若き騎士達の危険な日常

あーす。

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全校生徒集う昼食 2

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 食堂内の半数が食事を終えて席を立ち始めた時、やっと四年が食堂に姿を見せる。

最上級生だけあって、皆デカく、逞しい男だらけ。
新入生らは目を見開いて、三年間脱落せず最上級に残った男らを見つめる。
どの顔も、引き締まって男らしく、騎士の風格を漂わせていた。

ガタガタ…っ!
入って来る男らとは反対方向。
食堂奥から音がして、皆そちらに振り向く。

グーデンとその取り巻きらが、立ち上がっていた。
間もなく長身の四年の中、一際背の高いディアヴォロスの、高貴な姿が入り口に伺い見えた。

背まで伸びた黒い縮れ毛。
通った鼻筋の、整いきった美男。
男らしいのにゴツい感じはせず、美しいとすら思えた。

動きには隙が無く、けれどとてもゆったりと優雅で、少し腕を動かしただけでも気品を醸し出す。
衣服は飾りの無い、質素な物だったけれど。
光を弾くグレーの布地の、とても仕立ての良い高級品だと分かる。

肩幅は広く胸も広く、とても長い足をしていて、見惚れる程均整の取れた、逞しい体躯たいくだった。

新入生らは皆、一目でディアヴォロスに惹き付けられ、視線が釘付けだったけれど、二年と三年の注目点は別だった。

グーデン一行は四つある出入り口の内、ディアヴォロスが入って来た入り口から一番遠い出口へと、急ぎ足で向かう。

三年らはニヤニヤ笑いながら
「やっぱり」
だとか
「逃げ出したか!」
と小声で笑い出す。

ディアヴォロスが気づいて、一番遠い出口から出て行くグーデンに振り向く。
が、グーデンは前だけを見つめ、かなり急いで出て行った。

途端、食堂内から緊張感が消え去る。
食事を終えて出て行こうとした者らまで、とって戻って席に着いて寛ぐ。

新入生らは何がどうなったのか分からず、上級らの様子をキョロキョロ見回しては、ぽかん…と口を開けた。

ローランデはほぼ食事を終え、食の進まないしょげきったシェイルに振り向く。
「…四年の、ディアヴォロスだ」

シェイルは頷く。
そして…顔を上げる。
途端、ディアヴォロスと目が合った。

ディアヴォロスは微笑を浮かべ、軽く会釈して…食事の席に着く。
間もなくディアヴォロスを取り巻く大貴族の一人が、ディアヴォロスの食事をトレーに盛って差し出していた。
ディアヴォロスは礼を告げて、フォークを持ち上げる。
けれど彼のテーブルの者は皆、ディアヴォロスが食べ始めるまで、フォークを置いたまま。

ディアヴォロスが食べ始めてようやく、フォークを持ち上げた。

ローランデも、フィンスですら振り向いて、じっとディアヴォロスの食事風景を見つめてる。

ディアヴォロスが居るだけで、食堂内は澄んで明るい“気”で満たされ、さっきの…嫌な緊張感とはかけ離れて開放的で、陽気な気分になれた。

さっきまでこそこそしていた上級ら皆、寛ぎきって食後の一時を、楽しげに喋りながら過ごしてる…。

けれどローランデは、立ち上がる。
彼はディアヴォロスをじっ…と見つめて動かない同級生らに
「もう次の授業が始まるから、行かないと」
と告げなくてはならなかった。

新入生らは皆、ローランデの言葉に我に返り、慌てて立ち上がり、皿とトレーを置き場に返す為に立ち上がった。

食堂を出る時、出口でシェイルは、テーブルに着くディアヴォロスに振り返る。
彼は差し込む光に照らされながら、同じテーブルの者らと食べながら微笑んで話していたけど、気づいてシェイルに振り向く。

シェイルは…目が合う前に咄嗟、顔を下げた。

思い出すと頬が赤らむ。
今でも…あまり生々しさは無く、極上の夢のような体験だった。

けれど彼と…。

その時を思い出すと、シェイルはもう誰にも誤魔化せない程、耳まで赤くなりそうで…。
必死に脳裏に浮かぶ、ディアヴォロスと過ごした一時を追い払おうとした。

けれどどうしても浮かんでしまう。
あの高価な衣服の下の、良く鍛え、引き締まりきった彼の裸体…。

シェイルはムキになって、横のローランデに叫んだ。
「次って、何だっけ?!」

大人しいシェイルに、講堂へと走りながら叫ばれて、ローランデはびっくりして目を見開く。
フィンスが横を走りながら、笑って言った。
「歴史!
食事の後の講義なんて、最悪だよね?」
ローランデはそれを聞いて笑う。
「眠くなるから?」

フィンスは思い切り、頷いた。

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