若き騎士達の波乱に満ちた日常

あーす。

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レナルアンの行方

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 階下では、レナルアンとギュンターの会話に、まだ経験の少ない二年達が思いっきり引いていた頃。
ローフィスがすっ飛んで行って、レナルアンに話しかける。
その隙にディングレーが大声で
「ギュンター!
手伝ってくれ!」
と叫んだ。

ギュンターはレナルアンから離れ、ディングレーの元へ。
一方ローフィスは、レナルアンの腕を掴むと
「ここはまだマズイ。
上に居てくれ」
と階段の上へ促す。

レナルアンはローフィスを見ると
「あんたも、すっごくタイプなんだよな。
絶対、えっち上手いだろ?」
と頬染めて見つめるので、ローフィスは呆れて言った。
「けどギュンターのが。
何十倍もタイプで。
あいつが居なけりゃ。
って話だろ?」
と聞くと、頬染めてローフィスを見上げたままレナルアンは、その問いに素直に頷いた。

けれど突然背後からシェイルが突進し、レナルアンとローフィスの間に割って入ると
「ギュンターがタイプなら、彼口説くどけよ!
ローフィスは絶対、俺が許さない!」
と叫び始め、レナルアンは呆けて自分より背が低く、銀髪で妖精のように綺麗で可愛らしいシェイルを、見下ろす。
「…つまりローフィス口説くと。
お前が恋敵?」

シェイルはきついグリンの瞳を向け
「恋敵になんて、絶対ならない!
ローフィスはお前にオチないから!」
と言い切り、レナルアンは
「お前が怖くて、ローフィスは俺を振るから?」
と言い返し、ディングレーとギュンターの側で包帯巻いてたオーガスタスが、顔下げて
「今度は痴話喧嘩かよ…。
勘弁してくれ」
とぼやいた。

ギュンターがディングレーから布を受け取り、巻かれて団子になってる布を見ながら
「…どうやったらこんな風に巻ける?
これまず…ほどかないとダメだな…」
とため息吐き、ディングレーは横で
「傷が剥き出しにならなきゃ、それでいいんだろう?」
と聞き、ギュンターは呆れてつぶやく。
「こんな、コブみたいなデカい結び目があったら。
横になったり動いたりする時、邪魔でしょうが無いし、第一こんなゆるいと。
直ぐ、腕から布が外れるぞ?」
と、二つあるコブのようなデカい結び目を、ほどき始めた。

ローフィスは食堂で、群れて水を飲んでダレてた二年達の視線が、一斉に集まってるのを感じ、喧嘩してるシェイルとレナルアンの背を階段の方へ押して、小声で怒鳴る。
「ここでやるな!
いいから、二人とも上に上がれ!」

ローフィスがムリヤリ二人の背を押し、階段を上がり始めると。
二年らはそれを見て
「…別世界だな…」
「男で、何だってあんな、色っぽいかな?」
「そりゃ…しょっ中、ムニャムニャムニャ…してれば…なるんじゃないの?」
「あの、レナルアンには。
ヤッケルですら、タジタジだもんな…」
「確かに。
レナルアンがタマに講義に出て、声高にエロ話する度、飛んでって必死に話題、毎度変えてたな」
と話し始め、オーガスタスがそれを聞いて、チラ…と、ギュンターを見る。
そして
「話題がオンナなだけ、まだマシか…」
と独り言を言い、ディングレーはそれを聞いて黒髪振って振り向くと
「それだって、年頃の男だらけの中じゃ!
刺激強すぎて俺の学年は、毎度困ってる!」
と叫び、横で器用に包帯代わりの布巻いてるギュンターに
「ダレに、困ってんだ?」
と聞かれた。

ディングレーがギュンターを見、言い淀んでると、オーガスタスがぼそり。と告げる。
「お前」

ギュンターは手を休めず、腕から滑り落ちないよう、器用に布を巻きながら
「なんで、俺?」
と聞き返す。
オーガスタスも包帯巻き終えて、湿布に使う薬坪を怪我人に手渡しながら
「お前が場を問わず、突然猥談始めるから」
と言葉を返す。

ギュンターは顔を上げ、オーガスタスを見る。
オーガスタスはギュンターと視線合わせぬまま
「猥談は、酒場かもしくは『教練キャゼ』では、皆が酒飲んでる場。
と限定しとけ」
と忠告した。

ギュンターは横のディングレーに、内緒話するように顔を下げて見つめ
「…それが、ここのルールか?」
と小声で聞き、ディングレーは無言で頷いた。

後、小声で付け足す。
「特に昼間、一・ニ年の前では、控えろ」
ギュンターは金の髪を振り、冴えた美貌向けて問う。
「…だが、若年じゃくねんからちゃんとした知識無いと。
大人になってから、困ると思うぞ?」
ディングレーは頷くと
「それでも、ただでさえ、性欲の塊の野郎ばっかだ。
刺激してムラムラし、か弱い美少年に襲いかかって、被害者が出てもマズいだろう?」
と言い返す。

そこでようやくギュンターは
「…ああ、そうか」
と、納得した。

ディングレーはほっと胸をなで下ろし、オーガスタスはやれやれ。と顔を下げて横に振った。

大貴族宿舎、フィンスの部屋では。
レナルアンとシェイルが口喧嘩しながら入って来て、ヤッケルが顔背け、フィンスが
「戻って来た…」
とつぶやいた。

ローフィスが、まだ自分に背を向け、レナルアンを牽制しながらも
「ローフィスに手なんか出したら!
タダじゃおかない!」
とタンカ切るシェイルを、どうたしなめようと困り切り、気づいたヤッケルは頷いて進み出ると
「お前、馬鹿?
何でも言いたい放題のレナルアンの言葉、いちいち全部真に受けてどうする!」
とレナルアンからシェイルを引き離す。

