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途中で見捨てる講師らと、女性達に乞われるギュンター
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講師二人が、六人の女性達に事情聴取を始める。
一番左端に立つ、濃い栗毛を結い上げた気丈なテッサが、真っ先に口開く。
「ギュンター、ちっとも会えないから。
誰とも無く…尋ねてみようか、って話になって」
「こんな、時間に?」
栗毛の鼻髭を蓄えた、男前の講師が厳しく尋ねる。
「あらだって!
会うのは大抵、こんな時間よね?!」
明るい栗色巻き毛の愛らしいレナが、皆を見回し叫ぶ。
「ご家族は承知か?」
もう一人の、真っ直ぐな明るい栗毛の若手講師が尋ねる。
けど女性らは顔を見合わせ合う。
真っ直ぐの金髪のリーナが、にっこり微笑む。
「家族は、オーガスタスの仕切ってる酒場なら出かけても良いと。
そして少しでも出世しそうな将来の近衛騎士を、婿にしろと。
たいそう期待しておりますわ」
講師二人は、その回答に呆れた。
が、周知の事実。
近衛に上がってしまえば、女性達の争奪戦は更に厳しくなる。
だから…近衛に上がる前の、『教練』の頃から少しでも親しくなろうと、彼らの出入りする酒場に、そこそこの家柄の淑女らが押しかけて来るのは、昔からの通例。
黒髪の美女、ジョアナがツン!として、逆に尋ねる。
「去年はこの時間に訪れても、入れましたのに。
どうして今年に入って、立ち入り禁止になりましたの?」
オーガスタスがぼそり…と告げる。
「さっきみたいな目に合うからだ。
どうして捕まった?
群れて校門から来たら、突然襲いかかられたのか?」
見知ったオーガスタスの問いに、女性らは一斉に、保護者のように背後に立つ、オーガスタスやギュンター、リーラスとその悪友達に振り向き…そして互いを見回した後、結局ジョアナが口開く。
「…ギュンターに会いたい。
と告げたら、門番が。
今は入れないと言うので…一人が気を引いてる隙に、数人が横からこそっと入って。
先発隊が駆け始めると、門番が後を追うので、その隙に残りの皆が一斉に、駆け抜けたの。
入ったら茂みに暫く、隠れていたんだけど。
門番が別の場所を探してる間に合流して。
宿舎の方に歩き始めたら…生徒らしき人が居たので…」
けど突然、栗毛のサリーが口挟む。
「私、ちゃんと言ったわ!東の方だって!
あんな知らない連中に、道なんて聞くから!」
ジョアナは少し憮然として、ぼそぼそとつぶやく。
「…彼らに、ギュンターはどこの宿舎かと、尋ねたの。
そしたら突然…」
その後は女性らが、口々に叫び始める。
「そう!
いきなり腕を掴まれたの!」
「たくさん居た男達が、捕まえようとするのよ?!」
「いきなりよ!
いきなり!!!」
ギュンターは額に手を当て、沈痛な面持ちで顔を下げた。
両側に立つオーガスタスとリーラスが、そんなギュンターを見下ろす。
講師も気づき
「理由を、知ってるようだな?!」
とギュンターに、怖い声で促す。
ギュンターは女性らにも振り向かれ、俯いたまま囁く。
「…いちゃもんつけられ、取り囲まれたが…。
腹が…減っていて」
「囲みを突破し、逃げたのか?」
リーラスに聞かれ、ギュンターは首を横に振る。
「ボスのダランドステの腹を殴り、足蹴りして転ばせて、逃げ出した、その直ぐ後だったんだな…。
タイミング、悪すぎる…」
オーガスタスが横で大きなため息を吐く。
「つまりお前を殴ろうと取り囲んだのに、逃げられ。
そこにお前を訪ねてきた、お嬢さん方が来たので。
拉致し、人質にする気だったんだな?」
髭の講師がつぶやく。
「ダランドステ…グーデンの子飼いか…」
女性らは、一斉にいきり立つ。
「だからって!
拉致とか人質とか!
