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昼食時のアイリスとスフォルツァ
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大食堂で、全学年が集っての昼食の際。
皆は三年大貴族らが、シャクナッセルとセシャルを取り巻き護りながら、料理の乗ったトレーを二人に運んだりして、世話する様子を伺った。
グーデン配下の四・三年の姿は見えず、一・二年の配下らは縮こまり、顔を下げて極力、目立たないように行動していた。
けれど立役者、オーガスタスとディングレーの姿が見えず、更に目立つ、ギュンターの姿も無く、オーガスタスといつも連んでる、ローフィスの姿さえ無く、皆が一様に首を捻ってた。
主のディングレー無くしても、三年取り巻き大貴族らは貫禄で、隙の無い騎士ぶりを披露し、まるで姫のように護られてる、シャクナッセルとセシャルを皆が、チラチラと盗み見る。
金の長い髪を胸に背に流すシャクナッセルは、くちなしのように香り高く秘やかで。
濃い栗色巻き毛を背に流すセシャルは、深紅の薔薇を思わせた。
どちらも艶を纏って見え、生徒らは皆、『教練』の隠れた暗部から日の当たる場所に姿を現した『グーデンの愛玩』の美しさと艶に、落ち着かなげにそわそわしていた。
アイリスは向かいに座るスフォルツァが、艶を纏った三年の美青年らを見た後。
横のアスラン、ハウリィ、マレーにチラと視線を送り、見比べてるのを目にした。
けれどアイリスは、シャクナッセルはともかく、セシャルの態度に騎士の片鱗を垣間見、誇り高い剣士が酷い陵辱を受けた印象が拭えず、知らず知らずグーデンを脳裏に思い浮かべ、ぼこぼこに殴り倒す図を思い浮かべて、何とか溜飲を下げた。
スフォルツァはアイリスの頬が、ぴく、ぴく…と動き、怒りと平静の間を行ったり来たりするのを、目を見開いて見つめる。
「…もしかして、怒りかけて…。
気分、鎮めてる?」
アイリスは、言われたスフォルツァに、顔をばっ!と上げて見つめる。
スフォルツァはその時、アイリスがいつも『教練』で付けてる、たおやかで穏やかな美少年の仮面が剥がれ、真剣な武人としての彼が表に出てるのに気づく。
アイリスはむすっとし
「…だから?」
と開き直る。
スフォルツァは目を見開いたまま、ぼそりと告げた。
「隠す気も、誤魔化す気すら、無いのか?」
アイリスは気づいて、スフォルツァを再度見つめる。
その後、スフォルツァは頭の回転が速く、状況を素早く読んで立ち回ることの出来る、そこらに居るぼんくらとはかけ離れた好敵手だったと、思い出す。
アイリスは少し不機嫌な表情で顔を下げ、低い声で呟く。
「…思い出すと凄く腹が立つから。
出来るだけ、それに囚われないよう努力中だって。
もう君には、すっかり分かってるんだろう?
