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マレー
しおりを挟む綺麗な少年…。
マレーは子供の頃からずっと…そう言われ続けて来た事を思い出した。
家庭教師は彼の利発さを褒め、父は自分を、最愛の自慢の息子。
と、いつも…領地見回りから帰ると、髭面を押しつけて頬をぐりぐりし、マレーは笑って
「痛いよ!」
と叫ぶけど…父の愛情が、嬉しかった。
けど…母は別の男性と駆け落ちし…。
それ以来、父は酒浸り。
やがて、新しい義母を迎えた。
彼女は明るい栗毛の、可愛く幼い男の子を連れていて…。
マレーは厄介者になった………。
『教練』入学の少し前…マレーは父に呼ばれて書斎の扉を開けた。
父は肩落としささやく。
「『教練』の…入学を決めた。
荷造りして置け」
マレーが叫んだ。
「領地顧問をするって…お前は計算が得意だから!
任せるってそう…言ったのに?!」
だが、カーテンの向こうから…様子を伺っていた義母が顔を、出した。
明るい栗毛の青い瞳の…少女のような顔立ちの上に、その嫌味な笑みを浮かべて。
マレーはまだ、思い出せる。
真っ赤に塗られた唇が、勝利に微笑んだのを。
入学が間近に迫った時…義母の、弟が来た…。
ひょろりと背の高く…けど軽い感じの顔のいい…。
彼は、教練について色々と教える。
そう言って、家庭教師を気取り、マレーに張り付いた。
そして…夜。だった。
寝室に彼は現れ…それが始まった。
もがくと…言った。
「これを知って置かないと…教練では辛いぞ!」
無理矢理寝台に押しつけられ…終いには、両手を後ろ手に縛り上げられて…。
マレーは四つん這いになって後ろから……初めての男を、受け入れさせられた。
口付けられ…胸を弄られ…そしてまた挿入された。
その晩は三度…体位を変えて彼を後ろで飲み込み、欲望を吐き出され…そしてそれは、入学当日まで毎晩、続いた。
「あっ…ん!」
「ほらもう…辛く無いだろう?」
彼はマレーの顎を捕まえ、持ち上げてささやく。
「それに…うんと、イイ筈だ…」
そして腰を、突き入れられる。
「ああっ…んっ…!」
マレーは自分が上げる、甘ったるい声に耳を塞ぎたくなった。
けど…突かれるとどうしようも無く、身がくねる。
体がかっ!と熱くなり…そして…股間が立ち上がって疼く。
「…ほら…教えたろう?
達かせて欲しかったら…どうするんだっけ?」
マレーは言われるまま…自分から引き抜かれた、彼のモノを口に銜える。
「そう…イイ子だ…そうだ…上手くなったな?」
彼はそうしてマレーの体を抱き寄せ…自分の上に落として下から突き上げる。
「あんっ…!
あっ…あ…っ!」
彼が自分の痴態に興奮するの、がマレーには解っていた。
そうすればする程、早く終わる事も。
一度終われば暫くは休めた。
その時男は大抵胸に、マレーを抱き寄せたから。
甘えた振りをすれば、随分優しくなる。
巻き毛を優しくなぜ…そして胸に抱き止める。
少女にそれを、するように………。
マレーは近所の少女ともう、経験があった。
自分が彼女に、それをした。
終わった後…華奢な彼女を胸に抱き寄せ…暫く一緒に、じっとしていた………。
彼女は胸に縋り…それは幸福な、思い出だった。
入学式の当日…玄関で見守る、義母をじっと見つめ…屋敷を後にした。
父は俯いたまま。
涙も、出なかった……………。
そして、入学式の時、上級生達が自分を見る目付きで…マレーは義母の弟の言った事が本当だと解って…身が、震った。
彼は別れ際にささやく。
「きっと…俺を思い出す。
俺の方が、何倍も良くて優しかった。と、きっと」
…だから…。
同級の、目付きの悪い男達が取り囲み…アスランとハウリィを連れて来い。
そう…命じられても抗う術がないと、知っていた。
頭の中に義母と…その弟の顔が浮かび続け、一時も消えない。
マレーは言われるまま、二人を連れ出した。
小屋の中で二人が獲物として召し出され…ハウリィの叫びが耳に響いた。
「嫌…いやっ!」
顔が揺れたが、上げなかった。
ハウリィは何をされるか知っていて…怯えきっていた…。
そして目前で、一番身分の高そうな…けれど皆の中では小柄に見える…悪魔のように綺麗な顔の黒髪の上級生が、アスランを嬲り始めた…。
マレーは目を、伏せたまま。
気配で何が行われているのかを察した。
確かに奴の…言った通りだ。
初めてで…大勢に押さえつけられ、衣服をはぎ取られ…。
あんなやり方をされるくらいなら、奴に嬲られた方が何倍もマシか、しれなかった…。
“だがあの義母さえいなければ…!”
マレーは心の中で怒鳴った。
男に、女のように抱かれる事も、今ここに居る事すら無かった!
父はいつも…愛情深かった…。
母はそんな父を、愛してる。
そう…思ってた。
あの…時までは。
母が昔、結婚の約束をし。
けれど相手の家に認められず、泣く泣く別れた元恋人…。
今は妻を亡くし一人だと…そう言った彼との、久しぶりの再会を。
…母は、喜んだ。
父も僕も思わなかった…。
母が現在を捨て、過去を…選ぶだなんて。
母が置き手紙を残し、夜の内に姿を消したその朝…。
父は手紙を掴み叫び、そして玄関に向かって飛び出して行った。
マレーは後を追ったが…。
とっくに消え去った、背を向けた母の幻影が…。
玄関から門に続く道を、去って行く姿が、父にも…。
そしてマレーにすら見え、父はその場に崩れ落ち…マレーは風の音だけを聞いていた。
吹き抜けていく風の、音だけを。
その時の事を思い返すと、ただ呆然とし。
感情が…そこで、止まってる。
そう、マレーは感じた。
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