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シェイルの過去
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大好きなローフィスに抱きついて眠りながら、シェイルは夢の中にいた。
「…っあ!…っ…」
苦しげな…呻き声。
嫌だ!
思い出したくない…!
シェイルはグーデンに掴まった時の光景が、鮮烈に出てくる事に恐怖した。
けれど違った…。
それは大人の男人の声…。
屋敷の一室。
縛られた…男の人。
そう僕は小さくて…とても、小さくて…。
うんと高い椅子に座らされて、降りようとしても降りられない程高くて。
そして固まっていた。
ぞっとする背の高い黒髪の男が…縛られた男の人に覆い被さって…。
今なら分かる。
縛り付けて、犯してる…。
犯されてるのは…おとうさん………。
シェイルは涙が滴った。
腕を横に…磔のように縛られて、前から男は父の腿を持ち上げそして…腰を突き入れてる…。
ぼくは…動けなかった。
男はチラ…と振り向き、椅子に座るぼくを見る。
『お前が大人になったら、いつかこうしてやる』
そんな表情。
ぼく…は見るだけ。
ぼく…は助け出せない。
ぼく…がいるから、あの人は逃げ出せない…。
ふいに浮かび上がる、陽に照らされた広いバルコニー。
うんと長くて、階下に下ろしてもらえない、ぼくにとっての庭。
手すりの近くには、行ったことが無かった。
危ない…から。
お母さん…が泣くから。
お母さん…はいつも泣いていたけど、もっと…泣くから…。
ぼく…は動けない。
縛られたみたいに体が動かない…。
花が植えられたバルコニー。
蝶を追って…笑った時もあった。
でも…ぼく…がいると、あの人は逃げられない…。
ぼく…がいない時でもあんな風にいつも…背の高い悪魔に嬲られて…。
苦しんで…。
母さんはいつも沈んだ顔。
笑顔はどこにもない…。
そのとき。
おかあさんはいなかった。
思い出した。
そのバルコニーに、おかあさんは来られない。
前は来たのに。
その時ぼくとおかあさんは…東の塔に住んでいて…このバルコニーは、悪魔が許した時しか来られない。
なぜって…このバルコニーに続く部屋に、おとうさんが閉じ込められているから。
ぼく…がいなければおとうさんは逃げられる。
ぼく…がいなければ、おかあさんはもう泣かなくていい…。
ぼく…が落ちるはずだった。
白い手すりから身を乗り出して。
落ちるのは…うんと下の…木々の合間に落ちてる体は、ぼくのはずだった…。
「シェイル!!!」
あの声を今も…覚えてる。
どうして彼がここに来たのか…ぼく…は分からなかった。
でもその時、体が揺れた。
落ちる。
と思った。
でも違った。
あの人…おとうさん…がぼくを手すりの中へ飛ばして…代わりに、おとうさん…が………。
ぼく…はめちゃめちゃに叫んだ。
人が来た。
遙か下の地面に…横たわる人。
あれはおとうさん…。
違う!
僕があそこに…あそこにいる筈なのに!
お父さんじゃ無い!
僕はお父さんを逃がしたかったのに!
僕の出来る唯一の事だったのに!
あんなのは嫌だ!
僕がおとうさんを逃がすんだ!
僕という足かせを無くして自由に…。
そしてお母さんは、お父さんと一緒で、笑顔で…。
笑顔…で………。
どうしてだろう?
ぼくはあかちゃんだったのに。
お母さんの笑顔を覚えてる。
僕を覗き込む、嬉しそうなお父さんの笑顔も。
二人は僕を嬉しそうに見る。
でもぼくは…二人の足かせ………。
悪魔がそうした。
僕を二人の祝福された子供でなくした…。
ぼく…はぼくを殺しておとうさんを逃がそうとして…。
おとうさんを…殺した………。
シェイルは夢の中なのに、ぽろぽろと涙を流した。
誰かが…いた…。
透明な誰か。
この夢を…見させた誰か。
その透明な人は、こう言った。
“辛いことを思い出させたね…。
けれどこの償いは、必ずするから”
どこの誰かなんて、どうでもいい…。
だっておとうさんは帰ってこない。
その後も覚えてる。
お父さんのお葬式…。
お父さんの友達が来て、棺を担いだ。
その後酷い雨。
お母さんは僕を抱いて…ずぶ濡れで荷馬車に隠れ、そして…呪われた城の外に出た。
そしてそして…ディラフィスとその息子、ローフィスに出会った……………。
シェイルはまた、暖かいローフィスに、ぎゅっ!と抱きつく。
悪魔がさらいに来た時。
小さいのに。
ぼくより少し大きいだけで、ローフィスも小さいのに。
悪魔からぼくを庇って、どかなかった。
あんな…恐ろしい相手に、ずっと怒鳴ってた。
「シェイルは僕の弟だ!