誤魔化す意味、ある?」
アスランは食事途中で口に運ぼうとしたスプーンを、ぴたりと宙で止め。
マレーは不機嫌なアイリスに振り向き、ハウリィもいつも穏やかなアイリスが珍しく不機嫌さ全開なのを見て、びっくりした。
同じテーブルに座るディオネルデスは、なんとなくアイリスの怒ってる原因に思い当たり、顔を下げたが。
いつも無表情なフィフィルースですら、ちょっと驚いた顔でアイリスを見たし、感情を素直に表に出すアッサリアは、目をまん丸に見開いてアイリスを凝視した。
アイリスの開き直り発言に、スフォルツァはこほん。と咳払った後、紳士的に尋ねた。
「何について怒ってるのか、聞いても構わないかな?」
アイリスは、下手に出るような丁寧な質問に、スフォルツァの王子様風整った顔をチラと見、顔下げて呟く。
「…だってグーデンが寝室で、愛玩にどんな扱いしてるか、推して知るべし。
あの二人はそれを体現してる。
…腹が、立たないか?」
スフォルツァは首振って、騎士然と取り巻く大貴族らの中の、シャクナッセルとセシャルが一際艶っぽく見え、納得いった。
けれど横のアスランが。
グーデンにされた事を思い出したのか、顔を下げ、スプーン持つ手を微かに震わせるのを見て、アイリスに首振って示す。
アイリスはスフォルツァの合図に気づき、アスランを見つめ。
まずった、と言う表情を見せて、ぼそりと囁いた。
「昼時に、話す内容じゃ、なかったな…」
ディオネルデスがすかさず話し出す。
「そうですよ。
昼の話題に相応しいのは、貴方の叔父大公の、大舞踏会に我々が招待されたと言う話題です」
アッサリアも、震ってるアスランが気の毒で、大急ぎで話題に乗っかる。
「問題は、着ていく礼服ですね。
至急実家から、一番いい礼服を届けてくれと、使者を出しました」
無口なフィフィルースですら、頷いて同意する。
「俺もだ。
が、父も母も、ホントにエルベス大公家の大舞踏会の招待なのかと、問い正して来る。
俺の一族もタマに招待される、その時の話題の人物を招く、小舞踏会の間違いだろうと。
信じて貰えず、今だ着衣が届かない」
アイリスは、クス…と笑うと
「まだ二週間もあるし。
無ければナイで、こちらで用意するから平気だよ」
と請け負う。
ハウリィとマレーが顔を上げ、アスランの手の震えも止まるのを見たスフォルツァは、ほっとして口開く。
「俺は宮廷の大物達が、続々出席する王宮舞踏会並の舞踏会なんて、滅多に出ることも無いから。
衣装を新調したいと言ったら、家族はお針子をあちこちから集め、数で期日までに間に合わせる気だ」
アッサリアがスフォルツァを、流石。と見つめ、口開く。
「あっさり、信じて貰えたんだ。家族に」
スフォルツァは頷くが、ディオネルデスとフィフィルースは顔を見合わす。
ディオネルデスが、低い声で尋ねる。
「新調したのか?」
フィフィルースもフォークの肉を口に運び
「…兄貴か従兄のを借りないと、駄目かもな…」
と呟いた。
マレーが、大貴族らの心配を首振って見つめ
「そんな…大層な衣装じゃ無いと…ダメですか?」
と尋ねる。
濃い栗毛で、一際落ち着いて大人に見えるディオネルデスが、しっかりと頷く。
「…貧相な衣装だと、悪目立ちするんだ」
それを聞いて、ハウリィとアスランは、顔を下げた。
アイリスも確かに。と頷き、上品にナプキンで口元を拭って、口開く。
「皆これみよがしに、手持ちの中の家宝級の宝石とか、じゃらじゃら付けてきますしね…」
大貴族らは無言で頷いてだが。
アスランもハウリィも、マレーも青ざめた。
「…宝石…付けてないと、悪目立ちします?」
代表のマレーが尋ね、アスランもハウリィも、代わって聞いてくれるマレーに内心感謝した。
アイリスはにっこり微笑む。
「別に、衣装が豪華なら、衣装に付いてるし。
逆に、ヘタに悪趣味に、目立つ上着とかにじゃらじゃら付けてたりすると、成金とさげずまれる。
粋人達は、上着で少し隠れたシャツとか襟首に、さりげなく凄い宝石をチラ見せしたりする」
途端、アスランもハウリィも、マレーですら、感心したように頷いてた。
すっかりグーデンを忘れたアスランの表情を目にし、アイリスはこっそりディオネルデスに、感謝の会釈をした。
物の良く分かってる大人のディオネルデスは、控えめな笑顔で軽く、会釈を返す。
そんな、ディオネルデスの大人やり用を見。
スフォルツァはやっぱり内心めらめらと嫉妬心が湧き上がり、まだアイリスを独り占めしたいと切望する、自分の恋心に戸惑った。
このところ、合同補習のゴタゴタとアスランで、それどころじゃなかったから忘れていられた。
