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オーガスタスの見解
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「オーガスタス」
開いた部屋の扉を一応ノックして、ローフィスは寝台に腰掛け、背を向ける赤毛の大柄な親友に、声掛ける。
オーガスタスが、剣を磨く手を止め振り向く。
扉の前に、明るい栗毛の顔立ちのいい…。
だが、はっきりと意志を示す青の瞳をこちらに向けて、ローフィスが立っていた。
「どうした?
開いてるって事は、勝手に入れって意味だと。
とっくに、知ってるだろう?」
ローフィスはぼやくオーガスタスに、近づきながらささやく。
「…グーデンが動き出した」
オーガスタスの、赤毛が揺れる。
振り向くのを待たず、ローフィスは言葉を繋ぐ。
「早速一年を呼び出し、ご賞味遊ばしてたが。
ディングレーが乱入して、救い出したそうだ」
オーガスタスは肩を揺らす。
「…大嫌いな兄と、対面してまで?
あの男、苦虫噛みつぶしたような顔してたか?」
が、ローフィスは肩を竦めた。
「邪魔すると俺に報復すると、グーデンに脅されて。
俺をひ弱な可愛い子ちゃん扱いし、たいそう俺の事、心配しちまって」
オーガスタスが、首を竦める。
「そりゃ…滅多に無い、光栄なんじゃないか?
お前をマトモに心配する奴なんか、実際居ないだろう?
……だがグーデンはタチが悪い。
ヘタすると、腕の一本も折られるぞ?
あいつは自分が非力な分、力自慢を飼っている」
ローフィスは横まで来ると、オーガスタスが剣を磨く様を覗き込んだ。
「まあ…来る、と解ってりゃ、接近戦に備えるさ」
オーガスタスは剣の輝きを確かめ、再び布を刃に滑らせて笑う。
「お前も、タチ悪かったな」
「言ってろ。
だがマジな話…一年はあのアイリスが、統べると思うか?」
オーガスタスが、朗らかに笑う。
「ボスにしちゃ、お綺麗過ぎるか?
背はあるが」
「背だけじゃな…。
身分もあるが…。
あの女顔と優雅なお坊ちゃんぶりで、グーデンと張り合えると思うか?」
オーガスタスは剣を磨く、手を止め顔を上げる。
「だが俺達は、なかなか一年まで目が届かないぞ?」
「じゃ、ご注進は二年のローランデにするしかないな…。
で?どうする?
直ある学年無差別剣の練習試合。
行ったついでに
『手を抜いてくれ。最終学年なんだ。
頼むから最後に、華を持たせてくれ』
って、奴に頼んどくか?」
その悪質な冗談の返礼に、オーガスタスは笑って手で横のローフィスを振り払い、ローフィスはその手が自分をぶつ前に、笑って軽やかに、身をかわした。
ローフィスが部屋を出るその背に、オーガスタスが言葉を投げる。
「試合が終わるまで。
一年は、誰が筆頭になるか解らんぞ?」
ローフィスは振り返らず、つぶやいた。
「四年はグーデンが認めなくても、間違い無くお前だしな!」
ばさっ!
オーガスタスが剣磨きの布を、ローフィスの背に投げた。
が、それが届く前に。
ローフィスは軽やかに部屋を出、布は当たる場所無く扉の前に、落ちた。
「やれやれ…」
オーガスタスは寝台の上に剣を乗せ、腰を上げて立ち上がる。
ローフィスの消えた、開け放たれた扉の前まで来て屈み、布を取り上げ、つぶやく。
「…あいつの心配なんて、ディングレーも無駄な事を………」
そして腰を伸ばすと、ふと…。
いつも尊大に顎を上げ、ディングレーが通ると三年がこぞって道を開ける程、ガタイのいい男前の王族が。
血相変えて慌てふためく様を思い描き、くすくすと笑い続けた。
開いた部屋の扉を一応ノックして、ローフィスは寝台に腰掛け、背を向ける赤毛の大柄な親友に、声掛ける。
オーガスタスが、剣を磨く手を止め振り向く。
扉の前に、明るい栗毛の顔立ちのいい…。
だが、はっきりと意志を示す青の瞳をこちらに向けて、ローフィスが立っていた。
「どうした?
開いてるって事は、勝手に入れって意味だと。
とっくに、知ってるだろう?」
ローフィスはぼやくオーガスタスに、近づきながらささやく。
「…グーデンが動き出した」
オーガスタスの、赤毛が揺れる。
振り向くのを待たず、ローフィスは言葉を繋ぐ。
「早速一年を呼び出し、ご賞味遊ばしてたが。
ディングレーが乱入して、救い出したそうだ」
オーガスタスは肩を揺らす。
「…大嫌いな兄と、対面してまで?
あの男、苦虫噛みつぶしたような顔してたか?」
が、ローフィスは肩を竦めた。
「邪魔すると俺に報復すると、グーデンに脅されて。
俺をひ弱な可愛い子ちゃん扱いし、たいそう俺の事、心配しちまって」
オーガスタスが、首を竦める。
「そりゃ…滅多に無い、光栄なんじゃないか?
お前をマトモに心配する奴なんか、実際居ないだろう?
……だがグーデンはタチが悪い。
ヘタすると、腕の一本も折られるぞ?
あいつは自分が非力な分、力自慢を飼っている」
ローフィスは横まで来ると、オーガスタスが剣を磨く様を覗き込んだ。
「まあ…来る、と解ってりゃ、接近戦に備えるさ」
オーガスタスは剣の輝きを確かめ、再び布を刃に滑らせて笑う。
「お前も、タチ悪かったな」
「言ってろ。
だがマジな話…一年はあのアイリスが、統べると思うか?」
オーガスタスが、朗らかに笑う。
「ボスにしちゃ、お綺麗過ぎるか?
背はあるが」
「背だけじゃな…。
身分もあるが…。
あの女顔と優雅なお坊ちゃんぶりで、グーデンと張り合えると思うか?」
オーガスタスは剣を磨く、手を止め顔を上げる。
「だが俺達は、なかなか一年まで目が届かないぞ?」
「じゃ、ご注進は二年のローランデにするしかないな…。
で?どうする?
直ある学年無差別剣の練習試合。
行ったついでに
『手を抜いてくれ。最終学年なんだ。
頼むから最後に、華を持たせてくれ』
って、奴に頼んどくか?」
その悪質な冗談の返礼に、オーガスタスは笑って手で横のローフィスを振り払い、ローフィスはその手が自分をぶつ前に、笑って軽やかに、身をかわした。
ローフィスが部屋を出るその背に、オーガスタスが言葉を投げる。
「試合が終わるまで。
一年は、誰が筆頭になるか解らんぞ?」
ローフィスは振り返らず、つぶやいた。
「四年はグーデンが認めなくても、間違い無くお前だしな!」
ばさっ!
オーガスタスが剣磨きの布を、ローフィスの背に投げた。
が、それが届く前に。
ローフィスは軽やかに部屋を出、布は当たる場所無く扉の前に、落ちた。
「やれやれ…」
オーガスタスは寝台の上に剣を乗せ、腰を上げて立ち上がる。
ローフィスの消えた、開け放たれた扉の前まで来て屈み、布を取り上げ、つぶやく。
「…あいつの心配なんて、ディングレーも無駄な事を………」
そして腰を伸ばすと、ふと…。
いつも尊大に顎を上げ、ディングレーが通ると三年がこぞって道を開ける程、ガタイのいい男前の王族が。
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