お前なんかに、絶対やらない!」
…そうして…ディラフィスとローフィスは…本当に、そうしてくれた。
悪魔からいつも僕を、守ってくれていた…。
シェイルはようやくその時、グーデンに拉致された記憶を蘇らせる。
それは、ローフィスが飛び込んで来てくれた時のこと。
がつん!
ローフィスが殴られてる!
がつん…!
がつん!
血が…あんなに…!
その時程…自分の弱さを呪ったことが無い。
いつも守ってくれるローフィス。
でも僕が、強ければ…!
強かったらローフィスはあんなに殴られない…!
いつも笑いかけてくれて…。
目で、笑顔で、温もりで
“大丈夫”
そう告げてくれる温かな大切な大切な人…。
食べる事すら怖かった僕に、生きていい。
幸せでいていい。
そう言い続けてくれた人…。
でもローフィス、死体はそこにある。
僕が落ちるはずだった、バルコニーの下に。
今でも。
まだ。
死体はそこにある。
ぼくが…小さくて弱くて…殺してしまったおとうさんの死体はずっと。
誰があの人を蘇らせ…自由に笑顔に、してくれるだろう…?
ぼくの望みは死んでしまった。
ぼくの希望は…いつもバルコニーの下に、死体となってそこにある。
だからぼくは…ローフィスから離れたら…。
今度は、今度こそは…。
僕がバルコニーの下の、死体になる…。
シェイルは怖くて…ローフィスが消えたら生きている事が怖くて…。
死んで自由になりたい。
その気持ちが抑えられなくて…。
だからもっとローフィスに、しがみついた。
だってダメなんだ!
死体はずっと…そこにあるから…!
でもローフィスにとっても…僕が枷になるのなら…。
その時、透明な人がまた、現れて言った。
“君は間違ってる。
バルコニーの下の死体は、君に生きて欲しいと願ってる。
ローフィスもどれだけ怪我を負っても、君に生きていて欲しいと願ってる…。
その願いが、君のこころに届くと良いね”
シェイルはその時、自分の心が透明な膜に覆われているのに気づく。
“それは君の心を守る。
けれどそれがあると誰も…君の心に本当に、触れる事が出来ない。
誰も…君に願いを届けられない”
“願…い?”
“君に、生きて欲しいと思う願い。
例え自分が死んでも、君には生きていて欲しいと思う願い…”
シェイルはそれを聞いて…白い膜で覆われた、自分の心を見た。
ずっと、じっと。
見つめ続けた。
「…っあ!…っ…」
苦しげな…呻き声。
嫌だ!
思い出したくない…!
シェイルはグーデンに掴まった時の光景が、鮮烈に出てくる事に恐怖した。
けれど違った…。
それは大人の男人の声…。
屋敷の一室。
縛られた…男の人。
そう僕は小さくて…とても、小さくて…。
うんと高い椅子に座らされて、降りようとしても降りられない程高くて。
そして固まっていた。
ぞっとする背の高い黒髪の男が…縛られた男の人に覆い被さって…。
今なら分かる。
縛り付けて、犯してる…。
犯されてるのは…おとうさん………。
シェイルは涙が滴った。
腕を横に…磔のように縛られて、前から男は父の腿を持ち上げそして…腰を突き入れてる…。
ぼくは…動けなかった。
男はチラ…と振り向き、椅子に座るぼくを見る。
『お前が大人になったら、いつかこうしてやる』
そんな表情。
ぼく…は見るだけ。
ぼく…は助け出せない。
ぼく…がいるから、あの人は逃げ出せない…。
ふいに浮かび上がる、陽に照らされた広いバルコニー。
うんと長くて、階下に下ろしてもらえない、ぼくにとっての庭。
手すりの近くには、行ったことが無かった。
危ない…から。
お母さん…が泣くから。
お母さん…はいつも泣いていたけど、もっと…泣くから…。
ぼく…は動けない。
縛られたみたいに体が動かない…。
花が植えられたバルコニー。
蝶を追って…笑った時もあった。
でも…ぼく…がいると、あの人は逃げられない…。
ぼく…がいない時でもあんな風にいつも…背の高い悪魔に嬲られて…。
苦しんで…。
母さんはいつも沈んだ顔。
笑顔はどこにもない…。
そのとき。
おかあさんはいなかった。
思い出した。
そのバルコニーに、おかあさんは来られない。
前は来たのに。
その時ぼくとおかあさんは…東の塔に住んでいて…このバルコニーは、悪魔が許した時しか来られない。
なぜって…このバルコニーに続く部屋に、おとうさんが閉じ込められているから。
ぼく…がいなければおとうさんは逃げられる。
ぼく…がいなければ、おかあさんはもう泣かなくていい…。
ぼく…が落ちるはずだった。
白い手すりから身を乗り出して。
落ちるのは…うんと下の…木々の合間に落ちてる体は、ぼくのはずだった…。
「シェイル!!!」
あの声を今も…覚えてる。
どうして彼がここに来たのか…ぼく…は分からなかった。
でもその時、体が揺れた。
落ちる。
と思った。
でも違った。
あの人…おとうさん…がぼくを手すりの中へ飛ばして…代わりに、おとうさん…が………。
ぼく…はめちゃめちゃに叫んだ。
人が来た。
遙か下の地面に…横たわる人。
あれはおとうさん…。
違う!
