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盗賊と出くわす一同
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馬は坂を駆け上り、大木の倒れてた場所に辿り着く。
先頭をオーガスタス。
後続は、まだ道の左右を塞ぐ大木を避け、中央に馬を寄せ、ほぼ一列になって一気に駆け抜ける。
グリネスは鞍を掴んでいたけど。
ディングレーがあまりに速度を上げるので、とうとうディングレーの腰に腕を回し、しがみついた。
が、直ぐディングレーの背に、グリネスの豊満な胸が当たる。
グリネスは直ぐ察すると
「勃ってないでしょうね!」
と思い切りディングレーの肩を叩き、ディングレーは
「クソ!!!」
と一声叫び、拍車かけて更にエリスの速度を上げる。
黒馬エリスは、主人が滅多に乗せない女性に気持ちが浮ついてるのを察し、一気にオーガスタスの馬、ザハンベクタの斜め横に並ぶ。
オーガスタスの馬ザハンベクタは、チラと誇り高く気性の荒い真っ黒なサラブレッドを見たが、速度を更に上げること無く、併走を許した。
先は崖道で下り坂。
その直前で、木々の茂みから馬が続々と現れ、道を塞ぐ。
オーガスタスは即座に
「出たぞ!」
と身震いするほど迫力ある、腹の底に響く大声で吠えた。
ギュンターは併走するリーラスが、嬉々として剣を抜き、弧を描いて上段に構えるのを見た。
剣を持ち上げる時肩を掠めそうになり、距離を取ってて良かった。
と、内心ほっとする。
ディングレーは、崖道ギリギリ手前に盗賊が次々現れるのを見、吠える。
「このまま進むと、崖道だ!!!」
ギュンターは聞くなりローフィスが手綱引き、速度を落とすのを見る。
前が一斉に速度を落とすので、ギュンターもブツかるまい!と手綱引くしか無かった。
令嬢アレクサンドラは、腰にしがみついてた、この中では一番優男に見える、明るい栗毛のローフィスが。
一気に表情を引き締めるのを見、内心
「(…かっ…こいい…)」
と呟いた。
明るい栗毛散らし手綱取って、青の瞳を射るように、道塞ぐ盗賊に向けていた。
ざざっ!!!
横の茂みから、盗賊が飛び出して襲い来、リーラスは馬上から剣を振る。
が、馬に乗ってない盗賊三人は、身を屈めて剣を避け、一気に令嬢乗るローフィスの馬に駆け寄る。
ギュンターが慌てて足を振り上げ、馬から飛び降りかけた時。
「ぐっ!!!」
と呻く声と共に、盗賊は短剣の刺さった肩に手を当て、進む歩を止めた。
確かに、その直前ローフィスの、手綱を握ってない右手が下がったのは見た。
今、ローフィスの腕は肩と水平。
肘を曲げて顔近くにある。
「(…投げたの、見えなかったぞ?!)」
けれどまだ二人は、怪我した仲間を押し退け、ローフィスの馬目指し駆ける。
馬から降りたギュンターが、阻止しようと駆け寄る間に。
もう二人の盗賊は、時間差で肩、もう一人は腿に短剣喰らい、その場に崩れ落ちた。
リーラスがとっくに馬から降り、肩を怪我した盗賊の胸ぐら掴み、思い切り拳を顎に、叩き込んでいた。
ギュンターもチラと横目でそれを見ると、肩に刺さった短剣を抜き、尚もローフィスの馬を目指す盗賊の背の衣服を掴み引き止め、振り向いた所に一気に拳を顎に、叩き込んだ。
その間にリーラスが、腿の短剣引き抜いてる盗賊の、襟首を後ろから掴み、怒鳴りながら道の端に放り投げた。
「…殺さないのか?!
優しいな!ローフィス!!!」
どんっ!!!
