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ローフィスの提案で、重労働が軽くなって満足なオーガスタス
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ダベンデスタ始め、三年平貴族らは、ガツガツガツ…とひたすら食べ物をがっつくギュンターと、横で呆けて眺めてるオーガスタスを大食堂にて目撃した。
戸口付近の者らはこそこそと、ギュンターに六人もの若い美女らが抱きついてた件について、話す者もいた。
間もなく、大貴族用階段から、ローフィスと…質素なマントを纏ったディングレーが降りて来る姿を見かけ、皆一斉に階段を眺める。
ディングレーは先に降りて行くローフィスに、皆から顔を隠すように思い切り寄せて囁く。
「…もう食事が終わって…人気が無いはずじゃなかったか?
…だから俺の召使いが使う、使用人通路から出た方が…」
けれどローフィスは、ギュンターの横で頬杖ついてるオーガスタスが顔を上げ、少し睨むのを目にし、ディングレーの意見を無視して、階段を降りきると寄って行く。
「…ナンかあったのか?」
オーガスタスは、そののどかな質問を聞き、少しフテたようにローフィスから視線を外すと、頬杖ついてた腕をテーブルの上に置き、ぼそりと言う。
「大騒ぎなのに。
聞こえてなかったのか?」
ローフィスは、背後にやって来る自分よりちょっと背が高く、肩幅があり体格のいいディングレーにチラと振り向く。
質素なマントを羽織ると、異名の“黒い狼”ぶりが前面に出て、無頼のような迫力を垣間見せていた。
オーガスタスは気づくと
「どっか行くのか?」
と聞く。
ローフィスは頷くと
「こいつの私室へ入ると、寝室へ行かない限り外の騒ぎとは無縁だからな」
と言った後、オーガスタスの横で脇目も振らず、ひたすらがっつくギュンターを見る。
「…いつにも増して、凄い食いっぷりだな…」
ディングレーも頷く。
「飢えた野良犬並だ」
オーガスタスはチラと口きく余裕の無いギュンターを見、代わって説明した。
「…腹ペコの所をグーデン一味に襲われ、見事交わして逃げたのに、押しかけて来た酒場で馴染みの女達が、逃げてきたグーデン一味に捕まり、助ける為に駆け戻った後。
講師迄やって来て、一悶着あって。
死にそうに、腹が減ってたらしい」
ローフィスは、目を見開く。
「…酒場の…?!
ここに来たのか?!」
「六人で。
ジョアナを始め、テッサやサリー…」
ディングレーはローフィスを見る。
ローフィスは目を、まん丸に見開いていた。
なので代わりに会話に参加する。
「ギュンター目当てで?
こんな時間に?
で、グーデン一味に捕まってたのか?」
オーガスタスは大きく首を縦に振る。
「キャーキャー騒ぐもんだから。
しかも、一・二年宿舎の前で。
そりゃ、野次馬はずらり。
丁度お前が出て言った後、入れ替わるように門番がやって来て。
女達が制止を振り切り、校内に侵入したから、何とかしてくれと言いに来て」
ローフィスは宿舎前の階段を降りきった時、門番とすれちがった事を思い出した。
「…で?」
「リーラスと仲間らも後に付いてきたから、ギュンターも加え、蹴散らすのは簡単だった。
が、その後が大変で」
ディングレーが呆れる。
「助けたのに、大変なのか?」
オーガスタスはまた、大きく首を縦に振ると、頷く。
「…女達は、折角来たからギュンターと寝たいと」
ディングレーは目を見開いて、問う。
「…六人が?」
オーガスタスは頬杖つくと、まだがっつくギュンターをチラと見
「とりあえず、こいつに食わせたら俺が酒場まで付き添うと約束し、帰らせたんだが…。
こいつ、食ったらその後、意識が無くなると言い切る」
ディングレーが、目を見開く。
「…なんで食ったら、意識が無くなるんだ?」
ローフィスは言葉道理受け取るディングレーに呆れ、説明を囁く。
「…腹一杯になったら、眠くなるって事だろう?」
ディングレーは
『なんだ。そうか』
と顔下げる。
「…意識が無くなったら、酒場まで連れて行けないのに…約束しちまったのか?」
ローフィスが問うと、オーガスタスはフテくされて頬杖付き、顔を背けて言う。
「…だから…例え熟睡していようが、俺が担いで酒場まで運ぶと。
約束した」
ローフィスは呆れきって、聞く。
「…で、女達は、熟睡してるギュンターと、ナニがしたい?
