上 下
80 / 307

暖かい慰め

しおりを挟む
 ギュンターは腕に抱くアスランの様子に気づき、囁く。
れて…揺さぶった?」

アスランは囁きながらも休まない、ギュンターの手の動きに翻弄され…。
唇に手の甲を当ててけ反りながら…とてもか細い、小さな声を漏らす…。
「…少しだけ…」

ギュンターはもっと、子細を尋ねたかった。
が、手でアスランを、煽れば煽るほど…腰をじれたように捩る。
辛そうに…。

まるで蕾の奥に欲しい自分に、絶望しているのに。
体は自分を、裏切ってる。
そんな感じに見えて、ギュンターは切なげに眉を寄せた。

誰かが辛そうにしているのを見るのは、いつも悲しかった。

昔ほんの幼い、子供の頃。
狐が小鳥をくわえていたから、石を投げた。
狐は小鳥を放し…けれど傷付いた小鳥は、ばたばたと羽根を打ち付け…もがき……血塗れで…。
ギュンターは、どうしていいか解らなかった。

手当てしようと手を伸ばし…けれど小鳥はあんまり苦しげに、ばたばたと羽ばたきもがき続けるから…手を、出しかねて…。

ギュンターはもう…見守るしか無くて、呆然としていた。
直ぐ、長男シュティツェが飛んで来た。
そして叫ぶ。
「何してる!」
…野太い声で。
いつも乱暴なこの長兄が、ギュンターは苦手だった。
が、シュティツェはもがく小鳥を見、直ぐ手に掴み…持ち上げて傷口を見…顔を、歪めた。

ギュンターにはそれが…泣き顔に見えた。
そしてシュティツェは、見せた事が無いほど真剣な顔を、自分に向ける。

シュティツェは一つ、吐息を吐くと…苦しげな、小鳥の小さな首を指で挟み、一気に力任せに捻った。

「……………っ!」

ギュンターは異論を唱えようとした。
が、シュティツェはむっつりと不機嫌で…。
ギュンターはそのシュティツェの表情で、小鳥はもう、苦しんで死ぬだけなんだと解った。

シュティツェはだらりと首を垂れた、血塗れの小鳥を手の平に乗せ…そして屈み、土を、掘り始めたから…。
ギュンターも無言で…隣に屈んで、土を掘った。

小さな穴が出来ると…シュティツェはそっ…と小鳥を土の上に降ろした。

ギュンターが土をかけると、シュティツェは吐息混じりに囁く。

「苦しんでるなら…早く楽に、してやるしかない…」

ギュンターはその時、無言で頷いた。
シュティツェは…いつもマトモに言葉を言わず、たいてい殴るのに。
その時は、言った。
「助かる奴は殺すな。
見極めが、大事だ」

ギュンターはしゃべる長兄にびっくりし…目を、まん丸にした。
けど真剣なシュティッツェに見つめられ、頷いた。

指でアスランの敏感な場所を、立て続けに…いじってやったから。
アスランは喉を曝し、吐息を吐き出し…。
だからもう、直ぐだと解った。

けれどしがみつく指は。
別の言葉を、語ってた。

じれるように、腰を捻る。
高まる度に。

ギュンターは吐息を吐いた。
そして…手に握り込んだアスランの性器を手放すと、そっ…と、その後ろ。
双丘の奥の、蕾に指を忍ばせる。

出来るだけ優しく。
傷付いてる様子が無いか、慎重に探る。
けど…奥のその場所に指が触れた時。
アスランは頬を真っ赤に染め、ギュンターの胸に顔を、伏せた。

まるでその様子は『そこ』だと。
告げてるみたいに。

ギュンターの方は、とっくに煽られ切っていたから。
自分の股間を探って取り出し、膝を迫り出しアスランの腿の下へと潜らせ、アスランの頭の後ろに左手を添え、抱き包む。

まるで…アスランは身を、預けるようにして、しがみついて来るから…。
彼は欲しいのだと、ギュンターに解った。

双丘の奥に自身の猛った性器を忍ばせ、蕾に先端を当てると、アスランの身が大きく、びくん!と揺れる。

ギュンターは顔を上げ、胸に顔を埋める、アスランの顔を覗き込む。

泣き出しそうだった。
望んだ、事なんかじゃないのに…!

その表情はそう、語ってた。

ギュンターは、大丈夫だ。と微笑む。
アスランは首を、横に倒す。
その仕草は…。
『女の子とだって、まだなのに…!』

とても…悲しげで、ギュンターはそっと囁く。
「…女を知れば…絶対そっちが良くなる…」

アスランは、本当に?と瞳を見開くから…ギュンターは微笑んでやった。
「年頃になったら…本能が勝る。
それでどうしても…男がいいなら。
男が好きって事だ。
どのみち…相手が男だろうが女だろうが、好きな相手とするのが一番いい」

アスランはこっくり頷くと、またギュンターの胸に顔を埋め、しがみついた。

その仕草があんまり…哀れで可憐で…。
ギュンターは煽られ切って、唇を、労るようにそっと…アスランの柔らかな頬に降らせた。

そして出来るだけ焦らさず、さっと…彼の奥へ自身の性器を捻り込む。
「ぅ…んっ!」

思った通り…すんなり挿入る。
グーデンが自分が挿れるつもりで、何か塗ったんだと触れた時気づいてた。

すっかり奥まで挿れ込むと、顔を…胸に埋めるアスランに寄せる。

アスランが顔を上げるから、出来るだけ見つめながら…そっ…と腰を、動かす。

彼がどこにそれが欲しいのか…解っていたから、ギュンターは、彼のいい場所をそっと…突き上げてやる。

「…あっ!」
真っ赤で仰け反るアスランは…けどもう哀れに、見えなかった。

散々、弄って焦らし…そして…拒絶出来ないように追い詰め…。

ただでさえ、縛り上げて好きな様に嬲りその上…。

その身の習性まで利用して、辱めるやり方に。
ギュンターは思いきり憤慨し、心の中で誓う。

“今度あの柔っちろい顔を見つけたら…ディングレーの兄貴だろうが、ブン殴ってやるぞ!”

