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ローフィスの誓い
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オーガスタスはローフィスを、食堂横の廊下に続く、扉の一つを開けて中へ押し込む。
食事を終えたリーラスが、酒を飲んでて顔を上げる。
「…いいから、座れ」
オーガスタスはリーラスの向かいの椅子をローフィスに勧め、ローフィスはすとん。
と腰掛ける。
「…なんでシェイルの要望に応えないんだ?」
横に座るオーガスタスに唐突にそう聞かれ、ローフィスはリーラスを首を振って示し、怒鳴る。
「だから何でその話するのが、リーラスの部屋だ?」
「俺は今、酒切らしてるしお前だってだろ?」
リーラスは…テーブルの上の酒瓶と、寝台横に並ぶ五・六本の酒瓶を見て、またオーガスタスとローフィスに視線戻す。
けれどローフィスは怒鳴ってた。
「こいつの前で話したら全て、そこら中に筒抜け!!!
『教練』中に知れ渡るだろう?!
リーラスには“秘密にする”って言葉が、存在してない男なんだからな!!!」
「……………………………」
怒鳴られたオーガスタスは顔をリーラスに向けた。
「お前、“ここだけの話”の意味、分かったっけ?」
「意味は、知ってる」
「出来るか?
他には内緒で、知ってるのはこの三人だけって事」
「…どうかな…。
基本俺、口に蓋出来ない体質だし」
「なら出てけ」
「………………………ここ俺の部屋って、分かって言ってる?」
「それは知ってる」
オーガスタスに即答され、リーラスは仕方なしに席を立つ。
戸口に歩き始めるとオーガスタスに
「あ、扉閉めといてくれ」
と言われ…廊下に出て扉を閉めた後、つぶやいた。
「なんでだ」
仕方なしに廊下の二つ先の、ローフィスの部屋の扉を開け
「…ローフィスが酒切らすなんて、あり得ないぞ。
絶対どこかに隠し持ってる」
と呻きつつ、室内の探索にかかった。
扉が閉まるとオーガスタスは再度、問う。
「…どうして抱けない?
お前本心は気が狂う位、シェイルに惚れてるだろう?」
ローフィスは俯いたまま、顔をガクン!と揺らし、上目使いでオーガスタスを見る。
「お前ほんっと、ガタイでかいのに察しが良いな!」
「察しが良いのとガタイと、どう関係する?
質問の答えは?
だって…ここの誰よりも抱きたいんだろう?本心は」
オーガスタスに隠してた本心言い当てられ、ローフィスはため息吐く。
「…だから俺は、あいつの兄だからだ!」
「……だって実弟じゃ無い」
「それでも!兄なんだ!
俺が12で初めてシェイル相手に勃っちまった時!
あいつは天使で汚れなくて!
俺は自分が、最低の人間だと思い知った!」
「…だって自然現象だから。
勃っても仕方無いだろう?」
「…分かってない。
俺がシェイルに惚れてるってのは!
もうあいつが可愛くて愛しくて誰からも隠して、俺だけの物にしたいとかっていう、狂った恋心なんだぞ?!」
「…恋すると普通そうならないか?」
「…もし俺が兄の立場なら!
そんな男がシェイルに寄って来ようものなら、殴って『正気に戻れ!!!』と怒鳴る」
「…自分を殴るのは、難しいよな…」
「そういう問題じゃ無い!!!」
オーガスタスは怒鳴るローフィスの顔を見た後、まだ、言った。
「…だからどうして、兄止めて恋する男になれないのかを、聞いてる」
「出来るか?!
俺はあいつが家に来た時、誓ったんだ!
あいつを汚す、どんな者からも護り通すと!
なら俺は、あいつに恋する俺からも、あいつを護らなきゃならない!!!」
「…………それ、どれ程真剣な誓いなんだ?」
「だからあいつに恋してる俺を、抹殺する程度に真剣だ!!!」
「………自分の恋心なんて、抹殺出来ないだろう?」
そう聞かれて初めて、ローフィスは苦しげな表情を見せた。
「…出来ないから…俺に今まで助けて貰った恩のあるシェイルは…俺の隠した気持ち感じ取って
“抱いてくれ”だなんて言うんだ!」
「…それでつまり…お前兄しきれなくて…教練に、逃げて来たのか?」
「…あいつしつっこく追っかけまわしてた伯父が、それどころじゃなくなって追っ手が途絶え…逃げ回らなくても済んで一っ所に落ち着けたから…親父さえいれば大丈夫でそれで…。
俺じゃ無く親父と居ればあいつだって、そろそろ年頃だし。
好きな女の子の一人や二人…」
オーガスタスはそれを聞いて、顔を思いっきり下げた。
返答が分かっていながらも、問う。
「…お前がここに来て二年で…一人でも出来たのか?
シェイルに、好きな女の子」
ローフィスは黙り…が、口開く。
「休暇の度に聞き出すし…一度は楽しげに女の子と話す姿も見たから。
『彼女か?』って聞くんだけど…“知り合い”程度だそうで。
親父も俺の事情知ってて、毎回気の毒そうに俺を見て、首を横に振る。
けど…俺がここに居続ければあいつも、15にだってなる。
そんな頃は普通の男だったら、女見て体が自然に、反応するだろう?」
オーガスタスはその希望的観測に、絶望的なため息吐く。
「お前さ。
ずっとシェイルと居る割には…抜けてるよな。
あの人間離れして綺麗なシェイル見て。
普通の男の反応起きると、本気で思ってる?」
そこまで言うと、ローフィスは顔を上げ、じっ…と親友の、ガタイの割には拍子抜けするぐらいすんなり綺麗な卵形の、真面目な顔すると酷く整って見える顔を見つめる。
「…お前の見解を聞こうか」
挑戦状叩きつけるように言う、ローフィスの顔を見て…オーガスタスはため息交じりに言葉を吐き出した。
「…普通の人間の欲望とかけ離れた、妖精みたいなヤツなんだぜ?
あれで…実は超女好きとか男好きって、ありえない。
どーーー見ても他人に欲望の対象にされるのに、怯えてる。
そんなヤツが自分からホイホイ“えっちな事して欲しい”なんて、望むか?
かろうじてお前相手なら、なんとか耐えられる。が、実情だろう?」
「…だから無理なんだ!
あいつは兄としての俺を望んでるから…例え抱こうが兄のままいると思ってる!!!
けど俺は一度抱いちまったら…ただの男で他がまるで目に入らないぐらいあいつを所有して、あいつといるどんなヤツでも嫉妬の対象にするぐらい…イカれてるんだ!!!」
オーガスタスはなりふり構わず叫ぶ、ローフィスを見て…またため息吐きそうなのを我慢して、言って退けた。
「…要するに…抱いて自分の恋心を解放しちまった、後の自分に。
…責任取れないんだな?」
ローフィスはやっぱり、上目使いで親友を睨んだ。
「…お前、憎らしいぐらい綺麗にまとめるな」
そしてローフィスが大きなため息を吐くから。
オーガスタスも大きなため息を吐き、テーブルの上の空のグラスになみなみ酒をつぎ、ローフィスに差し出した後。
自分にも溢れそうな程注いで…ほぼ同時に一気に酒を、飲み干した。
食事を終えたリーラスが、酒を飲んでて顔を上げる。
「…いいから、座れ」
オーガスタスはリーラスの向かいの椅子をローフィスに勧め、ローフィスはすとん。
と腰掛ける。
「…なんでシェイルの要望に応えないんだ?」
横に座るオーガスタスに唐突にそう聞かれ、ローフィスはリーラスを首を振って示し、怒鳴る。
「だから何でその話するのが、リーラスの部屋だ?」
「俺は今、酒切らしてるしお前だってだろ?」
リーラスは…テーブルの上の酒瓶と、寝台横に並ぶ五・六本の酒瓶を見て、またオーガスタスとローフィスに視線戻す。
けれどローフィスは怒鳴ってた。
「こいつの前で話したら全て、そこら中に筒抜け!!!
『教練』中に知れ渡るだろう?!
リーラスには“秘密にする”って言葉が、存在してない男なんだからな!!!」
「……………………………」
怒鳴られたオーガスタスは顔をリーラスに向けた。
「お前、“ここだけの話”の意味、分かったっけ?」
「意味は、知ってる」
「出来るか?
他には内緒で、知ってるのはこの三人だけって事」
「…どうかな…。
基本俺、口に蓋出来ない体質だし」
「なら出てけ」
「………………………ここ俺の部屋って、分かって言ってる?」
「それは知ってる」
オーガスタスに即答され、リーラスは仕方なしに席を立つ。
戸口に歩き始めるとオーガスタスに
「あ、扉閉めといてくれ」
と言われ…廊下に出て扉を閉めた後、つぶやいた。
「なんでだ」
仕方なしに廊下の二つ先の、ローフィスの部屋の扉を開け
「…ローフィスが酒切らすなんて、あり得ないぞ。
絶対どこかに隠し持ってる」
と呻きつつ、室内の探索にかかった。
扉が閉まるとオーガスタスは再度、問う。
「…どうして抱けない?
お前本心は気が狂う位、シェイルに惚れてるだろう?」
ローフィスは俯いたまま、顔をガクン!と揺らし、上目使いでオーガスタスを見る。
「お前ほんっと、ガタイでかいのに察しが良いな!」
「察しが良いのとガタイと、どう関係する?
質問の答えは?
だって…ここの誰よりも抱きたいんだろう?本心は」
オーガスタスに隠してた本心言い当てられ、ローフィスはため息吐く。
「…だから俺は、あいつの兄だからだ!」
「……だって実弟じゃ無い」
「それでも!兄なんだ!
俺が12で初めてシェイル相手に勃っちまった時!
あいつは天使で汚れなくて!
俺は自分が、最低の人間だと思い知った!」
「…だって自然現象だから。
勃っても仕方無いだろう?」
「…分かってない。
俺がシェイルに惚れてるってのは!
もうあいつが可愛くて愛しくて誰からも隠して、俺だけの物にしたいとかっていう、狂った恋心なんだぞ?!」
「…恋すると普通そうならないか?」
「…もし俺が兄の立場なら!
そんな男がシェイルに寄って来ようものなら、殴って『正気に戻れ!!!』と怒鳴る」
「…自分を殴るのは、難しいよな…」
「そういう問題じゃ無い!!!」
オーガスタスは怒鳴るローフィスの顔を見た後、まだ、言った。
「…だからどうして、兄止めて恋する男になれないのかを、聞いてる」
「出来るか?!
俺はあいつが家に来た時、誓ったんだ!
あいつを汚す、どんな者からも護り通すと!
なら俺は、あいつに恋する俺からも、あいつを護らなきゃならない!!!」
「…………それ、どれ程真剣な誓いなんだ?」
「だからあいつに恋してる俺を、抹殺する程度に真剣だ!!!」
「………自分の恋心なんて、抹殺出来ないだろう?」
そう聞かれて初めて、ローフィスは苦しげな表情を見せた。
「…出来ないから…俺に今まで助けて貰った恩のあるシェイルは…俺の隠した気持ち感じ取って
“抱いてくれ”だなんて言うんだ!」
「…それでつまり…お前兄しきれなくて…教練に、逃げて来たのか?」
「…あいつしつっこく追っかけまわしてた伯父が、それどころじゃなくなって追っ手が途絶え…逃げ回らなくても済んで一っ所に落ち着けたから…親父さえいれば大丈夫でそれで…。
俺じゃ無く親父と居ればあいつだって、そろそろ年頃だし。
好きな女の子の一人や二人…」
オーガスタスはそれを聞いて、顔を思いっきり下げた。
返答が分かっていながらも、問う。
「…お前がここに来て二年で…一人でも出来たのか?
シェイルに、好きな女の子」
ローフィスは黙り…が、口開く。
「休暇の度に聞き出すし…一度は楽しげに女の子と話す姿も見たから。
『彼女か?』って聞くんだけど…“知り合い”程度だそうで。
親父も俺の事情知ってて、毎回気の毒そうに俺を見て、首を横に振る。
けど…俺がここに居続ければあいつも、15にだってなる。
そんな頃は普通の男だったら、女見て体が自然に、反応するだろう?」
オーガスタスはその希望的観測に、絶望的なため息吐く。
「お前さ。
ずっとシェイルと居る割には…抜けてるよな。
あの人間離れして綺麗なシェイル見て。
普通の男の反応起きると、本気で思ってる?」
そこまで言うと、ローフィスは顔を上げ、じっ…と親友の、ガタイの割には拍子抜けするぐらいすんなり綺麗な卵形の、真面目な顔すると酷く整って見える顔を見つめる。
「…お前の見解を聞こうか」
挑戦状叩きつけるように言う、ローフィスの顔を見て…オーガスタスはため息交じりに言葉を吐き出した。
「…普通の人間の欲望とかけ離れた、妖精みたいなヤツなんだぜ?
あれで…実は超女好きとか男好きって、ありえない。
どーーー見ても他人に欲望の対象にされるのに、怯えてる。
そんなヤツが自分からホイホイ“えっちな事して欲しい”なんて、望むか?
かろうじてお前相手なら、なんとか耐えられる。が、実情だろう?」
「…だから無理なんだ!
あいつは兄としての俺を望んでるから…例え抱こうが兄のままいると思ってる!!!
けど俺は一度抱いちまったら…ただの男で他がまるで目に入らないぐらいあいつを所有して、あいつといるどんなヤツでも嫉妬の対象にするぐらい…イカれてるんだ!!!」
オーガスタスはなりふり構わず叫ぶ、ローフィスを見て…またため息吐きそうなのを我慢して、言って退けた。
「…要するに…抱いて自分の恋心を解放しちまった、後の自分に。
…責任取れないんだな?」
ローフィスはやっぱり、上目使いで親友を睨んだ。
「…お前、憎らしいぐらい綺麗にまとめるな」
そしてローフィスが大きなため息を吐くから。
オーガスタスも大きなため息を吐き、テーブルの上の空のグラスになみなみ酒をつぎ、ローフィスに差し出した後。
自分にも溢れそうな程注いで…ほぼ同時に一気に酒を、飲み干した。
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