添い寝か?」
「…寝ている無防備なこいつを、したい放題、する気らしい」
ギュンターはようやく会話に気づき、きっ!ときつい紫の瞳を向ける。
「絶対ゴメンだ!
寝てる間に避妊ナシで勝手にされてみろ!
近衛に入隊後、“子供が出来たから結婚してくれ”と言われるのは、目に見えてる!!!」
オーガスタスはジト目でギュンターを見やる。
「一応、理性はまだ残ってるんだな…。
なら腹八分目にし、気力で六人コナせ」
ギュンターはまた、甘い美貌…のハズの顔で、睨み付けて怒鳴る。
「…孕ませるのはイヤだが!
俺は女はちゃんと喜ばせるタメに抱く!
ただの流れ作業じゃ、無いぞ!!!」
ローフィスがすかさず口挟む。
「覚悟は立派だが。
お前、監督生して疲れ切ってるんだろう?
それだけ食ったら、食い終わると同時に気絶したように寝入って、蹴っても気づかないんじゃ無いか?」
理性的なローフィスの意見に、ギュンターは顔背ける。
「…多分な」
「それにここに入学当初の、ひょろひょろな体ならともかく。
ちょい肉も付いてきたし、たらふく食った後。
幾らお前でも、酒場まで担ぐのは、真剣力仕事だろう?」
ギュンターは口を開こうとし、オーガスタスに言った言葉だと気づいて、食事に戻る。
ディングレーが見てると、滅多に余裕を無くさないオーガスタスが、顔を下げて沈痛な面持ち。
ローフィスは、親友に畳みかける。
「…なんでそんな馬鹿な約束、したんだ?」
オーガスタスは奔放に跳ねる赤毛振って、ローフィスに噛みついた。
「講師は俺に押しつけ、バックレるし!
お前は居ない!
あの場を丸く収めるため、これが精一杯の策だ!!!
知恵があれば、今貸せ!!!」
ディングレーが見てると、ローフィスは腕組みし、頷いてる。
「…つまり酒場で待ってる、六人の女達が満足すれば、丸く収まるんだな?」
オーガスタスは大きく頷く。
「…そうだ!!!」
ディングレーは呆けて、オーガスタスを見た。
「…たかが女の約束ぐらい…ブッちぎったって、どって事無いだろう?
何であんたが、そんなに気にするんだ?」
オーガスタスはディングレーを怒鳴りつける。
「お前、女の恨み買うと、どれだけ厄介か知らないな?!
しかも一人じゃ無く、複数のだ!!!」
ローフィスは腕組みしたまま、頷く。
「知らぬ間に恨みを買い。
尻拭いを、こいつの執事や俺がしてるから。
思い知ってない」
オーガスタスは、ぷりぷり怒って顔を背ける。
「…贅沢者め!」
ディングレーは言われて目を見開き、改めてローフィスを見る。
が、ローフィスは提案した。
「女六人なら、ギュンターで無くても満足させられる」
オーガスタスはまた赤毛振って、ローフィスに振り向く。
「…お前、そこまで自信家か?!
コイツ、あんだけの数の女、こなしてるのに。
いちいち一人一人、御姫様扱いした上、満足もさせると言う器用さだぞ?!」
ローフィスは頷く。
「御姫様扱いは無理でも、盛大に満足したい場合はお前を選ぶしな。
だが、ここにはコイツが居る」
ディングレーは、自分に向けられたローフィスの親指を見る。
「…お前ほどじゃないが、激し目で大抵の女はイくし。
理性が多少あれば、元は育ちが良いから、それなりの扱いをする。
…まあ…基本不器用だから、ギュンターのような王子様役は、ちょっと無理だろうが」
ディングレーはまだ。
自分を指し示すような、ローフィスの親指を見ていた。
オーガスタスの視線を感じても、それでもまだ。
ディングレーはローフィスの親指を、見続けていた。
「…確かに…アリだな。
ギュンターの代わりと言えば…そのテしか、無いかもしれん。
ネックは、コイツの身分がもしバレたら、全員確信犯で孕むぞ」
ローフィスは頷く。
「当然、伏せる。
今は没落した、古い名家の家柄だとか言って誤魔化す。
三年らが出入りする、他の酒場は無理でも。
俺達が出入りする酒場では、こいつでも身分を誤魔化せるからな」
ディングレーはそこでようやく、会話の内容が理解出来て、俯く。
「…つまり俺に、ギュンターの代わりに六人抱けと?