「ぐぎゃっ!!!」
盗賊は怪我した足を地面に打ち付け
「んぐっ!!!ぅぐっ」
と、傷口抑えて呻いてる中。
ローフィスがチラ…と背後の令嬢見、小声で言葉を返す。
「…女性の前だ。
遠慮もする」
リーラスはそれを聞いて大きく頷き、ギュンターは後続の来ないのを確認し、怒鳴る。
「こっちは終わったぞ!!!」
「なら手伝え!!!
こいつらどかせないと、先に進めない!!!」
間髪入れずディングレーの怒声が帰って来て、ギュンターは振り向く。
ディングレーとオーガスタスは馬を繰りながら、馬上で馬に跨がり剣を振り込む盗賊相手に、剣を抜いて戦っていた。
ザハンベクタとエリスは、戦う主を乗せて体を横向け、後ろに行かせまいと阻み。
横をすり抜けようとする馬を、後ろ足で蹴りつけ威嚇していた。
オーガスタスがまた敵の剣を、軽く首振ってすり抜け、間髪入れず肩を鷲掴むと、馬上から引きずり下ろしていた。
どんっっ!!!
その、オーガスタスの背に剣を振り込もうとする盗賊の剣に、オーガスタスは振り向き様剣を合わせ止める。
ガチッ!!!
その隙に横をすり抜け、向かって来る馬の背後に、ギュンターは素早く回り込み、馬の尻に手を付き一気に飛び乗って、背後から乗り手の首を羽交い締めにした。
リーラスも、剣を激しくカチ合わせてるディングレーの、横をすり抜け来る馬上の盗賊を睨み
「また茂みから敵が沸いて出たら!
今度は手加減するなよ…!」
そう一声ローフィスに叫び、下から馬上の盗賊目がけ、剣を振る。
盗賊が剣を避けてバランス崩した隙に、馬の横から盗賊の腰の衣服掴み、一気に馬上から力業で引きずり落とす。
どっっ!!!
ガンッ!!!
落ちたところを間髪入れず、ブーツの底を胸に叩き込み、敵を沈めた。
カンッ!
ディングレーはどれだけ剣を振り入れても、合わせてくる手練れの盗賊に歯を食い縛り、とうとう合わさった剣を外し様剣を手放し、脇下で握り込むと一気に下から突き刺した。
上からを警戒していた盗賊は、あまりの早業に隙を突かれ
「ぐっ…」
と口の端から血を滴らせ、刺された腹を押さえて馬から滑り落ちる。
どんっ!!!
「…手間、取らせやがって!」
グリネスはディングレーの捨て台詞を聞き、その激しい男らしさに目を見開く。
横のオーガスタスは豪快で、剣を器用に回し上げながら、しなやかに敵に振り入れ、肩や胸を掠めて気をそらし、剣を振る間も与えず一気に長い腕で肩を掴むと、馬上から強引に引きずり落とした。
どっっっ!!!
前の敵が全て消えたのを確認し、ディングレーはローフィスに振り向く。
その瞬間、ディングレーの馬は一気に駆け出し、背後の駒音に振り向くと、ローフィスの馬が後に続き、二頭は一気に崖道へと駆け込んでいた。
オーガスタスが、最後の盗賊を馬上から振り落とし、ディングレーに続くローフィスの馬が横をすり抜けて行くのを見、背後に叫ぶ。
「馬に乗れ!!!」
リーラスは即座に自分の馬に駆け寄り、ギュンターも後ろから羽交い締めにしていた盗賊の、後ろ腰に拳を叩き込んで一気に馬上から飛び降り、自分の馬に駆け寄った。
背後に、馬から
どんっ!!!
