2 / 307
学内情勢を語り合う二年になった四人
しおりを挟む
シェイルは笑顔のローランデとフィンスをそっと見つめ、思い返す。
…入学当初、ディアヴォロスやローフィスの目の届かない所で、上級生に絡まれた。
ヤッケルはいつも気づいて、盾になってくれたけど…。
「下賎の身分の、田舎ザルは引っ込んでろ!」
そう…突き飛ばされたヤッケルの背を助け、ローランデが割って入る。
ヤッケルよりは背が高いローランデだけど、相手の上級生はガタイに物言わせる長身のデカブツ。
でもローランデは、臆せず言い放つ。
「無礼は貴方だ。
下級の見本と成るべき上級生が、その態度ですか?」
静かな威圧が、相手のデカブツを包むのが解る。
ヤッケルと共に、息を飲んだ。
“気”と言う物が見えるとしたら…。
ローランデから圧倒するような気迫が静かに漲り、上級生の顔を、歪ませていた。
そのデカブツは、ローランデの気迫に引いた。
背を向け、去って行っのだ。
…信じられなかった。
自分は元よりヤッケルだって、あのデカブツに、崩せない壁が押し迫るような恐怖を感じていたので。
シェイルはローランデを見た。
彼は優しく微笑んで、こう言った。
「もう、大丈夫だから」
澄んだ…透明の清々しい“気”。
ローランデはいつもそれに包まれていたし、それは時には同学年には思えない程…崇高に見えてやっぱり彼は…特別なんだ。
と皆に思わせた。
本人にその自覚は、まるで無かったけれど。
フィンスは実直で真面目な正義感の強い少年で、けど大貴族にはありがちな、体格良く、名家の誇りにかけて幼い頃から礼儀作法と剣技を徹底的に叩き込まれ、この年(15才)にして既に武人の風格を持っていた。
真っ直ぐの濃い栗毛。
迷いのない蒼の瞳。
横顔が整って美しく、だがいつも控えめ。
けれど必要な時は決然とした態度を取れる、男らしさがあった。
ヤッケルがぼやく。
「あいつに比べたら俺は丸でちんぴらだ」
げとローランデもフィンスも。
気が良く楽しいヤッケルが大好きで、いつもヤッケルの姿を見つけると笑顔で迎える。
彼らを
「お上品さん」と呼んで距離を取っていたヤッケルも、次第に二人相手に、気軽に軽口を叩くようになった。
ヤッケルは少し…義兄ローフィスに似ていた。
自分からしたら背が高い。と思うのに、ローフィスはいつも
「『教練』。
ましてやその先進む、近衛ではな。
小柄な域だ」
と自分の体格を嘆き、ぼやく。
親友に同学年で身長2mを越す体格のいい、オーガスタスなんかが居るから。
よけい、そう思ってるようだった。
オーガスタスとローフィスは「左の王家」グーデンと同学年だったけれど。
学年の皆は美少年を愛玩とし、弄ぶのが大好きなロクデナシの王族、グーデンでは無く。
一年の頃から長身と体格の良さを誇る、堂とした態度のオーガスタスを、ボスと崇めた。
基本、大男の嫌いなローフィスでさえオーガスタスを気に入ってたけど、オーガスタスもローフィスを気に入り、二人は親友で、いつも並んで歩いてたから…。
ローフィスはたいそう小柄に見えていた。
でも“体格で劣るから”の理由で、自らの主張を引っ込める気なんか、ローフィスには全然無くて。
その分気概と…そして要領良く物事を自分の望む方向に、持って行くやり方を知っていた。
ヤッケルもそうだった。
小柄だけどその身軽さと戦術を使って、剣の試合では学年上位に食い込んでいる。
自分だって教練に上がるから。
とローフィスと…ローフィスが『教練』入学後、ディアヴォロスより二つ年下の従弟、ディングレーにさんざ仕込まれて、それなりに剣が使えるから。
ヤッケルと、並ぶ程の腕。
けど…練習以外で刃物を使うのは禁止。
ましてや喧嘩では。
ヤッケルはたまに
「体格差を埋めるのに剣を使えれば、もう少しハンデが埋められるのにな」
とぼやいてた。
でも結局、学園生活は体格と腕力がモノを言う。