…それとも半分はあんたが、受け持つのか?」
ローフィスの青い瞳に真っ直ぐ見つめられ、きっぱり言われる。
「六人全員、お前だ」
ディングレーは、がっくり首下げる。
「…どうやって避妊する?」
ローフィスは懐から、小さな革袋を取り出す。
「これを手に入れた。
飲めば半日、女とシても、孕ませる事は無い」
ディングレーは革袋をじっ…と見つめ、尋ねる。
「本当に、本当か?」
「万一デキちまったら、俺が安全な堕胎薬を女に渡す」
「…つまり尻拭い、してくれるんだな?」
「思いっきり、シたいんだろう?」
「…だが、全員ギュンターの女だろう?」
オーガスタスが、頬杖ついたまま呻く。
「いや。
ちゃんと真っ当な旦那を探してる。
が、ギュンターとかなり真面目に、遊びたい女達だ」
ディングレーは、意味が分からず首捻る。
ローフィスが、フォローする。
「女が理解出来て無いのに、考えようとするな。
今一時、ギュンターから気を逸らせれば、それでいい。
女も満足。
お前も満足で、丸く収まる」
オーガスタスが呆れる。
「どう、言いくるめる?」
ローフィスは、にっこり笑った。
「これだけ押し出し満点の、イイ男だ。
殆どの女は、ちょっと押してやるだけで、なびく」
ディングレーはローフィスを見て、念押しする。
「…それは、俺の事か?」
ローフィスは、ぶすっとしてディングレーを見る。
「…他に誰がいる?」
「…つまりあんた、俺の事、イイ男だと思ってんのか?」
ローフィスはむかっ腹立てて怒鳴る。
「女目線でな!」
ディングレーがしょげて見えて、オーガスタスは目を見開いた。
聞きたかった。
『まさかお前、ローフィスに“イイ男”と、思って欲しいのか?』
けれどやぶ蛇で、聞きたくない返答を耳にしそうで怖くて、聞くのを止めた。
ローフィスに顎をしゃくられ、オーガスタスが横を見ると。
ギュンターは空の皿に顔を埋め、気絶同然に爆睡していて。
ローフィスに
「いいから、ヤツの寝台までは、担いでやれ」
と言われ、頷く。
「行くぞ」
ローフィスに囁かれ、ディングレーは先を歩くローフィスの背に続く。
戸口付近には平貴族らが群れていたが、ローフィスでなく、背後から来るディングレーを見、道を空ける。
ディングレーは身分隠す時よくヤル、ジロリ…と睨みを効かせ、三年平貴族らに
「…ディングレーって…王族っぽく無い方が、怖く無いか?」
と陰口叩かれた。
戸口付近の者らはこそこそと、ギュンターに六人もの若い美女らが抱きついてた件について、話す者もいた。
間もなく、大貴族用階段から、ローフィスと…質素なマントを纏ったディングレーが降りて来る姿を見かけ、皆一斉に階段を眺める。
ディングレーは先に降りて行くローフィスに、皆から顔を隠すように思い切り寄せて囁く。
「…もう食事が終わって…人気が無いはずじゃなかったか?
…だから俺の召使いが使う、使用人通路から出た方が…」
けれどローフィスは、ギュンターの横で頬杖ついてるオーガスタスが顔を上げ、少し睨むのを目にし、ディングレーの意見を無視して、階段を降りきると寄って行く。
「…ナンかあったのか?」
オーガスタスは、そののどかな質問を聞き、少しフテたようにローフィスから視線を外すと、頬杖ついてた腕をテーブルの上に置き、ぼそりと言う。
「大騒ぎなのに。
聞こえてなかったのか?」
ローフィスは、背後にやって来る自分よりちょっと背が高く、肩幅があり体格のいいディングレーにチラと振り向く。
質素なマントを羽織ると、異名の“黒い狼”ぶりが前面に出て、無頼のような迫力を垣間見せていた。
オーガスタスは気づくと
「どっか行くのか?」
と聞く。
ローフィスは頷くと
「こいつの私室へ入ると、寝室へ行かない限り外の騒ぎとは無縁だからな」
と言った後、オーガスタスの横で脇目も振らず、ひたすらがっつくギュンターを見る。
「…いつにも増して、凄い食いっぷりだな…」
ディングレーも頷く。
「飢えた野良犬並だ」
オーガスタスはチラと口きく余裕の無いギュンターを見、代わって説明した。
「…腹ペコの所をグーデン一味に襲われ、見事交わして逃げたのに、押しかけて来た酒場で馴染みの女達が、逃げてきたグーデン一味に捕まり、助ける為に駆け戻った後。
講師迄やって来て、一悶着あって。
死にそうに、腹が減ってたらしい」
ローフィスは、目を見開く。
「…酒場の…?!