いつここはそんな、物騒な事がまかり通るようになったの?!!!!」
「そうよ!
ちゃんと厳罰に処して!」
けれど講師だけで無く、オーガスタスも顔を下げて告げる。
「ディアヴォロスが卒業したから。
一気に四年王族、グーデンがハバ効かせ始めてるから、厄介なんだ」
「王族…え?!グーデンって…」
「…凄く評判の悪い…ど腐れ王族?」
リーラスが頷きながら囁く。
「オーガスタスが居なかったら。
講師すら黙らせる事の出来る身分だから。
拉致られたら、されたい放題されるぞ?」
女性達は、俯き加減で互いを見回し合う。
「…ディアヴォロス様が卒業した・ダケで…そんな物騒になるの?」
髭の講師も、俯き加減で口開く。
「悪さが過ぎれば、ディアヴォロスの方からも理事からも、警告は飛ぶが。
やられ損になるのは、目に見えてる。
なにせ、腐っても“王族”だからな…」
ジョアナが、きっ!と顔を上げて叫ぶ。
「でも!
せめて手下の男達だけでも、処罰出来ないの?!」
若手の講師が、素早く口挟む。
「グーデンが庇う。
彼は力自慢の手下がいなければ、威張っていられないから」
みなが、シン…と静まり返る。
「じゃ…ギュンターが酒場に来るのを、じっと待ってなきゃ…ダメなの?!」
一人が口開くと、皆も一斉にしゃべり出す。
「待ってられないわ…」
「忙しくって、ちっとも来ないんだもの!」
「会いに来られないなんて…そんなの、酷い!」
けど髭の講師が、一喝する。
「グーデン配下の男らに、手ひどい扱いを受けてもか?!
いつも助けられるとは、オーガスタスですら保証出来ないぞ?!」
女性らは背後に立つオーガスタスに、一斉に振り向く。
縋るように見つめられ、けれどオーガスタスはため息交じりに口開く。
「…講師の言うとおりだ。
だからもし来たければ。
門番にギュンターを呼び出して貰え。
ギュンターが来たら…」
けれどギュンターは項垂れる。
「俺が標的だから。
俺と一緒は、もっと危ないと思う…」
女性らはまた、口々に叫び始める。
「どうしてギュンターが標的なの?!」
「そうよ!
なぜギュンターを狙うの?!」
「なんとか、出来ないの?!」
オーガスタスが、俯き加減でぼそり…と言い渡す。
「…ギュンター自身も…喧嘩を買って出るから。
抗争は激化しこそすれ、沈静化するのは…いつになるやら」
「そんな、状況なの?!」
「リーラス!
貴方何とか出来ないの?!」
「…オーガスタスが無理なのに、リーラスにそれ、言う訳?!」
「オーガスタスが、平貴族だからなの?!」
「腐ってるのに!
王族ってダケで、それだけエライの?!」
若手講師が、ため息交じりにぼやく。
「…ずっとディアヴォロスに抑えつけられてたから。
卒業し、したい放題突っ走るのを今、なんとか各方面から圧力かけて、押さえてるところだ。
が、元が…酷いから」
皆、突然暗くなる。
がその後、女性達は一気に振り向き、ギュンターを取り囲むと口々に告げる。
「せめて週末は、来るわよね?!」
「じゃなきゃ、危険だろうが、押しかけて来るから!」
「凄く、会いたかったのよ?!」
「寂しかった!!!」
けれどその頃、一・二年宿舎では罰ゲームで無く、ホンモノの女性だと分かり、生徒らは戸口から集まり来て、皆を遠巻きに取り囲み、事の成り行きを見守っていた。
詰め寄る女性らに、ギュンターは困り切って囁く。
「…監督生に選ばれたのだって、ほぼ強制的で…俺には選択権が無いしその…」
「もう!」
一人がギュンターの胸に飛び込むと、他の女性らもギュンターに抱きつき始め…一枚岩のように見えた女性らは、ギュンターを争い始める。
「何よ!
腕は私のもの!」
「じゃなに?!