と音立てて盗賊の落ちる音を聞きながら。
令嬢アレクサンドラは、前の馬に乗るグリネスが振り向くのを見、背後に振り向く。
リーラスとギュンターが馬の鞍に手を付き、ギュンターは身軽に先に馬に跨がり、もう手綱を握り馬を走らせ始め、その後ろでリーラスが馬に乗って、拍車かけるのを見た。
ギュンターは野生の豹を思わせる、素早さとしなやかさ。
リーラスはそれに比べ重量系に思えたけど、余裕ある様子でギュンターの背後から馬を飛ばし来る。
ローフィスが素早く背後に振り向く。
令嬢はローフィスの鋭い青い瞳に、一瞬心臓が高鳴るのを感じた。
「口閉じてろ!
舌噛むぞ!」
令嬢は慌てて口を閉じ、うんうん。
と頷いて、ローフィスの警告に応えた。
そこからは結構な下り坂で、ディングレーの馬エリスは、難なく崖道を下って行く。
けれど身軽なローフィスの馬オーデは、エリスの横に並ぶ勢い。
その都度、ローフィスは軽く手綱を引き、エリスを先に行かせるようオーデに指令を出した。
けれどローフィスが、ディングレーの馬の後ろに乗るグリネスと並んでいて。
グリネスはさっきのスケベな体たらくから、一気に引き締まる表情のローフィスに目を見開き。
更に腰にしがみつくディングレーが、長く真っ直ぐな黒髪散らし、引き締まりきった逞しい背中を、凄く男らしいと感じた。
…ものの、極力胸が当たらないよう、後ろに上体引き、気をつけた。
令嬢アレクサンドラは、直ぐ背後に続くオーガスタスが、赤味を帯びた栗色巻き毛を豪快に散らし、大きな馬と一体になって崖道を下る迫力の姿を見、感嘆したし、その背後。
オーガスタスから見たら、とっても軽そうなギュンターが、紫の瞳をきらりと光らせ、鋭い美貌を際立たせた格好良さにも、見惚れた。
崖道を降りて平坦な道に出ると、ディングレーは速度を落とし、背後のオーガスタスらは追いついて、一斉に横に並ぶ。
「…どうする?!
このまま令嬢宅まで、一気に駆けるか?!」
ローフィスの問いに、全員が頷いた。
が、令嬢は叫ぶ。
「ダメです!
今、こんなんで帰ったら、あなた方のダレが私をさらったのかって…父に疑われます!」
オーガスタスはぐっ。と詰まり、他の皆は目を見開き令嬢を見た後、護衛のグリネスを見る。
グリネスの前に跨がるディングレー、だけが顔を下げ
「…彼女の親父、娘にめちゃ甘いから。
家出は、送ってった俺達のせいにされかねない…」
と、令嬢の意見に同意した。
皆一斉に、やれやれ…と首を横に振り、ローフィスが代表して呻く。
「…なら『教練』に連れて行き。
そこから使者を出し、家から迎えを寄越してもらうのが、無難だな…」
オーガスタスも、顔を下げ気味で頷く。
「親父が怒鳴り込んで来ても、講師が言い訳するしな」
リーラスは大きく首を縦に振って頷く中、ギュンターだけが怒鳴った。
「ここからその邸宅、そんなに遠いのか?!」
ローフィスは振り向く。
「…いや。
『教練』の南をちょい行った場所だから、さほど遠くない」
ギュンターは金髪振って暮れかける陽を促し
「ならこのまま駆ければ、直ぐなんだろう?!」
と、怒鳴る。
けれどダレもが顔を下げ、結果、オーガスタスが唸った。
「…なら家出の責任、お前が取るんだな?!」
けれどギュンターからの、返事が聞こえない。
「ギュンター?!!!!」
オーガスタスに怒鳴られ、やっと、ギュンターは呻いた。
「…行き先、『教練』でいい」