弱い一年は、いつでも乱暴で横暴な上級生らの、格好の餌食。
騒ぎが大きくなれば、学校一の実力者、ディアヴォロスが。
それ程でも無い時は、ローフィスの親友で学校ではその大柄な体に見合った大物。
誰もが一目置く、オーガスタスが姿を見せる。
おおらかな赤毛の男がにこやかな笑みを浮かべ、長身の肩を揺らし、絡む上級生の前に立つ。
微笑はオーガスタスから消えたりしないのに、上級生は自分の目前の、自分より更にデカイ男に怯みきって、さっさと逃げ出すのが常。
オーガスタスは肩を竦め、朗らかな笑みを向けて毎度言った。
「弱いモノには強気なビビリだな。
今度来たら笑ってやれ」
彼は親しみ易い鳶色の瞳をし、そのガタイのデカさに関わらず、下級に大勢のファンを持っていた。
信頼出来て、気が良くて。
いつも重い物を持ってる下級生の頭上から、ひょい。と荷物を持ち上げ、ウィンクして代わりに運んでくれたりする。
ディアヴォロスは王家の血を継ぐ大貴族で、あまりに気品があり近寄りがたかったけど。
オーガスタスは親しみやすさで、誰にでも好かれていた。
でもともかく…去年はそれでもディアス(ディアヴォロスの愛称)が居た…。
彼が姿を見せ、ジロリと睨むだけで、その場の暴挙は影を顰める程。
学校の秩序は、彼が護っていた。
彼に逆らう者は誰一人居ず、どれだけの乱暴者でもディアヴォロスの登場に、その行動を控えた。
けど………。
ローランデが、思い悩む風情のシェイルに気づき、ヤッケルもささやく。
「…ディアスが居ないもんな…」
フィンスが、反論する。
「四年にオーガスタスが居る」
ヤッケルは顔を上げ、落ち着き払った大貴族を不満げに見つめた。
「そりゃ、喧嘩となりゃオーガスタスは誰より強い。
けど四年に成った王家のグーデンは、いとこのディアヴォロスが居なくなって、今度は自分が学校一身分が高い。
と、幅を利かせる気だ」
シェイルもそれを聞いて、そっとつぶやく。
「ディアヴォロスは身分も最高に高かったから…大貴族達だって誰も刃向かえなかったけど…。
オーガスタスの身分は、あまり…高く無いだろう?
自分より身分の高い相手と喧嘩し、怪我でもさせたら…」
ヤッケルも頷く。
「ヘタすりゃ、オーガスタスは退学。
俺はオーガスタスの大ファンだから、彼に他人のせいで退学になって欲しくない!」
フィンスは呆れる。
「オーガスタスが保身の為、暴挙を働く奴を見逃すと思ってるのか?
彼はそんな事、絶対しない」
ローランデがシェイルとヤッケルの浮かない表情を見、そっとフィンスにささやく。
「…だから…二人はこの一年で、オーガスタスが退学にならないかを心配してる」
フィンスは…項垂れた。
「…折角四年なのにな………。
三年にグーデンの弟、ディングレーがいるだろう?
彼は兄貴と違って凄くマトモだし、兄を嫌ってるから…」
ヤッケルは吐息混じりにぼやく。
「ディングレーが取りなして、オーガスタスの退学を取り消せるか?
…幾ら「左の王家」の者だって、ディングレーにそこまで力があるとは思えない。
…まあ…ディアヴォロスに心酔してたから、今まで道理、暴力振るって来る奴を見つけたら、蹴散らしてはくれるだろうけど。
でも、ディングレーって…」
シェイルもフィンスもローランデも、そうつぶやくヤッケルを覗き込んだ。
ヤッケルは三人に見つめられて、言葉を続ける。
「血筋がいいせいか、お坊ちゃん育ちで。
あんまり気は回らないし、器用な奴じゃ無いし。
その上威厳ありすぎで、近寄りがたくて、すっごく…話しかけづらい」
これにはフィンスも頷いた。
「それは同感。
孤高の狼みたいで…気軽に声なんか、かけられない雰囲気出しまくり」
けど、ローランデが口を挟む。
「でも話しかけると、ちゃんと聞いてくれる。
見た目ほど、近寄りがたくない気がするけど?」
ヤッケルもシェイルも吐息を漏らす。
「だって君は、去年の英雄で誰にとっても特別だろう?