どんな事だろうが、誰にも負けないぐらい器用に対処できるローフィスは、シェイルの扱いにだけは毎度困ってたので、ヤッケルの助け船にほっとし、感謝の視線を向けた。

ローフィスが、ヤッケルとフィンスに
「任せて良いか?」
と聞き、顔を見合わす二人を尻目に
「お前は自分の部屋に帰れ。
それがみんなの平和だ」
と、シェイルの腕を掴む。

シェイルはローフィスに腕を引かれ、振り向いてローフィスを見つめた途端。
頬を染めると
「…やっぱローフィスって、誰より素敵❦」
とつぶやき、ローフィスは困り切って囁く。
「あのな…。
こんなとこでレナルアンに煽られ、発情するな」
と釘刺す。

オーガスタスが部屋に入って来るなり
「…やっぱり…」
と呟き、見てるフィンスとヤッケルに、頷かれた。

ローフィスはオーガスタスに
「後は俺が話すから、お前はシェイル、送ってやれ」
と言われ、頷いてシェイルの腕を引き、促す。
シェイルはローフィスと二人きりなのが嬉しくて、にこにこ微笑んでローフィスと並んで歩き、部屋から出て行った。

レナルアンが突然
「あいつ、完全に兄貴にイカれてるな」
とぼやき、ヤッケルに
「分かったら二度と!
ローフィスは口説くな!」
ときつい口調で言われた。

オーガスタスは小型犬が吠えて五月蠅い。的な感じで眉ひそめ、フィンスに言い渡す。
「ディングレーがこの後、三年大貴族も交え、どういう風に保護するかを話し合うそうだ。
レナルアンはフィンス、お前が金銭的な世話するって、ホントか?」

レナルアンは頷いてフィンスを見つめ、フィンスも頷く。
「ええ。
卒業まで、面倒見ます」

レナルアンはオーガスタスに振り向くと、直訴する。
「…それは嬉しいけど、えっちな恩返しはいらないって。
三年で、いつでもえっちしても良くて、タダで泊めてくれて、喧嘩の強そうなヤツって、居ない?」

オーガスタスは少し俯く。
「ギュンターが、うってつけだが。
あいつの部屋じゃ、グーデン配下は来たい放題。
大貴族じゃ無いとマズいが。
グーデンと違い『教練キャゼ』内では信望厚いディングレーは、王族だから体面のため、お前泊めるのマズいし。
取り巻き大貴族は、硬派ばかりだしな」

フィンスとヤッケルが見てると、レナルアンは“ギュンター”の名が出たところで顔を輝かせ、その後の却下の説明に、顔下げる。

その後声を落とし、レナルアンは言い返す。
「…ここ…ラナーンも居るだろ?
あいつ今は(寝てて)大人しいからいいけど。
元気戻ったら、俺と毎度、さっきのシェイルとみたいな、言い合いになるぜ?」

ヤッケルとオーガスタスが、気の毒そうにフィンスを見つめる中。
フィンスはこそっと
「…ラナーンを引き取れそうな方って…いらっしゃいます?」
と聞く。

レナルアンがすかさず口挟む。
「ヤッケルは、良く知ってると思うけど。
あいつラナーン、すれっからしで女王体質で、気が強くて我が儘だから。
根性座ってないと、苦労するぜ?」

すると寝室から
「誰がすれっからしで我が儘だ!!!」
と、気づいたらしいラナーンの叫び声が聞こえ、オーガスタス、ヤッケル、フィンスは顔下げる。

オーガスタスが暫しの沈黙後。
「…今から三年宿舎に出向き、状況聞いて、使い寄越す」
とつぶやき、フィンスに縋るように
「お願いします」
と懇願された。

が、レナルアンがまた、混ぜっ返す。
「なんで、俺じゃダメ?
歩けるから、あんたと今から一緒に、三年宿舎に出向いてもいいぜ?
三年大貴族のディングレー取り巻き達ってさ!!!
いつもビシッ!っとしてて、格好いいよな~。
シャクナッセルさんも、三年宿舎だろ?」
と言い、オーガスタスに寄ってうんと顔上げて見上げ
「あんたと一緒なら、大狼だろうが熊だろうが。
出ても怖く無い」
とにこにこ笑って言う。

が、オーガスタスに
「…それは、光栄だ」
と低い声でイヤミを言われたのに、レナルアンは気づいてない。

更にレナルアンは
「あんたの部屋だったら、平貴族宿舎だって絶対、安全だよね?」
と言い、目を見開いたオーガスタスに
「お前…分ってんのか?
お前が逃げ出して来たグーデン私室と、目と鼻の先なんだぞ?」
と呆れて言われ、顔下げてつぶやいた。
「…そうか…」

「第一、お前みたいに綺麗で可愛くて、サービスしたいヤツなんて俺の部屋に居たら。
四年宿舎なんてやりたい放題で、俺の部屋なんて出入り自由だから。
入れ替わり立ち替わり、シたいヤツが押し寄せ、乱暴に扱われかねない。
まあ…グーデンとこよりかは、かなりマシだとは思うが」

オーガスタスの言葉に、レナルアンは俯いて頷く。

「…とりあえず、三年宿舎で引き取り手探すか」
オーガスタスの言葉に、フィンスとヤッケルは満開の笑顔で頷く。

けどその後
「引き取り手がなけりゃ、ここに連れ戻す」
とオーガスタスに言われ、フィンスとヤッケル、二人共が。

途端に暗い表情で、顔下げた。
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