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上半身脱いだローランデに見惚れるギュンター

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 なだらかな丘を幾つか上下し、途中短い崖を二つ程下った後、大きな池のほとりで休憩を取る。
皆一斉に、馬を池の縁に引くと馬に水を飲ませ始め、ギュンターもスフォルツァの横でロレンツォに水を飲ませてた。

池の縁はずらりと補習の生徒達が、馬に水を飲ませてる光景が広がる。
そんな中、ぼそぼそと話す声が耳に飛び込んで来た。

「…今日はナンか、早くないか?」
「…ホラ、アスランが居ないから」
「そっか。
あいつ居ると、いちいち毎度、崖下で待機だったもんな」
「短い崖ですら、待機。
お陰でこっちは休めたけどさ」

ギュンターは、つい横のスフォルツァを見た。
スフォルツァは顔を下げ、ため息を吐き出してる。

「…つまり今日みたいに駆け抜けず、毎度崖の時は、止まってアスラン待ちしてたのか?」
スフォルツァは馬を挟んで向こうにいるギュンターに問われ、頷く。

「アスランは…なんて言うかその…。
乗馬出来る筋肉が不足してるというか…。
馬上でバランスが、保てないんです」

ギュンターは思い切り深く、顔を下げる。
「…そんなヤツに崖下ろさせちゃ、マズいじゃないか」
スフォルツァは頷く。
「頑張ってたし、ゆっくりなら…まだ何とか、降りられたんですが」

ギュンターは、他の二人。
つまりディングレー私室に一緒に泊まってる、マレーとハウリィもアスランと同様なのか?
と思い、問う。
「…アスランだけか?
他に乗馬出来ないヤツは…」

スフォルツァは首を横に振る。
「慣れていない者でも、ゆっくりならどこも駆けられる者ばかりで…。
まるっきり初心者は、アスランだけですね」

ギュンターはアスランだけが落ちこぼれと知り、俯く。
「…初心者がたった一人、中級者に混じるのは…辛いな」
スフォルツァは思わず、顔を上げて馬の向こうの金髪巻き毛のギュンターの、整いきった横顔を見つめてしまった。
「…同感です。
けど初心者はここにアスランの他、居ないので」
ギュンターは無言で頷いた。
けれどふと…アスランに劣等生特有の、落ち込みや卑屈な感じは受けなくて、スフォルツァに尋ねる。
「…ミシュランが厳しかったのは聞いてるが…アスランは君がずっと、付いて見てたのか?」

スフォルツァは俯き加減で頷く。
「私に世話をするよう、ミシュランに言われて。
馬上は高さもあるし、アスランは馬も、高さも怖がるし。
遅れるとミシュランが怒鳴りつけるので、萎縮しきって…。
気の毒でした」

ギュンターは頷く。
「…だが君が…アスランを『二度と乗りたくない』ほどの思いをしないよう、頑張ったんだろう?
本人がやる気なんだ。
多分じき、乗り回せるようになる。
…怪我を治すのが先決だが」

スフォルツァはギュンターに認められ、少し嬉しそうに頬を染め、小声で言葉を返した。
「多分もう二日もすれば…戻って来ます」

ギュンターは、頷いた。

けれど間もなく、皆が上着を脱ぎ始め、布で体を拭き出す光景がそこらかしこから目に飛び込む。
ディングレーが見事な上半身の裸体を曝し、布を池に浸けて絞り、肩や首。
胸元を拭いていて…周囲の一年、二年らはその見事な肉体美に見惚れていた。

側にローランデの姿が無く、つい、キョロ…とギュンターは周囲を見回し、探す。
間もなく少し離れ、人の少ない池のほとりで、シェイルとローランデが並んで、上着を脱いでる姿を見つける。

