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小さな二人のプリンセスと、美魔女三人の登場
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「アイリスお兄様!」
「帰ってらしたの?!」
まだ幼い二人の妹、セフィリアとアリシャがその小さなお姫様よろしく、素晴らしく美男で自慢の兄に、可愛らしくまとわりつく。
姉のセフィリアは、叔父達の様子に気づくと、そっとささやく。
「エルベス叔父様はどうして、笑ってらっしゃるの?」
妹のアリシャも、可愛らしく尋ねる。
「アドルッツァ叔父さまもよね?
そんなに楽しいおはなし?」
アリシャはまだ幼い、あどけない愛らしさでアドルッツァに、きらきらした青紫の瞳を向け、返答を待つ。
姉のセフィリアは叔父や兄そっくりの、焦げ茶の巻き毛と濃紺の瞳をしていた。
が、妹のアリシャは少し明るい栗色の巻き毛で、青紫の瞳をし、可憐で華やかだった。
二人の叔父は問われて、顔を見合わせる。
「お姫様達にはまだ、聞かせられない話だ」
アドルッツァがそう言うと、アリシャは可愛らしく唇を、尖らせる。
「おとなのお話?
こどもだから、聞かせられない。って私たちを、赤ちゃんあつかいなさるの?」
「あら…!
それなら私の管轄ね!」
明るい栗毛の華やかな美女が、茂みの中から突然、顔を出す。
「…ニーシャ叔母様!」
エルベスの姉に当たるこの美女は、二人の小さなプリンセスの、天敵だった。
「おチビさん達はあっちに、行ってらっしゃい。
お祖母様に買ってもらったばかりの、お人形がお似合いよ!」
セフィリアがきつい濃紺の瞳を、背の高い叔母に向け、告げる。
「ニーシャ叔母様と、お兄様はあんまりお話されないよう、母様に言われてる筈だわ!
そうでしょう?お兄様!」
腕を絡ませ、その顔立ちの美しい小さなお姫様は、兄の同意を、得ようとする。
が、ニーシャも負けてはいない。
「私の話は、アイリスのこれからにとても、重要なお話なのよ?」
アリシャも、敵意を剥き出しにする。
「嘘よ!
ニーシャ叔母様みたいに、ふしだらになるから!
お兄様のきょういくじょうよろしく無い。って…。
お兄様はお父様のお屋敷にやられて、私達と別れ別れに、なっちゃったんだわ!」
それを聞くと、ニーシャは目を細めて笑う。
「何も知らないおチビさん!
アイリスはシャリスの後継ぎだから、館の主として公爵家に移っただけよ!
私のせいの筈が、無いわ!」
「違うわ!
ニーシャ叔母様のせいよ!!」
二人のお姫様は大好きな兄がいなくなって、寂しくて涙を滲ませ、叔母を責めた。
「大嫌いよ!
お兄様に構わなくったって、いつだってたくさん、男の方が出入りしてらっしゃる癖に!」
「お兄様を私達から取り上げたりしたら、一生恨んでやるわ!」
エルベスもアドルッツァも…その、小さなプリンセス達と貫禄たっぷりの妖艶な女王の戦いに、お互い肩を、竦め合った。
「何の騒ぎ?」
「お祖母様!!!」
二人はその気品の塊の、老いたとは言え美貌の名残りを残すかつての美女の腰に、まとわりつく。
「あらアイリス!
帰っていたの?
まあまあ…教練はそれは…。
乱暴者ばかりだから、さぞかし大変なんでしょうね?
大公家に残って、エルベスの手伝いをしていたら。
あんな下品な場所に、出向かなくても良かったのに!
貴方ったら名ばかりの父親、シャリスの公爵家を継ぐだなんて、出て行ってしまって………。
本当に、いつでも公爵の名を捨てて、この家に戻って来ていいのよ?
そうすれば軍だなんて野蛮な場所で…戦いに行かなくてもいいのに!
もう…私は心配で心配で……。
貴方みたいな綺麗な少年が、教練なんて無法者ばかりの場所で…。
ひどい扱いは、されて無いんでしょうね?
エルベス。
ちゃんと学校側には、通達してあるの?
アイリスが怪我でもしたら、私達黙っていませんと」
エルベスはアイリスを見たし、アイリスは直ぐ気づくと、にっこり笑った。
「エルベスから、五月の大舞踏会の衣装が届いたと。
それでこちらに寄ったんです。
お祖母様ですよ?