僕があそこに…あそこにいる筈なのに!
お父さんじゃ無い!
僕はお父さんを逃がしたかったのに!
僕の出来る唯一の事だったのに!
あんなのは嫌だ!
僕がおとうさんを逃がすんだ!
僕という足かせを無くして自由に…。
そしてお母さんは、お父さんと一緒で、笑顔で…。
笑顔…で………。
どうしてだろう?
ぼくはあかちゃんだったのに。
お母さんの笑顔を覚えてる。
僕を覗き込む、嬉しそうなお父さんの笑顔も。
二人は僕を嬉しそうに見る。
でもぼくは…二人の足かせ………。
悪魔がそうした。
僕を二人の祝福された子供でなくした…。
ぼく…はぼくを殺しておとうさんを逃がそうとして…。
おとうさんを…殺した………。
シェイルは夢の中なのに、ぽろぽろと涙を流した。
誰かが…いた…。
透明な誰か。
この夢を…見させた誰か。
その透明な人は、こう言った。
“辛いことを思い出させたね…。
けれどこの償いは、必ずするから”
どこの誰かなんて、どうでもいい…。
だっておとうさんは帰ってこない。
その後も覚えてる。
お父さんのお葬式…。
お父さんの友達が来て、棺を担いだ。
その後酷い雨。
お母さんは僕を抱いて…ずぶ濡れで荷馬車に隠れ、そして…呪われた城の外に出た。
そしてそして…ディラフィスとその息子、ローフィスに出会った……………。
シェイルはまた、暖かいローフィスに、ぎゅっ!と抱きつく。
悪魔がさらいに来た時。
小さいのに。
ぼくより少し大きいだけで、ローフィスも小さいのに。
悪魔からぼくを庇って、どかなかった。
あんな…恐ろしい相手に、ずっと怒鳴ってた。
「シェイルは僕の弟だ!
お前なんかに、絶対やらない!」
…そうして…ディラフィスとローフィスは…本当に、そうしてくれた。
悪魔からいつも僕を、守ってくれていた…。
シェイルはようやくその時、グーデンに拉致された記憶を蘇らせる。
それは、ローフィスが飛び込んで来てくれた時のこと。
がつん!
ローフィスが殴られてる!
がつん…!
がつん!
血が…あんなに…!
その時程…自分の弱さを呪ったことが無い。
いつも守ってくれるローフィス。
でも僕が、強ければ…!
強かったらローフィスはあんなに殴られない…!
いつも笑いかけてくれて…。
目で、笑顔で、温もりで
“大丈夫”
そう告げてくれる温かな大切な大切な人…。
食べる事すら怖かった僕に、生きていい。
幸せでいていい。
そう言い続けてくれた人…。
でもローフィス、死体はそこにある。
僕が落ちるはずだった、バルコニーの下に。
今でも。
まだ。
死体はそこにある。
ぼくが…小さくて弱くて…殺してしまったおとうさんの死体はずっと。
誰があの人を蘇らせ…自由に笑顔に、してくれるだろう…?
ぼくの望みは死んでしまった。
ぼくの希望は…いつもバルコニーの下に、死体となってそこにある。
だからぼくは…ローフィスから離れたら…。
今度は、今度こそは…。
僕がバルコニーの下の、死体になる…。
シェイルは怖くて…ローフィスが消えたら生きている事が怖くて…。
死んで自由になりたい。
その気持ちが抑えられなくて…。
だからもっとローフィスに、しがみついた。
だってダメなんだ!
死体はずっと…そこにあるから…!
でもローフィスにとっても…僕が枷になるのなら…。
その時、透明な人がまた、現れて言った。
“君は間違ってる。
バルコニーの下の死体は、君に生きて欲しいと願ってる。
ローフィスもどれだけ怪我を負っても、君に生きていて欲しいと願ってる…。
その願いが、君のこころに届くと良いね”
シェイルはその時、自分の心が透明な膜に覆われているのに気づく。
“それは君の心を守る。
けれどそれがあると誰も…君の心に本当に、触れる事が出来ない。
誰も…君に願いを届けられない”
“願…い?”
“君に、生きて欲しいと思う願い。
例え自分が死んでも、君には生きていて欲しいと思う願い…”
シェイルはそれを聞いて…白い膜で覆われた、自分の心を見た。
ずっと、じっと。
見つめ続けた。
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