切なげな視線をアイリスに送ると、グラスから水を飲んでたアイリスは
『今更…?!』
と言うように目を見開き、ごぼっ…と、水を喉に詰まらせかけ、横のハウリィに、気遣われていた。
アイリスがトレーを戻す為、席を立つと、スフォルツァはすかさず立ち上がり
「三人を頼む」
とテーブルの大貴族らに告げ、皆を椅子に釘付けにし、アイリスの後を追う。
皆は三人の美少年を護るためテーブルを立てず、二人の後を追えなくて、スフォルツァの巧妙な作戦に、やれやれと首竦め合った。
スフォルツァが背後から、アイリスに声かけようとした時。
アイリスが、突然振り向く。
「たったさっき。
大人しめの美少年の仮面、私から剥がれたとこ、君、見てたよね?」
スフォルツァは振り向き見つめるアイリスに、ごくり…と喉鳴らし、唾飲み込んで頷く。
「で、まだ私に…恋してる?」
アイリスの問いに、スフォルツァは素直に頷いた。
アイリスは途端、顔下げる。
「(…この素直さに、ほだされるんだ。
…要注意だな)」
思ったものの、スフォルツァは少し俯いて
「俺も、忘れてたと思ってた。
が、違ったみたいだ」
と自分の気持ちを、殊勝にもそのまま告げるので、アイリスはまた、心がぐらぐら揺れた。
それはどっちかと言うと、恋心と言うより、純真な子犬を傷つけたくない。
と言う気持ちで…。
アイリスは更に自分に、言い聞かせる。
「(私のは恋心じゃないから、スフォルツァの気持ちに付き合うのは不適切。
よって、振るのが正解)」
スフォルツァは気づいたように、ちょっと切なげな表情をアイリスに向けると
「今でもまだ、ゴタついてるし。
この先もっとゴタつきそうだから。
確かに今は、それどころじゃないな」
と囁き、どんな女の子も胸キュンものの、素敵な微笑を見せて、背を向けた。
その笑顔を目にしたアイリスは、どきどきする心臓押さえ
「(マズい…。
彼に惚れ込む女の子の気持ちが、分かりそうになった…)」
と、内心呟き、自制した。
皆は三年大貴族らが、シャクナッセルとセシャルを取り巻き護りながら、料理の乗ったトレーを二人に運んだりして、世話する様子を伺った。
グーデン配下の四・三年の姿は見えず、一・二年の配下らは縮こまり、顔を下げて極力、目立たないように行動していた。
けれど立役者、オーガスタスとディングレーの姿が見えず、更に目立つ、ギュンターの姿も無く、オーガスタスといつも連んでる、ローフィスの姿さえ無く、皆が一様に首を捻ってた。
主のディングレー無くしても、三年取り巻き大貴族らは貫禄で、隙の無い騎士ぶりを披露し、まるで姫のように護られてる、シャクナッセルとセシャルを皆が、チラチラと盗み見る。
金の長い髪を胸に背に流すシャクナッセルは、くちなしのように香り高く秘やかで。
濃い栗色巻き毛を背に流すセシャルは、深紅の薔薇を思わせた。
どちらも艶を纏って見え、生徒らは皆、『教練』の隠れた暗部から日の当たる場所に姿を現した『グーデンの愛玩』の美しさと艶に、落ち着かなげにそわそわしていた。
アイリスは向かいに座るスフォルツァが、艶を纏った三年の美青年らを見た後。
横のアスラン、ハウリィ、マレーにチラと視線を送り、見比べてるのを目にした。
けれどアイリスは、シャクナッセルはともかく、セシャルの態度に騎士の片鱗を垣間見、誇り高い剣士が酷い陵辱を受けた印象が拭えず、知らず知らずグーデンを脳裏に思い浮かべ、ぼこぼこに殴り倒す図を思い浮かべて、何とか溜飲を下げた。
スフォルツァはアイリスの頬が、ぴく、ぴく…と動き、怒りと平静の間を行ったり来たりするのを、目を見開いて見つめる。
「…もしかして、怒りかけて…。
気分、鎮めてる?」
アイリスは、言われたスフォルツァに、顔をばっ!と上げて見つめる。
スフォルツァはその時、アイリスがいつも『教練』で付けてる、たおやかで穏やかな美少年の仮面が剥がれ、真剣な武人としての彼が表に出てるのに気づく。
アイリスはむすっとし
「…だから?」
と開き直る。
スフォルツァは目を見開いたまま、ぼそりと告げた。
「隠す気も、誤魔化す気すら、無いのか?」
アイリスは気づいて、スフォルツァを再度見つめる。
その後、スフォルツァは頭の回転が速く、状況を素早く読んで立ち回ることの出来る、そこらに居るぼんくらとはかけ離れた好敵手だったと、思い出す。
アイリスは少し不機嫌な表情で顔を下げ、低い声で呟く。
「…思い出すと凄く腹が立つから。
出来るだけ、それに囚われないよう努力中だって。
もう君には、すっかり分かってるんだろう?
