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二年王族私室の豪華さ
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シェイルは二年ディングレーの大貴族宿舎があんまり…豪華で、ついキョロキョロと見回す。
同様、ヤッケルもが。
ディングレーが奥の客室にローフィスを無事寝かせ、寝台横に詰めて酒の隠し場所をローフィスから聞き出すオーガスタスに、その場を任せて応接室に戻って来る。
ヤッケルとシェイルがキョロキョロしてるのを目にし、途端俯く。
シェイルは…剣を教えてくれるため、自分の質素な屋敷に通っていたディングレーと…戸口に姿を見せたディングレーは、確かに同じに見えたのに。
室内のあまりの豪華さに、気後れして俯く。
壁紙は手の込んだ模様が入り、至る所に優美な彫刻が刻まれ。
調度品も全て彫刻が施され…ランプスタンドに至っては、幾つも宝石がはめ込まれてる。
ソファの枠にも全て彫刻が入り、布は…豪華な刺繍入り。
タンスやテーブルは全て金で、色味は僅か。
目が金でチカチカする程、アクセントが金色だらけの部屋だった。
ディングレーはまだ見回す、ヤッケルに言った。
「…やっぱりか?
学年が変わり宿舎も変わったばかりで…これは全部、執事の趣味だ。
これっくらい飾らないと、王家の威光は保てないと。
親父に言い含められて…と、ヤツは言ってるが、グーデンとこの執事に
『貴方のご主人は、身分の割にたいそう質素で…』
と嫌味言われて対抗意識、燃やした結果だ。
ほとぼりがさめたら…金綺羅家具は全部、倉庫用の余り部屋にしまう」
そう項垂れるディングレーを、シェイルは顔を上げて見る。
ヤッケルはひょい!と、宝石付きの金の蝋燭スタンドを持ち上げ、じっと見て頷く。
「これなんて、簡単に盗まれるぜ」
フィンスが遅れて奥部屋から出て来て、呟く。
「…だから大貴族宿舎には、一般宿舎の者が簡単に、入れないようになってるんです。
王族の私室なんて…例え同じ大貴族宿舎にいたって、なかなか入れて貰えないって聞きました」
ディングレーは、フィンスを見て言い淀む。
「…確かに、なかなか人は入れないが…」
オーガスタスが出て来て、戸惑うディングレーを見る。
「お前の場合、地が出て根は庶民ってバレると、お前をあがめ奉ってるここの取り巻き大貴族らに軽蔑されるから。
それが怖くて体裁保つ為、地のまんまでいる室内には、極力入れないんだろう?」
ヤッケルは、目を見開く。
「そうなの?!」
シェイルはほっとした様子。
「じゃ、昔のディングレーのままなんだ」
「俺は俺だぜ?
正直こんなに金綺羅だと、誰だって落ち着かないよな?
汚すと召使いに睨まれるし。
部屋って普通、来客に『俺は王族だ』って威張るためにあるんじゃ無く、俺が寛げるためにあるんじゃ無かったっけ?」
ぷっ…。
とうとうオーガスタスが吹き出し
「ローフィスに、くっついて回るはずだ」
そう笑いながら、部屋を出て行った。
が、直ぐ扉が開いて、オーガスタスは顔だけ出して言い含める。
「ローフィスに、絶対無茶させるな。
三年宿舎なら俺が、担いででも動き回るの、阻止するからお前も見習え」
バタン…………。
フィンスは固まる年上王族のディングレーを、こそっ…と見て、囁く。
「ちょっとしかローフィスより背が高くないのに…担ぐの、無理ですよね?」
ディングレーは無言で、扉を見つめたまま頷いた。
フィンスとヤッケルはあまりに豪華な王族私室に恐縮して、朝食を取るため宿舎に戻る。
と言い出した。
が、ディングレーは
「良いから食ってけ」
そう言って…召使いにテーブルの上に料理の乗った皿を運ばせる。
シェイルはもう、奥部屋の寝台に横たわるローフィスの側に椅子を持って行って、張り付いていた。
ディングレーが戸口でローフィスに
「先に貼り薬、変えさせる」
と言い、シェイルに隣部屋に首を振り
「お前も行って食べろ」
と告げる。
けれどシェイルは首を横に振る。
ディングレーは…ディラフィスの屋敷にいたシェイルと違い、心細そうで儚げな…大人の表情を見せるシェイルに、顔を下げたかった。
ローフィスが『教練』に入学時、言われた。
「どうせシェイルは、入学試験で落とされる。
が、身を守れるよう、剣は教えたい」
だからシェイルが受かった時。
ローフィスに襟ぐり掴まれ、噛みつかれた。
「お前、どんな教え方したんだ!」
シェイルは覚えは早い。
一度で直ぐ、教えた型は出来る。
ただ…力がないだけで。
けれど足も速かったから…足を使っての揺さぶりは得意。
でも決定的に…敵を倒す、気迫が足りない…。
お遊戯としての剣術は…華麗で可憐で、素晴らしかった。
剣を振ってる時のシェイルは生き生きして…教えられたことが出来て嬉しそうで…。
そして、凜とした、表情すら見せたのに………。
「(…グーデンの野郎…!
