若き騎士達の波乱に満ちた日常

あーす。

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アイリスに見惚れ囚われるスフォルツァ

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 スフォルツァはアイリスが気を変えてくれる事を、心から祈った。

あの後アイリスを見送り寝台に横になって、最高に幸福な気分を味わいそして…地獄を思い出した。

よりによって初日に、最高の相手と過ごすなんて…。

つまりこの先アイリスが気を変えない限り、最高のアイリスを思い浮かべそれ以下の相手と、苦笑いで誤魔化しながら付き合い四年間過ごすんだ。

そう思い当たると、泣きたくなって来た。

確かに故郷ではアイリスとは全く違う趣の美少年の、恋人を持っていた。
が彼はまだ、12に成ったばかりの若年。

婚約寸前の美少女とも付き合っていたが、自分の身分を考えたら本気で婚約するならともかく、そうで無いなら世間体が悪過ぎて迂闊に手なんか出せる筈も無い、清い付き合いだ。

群がる少女達は、自分が大貴族の子息だから。
と、こぞって争い、いつも行く先で必ず、彼女達は自分を取り合い、諍う。

考えてみればアイリスは、自分よりもっと身分の高い大貴族だ。
自分同様、あれ程見目が良ければ女達が放って置くはずも無い。

彼が本性を現した時、好敵手。と感じたのはまんざら嘘じゃない。
そう感じたものの、アイリスに
『自分を詮索するな』
と条件を出され、スフォルツァはすっかり落ち込んだ。


 翌朝、朝食の席でその大貴族の子息達のみの豪勢な食事を前に、やはり朝日の中のアイリスの美しさに見惚れながら、心では彼が
「やっぱり君とこれきりにするのは、馬鹿な考えだと思う」

そう思っていてくれるかを、必死でその表情を伺い、探る。

周囲はアイリスが言った通りすっかり自分をボスと認め、かつて皆がボスと認識していた、一番身分の高いアイリスの事をまるで、今度はお姫様のように伺い見ている。

スフォルツァは皆がアイリスをお姫様扱いするその状況に、溜息が洩れた。

一年の一限目は決まって講義だと、年長者に教えられていた。

がやっぱりその通りで、一通りこれからの注意事項等を聞かされ、軽く知識を探るように、幾つかの質問を答えさせられた。

アイリスが当てられた時、彼があんまり卒無く穏やかに。
そして気品溢れ、優雅なたたまずまいで的確な回答を披露したのに、見惚れる。

…やはり、頭が良い様だ…。

続く授業は、乗馬だった。
初日と言う事もあり、軽く学校の周囲を駆けるだけだったが、アイリスの騎乗ぶりは素晴らしく、慣れた手綱捌きでだが、その馬上姿は相変わらず優雅そのもの。

途中、馬を扱いかねて手こずる、学友に手綱の取り方を教える、余裕すら見せた。

昼食は全校生徒が一斉に集う。

一学年が一番多く、五十名近くいたが、学年が上がるに連れて人数が減る。
ついて行けなければ学校を去るしか無く、脱落者は毎年決まってどの学年にも居た。

授業が遅れ、食堂に入ると他の学年の視線を、一斉に浴びる羽目になる。
が、先に居たのは四年。

皆デカい図体の、三年間揉まれ、生き残って来た精鋭だけあって。
最早一年と揉め事を起こそうとする者は、皆無に見えた。

が、アイリスがチラ…。と視線を走らせる。
一般宿舎の、少女のようなか細い美少年らに、目を付ける目付きの悪い猛者も確かに目に、飛び込んで来る。

アイリスを見ると、彼は気づき自分を見つめ
『あの弱い同学年の連中を、上級生から護るのは君の、役目だ』
とその、はっきりと意志を示す濃紺の瞳で告げていたりしたから…。

つい、おどおどと、既に食堂のテーブルに付くデカい体の四年達の横を、絡まれないか。と心配げに歩く彼らの横に付き、四年達をジロリ。と睨み据え彼らを通らせた。

そして、アイリスを見る。
その気は無かったが多分自分は、態度でこう言ったようだった。

『君が望むから、俺はそうした』

アイリスが一瞬、真っ直ぐ見つめる俺から俯き、視線を背けたので…。

自分の無意識に取ったその態度に、気づいた。

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