも全然余裕」
「でも嫌味無いぜ」
「ごっついヤツはさ、拍子抜けするよな」
「凄く品が良くて?」
ヤッケルはまた一斉にしゃべり出す、仲間を見つめる。
“ローランデは多分…別格”
そうは感じたけど…確信が無かったから、黙った。
食事の後、みんなと共同浴場に出かける。
屋外の、だだっ広い温泉。
冬は走って帰らないと、温まった体も冷える程の距離。
わいわい言いながら、裸になって飛び込む。
「シェイルってさ…いつかここに来るのかな?」
誰かが言うと、みんなもぞ…とし出した。
ヤッケルは意識する仲間に言った。
「裸見たらお前らだって、シェイルも自分らとおんなじモン付いてるって、安心するぜ?」
「だけど男の子だってさ…。
色っぽいと…なぁ?」
「なぁ?」
「何が『なぁ』だ」
ヤッケルが突っ込むと皆、顔を見合わせる。
「俺最近、ちょっと…なダケで勃つ」
「俺も」
「ヤッケルお前、シェイルといて良く平気だな?」
何気にヤッケルはみんなの顔を見て、問う。
「…シェイル見て、勃つのか?」
「裸も見てないし、まだだけど」
「俺はこの間勃った」
「実は俺も」
それを聞いて、ヤッケルはため息交じりに忠告する。
「…シェイルに襲いかかったら、ディングレーかオーガスタスに顎割られるぜ。
強烈に、痛いだろうな…。
勃ったらそれ、思い出せ」
言われた子は、湯の中の自分のムスコを覗き込む。
「…一発でしぼむな」
「………うん」
「画期的だろ?」
ヤッケルに問われて、『勃った』組は首をがっくり落とした。
わいわい喋りながら、部屋に戻る。
シェイルのベットは空。
けれど…今日、シェイルは笑った。
ヤッケルは思い浮かべ、枕を抱き込んで思う。
“うん。
お前、笑ってる方がいい”
そして…あの時のことを思い出す。
ローフィスに怒鳴られ…駆け出し…。
オーガスタスの居場所を探し、見つけられなくて気が狂いそうになった時。
フィンスとローランデに出会って、そして四年の教室を一緒に探し…。
二人がいなかったら、オーガスタスを探し出せなかった。
剣の授業中のオーガスタスに、教室の戸口で叫ぶ。
オーガスタスは直ぐ剣を放り出して駆け出し…そしてリーラスも、他の三年三人も。
ローランデとフィンスも後から来たけど、みんなオーガスタスに置いて行かれた。
オーガスタスに、ちょっと場所を説明しただけなのに。
オーガスタスは間違えず…真っ直ぐあの小屋へ駆けていった。
逞しい…頼もしい背中が、遙か遠ざかり、道を知ってるヤッケルはローランデとフィンスを置き去りにしてでも、必死に駆け続けた…。
そして…。
真っ先に飛び込むオーガスタス…。
リーラスも三人も飛び込み、その暫く後にやっと、辿り着いた時。
殴られようとするローフィスを見、息切れを押して決死でダッシュした。
力の限り飛んで…ぶつかり、阻止した…。
ヤッケルはそれを思い出すと、笑った。
それが出来て。
凄く、嬉しかった。
殴られた腹はその後、ちょくちょく痛んだけど。
見ると打ち身のアザで真っ黒になってて。
今はもう殆ど無い…。
僅かに黒いだけ。
ヤッケルはその夜、シェイルの笑顔を抱いて寝た。
良かったな。ローフィス…。
怪我した甲斐が、あったな。
見ろよシェイル、笑ってる…。
夢の中でローフィスにそう言うと、夢の中のローフィスは笑った。
本当に、嬉しそうに。
寝てるヤッケルの、寝顔も笑顔。
シェイルを守ろうと必死になるみんなの顔が、笑顔で次々脳裏に浮かんだ。
『そう…きっと、大丈夫…。
シェイルは、大丈夫だ』
ヤッケルは夢の中でそう思いながら、深い眠りに就いた。
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