誤魔化す意味、ある?」
アスランは食事途中で口に運ぼうとしたスプーンを、ぴたりと宙で止め。
マレーは不機嫌なアイリスに振り向き、ハウリィもいつも穏やかなアイリスが珍しく不機嫌さ全開なのを見て、びっくりした。
同じテーブルに座るディオネルデスは、なんとなくアイリスの怒ってる原因に思い当たり、顔を下げたが。
いつも無表情なフィフィルースですら、ちょっと驚いた顔でアイリスを見たし、感情を素直に表に出すアッサリアは、目をまん丸に見開いてアイリスを凝視した。
アイリスの開き直り発言に、スフォルツァはこほん。と咳払った後、紳士的に尋ねた。
「何について怒ってるのか、聞いても構わないかな?」
アイリスは、下手に出るような丁寧な質問に、スフォルツァの王子様風整った顔をチラと見、顔下げて呟く。
「…だってグーデンが寝室で、愛玩にどんな扱いしてるか、推して知るべし。
あの二人はそれを体現してる。
…腹が、立たないか?」
スフォルツァは首振って、騎士然と取り巻く大貴族らの中の、シャクナッセルとセシャルが一際艶っぽく見え、納得いった。
けれど横のアスランが。
グーデンにされた事を思い出したのか、顔を下げ、スプーン持つ手を微かに震わせるのを見て、アイリスに首振って示す。
アイリスはスフォルツァの合図に気づき、アスランを見つめ。
まずった、と言う表情を見せて、ぼそりと囁いた。
「昼時に、話す内容じゃ、なかったな…」
ディオネルデスがすかさず話し出す。
「そうですよ。
昼の話題に相応しいのは、貴方の叔父大公の、大舞踏会に我々が招待されたと言う話題です」
アッサリアも、震ってるアスランが気の毒で、大急ぎで話題に乗っかる。
「問題は、着ていく礼服ですね。
至急実家から、一番いい礼服を届けてくれと、使者を出しました」
無口なフィフィルースですら、頷いて同意する。
「俺もだ。
が、父も母も、ホントにエルベス大公家の大舞踏会の招待なのかと、問い正して来る。
俺の一族もタマに招待される、その時の話題の人物を招く、小舞踏会の間違いだろうと。
信じて貰えず、今だ着衣が届かない」
アイリスは、クス…と笑うと
「まだ二週間もあるし。
無ければナイで、こちらで用意するから平気だよ」
と請け負う。
ハウリィとマレーが顔を上げ、アスランの手の震えも止まるのを見たスフォルツァは、ほっとして口開く。
「俺は宮廷の大物達が、続々出席する王宮舞踏会並の舞踏会なんて、滅多に出ることも無いから。
衣装を新調したいと言ったら、家族はお針子をあちこちから集め、数で期日までに間に合わせる気だ」
アッサリアがスフォルツァを、流石。と見つめ、口開く。
「あっさり、信じて貰えたんだ。家族に」
スフォルツァは頷くが、ディオネルデスとフィフィルースは顔を見合わす。
ディオネルデスが、低い声で尋ねる。
「新調したのか?」
フィフィルースもフォークの肉を口に運び
「…兄貴か従兄のを借りないと、駄目かもな…」
と呟いた。
マレーが、大貴族らの心配を首振って見つめ
「そんな…大層な衣装じゃ無いと…ダメですか?」
と尋ねる。
濃い栗毛で、一際落ち着いて大人に見えるディオネルデスが、しっかりと頷く。
「…貧相な衣装だと、悪目立ちするんだ」
それを聞いて、ハウリィとアスランは、顔を下げた。
アイリスも確かに。と頷き、上品にナプキンで口元を拭って、口開く。