君に話しかけられたら、例え上級生だろうが耳を傾けるさ」
ローランデは、真顔で言った。
「私が去年勝ち上がって、上級全部の顔を潰した。
未だに私の姿を目にした途端、苦虫噛みつぶす表情をする者だっている。
ディングレーは私に敗れたのに…けど話しかけると気安く、耳を貸してくれる。
彼は凄く気持ちが真っ直ぐな、ひがみ根性のない、いい奴だと思う」
フィンスは、反論した。
「だが彼は凄く長身で体格はいいし…。
その、近寄るだけであっちの方から
『どうした?』
と聞いてくれないと、なかなか言葉が出ないほど、迫力があるんだ」
ローランデは吐息混じりに認めた。
「それは…確かにそうだけど」
ヤッケルが、更に畳みかける。
「それにディングレーはいっつも、同学年の凄く偉そうで格好いい、大貴族達に取り巻かれてる。
三学年では崇拝されてて…凄く敷居が高い」
がその時どよめきが起こり、皆一斉に何事か。
と、どよめきの先を見つめた。
一際長身の金髪が、人の頭の上に伺い見える。
「…新入生?」
ローランデが、情報通のヤッケルに尋ねる。
ヤッケルは知らない。と首を横に振る。
「…オーガスタス並に成るんじゃないのか?
14であの長身じゃ」
だが人の頭が途切れた時、どよめきの理由が解った。
癖のある金髪を額に、そして肩に垂らし、綺麗な鼻筋の整いきった美貌で、その瞳を伏せると優美そのもの。
紫の瞳が晴れ渡る青空に輝く陽を浴びて時折、きらりと輝く。
すらりとした長身で、しなやかな身のこなしをしていて、目を伏せると長い金色の睫が頬に影を作った。
そして…その容貌の美しさは、全校生徒集まった中、群を抜いていた。
暫く、殆どの者が彼の美貌に見惚れ、言葉を失った。
…入学当初、ディアヴォロスやローフィスの目の届かない所で、上級生に絡まれた。
ヤッケルはいつも気づいて、盾になってくれたけど…。
「下賎の身分の、田舎ザルは引っ込んでろ!」
そう…突き飛ばされたヤッケルの背を助け、ローランデが割って入る。
ヤッケルよりは背が高いローランデだけど、相手の上級生はガタイに物言わせる長身のデカブツ。
でもローランデは、臆せず言い放つ。
「無礼は貴方だ。
下級の見本と成るべき上級生が、その態度ですか?」
静かな威圧が、相手のデカブツを包むのが解る。
ヤッケルと共に、息を飲んだ。
“気”と言う物が見えるとしたら…。
ローランデから圧倒するような気迫が静かに漲り、上級生の顔を、歪ませていた。
そのデカブツは、ローランデの気迫に引いた。
背を向け、去って行っのだ。
…信じられなかった。
自分は元よりヤッケルだって、あのデカブツに、崩せない壁が押し迫るような恐怖を感じていたので。
シェイルはローランデを見た。
彼は優しく微笑んで、こう言った。
「もう、大丈夫だから」
澄んだ…透明の清々しい“気”。
ローランデはいつもそれに包まれていたし、それは時には同学年には思えない程…崇高に見えてやっぱり彼は…特別なんだ。
と皆に思わせた。
本人にその自覚は、まるで無かったけれど。
フィンスは実直で真面目な正義感の強い少年で、けど大貴族にはありがちな、体格良く、名家の誇りにかけて幼い頃から礼儀作法と剣技を徹底的に叩き込まれ、この年(15才)にして既に武人の風格を持っていた。
真っ直ぐの濃い栗毛。
迷いのない蒼の瞳。
横顔が整って美しく、だがいつも控えめ。
けれど必要な時は決然とした態度を取れる、男らしさがあった。
ヤッケルがぼやく。
「あいつに比べたら俺は丸でちんぴらだ」
げとローランデもフィンスも。
気が良く楽しいヤッケルが大好きで、いつもヤッケルの姿を見つけると笑顔で迎える。
彼らを
「お上品さん」と呼んで距離を取っていたヤッケルも、次第に二人相手に、気軽に軽口を叩くようになった。