が、柔らかで可愛いアスランにしがみつかれると、もうギュンターは自分を抑えられなかった。

ぐい!
と…ギュンターに奥まで捻り込まれると、一瞬…息が、止まりそうに感じる…。

なのに引かれ、擦られるとどうして…こんな、甘い快感が沸き上がるのか、アスランには解らなかった。

している事は…だってあの、ぞっとする連中と…同じ筈なのに…。

「あ…んっ!あ!……あ………っ!」

必死でギュンターにしがみつくと、彼は頬を寄せ…吐息が頬に触れ…。
その身はしなやかで柳のようで…細身なのに、とても頼もしく…。
そして若々しく感じ…ギュンターも同様、自分を抱いて快感を共有してる。

…そう…確かに、アスランらは感じられた。

甘く、感じるのはギュンターが…。
自分を抱いて、同様に感じてるせいだと…アスランはぼんやり、思った。

けど蕾の奥をギュンターのもので擦り上げられると。
かっ!と体に、火が点いたように熱くなって…。
ギュンターの、金髪の擦れる音すら、聞こえそうな距離で…。
荒い吐息が青年らしくて…アスランは突かれる度、心臓が跳ね上がりそうな位、どきどきしてる自分に、気づく。

こんな…事をしてる相手なのに。
今更…あんまりときめいて、どうにかなりそうで。
アスランは必死でギュンターの首に、しがみついたまま…沸き上がる快感のうねりに身を委ね…飲み込まれてギュンターと共に…上り詰めた。

ギュンターの唇が二度…耳たぶに擦りつけられる。

それが…合図だと、解った。

彼の腰が思い切り突き入れられ…激しい電流が身を駆け抜けて行き………そして、去った。

はぁはぁ……。

荒い吐息を自分も、ギュンターも…肩を揺らし、吐いていた。
ギュンターの腕は力の抜けた自分を離したから…。
アスランは頭を寝台の上に横たえ…そして、ギュンターの美貌が、自分を覗き込むのを見た。

あんまり…鮮やかな美貌で、アスランはびっくりした。
艶やかな金の髪と赤い唇。

切れ長の…キラリと光る、透けた紫水晶のような瞳。

瑞々しい輝きを放ち…素晴らしく美しくて…見とれた。

ギュンターは、くっ。と眉を一瞬寄せ…。
そしていきなり顔を降らせ、ちゅっ。と軽く、唇にキスをした。

身を起こすその青年が、垂れた金色の前髪をたくし上げ。
寝台の下にあった、瓶を持ち上げ、飲み干す。

ふっ、と振り向くと、突然屈み込んで…。
ギュンターの唇が、唇に合わさった途端。
その液体が、染みるようにアスランの口の中に、流れ込んで来た。

かっ!と頬が熱くなる。
途端、僅かな苦みを伴った、爽やかな酸味が。
口いっぱいに広がる。
果実酒だった。

ギュンターは身を起こしもう一度…瓶から煽る。

そして身を倒すと…アスランの唇の上に、その瓶の中身…果実酒を、数滴零しながら口付ける。

“…どうして…この人相手だと、口づけは甘いんだろう…?”
ギュンターが顔を離す瞬間、甲斐間見える美貌がそうさせるのか…。
アスランの心臓が、どくん…!と高鳴る。

ギュンターがそっと…身を、横に倒して来て、腕を回し抱き寄せるから…。
アスランは彼の腕の中で、思い出していた。

縛られて、散々あちこち触られ、もがく度に痛くて…苦しかった。
ギュンターはその戒めを…小刀で切って、自由にしてくれた。

縄が解かれた時の、解放感…。
そして、ふわっ…と身に労るように…たった今まで。
ギュンターの着ていた温もりの残る、シャツが掛けられた途端。
自分は辱められるただの道具で無く、一人の人間に、戻った気がした。

それまでの自分が、あんまり惨めで…。
涙が滲んだけど、ギュンターの力強い腕に抱かれると直ぐ、惨めさも悲しみも、消え去っていた。

ギュンターに抱かれ、運ばれると。
どういう訳か、胸が高鳴る程…わくわくした………。

彼の腕に抱かれただけで、世界が変わる。
そんな事が、あるなんて。

実感してても、驚きだった。

そして…今、事が終わった後彼の胸に顔を埋めると…。
もう…ずっと彼と一緒にいたい。

そう…思う自分を不思議に感じながら、アスランはギュンターの温もりに包まれて、安らかな眠りについた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

私の彼氏は義兄に犯され、奪われました。

天災
BL
 私の彼氏は、義兄に奪われました。いや、犯されもしました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

食事届いたけど配達員のほうを食べました

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか? そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

処理中です...