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愛玩少年の野望
しおりを挟むラナーンはローランデの申し出に、応えようかとも思った。
確かにローズベルタは一般宿舎では、一番恐れられてる。
が、ローランデに助けを求めればシェイルのようにローランデが、ローズベルタから守ってくれるはず。
けれどローズベルタは、こう言った。
「俺と一緒に来れば、三年王族グーデンに庇護される」
王族に取り入れば…父も僕に一目置くようになる…!
ラナーンがここに来る前。
跡取りの男の子の産めず、愛人の産んだ男の子を跡継ぎと、迎えるしか無かった正妻はこう言った。
「せいぜいその可愛い顔で大物でも釣り上げて。
家名を上げてちょうだい」
…つまり男に身を売れと言う事…。
ラナーンは唇をきつく噛む。
『愛人である母に、僕を産ませ捨てて置いて、正妻に男の子が出来ないと知ると手の平返すように迎えに来た父!
その父ですら
“どうせ騎士になんて、お前はなれない。
が、『教練』には身分高い王族もいる。
誰かに取り入り、寵愛を得れば…私は大出世できる。
そうすれば…お前にとっても悪い話じゃ無い”
そう…王族に媚びを売れと…殆ど脅しのようにほのめかす』
ラナーンは…父に捨てられ、実家では不実な娘と勘当され…お嬢様だった母が、身まで売って病弱だった自分を、育ててくれたことをぼんやり、思い返す。
けれど母こそが…慣れない暮らしで体を壊し、結局先に、逝ってしまった…。
その時を思い出すと、ラナーンは凍り付く。
“母じゃない!
高価な薬が必要で、母に身まで売らせた自分こそが!
死ねば良かったんだ…”
最後の最期まで…愛してると言い、この世に愛する息子をたった一人、残す事を気にかけながら…逝ってしまった愛情深い母…。
“その後母の友達が引き取ってくれたけど、彼女も貧困で…父が迎えを寄越した時、頷くしか無かった。
その後は地獄だった”
ラナーンは思い返すと惨めな思いが止まらなかった。
“家には正妻とその娘。
尽く嫌がらせを受け、厄介者と罵られ…”
ラナーンはきつくきつく、唇を噛む。
ローズベルタが言った。
『三年王族、グーデンの庇護』
それは、ラナーンにとって光…。
“父の不在にロクに食事も与えず、たまに出されたのは犬の餌…。
侮蔑し、姿を見かければ罵り倒し…。
這いつくばって、生きるしか無かった。
犬の餌を乞うために、床にひれ伏して頼み…。
靴で背を頭を踏まれ…。
そしてやっと投げられた、カビた固いパン…。
けれど王族の寵愛を得れば…!
あの売女どもを今度は…僕がひれ伏させ、カビたパンを得る為に、僕が床に擦りつけたあいつらの頭を、踏みつけてやる!”
三年宿舎の召使い用階段を、ラナーンはローズベルタと上がる。
通された部屋は、素晴らしく豪華。
大きな椅子に座った王族は、拍子抜けする程ほっそりとした、美少年だった。
黒髪の…甘いマスク。
けれど薄い青の瞳は…人の情など持たぬ冷酷な目。
「お前、男とするのは初めてか?」
ラナーンは顔を揺らした。
どうしてだか…ここは分かれ目だと、直感で感じた。
答えないラナーンを、グーデンは眉をひそめ、見定めるように伺う。
ラナーンは震えた。
ガタガタ震って
「…経験が、ありません…」
そう告げた。
グーデンはラナーンが、経験が無いから怖がってると…勘違いしてくれた。
“本当は、母が亡くなった後、引き取ってくれた母の友達のところにいた時。
ひもじさに耐えられず…金貨一枚と引き換えに、男に好きにさせた”
けれどラナーンはグーデンの瞳が、輝くのを見た。
「そうか、初めてか…」
その後、くっくっくっ…と、嬉しそうな笑い声。
「ローズベルタ。
お前には褒美をたんと取らす!
後は…隙を突いて、シェイルを連れて来い」
背後に立ってたローズベルタは、無言で頷く。
けれど“シェイル”の名を聞いて、ラナーンは顔を下げて拳を握り込んだ。
入学式の時、学校中が彼の美しさに見惚れた…!
“あいつがグーデンの元に来たら…僕はグーデンに、捨てられる…!”
危機を感じた。
けれど…別の危機は目前にあった。
グーデンを取り巻くデカい四年の一人に、腕を引かれる。
通された部屋は四方の壁に、そして天蓋付き寝台の上にすら鏡のはめ込まれた、淫靡な…。
深紅の布団の敷かれた、大きな寝台が置かれた部屋。
どん…!と寝台の上に押され、ラナーンは振り向く。
“この男に犯される…?!”
ラナーンはやっぱり間違えたのかと、思った。
“初物は嫌いだから、僕をこの男に与え、調教してから…グーデンが吟味するのか”と。
けれど男は戸口へと歩き、振り向いてニヤニヤ笑う。
「ほんっ…とに、グーデンは初物好きだな。
初物なんて泣いて嫌がって…ヘタしたら血だらけ。
面倒なだけなのに」
ラナーンはそれを聞いて、体中の緊張が解けた。
“良かった…”
後は出来るだけ…何も知らないふりをして、恥じらえばいい…。
そして出来るだけ…グーデンに気に入るように…”
けれどその時、男は縄を持って扉を開け…寝台にのし掛かりラナーンの腕を捕まえ、衣服を脱がして縛り上げた。
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