ヤッケルは少し…義兄ローフィスに似ていた。
自分からしたら背が高い。と思うのに、ローフィスはいつも
「『教練』。
ましてやその先進む、近衛ではな。
小柄な域だ」
と自分の体格を嘆き、ぼやく。
親友に同学年で身長2mを越す体格のいい、オーガスタスなんかが居るから。
よけい、そう思ってるようだった。
オーガスタスとローフィスは「左の王家」グーデンと同学年だったけれど。
学年の皆は美少年を愛玩とし、弄ぶのが大好きなロクデナシの王族、グーデンでは無く。
一年の頃から長身と体格の良さを誇る、堂とした態度のオーガスタスを、ボスと崇めた。
基本、大男の嫌いなローフィスでさえオーガスタスを気に入ってたけど、オーガスタスもローフィスを気に入り、二人は親友で、いつも並んで歩いてたから…。
ローフィスはたいそう小柄に見えていた。
でも“体格で劣るから”の理由で、自らの主張を引っ込める気なんか、ローフィスには全然無くて。
その分気概と…そして要領良く物事を自分の望む方向に、持って行くやり方を知っていた。
ヤッケルもそうだった。
小柄だけどその身軽さと戦術を使って、剣の試合では学年上位に食い込んでいる。
自分だって教練に上がるから。
とローフィスと…ローフィスが『教練』入学後、ディアヴォロスより二つ年下の従弟、ディングレーにさんざ仕込まれて、それなりに剣が使えるから。
ヤッケルと、並ぶ程の腕。
けど…練習以外で刃物を使うのは禁止。
ましてや喧嘩では。
ヤッケルはたまに
「体格差を埋めるのに剣を使えれば、もう少しハンデが埋められるのにな」
とぼやいてた。
でも結局、学園生活は体格と腕力がモノを言う。
弱い一年は、いつでも乱暴で横暴な上級生らの、格好の餌食。
騒ぎが大きくなれば、学校一の実力者、ディアヴォロスが。
それ程でも無い時は、ローフィスの親友で学校ではその大柄な体に見合った大物。
誰もが一目置く、オーガスタスが姿を見せる。
おおらかな赤毛の男がにこやかな笑みを浮かべ、長身の肩を揺らし、絡む上級生の前に立つ。
微笑はオーガスタスから消えたりしないのに、上級生は自分の目前の、自分より更にデカイ男に怯みきって、さっさと逃げ出すのが常。
オーガスタスは肩を竦め、朗らかな笑みを向けて毎度言った。
「弱いモノには強気なビビリだな。
今度来たら笑ってやれ」
彼は親しみ易い鳶色の瞳をし、そのガタイのデカさに関わらず、下級に大勢のファンを持っていた。
信頼出来て、気が良くて。
いつも重い物を持ってる下級生の頭上から、ひょい。と荷物を持ち上げ、ウィンクして代わりに運んでくれたりする。
ディアヴォロスは王家の血を継ぐ大貴族で、あまりに気品があり近寄りがたかったけど。
オーガスタスは親しみやすさで、誰にでも好かれていた。
でもともかく…去年はそれでもディアス(ディアヴォロスの愛称)が居た…。
彼が姿を見せ、ジロリと睨むだけで、その場の暴挙は影を顰める程。
学校の秩序は、彼が護っていた。
彼に逆らう者は誰一人居ず、どれだけの乱暴者でもディアヴォロスの登場に、その行動を控えた。
けど………。
ローランデが、思い悩む風情のシェイルに気づき、ヤッケルもささやく。
「…ディアスが居ないもんな…」
フィンスが、反論する。
「四年にオーガスタスが居る」
ヤッケルは顔を上げ、落ち着き払った大貴族を不満げに見つめた。
「そりゃ、喧嘩となりゃオーガスタスは誰より強い。
けど四年に成った王家のグーデンは、いとこのディアヴォロスが居なくなって、今度は自分が学校一身分が高い。
と、幅を利かせる気だ」
シェイルもそれを聞いて、そっとつぶやく。
「ディアヴォロスは身分も最高に高かったから…大貴族達だって誰も刃向かえなかったけど…。
オーガスタスの身分は、あまり…高く無いだろう?