リーラスは首を大きく縦に振って頷き倒し、ローフィスも、ディングレーも頷くのを見、先頭のオーガスタスは馬の首を、二股に別れた道の、西方向へと向けた。
後ろに下がったローフィスが、斜め後ろのギュンターに
「今の道を南に進めば。
令嬢邸宅に、直ぐ付いた」
と説明し、俯くギュンターは仕方無く、俯いたまま頷いた。
先頭をオーガスタス。
後続は、まだ道の左右を塞ぐ大木を避け、中央に馬を寄せ、ほぼ一列になって一気に駆け抜ける。
グリネスは鞍を掴んでいたけど。
ディングレーがあまりに速度を上げるので、とうとうディングレーの腰に腕を回し、しがみついた。
が、直ぐディングレーの背に、グリネスの豊満な胸が当たる。
グリネスは直ぐ察すると
「勃ってないでしょうね!」
と思い切りディングレーの肩を叩き、ディングレーは
「クソ!!!」
と一声叫び、拍車かけて更にエリスの速度を上げる。
黒馬エリスは、主人が滅多に乗せない女性に気持ちが浮ついてるのを察し、一気にオーガスタスの馬、ザハンベクタの斜め横に並ぶ。
オーガスタスの馬ザハンベクタは、チラと誇り高く気性の荒い真っ黒なサラブレッドを見たが、速度を更に上げること無く、併走を許した。
先は崖道で下り坂。
その直前で、木々の茂みから馬が続々と現れ、道を塞ぐ。
オーガスタスは即座に
「出たぞ!」
と身震いするほど迫力ある、腹の底に響く大声で吠えた。
ギュンターは併走するリーラスが、嬉々として剣を抜き、弧を描いて上段に構えるのを見た。
剣を持ち上げる時肩を掠めそうになり、距離を取ってて良かった。
と、内心ほっとする。
ディングレーは、崖道ギリギリ手前に盗賊が次々現れるのを見、吠える。
「このまま進むと、崖道だ!!!」
ギュンターは聞くなりローフィスが手綱引き、速度を落とすのを見る。
前が一斉に速度を落とすので、ギュンターもブツかるまい!と手綱引くしか無かった。
令嬢アレクサンドラは、腰にしがみついてた、この中では一番優男に見える、明るい栗毛のローフィスが。
一気に表情を引き締めるのを見、内心
「(…かっ…こいい…)」
と呟いた。
明るい栗毛散らし手綱取って、青の瞳を射るように、道塞ぐ盗賊に向けていた。
ざざっ!!!
横の茂みから、盗賊が飛び出して襲い来、リーラスは馬上から剣を振る。
が、馬に乗ってない盗賊三人は、身を屈めて剣を避け、一気に令嬢乗るローフィスの馬に駆け寄る。
ギュンターが慌てて足を振り上げ、馬から飛び降りかけた時。
「ぐっ!!!」
と呻く声と共に、盗賊は短剣の刺さった肩に手を当て、進む歩を止めた。
確かに、その直前ローフィスの、手綱を握ってない右手が下がったのは見た。
今、ローフィスの腕は肩と水平。
肘を曲げて顔近くにある。
「(…投げたの、見えなかったぞ?!)」
けれどまだ二人は、怪我した仲間を押し退け、ローフィスの馬目指し駆ける。
馬から降りたギュンターが、阻止しようと駆け寄る間に。
もう二人の盗賊は、時間差で肩、もう一人は腿に短剣喰らい、その場に崩れ落ちた。
リーラスがとっくに馬から降り、肩を怪我した盗賊の胸ぐら掴み、思い切り拳を顎に、叩き込んでいた。
ギュンターもチラと横目でそれを見ると、肩に刺さった短剣を抜き、尚もローフィスの馬を目指す盗賊の背の衣服を掴み引き止め、振り向いた所に一気に拳を顎に、叩き込んだ。
その間にリーラスが、腿の短剣引き抜いてる盗賊の、襟首を後ろから掴み、怒鳴りながら道の端に放り投げた。
「…殺さないのか?!
優しいな!ローフィス!!!」
どんっ!!!