公爵家には、舞踏会の衣服を見立てる目利きがいないから。
エルベスに頼むように。
そう、おっしゃったのは」
エルベスも、口裏合わせる。
「直ぐ寸法が伸びてしまって。
育ち盛りですからね。
服屋を別室に、待たせてあります」
アドルッツァも、すかさずささやく。
「年頃ですから、男同士の話がしたくて、ご挨拶に寄りませんでした」
祖母は意味を察し、頷く。
そして二人の小さな兄を慕う、妹達に優しく言い聞かせた。
「お年頃のお兄様は、叔父様達とのお話は、とても大事なの。
邪魔しないよう、こちらにいらっしゃい」
が、小さなプリンセス達は、二人揃って口を、不満げに尖らす。
「だって…ニーシャ叔母様は?!」
「そうよ!
叔母様は女性でしょう?」
祖母は二人に、頷くと告げる。
「では、アニタとお行きなさい。
午後のお菓子を頂いて、昼寝をなさい。
ここに私も、残ります」
二人は普段とても優しいけれど、いざとなると威厳を発揮する祖母と。
華やかで豊満な叔母を、不満そうに見つめ。
子守の女中、アニタに促され、大好きな兄を幾度も振り返りながら背を向ける。
アイリスは彼女達のしょげた様子を見、苦笑すると、優しくささやく。
「夕食はご一緒に、頂くから。
でも宿舎に帰らなくてはならないから、早い時間に頂くけれど」
二人はぱっ!と顔を輝かせる。
「昼寝の後、うんと走り回って、いつもより早くにお腹が空くようにするわ!」
セフィリアが叫ぶと、アリシャは取って戻って、アイリスの首に愛らしく抱きつく。
「お約束よ!
アリシャとの。絶対の!」
アイリスはくすぐったそうに微笑むと、小さな妹を、抱き止めて言った。
「絶対守るから」
アリシャは愛くるしい笑みを残し、待っているアニタとセフィリアの元へ、駆け出して行った。
彼女達の姿が茂みの向こうに消えると、ニーシャがつぶやく。
「けたたましい事!」
祖母が、笑う。
「貴方とエラインもそうだったわ」
が、アイリスの母親エラインまでも。
茂みの奥から姿を現すと、椅子に腰掛け、ささやく。
「あら。私はアリシャのように、さえずったりしないわ。
アリシャはどちらかと言うと、お姉様に似ていらしてよ」
この、三強の出現に、エルベスもアドルッツァも揃って、アイリスを盗み見た。
「帰ってらしたの?!」
まだ幼い二人の妹、セフィリアとアリシャがその小さなお姫様よろしく、素晴らしく美男で自慢の兄に、可愛らしくまとわりつく。
姉のセフィリアは、叔父達の様子に気づくと、そっとささやく。
「エルベス叔父様はどうして、笑ってらっしゃるの?」
妹のアリシャも、可愛らしく尋ねる。
「アドルッツァ叔父さまもよね?
そんなに楽しいおはなし?」
アリシャはまだ幼い、あどけない愛らしさでアドルッツァに、きらきらした青紫の瞳を向け、返答を待つ。
姉のセフィリアは叔父や兄そっくりの、焦げ茶の巻き毛と濃紺の瞳をしていた。
が、妹のアリシャは少し明るい栗色の巻き毛で、青紫の瞳をし、可憐で華やかだった。
二人の叔父は問われて、顔を見合わせる。
「お姫様達にはまだ、聞かせられない話だ」
アドルッツァがそう言うと、アリシャは可愛らしく唇を、尖らせる。
「おとなのお話?
こどもだから、聞かせられない。って私たちを、赤ちゃんあつかいなさるの?」
「あら…!
それなら私の管轄ね!」
明るい栗毛の華やかな美女が、茂みの中から突然、顔を出す。
「…ニーシャ叔母様!」
エルベスの姉に当たるこの美女は、二人の小さなプリンセスの、天敵だった。
「おチビさん達はあっちに、行ってらっしゃい。
お祖母様に買ってもらったばかりの、お人形がお似合いよ!」
セフィリアがきつい濃紺の瞳を、背の高い叔母に向け、告げる。
「ニーシャ叔母様と、お兄様はあんまりお話されないよう、母様に言われてる筈だわ!
そうでしょう?お兄様!」
腕を絡ませ、その顔立ちの美しい小さなお姫様は、兄の同意を、得ようとする。
が、ニーシャも負けてはいない。
「私の話は、アイリスのこれからにとても、重要なお話なのよ?」
アリシャも、敵意を剥き出しにする。
「嘘よ!
ニーシャ叔母様みたいに、ふしだらになるから!