自分より身分の高い相手と喧嘩し、怪我でもさせたら…」
ヤッケルも頷く。
「ヘタすりゃ、オーガスタスは退学。
俺はオーガスタスの大ファンだから、彼に他人のせいで退学になって欲しくない!」
フィンスは呆れる。
「オーガスタスが保身の為、暴挙を働く奴を見逃すと思ってるのか?
彼はそんな事、絶対しない」
ローランデがシェイルとヤッケルの浮かない表情を見、そっとフィンスにささやく。
「…だから…二人はこの一年で、オーガスタスが退学にならないかを心配してる」
フィンスは…項垂れた。
「…折角四年なのにな………。
三年にグーデンの弟、ディングレーがいるだろう?
彼は兄貴と違って凄くマトモだし、兄を嫌ってるから…」
ヤッケルは吐息混じりにぼやく。
「ディングレーが取りなして、オーガスタスの退学を取り消せるか?
…幾ら「左の王家」の者だって、ディングレーにそこまで力があるとは思えない。
…まあ…ディアヴォロスに心酔してたから、今まで道理、暴力振るって来る奴を見つけたら、蹴散らしてはくれるだろうけど。
でも、ディングレーって…」
シェイルもフィンスもローランデも、そうつぶやくヤッケルを覗き込んだ。
ヤッケルは三人に見つめられて、言葉を続ける。
「血筋がいいせいか、お坊ちゃん育ちで。
あんまり気は回らないし、器用な奴じゃ無いし。
その上威厳ありすぎで、近寄りがたくて、すっごく…話しかけづらい」
これにはフィンスも頷いた。
「それは同感。
孤高の狼みたいで…気軽に声なんか、かけられない雰囲気出しまくり」
けど、ローランデが口を挟む。
「でも話しかけると、ちゃんと聞いてくれる。
見た目ほど、近寄りがたくない気がするけど?」
ヤッケルもシェイルも吐息を漏らす。
「だって君は、去年の英雄で誰にとっても特別だろう?
君に話しかけられたら、例え上級生だろうが耳を傾けるさ」
ローランデは、真顔で言った。
「私が去年勝ち上がって、上級全部の顔を潰した。
未だに私の姿を目にした途端、苦虫噛みつぶす表情をする者だっている。
ディングレーは私に敗れたのに…けど話しかけると気安く、耳を貸してくれる。
彼は凄く気持ちが真っ直ぐな、ひがみ根性のない、いい奴だと思う」
フィンスは、反論した。
「だが彼は凄く長身で体格はいいし…。
その、近寄るだけであっちの方から
『どうした?』
と聞いてくれないと、なかなか言葉が出ないほど、迫力があるんだ」
ローランデは吐息混じりに認めた。
「それは…確かにそうだけど」
ヤッケルが、更に畳みかける。
「それにディングレーはいっつも、同学年の凄く偉そうで格好いい、大貴族達に取り巻かれてる。
三学年では崇拝されてて…凄く敷居が高い」
がその時どよめきが起こり、皆一斉に何事か。
と、どよめきの先を見つめた。
一際長身の金髪が、人の頭の上に伺い見える。
「…新入生?」
ローランデが、情報通のヤッケルに尋ねる。
ヤッケルは知らない。と首を横に振る。
「…オーガスタス並に成るんじゃないのか?
14であの長身じゃ」
だが人の頭が途切れた時、どよめきの理由が解った。
癖のある金髪を額に、そして肩に垂らし、綺麗な鼻筋の整いきった美貌で、その瞳を伏せると優美そのもの。
紫の瞳が晴れ渡る青空に輝く陽を浴びて時折、きらりと輝く。
すらりとした長身で、しなやかな身のこなしをしていて、目を伏せると長い金色の睫が頬に影を作った。
そして…その容貌の美しさは、全校生徒集まった中、群を抜いていた。
暫く、殆どの者が彼の美貌に見惚れ、言葉を失った。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる