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入学式 1
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シェイルはディラフィスの馬から下りて…焦がれたローフィスのいる、王立騎士養成学校の校門を見つめる。
たくさんの馬車が止まり、身分高い貴族の子息達が降りては、家族に別れを告げて、開かれた校門の中へと消えて行く…。
シェイルは佇んで、気後れした。
門から少し離れた木立。
馬から下りたディラフィスが、横に立つ。
そしてそっと…肩に手を置く。
もう…新入生の幾人かはシェイルに気づき、振り向いて見る。
けれど大抵、“入学しないな”と首を振ったり“誰の見送りだろう?”と首を捻り…そして振り返らず校門へと急ぐ。
シェイルは俯いた。
足は、震えてなかった。
けど、動かなかった。
ディラフィスの手は今だシェイルの肩に置かれ、ディラフィスはそして…。
言いたそうだった。
『俺と一緒に帰ろう』
けれど一台の馬車が止まる。
白く美しく…明らかに身分高い者が乗っていそうな…。
馬車から降りて来たのは…気品溢れ、若くてもとても高貴な雰囲気の…美少年。
白いマントに白い衣服。
白の膝丈のブーツ…。
真っ直ぐの明るい栗毛。
けれど幾筋も、濃い栗毛が混じっていた。
真っ白な肌。
整いきった顔立ち。
穏やかで優しげな雰囲気。
そして、澄みきった青い瞳…。
“天使のよう…”
シェイルは彼に、見惚れた。
馬車から降り立つ彼は、すらりとした均整の取れた体付き。
身のこなしはしなやかで、華奢に見えながらも隙が無い。
立ち居振る舞いは、とても優雅で上品。
まさしく、貴公子…。
シェイルは一歩、踏み出した。
ずっとローフィスにべったり。
他の者とは、殆ど口も聞かない。
だから友達もいない…。
そんなシェイルだったけれど、彼に視線が惹き付けられて、離れない。
一目で
“友達になりたい!”
痛烈に、そう感じた。
シェイルは横の、長身のディラフィスを見上げる。
「…ありがとう…」
そう言って、肩に置かれたままのディラフィスの手をすり抜け…。
馬車から降り立った、若き貴公子の元へと走った。
側に行くと…貴公子は振り向き…。
一瞬、シェイルの美しさに気圧されたように目を見開き…。
けれど次に、にっこり微笑んで囁く。
「…誰の見送り?」
シェイルは声が出ずに、首を横に振る。
校門を見つめ…そして貴公子を見つめた。
彼はシェイルの意図を、分かってくれた。
「新入生?
私と一緒だね?
私はローランデ。
君は?」
シェイルは、夢心地だった。
ローランデからは、控えめなコロンのいい香りがした。
触れがたい…高貴さをたたえながら、それでも親しげに、笑みを絶やさない。
「…シェイル…。
身分が低いから、一般宿舎なんだ」
それだけ言ってしまうと、ローランデは優しく微笑んで、頷いた。
「私は…北領地の大公子息だから…大貴族宿舎で、別々だね?」
普通、大貴族(公爵以上の身分の貴族のこと)は、“一般宿舎”の者を見下す。
と聞いていたのに。
ローランデは気にもしないで、手を差しのべてくれる。
「よろしく。
これからずっと同学年だね?」
シェイルは、自分はきっと頬が赤くなってると思った。
だってローランデに微笑まれると…凄く光栄で嬉しくって…同時になんだかとても、気分が舞上がってしまったから。
一緒に校門を潜る。
けれど中へ入ると途端、凄い人混みで。
シェイルはいつの間にか、人の群れに押されて、ローランデとはぐれてしまった…。
たくさんの馬車が止まり、身分高い貴族の子息達が降りては、家族に別れを告げて、開かれた校門の中へと消えて行く…。
シェイルは佇んで、気後れした。
門から少し離れた木立。
馬から下りたディラフィスが、横に立つ。
そしてそっと…肩に手を置く。
もう…新入生の幾人かはシェイルに気づき、振り向いて見る。
けれど大抵、“入学しないな”と首を振ったり“誰の見送りだろう?”と首を捻り…そして振り返らず校門へと急ぐ。
シェイルは俯いた。
足は、震えてなかった。
けど、動かなかった。
ディラフィスの手は今だシェイルの肩に置かれ、ディラフィスはそして…。
言いたそうだった。
『俺と一緒に帰ろう』
けれど一台の馬車が止まる。
白く美しく…明らかに身分高い者が乗っていそうな…。
馬車から降りて来たのは…気品溢れ、若くてもとても高貴な雰囲気の…美少年。
白いマントに白い衣服。
白の膝丈のブーツ…。
真っ直ぐの明るい栗毛。
けれど幾筋も、濃い栗毛が混じっていた。
真っ白な肌。
整いきった顔立ち。
穏やかで優しげな雰囲気。
そして、澄みきった青い瞳…。
“天使のよう…”
シェイルは彼に、見惚れた。
馬車から降り立つ彼は、すらりとした均整の取れた体付き。
身のこなしはしなやかで、華奢に見えながらも隙が無い。
立ち居振る舞いは、とても優雅で上品。
まさしく、貴公子…。
シェイルは一歩、踏み出した。
ずっとローフィスにべったり。
他の者とは、殆ど口も聞かない。
だから友達もいない…。
そんなシェイルだったけれど、彼に視線が惹き付けられて、離れない。
一目で
“友達になりたい!”
痛烈に、そう感じた。
シェイルは横の、長身のディラフィスを見上げる。
「…ありがとう…」
そう言って、肩に置かれたままのディラフィスの手をすり抜け…。
馬車から降り立った、若き貴公子の元へと走った。
側に行くと…貴公子は振り向き…。
一瞬、シェイルの美しさに気圧されたように目を見開き…。
けれど次に、にっこり微笑んで囁く。
「…誰の見送り?」
シェイルは声が出ずに、首を横に振る。
校門を見つめ…そして貴公子を見つめた。
彼はシェイルの意図を、分かってくれた。
「新入生?
私と一緒だね?
私はローランデ。
君は?」
シェイルは、夢心地だった。
ローランデからは、控えめなコロンのいい香りがした。
触れがたい…高貴さをたたえながら、それでも親しげに、笑みを絶やさない。
「…シェイル…。
身分が低いから、一般宿舎なんだ」
それだけ言ってしまうと、ローランデは優しく微笑んで、頷いた。
「私は…北領地の大公子息だから…大貴族宿舎で、別々だね?」
普通、大貴族(公爵以上の身分の貴族のこと)は、“一般宿舎”の者を見下す。
と聞いていたのに。
ローランデは気にもしないで、手を差しのべてくれる。
「よろしく。
これからずっと同学年だね?」
シェイルは、自分はきっと頬が赤くなってると思った。
だってローランデに微笑まれると…凄く光栄で嬉しくって…同時になんだかとても、気分が舞上がってしまったから。
一緒に校門を潜る。
けれど中へ入ると途端、凄い人混みで。
シェイルはいつの間にか、人の群れに押されて、ローランデとはぐれてしまった…。
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