お兄様のきょういくじょうよろしく無い。って…。
お兄様はお父様のお屋敷にやられて、私達と別れ別れに、なっちゃったんだわ!」
それを聞くと、ニーシャは目を細めて笑う。
「何も知らないおチビさん!
アイリスはシャリスの後継ぎだから、館の主として公爵家に移っただけよ!
私のせいの筈が、無いわ!」
「違うわ!
ニーシャ叔母様のせいよ!!」
二人のお姫様は大好きな兄がいなくなって、寂しくて涙を滲ませ、叔母を責めた。
「大嫌いよ!
お兄様に構わなくったって、いつだってたくさん、男の方が出入りしてらっしゃる癖に!」
「お兄様を私達から取り上げたりしたら、一生恨んでやるわ!」
エルベスもアドルッツァも…その、小さなプリンセス達と貫禄たっぷりの妖艶な女王の戦いに、お互い肩を、竦め合った。
「何の騒ぎ?」
「お祖母様!!!」
二人はその気品の塊の、老いたとは言え美貌の名残りを残すかつての美女の腰に、まとわりつく。
「あらアイリス!
帰っていたの?
まあまあ…教練はそれは…。
乱暴者ばかりだから、さぞかし大変なんでしょうね?
大公家に残って、エルベスの手伝いをしていたら。
あんな下品な場所に、出向かなくても良かったのに!
貴方ったら名ばかりの父親、シャリスの公爵家を継ぐだなんて、出て行ってしまって………。
本当に、いつでも公爵の名を捨てて、この家に戻って来ていいのよ?
そうすれば軍だなんて野蛮な場所で…戦いに行かなくてもいいのに!
もう…私は心配で心配で……。
貴方みたいな綺麗な少年が、教練なんて無法者ばかりの場所で…。
ひどい扱いは、されて無いんでしょうね?
エルベス。
ちゃんと学校側には、通達してあるの?
アイリスが怪我でもしたら、私達黙っていませんと」
エルベスはアイリスを見たし、アイリスは直ぐ気づくと、にっこり笑った。
「エルベスから、五月の大舞踏会の衣装が届いたと。
それでこちらに寄ったんです。
お祖母様ですよ?
公爵家には、舞踏会の衣服を見立てる目利きがいないから。
エルベスに頼むように。
そう、おっしゃったのは」
エルベスも、口裏合わせる。
「直ぐ寸法が伸びてしまって。
育ち盛りですからね。
服屋を別室に、待たせてあります」
アドルッツァも、すかさずささやく。
「年頃ですから、男同士の話がしたくて、ご挨拶に寄りませんでした」
祖母は意味を察し、頷く。
そして二人の小さな兄を慕う、妹達に優しく言い聞かせた。
「お年頃のお兄様は、叔父様達とのお話は、とても大事なの。
邪魔しないよう、こちらにいらっしゃい」
が、小さなプリンセス達は、二人揃って口を、不満げに尖らす。
「だって…ニーシャ叔母様は?!」
「そうよ!
叔母様は女性でしょう?」
祖母は二人に、頷くと告げる。
「では、アニタとお行きなさい。
午後のお菓子を頂いて、昼寝をなさい。
ここに私も、残ります」
二人は普段とても優しいけれど、いざとなると威厳を発揮する祖母と。
華やかで豊満な叔母を、不満そうに見つめ。
子守の女中、アニタに促され、大好きな兄を幾度も振り返りながら背を向ける。
アイリスは彼女達のしょげた様子を見、苦笑すると、優しくささやく。
「夕食はご一緒に、頂くから。
でも宿舎に帰らなくてはならないから、早い時間に頂くけれど」
二人はぱっ!と顔を輝かせる。
「昼寝の後、うんと走り回って、いつもより早くにお腹が空くようにするわ!」
セフィリアが叫ぶと、アリシャは取って戻って、アイリスの首に愛らしく抱きつく。
「お約束よ!
アリシャとの。絶対の!」
アイリスはくすぐったそうに微笑むと、小さな妹を、抱き止めて言った。
「絶対守るから」
アリシャは愛くるしい笑みを残し、待っているアニタとセフィリアの元へ、駆け出して行った。
彼女達の姿が茂みの向こうに消えると、ニーシャがつぶやく。
「けたたましい事!」
祖母が、笑う。
「貴方とエラインもそうだったわ」
が、アイリスの母親エラインまでも。
茂みの奥から姿を現すと、椅子に腰掛け、ささやく。
「あら。私はアリシャのように、さえずったりしないわ。
アリシャはどちらかと言うと、お姉様に似ていらしてよ」
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