若き騎士達の波乱に満ちた日常

あーす。

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風呂と酒場に出かけるオーガスタスとローフィスとギュンター

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 共同浴場でギュンターはやっぱり、オーガスタスの迫力ある裸体を盗み見てしまった。
あちこち古傷を作り、肩幅は広く、腕も足も長い。
腹は引き締まりきって余分な肉は少しも無く、胸は広かった。

「(…どんな女も、あれ見りゃ一発でオーガスタスに惚れそうだ…)」
脱ぎながらギュンターがチラ見してると、じっ…と目を見開き、自分を見つめてるローフィスに気づく。
ギュンターは慌てて、ローフィスに寄って囁きかける。
「…だっ…。
正直言って」
ギュンターが顔寄せ、声を落とすので、ローフィスも内緒話に付き合い、顔寄せる。

「…あいつオーガスタス、本当はめちゃくちゃモテるんだろう?」
ギュンターにうんと小声で聞かれ、ローフィスは一瞬、黙る。
そしてギュンターの間近な美貌を見つめつつ、同様小声で言葉を返す。

「…確かに山際の村で落石があって、『教練キャゼ』生徒が駆り出され、岩を退けた時、夏で。
暑かったので作業後、みんな上半身裸になって、近くの池に飛び込んだ。
出て来た時、岸に村の女が鈴なりで。
皆、一斉にオーガスタスに見惚れてたな」

ギュンターは
「やっぱり…」
とため息吐く。

ローフィスは、けれど更にギュンターに顔を寄せ
「オーガスタスの場合、女ダケで無く。
教練キャゼ』の当時一緒に作業した、上級から下級の男らまでが、見惚れてた」
と、もっと声落として、囁く。

ギュンターはそれを聞き、暫しローフィスの顔を、目を見開いて見つめた後。
小声で囁き返す。
「…つまり…男にも、惚れられるのか?」
ローフィスは頷く。
「…中には、オーガスタスに掘られたい。
と熱望する上級も居て。
迫られても殴れないので、オーガスタスは当時凄く困ってた」
「…ありそうな話だ」
「…あったんだ」

途端
「聞こえてるぞ!
こんだけ近いんだ!
小声で話そうが、意味無いから堂々と大声で話せ!」
と、オーガスタスの不機嫌な声が飛んだ。

ギュンターとローフィスは顔下げ気味で、堂々と先に浴場に足運ぶオーガスタスの後ろに続き、こそっ…と湯に浸かった。

オーガスタスは向かいに浸かる、ローフィスとギュンターを見る。
「…で?
ナニが言いたい?」

オーガスタスに聞かれ、ギュンターは肩すくめた。
「それだけイイ体してたら。
どんな女もとりこに出来るんだろうな。
と思っただけだ」

ローフィスが見てると、オーガスタスは表情変えなかったが。
内心複雑な様子に見えた。

肩眉上げ
「…ナンで男の体にそれほど興味あるのか。
理解不能だ。
どーだっていいだろう?」
と、憮然と尋ねる。

ローフィスが横のギュンターに振り向くと。
ギュンターはぼそっ…と言った。
「…そりゃ、自分の体が一番イイと思いたいから、それ以上を意識し、鍛えるタメだ」
ローフィスはそっ…とオーガスタスを見た。
が、オーガスタスの表情は変わらず、意味が分かってないと感じたので、補足した。

「…つまりオーガスタスの体を、鍛える目標にするってコトか?」
オーガスタスに視線を向けながら、問うローフィスに。
ギュンターは即座に頷いた。

オーガスタスはギュンターの、まだあちこち細い体をなるべく見ない方向で、呟く。
「ここに一年も居れば。
四年になった頃には、立派になってる」

それを聞いてギュンターは思わず横のローフィスの、湯から出てる体を、じっ…と見る。

オーガスタスがチラと視線を向けると、ギュンターに体を見られ、ローフィスの眉は寄っていた。
ローフィスはオーガスタスと体格比較され、憮然と口開く。
「…筋肉の付き方が、オーガスタスと違っても、しょうが無いだろう?
俺は長剣より短剣が主だ。
更にスピードと機転が勝負。
…ヤツとは、戦い方が違う」

ギュンターはローフィスの的確な短剣の腕を思い返し、頷きながらローフィスの体から、目をそらした。

オーガスタスが、ローフィスを庇うように言う。
「…それに、女垂らすのにこいつの体格でも十分通用する。
俺に言わせれば。
規格のサイズで、余分にゴツくも無く、かと言ってか弱くも無く。
一番、広範囲の女にウケるタイプだと思う」

ギュンターは、ローフィスを見て頷く。
「…単に俺の目標とするところの、体付きじゃないってダケか」

ローフィスの眉間は寄ったまま。
ぼそり、と言う。
「…お前の目が行くのは、オーガスタスやディングレーだもんな!」

ギュンターはローフィスに怒られてるにも関わらず、素直にこっくり、頷いた。

まだ睨むローフィスを目にし、オーガスタスが呟く。
「勘弁してやれ。
顔がそこらの女よりも綺麗。
って絶大なハンデ背負ってるから。
体ぐらいは、うんと男らしく見せたいんだ」

ギュンターはその言葉を聞き、思わずローフィスに振り向くと。
ローフィスは不満ながらも、頷いてた。

ギュンターはオーガスタスに問う。
「今の…“顔がそこらの女より綺麗"って、俺の事か?」

オーガスタスに無言で頷かれ、今度かっかしたのはギュンター。
「…つまり俺は。
ローフィス並の体格だと、顔のハンデを跳ね退けられないのか?」

オーガスタスは知らんふりして、呟く。
「そう思ってるのは、だってお前自身だろう?」
言われたギュンターが横のローフィスに振り向くと。

ローフィスも無言で、頷いてた。


風呂の後、三人は酒場へと足を運ぶ。
扉を開けると、『教練キャゼ』に押しかけたい気、満々のギュンターの取り巻き女達が一斉に

キャーーーーーー!!!

と盛大な叫びを上げ、突進してギュンターの横を取り合った。
もみくちゃにされ、ギュンターはぼやく。
「…今日はまだ、夕飯にありついてなくて、腹ペコだ」

女達はギュンターを引っ張り、椅子に座らせ、横に座り、向かいにも詰め寄り、一斉に声上げて料理名を叫ぶ。
「肉の盛り付け、お願い!」
「具だくさんシチュー!」
「野菜と肉の詰め合わせ!」
「肉の串刺し!」
「山盛り鶏肉入りサラダ!」

間もなくテーブルの上に、これでもか!と料理が並ぶ。
運んだ親父は
「幾ら育ち盛りの『教練キャゼ』生徒だろうが。
流石に一人でこれだけは、食えないだろう?」
と大皿を次々に、テーブルに置いた。

が、暫く後、ギュンターのがっつきっぷりを見て、目を見開き口を閉じる。
オーガスタスが親父の肩を軽く叩き、呟く。
「…あいつ、三年編入だから」
ローフィスも頷く。
「一年の時から居たら、今頃体格良くなってて、もっと上品に食ってる。
二人分のウィゴール酒、頼む」

親父はぽかんとしていたが、聞いた途端
「…なる程。
今出すから、カウンターに居ろ」
と返事した。
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