若き騎士達の危険な日常

あーす。

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焦るモレッティ

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 モレッティは焦ってた。
グーデンの配下に声かけられたのは自分が先。
グーデンの気に入るよう、シェイル程じゃ無くても…同学年の、かなりな美少年を連れて行ったのに。

“顔は綺麗だが、下品でスレてる”
の理由で、褒められず…。
ローズベルタに声をかけろと言われ、ローズベルタをここに連れて来たのも自分なのに。

ローズベルタはラナーンを連れて来て、グーデンはラナーンを気に入り…ますます自分はローズベルタの下へと、追いやられる。

モレッティの家は裕福だった。
が、男爵で爵位は低い。
剣を振るのも騎士になるのも嫌な怠け者だったが、大物に媚びを売るのにはけていた。

グーデンに取り入れば、四年の男達みたいに、授業をサボっても免除される。
グーデンの、権威とカオで。

教練キャゼ』での評判は悪いグーデンだが、腐っても王族。

それで…ローズベルタがグーデンの前を去る、その前に階段を駆け下り…喧嘩は強そうだが金のなさげな同級の乱暴者二人を引き連れて…ローズベルタより先に、シェイルを連れて行こうとシェイルを探した。

“グーデンが、ラナーンを味見する前に!
ラナーンを気に入る前に!
シェイルを連れていけば、大手柄…!
俺はローズベルタの、上に立てる!”

同学年らは授業を終えて、宿舎に戻ってくる。
そっと近寄り、モレッティは一人の気弱な少年の腕を引く。
金を握らせて囁く。
「足が痛いと叫べ。
ローランデに縋り付いて、医療室へ連れて行ってと頼め!」

横でそれを見ていた少年の、腕も引く。
「お前は、フィンスだ!
上手くやれたら、もっとやる!」
そう言って、金をその手に握らせた。

間もなく…二人の同級生は、ヨロヨロ歩いて一人はローランデに。
もう一人はフィンスに。
助けを頼んで“一人で行けないから医療室へ連れてって”
と泣きついた。

モレッティは気が気じゃ無い。
グーデンがラナーンを味見し、気に入った後じゃ遅い。
シェイルは学校中の注目する美少年だが、グーデンが気に入らなければ始まらない。
第一ローズベルタが“シェイルは初物じゃない”
とバラしてから…グーデンは以前程、シェイルを欲しがらなくなった。
それでも…シェイルを手に入れれば、ディアヴォロスの鼻も明かせる。
その目的で、シェイルを手に入れたがった。

それに…あの可憐で美しい美少年を、蹂躙していたぶり泣かせ、楽しみたがってた。

幸い、周囲は暮れ始めていた。

乱暴者の一人に首を振って、一緒に医療室へ行こうとするシェイルを、背後から口を押さえて引きずって来させる。

「…そのまま、三年宿舎に行くぞ!!!」

そう叫んで駆け出すけど、人気の無い宿舎裏に来た時。

「いてっ!」
乱暴者は叫んで、シェイルを放す。
もう一人が慌てて、逃げ出すシェイルの腕を掴んだ。

「何やってる!
絶対、放すな!!!」

けれど…可憐な美少年の筈のシェイルは、捕まえる相手の脛を蹴り、乱暴者はもう少しで、掴んだシェイルの腕を放すところだった。

モレッティは焦りきった。
早くしないと…突然訪れてた来客は帰り、グーデンは縛り上げられたラナーンを…いたぶり始める…!

何も知らない少年を、うんとはずかしめていやらしく嬲るのが。
グーデンは大好きだった。

ラナーンが泣いて嫌がり、助けを乞うたり、しちゃったら…。
グーデンはもう、ラナーンを大のお気に入りにしてしまう…!
その前に、この上なく美しいシェイルこそに…!
辱められ、泣いて助けを乞わせなくては!

「何やっ…てんだもう!」

モレッティは二人がかりで逃げようとするシェイルを捕まえ、あちこち蹴られながらも手こずって、その場からちっとも進まないていたらくにいらだった。

その時だった。

「伝わってなかったか?
シェイルに手出ししたら俺が、殴るって」

声に振り向くけど、見えたのは胸元。
もっと顔を上げてようやく、モレッティは相手の顔を見た。

三学年の事実上筆頭、オーガスタス!

けれど三学年で一番身分高いのは、グーデン!

「…だからなんだ!
グーデン様がご所望なんだ!
平貴族は引っ込んで………」

その時、モレッティは目から火花が散る程の衝撃を感じ、頬が熱くて。
気づいたら、宙を飛んでいた。

だっっっぅんっ!

「俺に殴られるか、シェイルを放すか!
さっさと決めないと、あいつの二の舞だぞ?!」

獅子の咆吼のような…怒鳴り声が遠くで聞こえ、モレッティは口の中が血まみれで血の味で満ちてるのに気づく。

起き上がろうとしても…手も足も、動かない…。
やがて意識が薄れていく。
頭の中で、グーデンが縛られたラナーンの居る部屋の、扉を開けるのを見る。

“ダメ…だ、待て…。
俺が今、シェイルを連れて………”

そこでモレッティは、すっかり意識を失った。

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