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フィンスの決断と立ち塞がる二年グーデン配下達

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 間もなくシェイルが、フィンスを伴って部屋に入って来る。

ヤッケルが、ローランデを背に回してレナルアンと向かい合い、レナルアンの猥談攻撃からローランデを守っている真っ最中で、フィンスはヤッケルの背後で、恥ずかしそうに頬を染めて俯く、ローランデを見た。

フィンスは優しげで整った綺麗な顔立ちをしていたけれど、背も高く体格も良くて、男らしさもあった。
ブルーの瞳を向けられると、レナルアンは
「あ、フィンスでもいいな」
と言い、フィンスは
「?ナニが?」
と尋ね、横に俯いて立つシュルツに
庇護者パトロンのコトじゃ無いか?
グーデンにはもう、頼れないから」
と小声で囁かれ、目を見開く。

けどフィンスは来る途中、シェイルに簡単に説明して貰ったから、寝台のラナーンに視線を向ける。
「その話は後で。
ラナーンを看ないと。
具合はどんな感じ?」

ローランデはヤッケルの背後で、真っ赤に成ってたけど。
気づくと、しゃんと表情を引き締め
「私の部屋へ。
召使いに、薬師がいるし、病人も診れるから」
と指示する。

フィンスはずかずかと寝台横に進み、セシャルに会釈して横にどいてもらい、気絶してるラナーンに屈むと、一気に抱き上げる。

セシャルも、反対横のミーシャもが、目を見開いてフィンスの行動力とその男らしさに、見惚れた。
ラナーンを軽々と抱きかかえたフィンスは、ローランデに振り向くと
「いや。
私の部屋の方がいい。
レナルアンも引き取る。
君は、セシャルとミーシャを頼む」
と言い、扉に向かって歩き出すので、まだ戸口にいたシェイルは、慌てて扉を開けた。

フィンスは気絶したラナーンを抱きかかえたまま背後に振り向き、レナルアンに“付いて来て”と顎をしゃくる。
レナルアンがヤッケルの前から離れ、扉の方へと歩き出し、ローランデはセシャルとミーシャに振り向くと、微笑を浮かべて頷いた。

けれど一同がシェイルとヤッケルの部屋を出、廊下を抜けてだだっ広い食堂に出た時。
あちこちのテーブルでたむろってた、群れの中の一塊にグーデン一味らが居て。
皆、ハッ!と目を見開き、気絶してフィンスに抱きかかえられてるラナーン。
ローランデとシュルツの側で、一緒に歩いてるセシャルとミーシャを見た。

ミーシャは二年グーデン一味らに視線を向けられ、怯えたようにローランデとシュルツの背後に隠れ、セシャルは見つかって、唇を噛んだ。

ヤッケルは前へと駆け出すと、ラナーンを抱きかかえるフィンスを背に庇い、やって来ようとする二年グーデン配下のボス格ローズベルタと、歯抜けのモレッティに振り向き、両腕広げ牽制にかかる。

フィンスは咄嗟駆け出し、食堂中央横にある、大貴族宿舎に続く階段目指す。
ローズベルタが速度上げて阻止しようと駆け寄る中、ヤッケルはフィンスに並び走って、ローズベルタを迎え撃つ。

ローズベルタが、邪魔なヤッケルを沈めようと、駆け寄り様拳をヤッケルの顔目がけ、思いっきり振り切る。

ビュッ!
ズガッ!

ヤッケルは振って来る拳避け、咄嗟下に沈むとローズベルタの足目がけ、思いっきり蹴りつけた。

どっっったんっ!!!

フィンスは階段を駆け上がろうと振り向き、抱き上げてるラナーンのだらりと下がった腕を掴もうと手を伸ばす、モレッティに気づいた途端、足を振り上げ思いっきり蹴りつけた。

だんっ!!!

モレッティが背後に思いっきりふっ飛んで床に転がり、フィンスは素早くヤッケルに視線向ける。
ヤッケルに足を蹴られて前へすっ転んだローズベルタは、ヤッケルの上に乗っかり、身を起こして馬乗りになろうともがきながら、仰向けて“させまい!”とするヤッケルと、激しい掴み合いしていた。

ヤッケルはローズベルタに上に乗られて殴られるのを、ローズベルタの腕を掴んで避けようとし、ローズベルタは掴まれた腕を振りほどき、ヤッケルに乗りかかろうとし。
ヤッケルは何とかローズベルタの下から抜けようと、もがいてた。
けど、フィンスが歩を止めるのを見、咄嗟大声で叫ぶ。

「行け!!!」

フィンスは頷く間も惜しみ、階段に振り向き駆け上がる。

ローランデはセシャルを背後に庇い、向かって来る二年グーデン配下を睨み付け、シュルツはミーシャを背に庇い、既に降って来た拳を、顔を振って避け様、腰の入った一発を、相手の頬に叩き込んだ。

ガッッッ!!!