ここに来たのか?!」
「六人で。
ジョアナを始め、テッサやサリー…」
ディングレーはローフィスを見る。
ローフィスは目を、まん丸に見開いていた。
なので代わりに会話に参加する。
「ギュンター目当てで?
こんな時間に?
で、グーデン一味に捕まってたのか?」
オーガスタスは大きく首を縦に振る。
「キャーキャー騒ぐもんだから。
しかも、一・二年宿舎の前で。
そりゃ、野次馬はずらり。
丁度お前が出て言った後、入れ替わるように門番がやって来て。
女達が制止を振り切り、校内に侵入したから、何とかしてくれと言いに来て」
ローフィスは宿舎前の階段を降りきった時、門番とすれちがった事を思い出した。
「…で?」
「リーラスと仲間らも後に付いてきたから、ギュンターも加え、蹴散らすのは簡単だった。
が、その後が大変で」
ディングレーが呆れる。
「助けたのに、大変なのか?」
オーガスタスはまた、大きく首を縦に振ると、頷く。
「…女達は、折角来たからギュンターと寝たいと」
ディングレーは目を見開いて、問う。
「…六人が?」
オーガスタスは頬杖つくと、まだがっつくギュンターをチラと見
「とりあえず、こいつに食わせたら俺が酒場まで付き添うと約束し、帰らせたんだが…。
こいつ、食ったらその後、意識が無くなると言い切る」
ディングレーが、目を見開く。
「…なんで食ったら、意識が無くなるんだ?」
ローフィスは言葉道理受け取るディングレーに呆れ、説明を囁く。
「…腹一杯になったら、眠くなるって事だろう?」
ディングレーは
『なんだ。そうか』
と顔下げる。
「…意識が無くなったら、酒場まで連れて行けないのに…約束しちまったのか?」
ローフィスが問うと、オーガスタスはフテくされて頬杖付き、顔を背けて言う。
「…だから…例え熟睡していようが、俺が担いで酒場まで運ぶと。
約束した」
ローフィスは呆れきって、聞く。
「…で、女達は、熟睡してるギュンターと、ナニがしたい?
添い寝か?」
「…寝ている無防備なこいつを、したい放題、する気らしい」
ギュンターはようやく会話に気づき、きっ!ときつい紫の瞳を向ける。
「絶対ゴメンだ!
寝てる間に避妊ナシで勝手にされてみろ!
近衛に入隊後、“子供が出来たから結婚してくれ”と言われるのは、目に見えてる!!!」
オーガスタスはジト目でギュンターを見やる。
「一応、理性はまだ残ってるんだな…。
なら腹八分目にし、気力で六人コナせ」
ギュンターはまた、甘い美貌…のハズの顔で、睨み付けて怒鳴る。
「…孕ませるのはイヤだが!
俺は女はちゃんと喜ばせるタメに抱く!
ただの流れ作業じゃ、無いぞ!!!」
ローフィスがすかさず口挟む。
「覚悟は立派だが。
お前、監督生して疲れ切ってるんだろう?
それだけ食ったら、食い終わると同時に気絶したように寝入って、蹴っても気づかないんじゃ無いか?」
理性的なローフィスの意見に、ギュンターは顔背ける。
「…多分な」
「それにここに入学当初の、ひょろひょろな体ならともかく。
ちょい肉も付いてきたし、たらふく食った後。
幾らお前でも、酒場まで担ぐのは、真剣力仕事だろう?」
ギュンターは口を開こうとし、オーガスタスに言った言葉だと気づいて、食事に戻る。
ディングレーが見てると、滅多に余裕を無くさないオーガスタスが、顔を下げて沈痛な面持ち。
ローフィスは、親友に畳みかける。
「…なんでそんな馬鹿な約束、したんだ?」
オーガスタスは奔放に跳ねる赤毛振って、ローフィスに噛みついた。
「講師は俺に押しつけ、バックレるし!
お前は居ない!
あの場を丸く収めるため、これが精一杯の策だ!!!
知恵があれば、今貸せ!!!」
ディングレーが見てると、ローフィスは腕組みし、頷いてる。
「…つまり酒場で待ってる、六人の女達が満足すれば、丸く収まるんだな?」
オーガスタスは大きく頷く。
「…そうだ!!!」
ディングレーは呆けて、オーガスタスを見た。
「…たかが女の約束ぐらい…ブッちぎったって、どって事無いだろう?
何であんたが、そんなに気にするんだ?」
オーガスタスはディングレーを怒鳴りつける。
「お前、女の恨み買うと、どれだけ厄介か知らないな?!