「ぐぎゃっ!!!」
盗賊は怪我した足を地面に打ち付け
「んぐっ!!!ぅぐっ」
と、傷口抑えて呻いてる中。
ローフィスがチラ…と背後の令嬢見、小声で言葉を返す。
「…女性の前だ。
遠慮もする」
リーラスはそれを聞いて大きく頷き、ギュンターは後続の来ないのを確認し、怒鳴る。
「こっちは終わったぞ!!!」
「なら手伝え!!!
こいつらどかせないと、先に進めない!!!」
間髪入れずディングレーの怒声が帰って来て、ギュンターは振り向く。
ディングレーとオーガスタスは馬を繰りながら、馬上で馬に跨がり剣を振り込む盗賊相手に、剣を抜いて戦っていた。
ザハンベクタとエリスは、戦う主を乗せて体を横向け、後ろに行かせまいと阻み。
横をすり抜けようとする馬を、後ろ足で蹴りつけ威嚇していた。
オーガスタスがまた敵の剣を、軽く首振ってすり抜け、間髪入れず肩を鷲掴むと、馬上から引きずり下ろしていた。
どんっっ!!!
その、オーガスタスの背に剣を振り込もうとする盗賊の剣に、オーガスタスは振り向き様剣を合わせ止める。
ガチッ!!!
その隙に横をすり抜け、向かって来る馬の背後に、ギュンターは素早く回り込み、馬の尻に手を付き一気に飛び乗って、背後から乗り手の首を羽交い締めにした。
リーラスも、剣を激しくカチ合わせてるディングレーの、横をすり抜け来る馬上の盗賊を睨み
「また茂みから敵が沸いて出たら!
今度は手加減するなよ…!」
そう一声ローフィスに叫び、下から馬上の盗賊目がけ、剣を振る。
盗賊が剣を避けてバランス崩した隙に、馬の横から盗賊の腰の衣服掴み、一気に馬上から力業で引きずり落とす。
どっっ!!!
ガンッ!!!
落ちたところを間髪入れず、ブーツの底を胸に叩き込み、敵を沈めた。
カンッ!
ディングレーはどれだけ剣を振り入れても、合わせてくる手練れの盗賊に歯を食い縛り、とうとう合わさった剣を外し様剣を手放し、脇下で握り込むと一気に下から突き刺した。
上からを警戒していた盗賊は、あまりの早業に隙を突かれ
「ぐっ…」
と口の端から血を滴らせ、刺された腹を押さえて馬から滑り落ちる。
どんっ!!!
「…手間、取らせやがって!」
グリネスはディングレーの捨て台詞を聞き、その激しい男らしさに目を見開く。
横のオーガスタスは豪快で、剣を器用に回し上げながら、しなやかに敵に振り入れ、肩や胸を掠めて気をそらし、剣を振る間も与えず一気に長い腕で肩を掴むと、馬上から強引に引きずり落とした。
どっっっ!!!
前の敵が全て消えたのを確認し、ディングレーはローフィスに振り向く。
その瞬間、ディングレーの馬は一気に駆け出し、背後の駒音に振り向くと、ローフィスの馬が後に続き、二頭は一気に崖道へと駆け込んでいた。
オーガスタスが、最後の盗賊を馬上から振り落とし、ディングレーに続くローフィスの馬が横をすり抜けて行くのを見、背後に叫ぶ。
「馬に乗れ!!!」
リーラスは即座に自分の馬に駆け寄り、ギュンターも後ろから羽交い締めにしていた盗賊の、後ろ腰に拳を叩き込んで一気に馬上から飛び降り、自分の馬に駆け寄った。
背後に、馬から
どんっ!!!
と音立てて盗賊の落ちる音を聞きながら。
令嬢アレクサンドラは、前の馬に乗るグリネスが振り向くのを見、背後に振り向く。
リーラスとギュンターが馬の鞍に手を付き、ギュンターは身軽に先に馬に跨がり、もう手綱を握り馬を走らせ始め、その後ろでリーラスが馬に乗って、拍車かけるのを見た。
ギュンターは野生の豹を思わせる、素早さとしなやかさ。
リーラスはそれに比べ重量系に思えたけど、余裕ある様子でギュンターの背後から馬を飛ばし来る。
ローフィスが素早く背後に振り向く。
令嬢はローフィスの鋭い青い瞳に、一瞬心臓が高鳴るのを感じた。
「口閉じてろ!