私に背中に回れっての?!」
「背中はもう私が取ったわ!」
「せっかく来たのに!
一部分にしか、抱きつけないの?!」
両側に立ってた、オーガスタスもリーラスもため息交じりに抱きつかれてもみくちゃにされてるギュンターを見。
野次馬達は、モテまくるギュンターを見て、目を見開き驚く。
講師はギュンターを争い始める女性らを見ると、オーガスタスに
「後は任せる」
と言って、背を向け始め、オーガスタスは歯を剥いて怒鳴った。
「こんな面倒!
俺に押しつける気か!!!」
けれど二人の講師は歩を止めず、立ち塞がる野次馬を退けて、去って行く。
リーラスが、ギュンターを取り合い喧嘩を始めそうな女性らに顔をひょい、と寄せ
「…よければ俺も、居るが…」
と声かけるが
「貴方、しょっ中顔出すじゃ無い!!!」
「ギュンターの顔が、見たくてわざわざ来たのに!!!」
と叫ばれ、寄せた顔を引っ込めた。
オーガスタスは額に手を当て、ギュンターに促す。
「…とにかく、後日顔を出すと約束し、引かせろ」
けど女性らは、一斉にオーガスタスに叫ぶ。
「今夜、会いたくて来たのに?!」
「後日なんて!!!」
「わざわざ来た意味、無いじゃ無いの!!!」
ギュンターは弱り切る。
「…今、腹が減って死にそうだし、食べたら数分後には意識が無くなり、多分勃たない」
オーガスタスもリーラスも、悪友達もが、取り囲む野次馬がほぼ、一・二年なのに。
はばかること無く口にする、ギュンターの直接話法に呆れた。
けど女性らも、負けてはいない。
「あら。じゃあたしが役に立つようにしてあげる!」
「あたしだって!」
「この際、貴方は寝てるだけで良いわ」
「無抵抗なギュンターを、好きに出来ちゃうの?!
それって最高♡」
「ここ暫く来てないから、いっぱい溜まってない?!」
「うんとヨくしてあげるから♡」
対抗意識もあるらしく、どんどん発言が過激になり、悪友らはぼやきまくる。
「俺が疲れてるって言った時は、つれなかったのに」
「ヨくしてあげる。
なんてセリフ、俺聞いたこと無いぞ?!」
オーガスタスは野次馬の一・二年を見回し、とうとう叫ぶ。
「どうしてここに、ローフィスが居ない!
あいつしか、こんな状況収められないじゃないか!!!」
けれどリーラス、そして悪友らに見つめられ、とうとう仕方無く、オーガスタスはギュンターに告げる。
「仕方無い。
場所を変えるしか無い。
酒場まで、俺が付き添う」
ギュンターは金髪振って叫ぶ。
「だから!
腹が減って死にそうなんだ!!!」
オーガスタスは腕組みしてため息吐くと
「こいつに気の済むまで食わせたら、例え意識無くとも酒場まで、俺が担いで行く。
その後は、好きにしろ」
と言って退けた。
やっと女性達はその発言に、口を閉じる。
「リーラス、彼女らを門番と一緒に門まで、送ってくれ」
と言い渡し、ギュンターの背を押す。
オーガスタスに連れ去られるギュンターの背を見送る女性らは、口々に叫ぶ。
「信頼してるわ!!!オーガスタス!!!」
「絶対、連れて来てね!!!」
「待ってるから!!!」
オーガスタスは振り向かず頷き、ギュンターの背を三年宿舎に向け、ぐいぐい押す。
三年宿舎前も、野次馬がずらりと居たが、オーガスタスがギュンターを強引に連行すると、皆一斉に道を空けた。
宿舎前の階段を上がりながら、ギュンターは横のオーガスタスを見上げる。
「…本当に、満腹になったら意識無くなると思う」
オーガスタスは、無言で頷く。
「…それに俺は、されるよりしたいタイプだ」
オーガスタスは、また頷く。
が、今度は口開いた。
「選択肢が、他に無いから。
し放題されたくなければ、気力で意識、繋ぎ止めとけ」
ギュンターはそれ聞いて、項垂れきった。
一番左端に立つ、濃い栗毛を結い上げた気丈なテッサが、真っ先に口開く。
「ギュンター、ちっとも会えないから。
誰とも無く…尋ねてみようか、って話になって」
「こんな、時間に?」
栗毛の鼻髭を蓄えた、男前の講師が厳しく尋ねる。
「あらだって!