「皆これみよがしに、手持ちの中の家宝級の宝石とか、じゃらじゃら付けてきますしね…」
大貴族らは無言で頷いてだが。
アスランもハウリィも、マレーも青ざめた。
「…宝石…付けてないと、悪目立ちします?」
代表のマレーが尋ね、アスランもハウリィも、代わって聞いてくれるマレーに内心感謝した。
アイリスはにっこり微笑む。
「別に、衣装が豪華なら、衣装に付いてるし。
逆に、ヘタに悪趣味に、目立つ上着とかにじゃらじゃら付けてたりすると、成金とさげずまれる。
粋人達は、上着で少し隠れたシャツとか襟首に、さりげなく凄い宝石をチラ見せしたりする」
途端、アスランもハウリィも、マレーですら、感心したように頷いてた。
すっかりグーデンを忘れたアスランの表情を目にし、アイリスはこっそりディオネルデスに、感謝の会釈をした。
物の良く分かってる大人のディオネルデスは、控えめな笑顔で軽く、会釈を返す。
そんな、ディオネルデスの大人やり用を見。
スフォルツァはやっぱり内心めらめらと嫉妬心が湧き上がり、まだアイリスを独り占めしたいと切望する、自分の恋心に戸惑った。
このところ、合同補習のゴタゴタとアスランで、それどころじゃなかったから忘れていられた。
切なげな視線をアイリスに送ると、グラスから水を飲んでたアイリスは
『今更…?!』
と言うように目を見開き、ごぼっ…と、水を喉に詰まらせかけ、横のハウリィに、気遣われていた。
アイリスがトレーを戻す為、席を立つと、スフォルツァはすかさず立ち上がり
「三人を頼む」
とテーブルの大貴族らに告げ、皆を椅子に釘付けにし、アイリスの後を追う。
皆は三人の美少年を護るためテーブルを立てず、二人の後を追えなくて、スフォルツァの巧妙な作戦に、やれやれと首竦め合った。
スフォルツァが背後から、アイリスに声かけようとした時。
アイリスが、突然振り向く。
「たったさっき。
大人しめの美少年の仮面、私から剥がれたとこ、君、見てたよね?」
スフォルツァは振り向き見つめるアイリスに、ごくり…と喉鳴らし、唾飲み込んで頷く。
「で、まだ私に…恋してる?」
アイリスの問いに、スフォルツァは素直に頷いた。
アイリスは途端、顔下げる。
「(…この素直さに、ほだされるんだ。
…要注意だな)」
思ったものの、スフォルツァは少し俯いて
「俺も、忘れてたと思ってた。
が、違ったみたいだ」
と自分の気持ちを、殊勝にもそのまま告げるので、アイリスはまた、心がぐらぐら揺れた。
それはどっちかと言うと、恋心と言うより、純真な子犬を傷つけたくない。
と言う気持ちで…。
アイリスは更に自分に、言い聞かせる。
「(私のは恋心じゃないから、スフォルツァの気持ちに付き合うのは不適切。
よって、振るのが正解)」
スフォルツァは気づいたように、ちょっと切なげな表情をアイリスに向けると
「今でもまだ、ゴタついてるし。
この先もっとゴタつきそうだから。
確かに今は、それどころじゃないな」
と囁き、どんな女の子も胸キュンものの、素敵な微笑を見せて、背を向けた。
その笑顔を目にしたアイリスは、どきどきする心臓押さえ
「(マズい…。
彼に惚れ込む女の子の気持ちが、分かりそうになった…)」
と、内心呟き、自制した。
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