愛玩扱い、しやがったんだな!!!)」
今の弱々しい…仄かな色香すら纏うシェイルが哀れに見えて、ディングレーは内心、実兄に憤った。
同様、ヤッケルもが。
ディングレーが奥の客室にローフィスを無事寝かせ、寝台横に詰めて酒の隠し場所をローフィスから聞き出すオーガスタスに、その場を任せて応接室に戻って来る。
ヤッケルとシェイルがキョロキョロしてるのを目にし、途端俯く。
シェイルは…剣を教えてくれるため、自分の質素な屋敷に通っていたディングレーと…戸口に姿を見せたディングレーは、確かに同じに見えたのに。
室内のあまりの豪華さに、気後れして俯く。
壁紙は手の込んだ模様が入り、至る所に優美な彫刻が刻まれ。
調度品も全て彫刻が施され…ランプスタンドに至っては、幾つも宝石がはめ込まれてる。
ソファの枠にも全て彫刻が入り、布は…豪華な刺繍入り。
タンスやテーブルは全て金で、色味は僅か。
目が金でチカチカする程、アクセントが金色だらけの部屋だった。
ディングレーはまだ見回す、ヤッケルに言った。
「…やっぱりか?
学年が変わり宿舎も変わったばかりで…これは全部、執事の趣味だ。
これっくらい飾らないと、王家の威光は保てないと。
親父に言い含められて…と、ヤツは言ってるが、グーデンとこの執事に
『貴方のご主人は、身分の割にたいそう質素で…』
と嫌味言われて対抗意識、燃やした結果だ。
ほとぼりがさめたら…金綺羅家具は全部、倉庫用の余り部屋にしまう」
そう項垂れるディングレーを、シェイルは顔を上げて見る。
ヤッケルはひょい!と、宝石付きの金の蝋燭スタンドを持ち上げ、じっと見て頷く。
「これなんて、簡単に盗まれるぜ」
フィンスが遅れて奥部屋から出て来て、呟く。
「…だから大貴族宿舎には、一般宿舎の者が簡単に、入れないようになってるんです。
王族の私室なんて…例え同じ大貴族宿舎にいたって、なかなか入れて貰えないって聞きました」
ディングレーは、フィンスを見て言い淀む。
「…確かに、なかなか人は入れないが…」
オーガスタスが出て来て、戸惑うディングレーを見る。
「お前の場合、地が出て根は庶民ってバレると、お前をあがめ奉ってるここの取り巻き大貴族らに軽蔑されるから。
それが怖くて体裁保つ為、地のまんまでいる室内には、極力入れないんだろう?」
ヤッケルは、目を見開く。
「そうなの?!」
シェイルはほっとした様子。
「じゃ、昔のディングレーのままなんだ」
「俺は俺だぜ?
正直こんなに金綺羅だと、誰だって落ち着かないよな?
汚すと召使いに睨まれるし。
部屋って普通、来客に『俺は王族だ』って威張るためにあるんじゃ無く、俺が寛げるためにあるんじゃ無かったっけ?」
ぷっ…。
とうとうオーガスタスが吹き出し
「ローフィスに、くっついて回るはずだ」
そう笑いながら、部屋を出て行った。
が、直ぐ扉が開いて、オーガスタスは顔だけ出して言い含める。
「ローフィスに、絶対無茶させるな。
三年宿舎なら俺が、担いででも動き回るの、阻止するからお前も見習え」
バタン…………。
フィンスは固まる年上王族のディングレーを、こそっ…と見て、囁く。
「ちょっとしかローフィスより背が高くないのに…担ぐの、無理ですよね?」
ディングレーは無言で、扉を見つめたまま頷いた。
フィンスとヤッケルはあまりに豪華な王族私室に恐縮して、朝食を取るため宿舎に戻る。
と言い出した。
が、ディングレーは
「良いから食ってけ」
そう言って…召使いにテーブルの上に料理の乗った皿を運ばせる。
シェイルはもう、奥部屋の寝台に横たわるローフィスの側に椅子を持って行って、張り付いていた。
ディングレーが戸口でローフィスに
「先に貼り薬、変えさせる」
と言い、シェイルに隣部屋に首を振り
「お前も行って食べろ」
と告げる。
けれどシェイルは首を横に振る。
ディングレーは…ディラフィスの屋敷にいたシェイルと違い、心細そうで儚げな…大人の表情を見せるシェイルに、顔を下げたかった。
ローフィスが『教練』に入学時、言われた。
「どうせシェイルは、入学試験で落とされる。
が、身を守れるよう、剣は教えたい」
だからシェイルが受かった時。
ローフィスに襟ぐり掴まれ、噛みつかれた。
「お前、どんな教え方したんだ!」
シェイルは覚えは早い。
一度で直ぐ、教えた型は出来る。
ただ…力がないだけで。
けれど足も速かったから…足を使っての揺さぶりは得意。
でも決定的に…敵を倒す、気迫が足りない…。
お遊戯としての剣術は…華麗で可憐で、素晴らしかった。
剣を振ってる時のシェイルは生き生きして…教えられたことが出来て嬉しそうで…。
そして、凜とした、表情すら見せたのに………。
「(…グーデンの野郎…!
愛玩扱い、しやがったんだな!!!)」
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