会うのは大抵、こんな時間よね?!」
明るい栗色巻き毛の愛らしいレナが、皆を見回し叫ぶ。
「ご家族は承知か?」
もう一人の、真っ直ぐな明るい栗毛の若手講師が尋ねる。
けど女性らは顔を見合わせ合う。
真っ直ぐの金髪のリーナが、にっこり微笑む。
「家族は、オーガスタスの仕切ってる酒場なら出かけても良いと。
そして少しでも出世しそうな将来の近衛騎士を、婿にしろと。
たいそう期待しておりますわ」
講師二人は、その回答に呆れた。
が、周知の事実。
近衛に上がってしまえば、女性達の争奪戦は更に厳しくなる。
だから…近衛に上がる前の、『教練』の頃から少しでも親しくなろうと、彼らの出入りする酒場に、そこそこの家柄の淑女らが押しかけて来るのは、昔からの通例。
黒髪の美女、ジョアナがツン!として、逆に尋ねる。
「去年はこの時間に訪れても、入れましたのに。
どうして今年に入って、立ち入り禁止になりましたの?」
オーガスタスがぼそり…と告げる。
「さっきみたいな目に合うからだ。
どうして捕まった?
群れて校門から来たら、突然襲いかかられたのか?」
見知ったオーガスタスの問いに、女性らは一斉に、保護者のように背後に立つ、オーガスタスやギュンター、リーラスとその悪友達に振り向き…そして互いを見回した後、結局ジョアナが口開く。
「…ギュンターに会いたい。
と告げたら、門番が。
今は入れないと言うので…一人が気を引いてる隙に、数人が横からこそっと入って。
先発隊が駆け始めると、門番が後を追うので、その隙に残りの皆が一斉に、駆け抜けたの。
入ったら茂みに暫く、隠れていたんだけど。
門番が別の場所を探してる間に合流して。
宿舎の方に歩き始めたら…生徒らしき人が居たので…」
けど突然、栗毛のサリーが口挟む。
「私、ちゃんと言ったわ!東の方だって!
あんな知らない連中に、道なんて聞くから!」
ジョアナは少し憮然として、ぼそぼそとつぶやく。
「…彼らに、ギュンターはどこの宿舎かと、尋ねたの。
そしたら突然…」
その後は女性らが、口々に叫び始める。
「そう!
いきなり腕を掴まれたの!」
「たくさん居た男達が、捕まえようとするのよ?!」
「いきなりよ!
いきなり!!!」
ギュンターは額に手を当て、沈痛な面持ちで顔を下げた。
両側に立つオーガスタスとリーラスが、そんなギュンターを見下ろす。
講師も気づき
「理由を、知ってるようだな?!」
とギュンターに、怖い声で促す。
ギュンターは女性らにも振り向かれ、俯いたまま囁く。
「…いちゃもんつけられ、取り囲まれたが…。
腹が…減っていて」
「囲みを突破し、逃げたのか?」
リーラスに聞かれ、ギュンターは首を横に振る。
「ボスのダランドステの腹を殴り、足蹴りして転ばせて、逃げ出した、その直ぐ後だったんだな…。
タイミング、悪すぎる…」
オーガスタスが横で大きなため息を吐く。
「つまりお前を殴ろうと取り囲んだのに、逃げられ。
そこにお前を訪ねてきた、お嬢さん方が来たので。
拉致し、人質にする気だったんだな?」
髭の講師がつぶやく。
「ダランドステ…グーデンの子飼いか…」
女性らは、一斉にいきり立つ。
「だからって!
拉致とか人質とか!
いつここはそんな、物騒な事がまかり通るようになったの?!!!!」
「そうよ!