舌噛むぞ!」
令嬢は慌てて口を閉じ、うんうん。
と頷いて、ローフィスの警告に応えた。
そこからは結構な下り坂で、ディングレーの馬エリスは、難なく崖道を下って行く。
けれど身軽なローフィスの馬オーデは、エリスの横に並ぶ勢い。
その都度、ローフィスは軽く手綱を引き、エリスを先に行かせるようオーデに指令を出した。
けれどローフィスが、ディングレーの馬の後ろに乗るグリネスと並んでいて。
グリネスはさっきのスケベな体たらくから、一気に引き締まる表情のローフィスに目を見開き。
更に腰にしがみつくディングレーが、長く真っ直ぐな黒髪散らし、引き締まりきった逞しい背中を、凄く男らしいと感じた。
…ものの、極力胸が当たらないよう、後ろに上体引き、気をつけた。
令嬢アレクサンドラは、直ぐ背後に続くオーガスタスが、赤味を帯びた栗色巻き毛を豪快に散らし、大きな馬と一体になって崖道を下る迫力の姿を見、感嘆したし、その背後。
オーガスタスから見たら、とっても軽そうなギュンターが、紫の瞳をきらりと光らせ、鋭い美貌を際立たせた格好良さにも、見惚れた。
崖道を降りて平坦な道に出ると、ディングレーは速度を落とし、背後のオーガスタスらは追いついて、一斉に横に並ぶ。
「…どうする?!
このまま令嬢宅まで、一気に駆けるか?!」
ローフィスの問いに、全員が頷いた。
が、令嬢は叫ぶ。
「ダメです!
今、こんなんで帰ったら、あなた方のダレが私をさらったのかって…父に疑われます!」
オーガスタスはぐっ。と詰まり、他の皆は目を見開き令嬢を見た後、護衛のグリネスを見る。
グリネスの前に跨がるディングレー、だけが顔を下げ
「…彼女の親父、娘にめちゃ甘いから。
家出は、送ってった俺達のせいにされかねない…」
と、令嬢の意見に同意した。
皆一斉に、やれやれ…と首を横に振り、ローフィスが代表して呻く。
「…なら『教練』に連れて行き。
そこから使者を出し、家から迎えを寄越してもらうのが、無難だな…」
オーガスタスも、顔を下げ気味で頷く。
「親父が怒鳴り込んで来ても、講師が言い訳するしな」
リーラスは大きく首を縦に振って頷く中、ギュンターだけが怒鳴った。
「ここからその邸宅、そんなに遠いのか?!」
ローフィスは振り向く。
「…いや。
『教練』の南をちょい行った場所だから、さほど遠くない」
ギュンターは金髪振って暮れかける陽を促し
「ならこのまま駆ければ、直ぐなんだろう?!」
と、怒鳴る。
けれどダレもが顔を下げ、結果、オーガスタスが唸った。
「…なら家出の責任、お前が取るんだな?!」
けれどギュンターからの、返事が聞こえない。
「ギュンター?!!!!」
オーガスタスに怒鳴られ、やっと、ギュンターは呻いた。
「…行き先、『教練』でいい」
リーラスは首を大きく縦に振って頷き倒し、ローフィスも、ディングレーも頷くのを見、先頭のオーガスタスは馬の首を、二股に別れた道の、西方向へと向けた。
後ろに下がったローフィスが、斜め後ろのギュンターに
「今の道を南に進めば。
令嬢邸宅に、直ぐ付いた」
と説明し、俯くギュンターは仕方無く、俯いたまま頷いた。
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