しかも一人じゃ無く、複数のだ!!!」
ローフィスは腕組みしたまま、頷く。
「知らぬ間に恨みを買い。
尻拭いを、こいつの執事や俺がしてるから。
思い知ってない」
オーガスタスは、ぷりぷり怒って顔を背ける。
「…贅沢者め!」
ディングレーは言われて目を見開き、改めてローフィスを見る。
が、ローフィスは提案した。
「女六人なら、ギュンターで無くても満足させられる」
オーガスタスはまた赤毛振って、ローフィスに振り向く。
「…お前、そこまで自信家か?!
コイツ、あんだけの数の女、こなしてるのに。
いちいち一人一人、御姫様扱いした上、満足もさせると言う器用さだぞ?!」
ローフィスは頷く。
「御姫様扱いは無理でも、盛大に満足したい場合はお前を選ぶしな。
だが、ここにはコイツが居る」
ディングレーは、自分に向けられたローフィスの親指を見る。
「…お前ほどじゃないが、激し目で大抵の女はイくし。
理性が多少あれば、元は育ちが良いから、それなりの扱いをする。
…まあ…基本不器用だから、ギュンターのような王子様役は、ちょっと無理だろうが」
ディングレーはまだ。
自分を指し示すような、ローフィスの親指を見ていた。
オーガスタスの視線を感じても、それでもまだ。
ディングレーはローフィスの親指を、見続けていた。
「…確かに…アリだな。
ギュンターの代わりと言えば…そのテしか、無いかもしれん。
ネックは、コイツの身分がもしバレたら、全員確信犯で孕むぞ」
ローフィスは頷く。
「当然、伏せる。
今は没落した、古い名家の家柄だとか言って誤魔化す。
三年らが出入りする、他の酒場は無理でも。
俺達が出入りする酒場では、こいつでも身分を誤魔化せるからな」
ディングレーはそこでようやく、会話の内容が理解出来て、俯く。
「…つまり俺に、ギュンターの代わりに六人抱けと?
…それとも半分はあんたが、受け持つのか?」
ローフィスの青い瞳に真っ直ぐ見つめられ、きっぱり言われる。
「六人全員、お前だ」
ディングレーは、がっくり首下げる。
「…どうやって避妊する?」
ローフィスは懐から、小さな革袋を取り出す。
「これを手に入れた。
飲めば半日、女とシても、孕ませる事は無い」
ディングレーは革袋をじっ…と見つめ、尋ねる。
「本当に、本当か?」
「万一デキちまったら、俺が安全な堕胎薬を女に渡す」
「…つまり尻拭い、してくれるんだな?」
「思いっきり、シたいんだろう?」
「…だが、全員ギュンターの女だろう?」
オーガスタスが、頬杖ついたまま呻く。
「いや。
ちゃんと真っ当な旦那を探してる。
が、ギュンターとかなり真面目に、遊びたい女達だ」
ディングレーは、意味が分からず首捻る。
ローフィスが、フォローする。
「女が理解出来て無いのに、考えようとするな。
今一時、ギュンターから気を逸らせれば、それでいい。
女も満足。
お前も満足で、丸く収まる」
オーガスタスが呆れる。
「どう、言いくるめる?」
ローフィスは、にっこり笑った。
「これだけ押し出し満点の、イイ男だ。
殆どの女は、ちょっと押してやるだけで、なびく」
ディングレーはローフィスを見て、念押しする。
「…それは、俺の事か?」
ローフィスは、ぶすっとしてディングレーを見る。
「…他に誰がいる?」
「…つまりあんた、俺の事、イイ男だと思ってんのか?」
ローフィスはむかっ腹立てて怒鳴る。
「女目線でな!」
ディングレーがしょげて見えて、オーガスタスは目を見開いた。
聞きたかった。
『まさかお前、ローフィスに“イイ男”と、思って欲しいのか?』
けれどやぶ蛇で、聞きたくない返答を耳にしそうで怖くて、聞くのを止めた。
ローフィスに顎をしゃくられ、オーガスタスが横を見ると。
ギュンターは空の皿に顔を埋め、気絶同然に爆睡していて。
ローフィスに
「いいから、ヤツの寝台までは、担いでやれ」
と言われ、頷く。
「行くぞ」
ローフィスに囁かれ、ディングレーは先を歩くローフィスの背に続く。
戸口付近には平貴族らが群れていたが、ローフィスでなく、背後から来るディングレーを見、道を空ける。
ディングレーは身分隠す時よくヤル、ジロリ…と睨みを効かせ、三年平貴族らに
「…ディングレーって…王族っぽく無い方が、怖く無いか?」
と陰口叩かれた。
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