若き騎士達の波乱に満ちた日常

あーす。

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幸福な時間

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「あっ…あ!んっ…………」

甘やかな喘ぎに応えて、散々胸を可愛がってやると。
シェイルの頬は薔薇色に染まり…赤い唇が、可愛らしく満足げに甘い吐息を紬ぎ出す。

けど大抵は感じてくねり始めると暫くして…忘れ去った筈の、奴を男に引き戻す股間が辛くて…。
泣き出しそうな表情を作る。

俺はシェイルのそんな顔を見るのが切なかったから…慌てて尻の穴を探ってやる。

シェイルは俺を迎え入れるのが大好きで…挿れて果てた後
「ずっと…こうしていたい」
と大馬鹿な事抜かすから…。

つい真顔で
「お前、馬鹿か?排便しないと死ぬぞ?」
と言った途端、枕で顔を思い切り殴られた。

シェイルのエメラルド色の瞳が濡れて、切なげに瞬く。
そこは自分が男だと…思い出させる、もう一つの場所だったから………。

泣き出しそうな瞳に耐えられず、胸を倒し口付けると、シェイルの両腕が巻き付く。
そしてその手が、俺の上着を肩から剥がしにかかるから…。

俺は慌てて衣服を脱ぐ。

シェイルの手が必死にそれを手伝う。
肌を合わせるのが好きで、俺が衣服を着たままだといつも…泣き濡れた瞳で抗議する。

はだけた肌に顔と身を埋めるとようやく…シェイルは俺を自分に、捕まえた気分になるらしい…。

子供のようなシェイルは女に俺を取られ、失うと。
いつも、怯えていたから。

裸の俺を腕に抱き、口づけを受けそして…両足持ち上げるとようやく。
喜びに震えた、可愛らしい表情を俺に、向ける。

昔、シェイルは無表情だった。
見せる表情は怯えか、泣きそうな表情だけ。

伯父に追いかけられ…引き裂かれる恐怖にいつも怯え…。
俯き、無垢な瞳を上げるだけ…。

それが初めて微笑んだ時。
あんまり可愛らしくて、その表情を引き出せた自分を、誇った程だった。

シェイルの華奢な腰を抱いて、形の良い双丘の間に自分を推し進めると、シェイルの表情は俺を迎え入れる喜びに微笑み…両手が首に、巻き付く。

身を、自分から俺に寄せ…動く度に腰を合わせる。

つい…彼の中があんまり良くて失神しそうになるのを堪え…。
顔を離しシェイルの表情を見つめながら、腰を使う。

うねるような快感が沸き起こり…ぱっ!と周囲が薔薇色に変わる。
淡い色の洪水の中で、可憐で可愛い…シェイルが微笑んでいた。

脳裏に浮かぶその顔は決まって…もっと小さな頃の、ようやく笑いを取り戻したばかりのシェイルで…。

けどまだ怯えは去らず、ちょっとした事でその微笑みは消え…俺は幾度も願ったものだ。

シェイルがずっと…微笑んでいられますように。
その為に、自分は何でもするから。と。

だが腰を中心にこの上無い幸福感に浸りながら…これがそうなのか?と、自分が情けなくなる。

確かにシェイルと繋がると、彼はずっと微笑み続ける。
甘やかに喘ぎながら。

…だがその為に、シェイルは男を捨てる。

抱き止めると頬に顔を埋めその頬が…小さく、愛おしくてつい、下から甘やかに突いてやる。
柔らかな唇から甘い喘ぎが洩れるのを耳に、下から連続で突き上げ…そしてもう、たまらなくてシェイルの頬に頬を寄せ、顔を傾けて口づけし…。

鼻の頭を掠め瞼に、額に…唇を、擦りつけながら絶頂を、迎える。

「んっ…!」

シェイルの身が、小刻みに震える。
それは決まって
『たまらなくイイ』
と告げていて、結果それに煽られ、彼の中に放つ。

体の弱いシェイルの体調を、いつも心配していたから…。
中に出すのは好きじゃなく…いつも最後慌てて引き抜いていたのに、シェイルはそうしようとすると必死で…抜かれまいと俺を抱き寄せる。

華奢な腕の、非力な力をありったけ…振り絞って。
外で出すと、泣きそうな顔をされ、泣き出したいのはこっちだ。と言えず、弱り切る。

中で出したいのは山々だが、それでシェイルの体調を、気遣わなくてはならないのはこっちなのに。

この事でどれだけ辛い目に合っても…最後に抜かれるよりはマシだ。
と泣き叫んで言われた時、こちが泣きそうになった。

シェイルが可愛かったから…熱を出して苦しむ様を見るのは何より…辛かった。

怪我を負った時も…綺麗な肌に傷が付くと決まって…胸が痛んだ。

そういう思いはごめんなんだ。
とシェイルに、伝えても聞かない。

自分より俺が、何倍も危険に合い、傷だらけじゃないか!
そう叫ばれても…つい…思ってしまう。

“お前の為に負う傷は痛くない。
お前が傷を負ってる方が、ひどく堪える”

シェイルは決まって…言葉を無くし、大きなエメラルド色の瞳に涙を溢れさせ…そして、抱きつく。

胸に抱く、小さくか弱い小鳥…。

“この小鳥は育たないかもしれない。あまりに、弱すぎて…"

旅先で老婆が、そっと告げた。
「大事にしてるあんたには、辛い事かもしれない。
が、弱い者が苦しまず、早く逝くのは幸せなことだ」

俺はそれを認めるのが嫌で、ムキになって…。
ムキになって、シェイルを護った。
どんな時でも。
身を盾にし、飢えた狼の群れに襲いかかられようと。

ぐったりしながら…シェイルは身を、寄せて来る。
胸に顔を埋めしがみつき…そして決して離れたく無い。
そう言うように、ぴったりと身を寄せて。

二つに、別れるのは嫌だ。
そんな風に………。

顔を覗うと、濡れたエメラルドの瞳が向けられ…その乾いた唇に口付ける。
その間にそっ…と自分を引き抜き…シェイルの肩を抱き、休ませる…。

勿論…欲望が、昇るから抱き合う事も必要だったろうが。

シェイルにとってはこの時間が、何よりも必要だった。

幼い頃のように…たった二人切りで、常に過ごしていた頃とは違い。
別々に離れ、多くの人に取り巻かれた今では、特に。

俺が自分のもので、変わって無い事を確かめる為に。

シェイル。悪いが俺の方がお前に首ったけだ。

がもしお前が男に戻って…。
輝く笑顔で、惚れた女を横に。
青年らしく顔を誇らしげに輝かせたなら…俺はそれでいい。

どれだけ胸が痛んでも、祝福してやれる。

そう…事が終わると毎度…女よりも艶やかで美しい、男にすら見えないシェイルの。
目を閉じた顔を見つめる。

シェイルはいつも無言で身を、寄せる。
育たなかった小鳥が育ちそして…手に入れたものが俺なら…。

それが最高の幸福で、他に何も、必要とする物が無く。

そして…いつ死んでも、思い残す事は無い…。

………そんな風に、満足げに。

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