ちゃんと厳罰に処して!」
けれど講師だけで無く、オーガスタスも顔を下げて告げる。
「ディアヴォロスが卒業したから。
一気に四年王族、グーデンがハバ効かせ始めてるから、厄介なんだ」
「王族…え?!グーデンって…」
「…凄く評判の悪い…ど腐れ王族?」
リーラスが頷きながら囁く。
「オーガスタスが居なかったら。
講師すら黙らせる事の出来る身分だから。
拉致られたら、されたい放題されるぞ?」
女性達は、俯き加減で互いを見回し合う。
「…ディアヴォロス様が卒業した・ダケで…そんな物騒になるの?」
髭の講師も、俯き加減で口開く。
「悪さが過ぎれば、ディアヴォロスの方からも理事からも、警告は飛ぶが。
やられ損になるのは、目に見えてる。
なにせ、腐っても“王族”だからな…」
ジョアナが、きっ!と顔を上げて叫ぶ。
「でも!
せめて手下の男達だけでも、処罰出来ないの?!」
若手の講師が、素早く口挟む。
「グーデンが庇う。
彼は力自慢の手下がいなければ、威張っていられないから」
みなが、シン…と静まり返る。
「じゃ…ギュンターが酒場に来るのを、じっと待ってなきゃ…ダメなの?!」
一人が口開くと、皆も一斉にしゃべり出す。
「待ってられないわ…」
「忙しくって、ちっとも来ないんだもの!」
「会いに来られないなんて…そんなの、酷い!」
けど髭の講師が、一喝する。
「グーデン配下の男らに、手ひどい扱いを受けてもか?!
いつも助けられるとは、オーガスタスですら保証出来ないぞ?!」
女性らは背後に立つオーガスタスに、一斉に振り向く。
縋るように見つめられ、けれどオーガスタスはため息交じりに口開く。
「…講師の言うとおりだ。
だからもし来たければ。
門番にギュンターを呼び出して貰え。
ギュンターが来たら…」
けれどギュンターは項垂れる。
「俺が標的だから。
俺と一緒は、もっと危ないと思う…」
女性らはまた、口々に叫び始める。
「どうしてギュンターが標的なの?!」
「そうよ!
なぜギュンターを狙うの?!」
「なんとか、出来ないの?!」
オーガスタスが、俯き加減でぼそり…と言い渡す。
「…ギュンター自身も…喧嘩を買って出るから。
抗争は激化しこそすれ、沈静化するのは…いつになるやら」
「そんな、状況なの?!」
「リーラス!
貴方何とか出来ないの?!」
「…オーガスタスが無理なのに、リーラスにそれ、言う訳?!」
「オーガスタスが、平貴族だからなの?!」
「腐ってるのに!
王族ってダケで、それだけエライの?!」
若手講師が、ため息交じりにぼやく。
「…ずっとディアヴォロスに抑えつけられてたから。
卒業し、したい放題突っ走るのを今、なんとか各方面から圧力かけて、押さえてるところだ。
が、元が…酷いから」
皆、突然暗くなる。
がその後、女性達は一気に振り向き、ギュンターを取り囲むと口々に告げる。
「せめて週末は、来るわよね?!」
「じゃなきゃ、危険だろうが、押しかけて来るから!」
「凄く、会いたかったのよ?!」
「寂しかった!!!」
けれどその頃、一・二年宿舎では罰ゲームで無く、ホンモノの女性だと分かり、生徒らは戸口から集まり来て、皆を遠巻きに取り囲み、事の成り行きを見守っていた。
詰め寄る女性らに、ギュンターは困り切って囁く。
「…監督生に選ばれたのだって、ほぼ強制的で…俺には選択権が無いしその…」
「もう!」
一人がギュンターの胸に飛び込むと、他の女性らもギュンターに抱きつき始め…一枚岩のように見えた女性らは、ギュンターを争い始める。
「何よ!
腕は私のもの!」
「じゃなに?!
私に背中に回れっての?!」
「背中はもう私が取ったわ!」
「せっかく来たのに!