シェイルは殴り合いが始まる前、一早く察し、食事を運ぶ召使い用の扉を開け、そのまま外へと出て行き、四年宿舎目がけ駆け出す。

グーデン配下の一人も、一年宿舎へと助っ人を呼ぶため、扉を蹴立て駆け出す。
もう一人は三年宿舎周囲を見張ってる、三年と四年を呼びに開いた扉を潜り抜けた。

シュルツがミーシャとセシャルに
「走れ!!!」
と叫び、睨み付けて牽制するローランデの背後を、セシャルとミーシャ、そしてシュルツが駆け抜ける。

ローランデは更にズイ!!!と前に出ると、睨み付けられた二年のグーデン配下の二人は、怖じけて背後に下がる。

ヤッケルがまだ、ローズベルタの下から抜けられず、ローズベルタは何とかヤッケルの腕を押さえ込んで、殴りつけようとした矢先。
突然背後から二人に腕を掴まれ、一気に後ろに引き倒されてヤッケルの上から退かされ、背を床に打ち付けて痛みに顔をしかめ、床に肘付いて起き上がりながらも怒りに燃え、引き倒した者らを睨み付けた。

けれど食堂でたむろってた、他の二年らも続々と、ローランデらの助っ人に入る。

グーデン配下らを大勢で取り囲んで牽制し、内一人が叫ぶ。
「今の内に!!!」

ローランデは頷き
「かたじけない!!!」
と叫び、セシャルとミーシャに先を急がせる、シュルツの背を護った。

ヤッケルが背を起こすと、ローズベルタは引き倒した相手の一人に殴りかかり、ローズベルタの拳を避けてる間に、もう一人の引き倒した者が、ローズベルタの腰を蹴りつける。

蹴られて怒りに燃えたローズベルタが振り向くと、もう一人が腿の後ろを蹴りつける。

それを見たヤッケルは身を起こすと
「どけ!!!
怪我するぞ!!!」
と叫びながら飛び上がると、そのまま飛び蹴りをローズベルタの背に叩き込み、ローズベルタは背を凄い勢いで蹴られ、前へと吹っ飛んだ。

どっっっっ!!!

ヤッケルは華麗に着地すると、テーブルに顔から突っ込み、腹をテーブルの縁に思いっきり打ち付け、起き上がれないローズベルタを見、助けてくれた一人とハイタッチし。
振り向いてもう一人とも、ハイタッチした。

シェイルは召使い用通路から建物の後ろに回り込み、四年宿舎へ駆ようとする途中。
三年宿舎の入り口前にたむろってた、グーデン三年配下と四年らが二年宿舎に移動していくのを見、躊躇った。

結局、ディングレー私室に続く、召使い用入り口を見張ってたグーデン配下の見張りが移動したのを見、扉を開けて階段を、駆け登った。

途中、召使いに出会うと
「ごめん!!!」
と叫んで狭い廊下を駆け抜け、狭く暗い階段を駆け上がる。

ばんっっっ!!!

「ディングレー!!!」

叫ぶものの、扉を出た先の小部屋には居ず、そのまま駆けて食堂に出ると。
食卓で食器を片づけている、召使いが振り向く。

シェイルは息切れで死にそうになってた。
けど、叫ぶ。
「ディングレーは?!」

食堂に続く、食後酒をたしなむ小さな居間から、ディングレーがひょい!と顔を出し、息切れで椅子の背を握り、今にも崩れかかりそうな身を支えてる、血相変えたシェイルを見、叫ぶ。

「どこだ?!!!!」
「にね…ん、宿舎…。
残りの愛玩…が、ここ…見張られてて入れないって…僕らのへ…」

ディングレーはシェイルに駆け寄ると、怒鳴る。
「ヤッケルが一人で、戦ってるのか?!」
直ぐ、ローフィスも顔を出し、その背後から、オーガスタスも姿を見せる。

シェイルは、ほっとしたように微笑み、ヘナヘナと椅子の背もたれに抱きつき、床に腰を下としながら告げる。

「ローランデとフィンスが…来て。
大貴族宿舎へ入る途中で…ローズベルタ達が絡んで来…て。
ここの見張り…も、みんな二年…宿舎…」

そこまで言うと、とうとう息切れで、シェイルは胸を押さえて俯き、息を弾ませた。

オーガスタスはニヤリと笑い
「なんだ。外に居たのか。
今度こそ、ダランドステを殴れるな」
と両拳握って指鳴らし、やる気満々。
背後からギュンターが、ぐったりした顔を出すと
「食い過ぎて、動けない…」
とぼやく。

ディングレーとオーガスタスは召使い用通路へと、既に駆け出し、二人に続こうとし歩を止め、振り向くローフィスに
「残って万が一、連中がここに乗り込んで来たら。
シャクナッセル保護してるデルアンダーの、助っ人してやれ」
と言われ、ギュンターは言って背を向け駆け出す、ローフィスにボヤく。

「…冗談だろう?!
デルアンダーの助っ人はテスアッソン始め、いっぱいゴツい大貴族らが居るじゃ無いか!!!」
叫ぶと、その反動で重い腹抱え一気に身を起こし、駆け出す。

「ギュンターも、行くの?!」
床に座り込むシェイルに尋ねられ、ギュンターは振り向くと頷く。
「暴れてる間に多分、消化できる!!!」

シェイルはそれを聞いて、もっとぐったり椅子の脚にもたれかかり、息切れで顔を深く俯けた。
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