一部分にしか、抱きつけないの?!」
両側に立ってた、オーガスタスもリーラスもため息交じりに抱きつかれてもみくちゃにされてるギュンターを見。
野次馬達は、モテまくるギュンターを見て、目を見開き驚く。
講師はギュンターを争い始める女性らを見ると、オーガスタスに
「後は任せる」
と言って、背を向け始め、オーガスタスは歯を剥いて怒鳴った。
「こんな面倒!
俺に押しつける気か!!!」
けれど二人の講師は歩を止めず、立ち塞がる野次馬を退けて、去って行く。
リーラスが、ギュンターを取り合い喧嘩を始めそうな女性らに顔をひょい、と寄せ
「…よければ俺も、居るが…」
と声かけるが
「貴方、しょっ中顔出すじゃ無い!!!」
「ギュンターの顔が、見たくてわざわざ来たのに!!!」
と叫ばれ、寄せた顔を引っ込めた。
オーガスタスは額に手を当て、ギュンターに促す。
「…とにかく、後日顔を出すと約束し、引かせろ」
けど女性らは、一斉にオーガスタスに叫ぶ。
「今夜、会いたくて来たのに?!」
「後日なんて!!!」
「わざわざ来た意味、無いじゃ無いの!!!」
ギュンターは弱り切る。
「…今、腹が減って死にそうだし、食べたら数分後には意識が無くなり、多分勃たない」
オーガスタスもリーラスも、悪友達もが、取り囲む野次馬がほぼ、一・二年なのに。
はばかること無く口にする、ギュンターの直接話法に呆れた。
けど女性らも、負けてはいない。
「あら。じゃあたしが役に立つようにしてあげる!」
「あたしだって!」
「この際、貴方は寝てるだけで良いわ」
「無抵抗なギュンターを、好きに出来ちゃうの?!
それって最高♡」
「ここ暫く来てないから、いっぱい溜まってない?!」
「うんとヨくしてあげるから♡」
対抗意識もあるらしく、どんどん発言が過激になり、悪友らはぼやきまくる。
「俺が疲れてるって言った時は、つれなかったのに」
「ヨくしてあげる。
なんてセリフ、俺聞いたこと無いぞ?!」
オーガスタスは野次馬の一・二年を見回し、とうとう叫ぶ。
「どうしてここに、ローフィスが居ない!
あいつしか、こんな状況収められないじゃないか!!!」
けれどリーラス、そして悪友らに見つめられ、とうとう仕方無く、オーガスタスはギュンターに告げる。
「仕方無い。
場所を変えるしか無い。
酒場まで、俺が付き添う」
ギュンターは金髪振って叫ぶ。
「だから!
腹が減って死にそうなんだ!!!」
オーガスタスは腕組みしてため息吐くと
「こいつに気の済むまで食わせたら、例え意識無くとも酒場まで、俺が担いで行く。
その後は、好きにしろ」
と言って退けた。
やっと女性達はその発言に、口を閉じる。
「リーラス、彼女らを門番と一緒に門まで、送ってくれ」
と言い渡し、ギュンターの背を押す。
オーガスタスに連れ去られるギュンターの背を見送る女性らは、口々に叫ぶ。
「信頼してるわ!!!オーガスタス!!!」
「絶対、連れて来てね!!!」
「待ってるから!!!」
オーガスタスは振り向かず頷き、ギュンターの背を三年宿舎に向け、ぐいぐい押す。
三年宿舎前も、野次馬がずらりと居たが、オーガスタスがギュンターを強引に連行すると、皆一斉に道を空けた。
宿舎前の階段を上がりながら、ギュンターは横のオーガスタスを見上げる。
「…本当に、満腹になったら意識無くなると思う」
オーガスタスは、無言で頷く。
「…それに俺は、されるよりしたいタイプだ」
オーガスタスは、また頷く。
が、今度は口開いた。
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し放題されたくなければ、気力で意識、繋ぎ止めとけ」
ギュンターはそれ聞いて、項垂れきった。
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