あちこちの生徒らが、こっそりシェイルの裸を盗み見てる。
上着を脱いだシェイルは、すんなりとした綺麗な体をしていて、肌はピンクがかりほのかな色香をまとっていた。

けれどギュンターは
「(予想道理だ)」
と内心呟き、隣のローランデが上着を肩から滑り落とす姿に、注視した。

途端、どっくん!
と心臓が波打つ。

戦いの少年神のような体を予想していたのに…。
シェイルと比べれば、背も高く確かにしっかりした体付きだった。

けれど予想より遙かに真っ白な肌で、肌は彫刻のようになめらか。
肩幅はあるけど、肩先は丸みを帯びていて…。
特に胸が、まあるく盛り上がり、女性的で。
そして、ため息が出るほど綺麗な裸体をしていた。

脱いでたのは上半身だけだったけど、下もして知るべし。
同様の、雪のように白い腰周り。
すらりと長い足が予想出来た。

そして処女雪のような、形の良い尻………。

ギュンターは思い切り上半身裸のローランデに、視線が吸い付く自分を意識した。

もっと男性的だと言う予想が見事に裏切られ、どこか女性を思わせる優しい雰囲気の裸体。

「(…ヤバ…!)」
一瞬、勃ち上がりかける自分自身に焦り、大急ぎでローランデから視線を外す。

心臓があぶり、ドクン!ドクンと脈打つ音が、周囲に聞こえるんじゃないかと思うほど、五月蠅うるさい。
言葉が無いまま、自分の反応に自分でも驚き、最近滅多に無い事だったけど、狼狽うろたえまくって自分を見失いそうになった。

ちょっと心臓の鼓動が落ち着き、ふ…と視線を戻すと、ローランデはもう上着を肩にかけ、片腕袖を通してる真っ最中。
しかも並び立つシェイルの体が邪魔でよく見えず、横に居るスフォルツァの手前、首を大袈裟に振って覗く訳にも行かなくて…。
シェイルの姿でほぼ隠れてる内に、ローランデは上着を着てしまった。

ギュンターの様子を見て、スフォルツァが囁く。
「…分かります。
色事に慣れてる私ですら…目にすると一瞬焦りますから」

ギュンターは、ぎくっ!としてスフォルツァに振り向く。
「…お前でも…ヤバくなるのか?」
言ってから、スフォルツァが大貴族だと思い出し
「(…意味、通じないか?)」
と思った。
が、スフォルツァは微かに頷くと
「そりゃ、ローフィス殿とディアヴォロス殿と寝てる…と、公然の噂聞いてれば…。
つい、寝台で二人のどっちかに抱かれ、乱れる姿とか…。
簡単に思い浮かびますからね」

「ロー…フィスと…………。
乱れる?」

スフォルツァはようやくその時気づき
「シェイルの事でしょう?
グループ生として居る時は、側に寄られてもそんな気、まるで起きませんけど。
脱がれると流石に、意識しちゃいますよね?」
と、改めてギュンターを見上げた。

ギュンターはそこでようやく、シェイルが話題だったと気づく。
が、スフォルツァが
「(他の誰かのことかな?)」
とじっ、と見つめてるので、ギュンターは内心の動揺を隠し、素知らぬ顔で話題を変える。
「ディアヴォロスって、よく聞く名だが…。
お前だって、ロクに知らないんだろう?」

そう言われた途端、スフォルツァはホントにがっかりしたように、顔を下げる。
「せめて一年、早く産まれていたら…。
一年間、お姿が見られたのに。
私はせいぜい、たまに出る舞踏会でたったの二回程度。
遠目からお姿を見かけただけ。
とても声をかける事など、出来はしなかった…。
けれど『教練キャゼ』でなら…一年の間、幾度か話しかける機会も、あったでしょうに…」

ギュンターはその時、自分にとってのディングレーとかローランデが、スフォルツァにとってのディアヴォロスに当たる。
と気づく。

ギュンターは思わず頷いてた。
「…だな。
俺だって…旅の途中ディングレーを見かけても。
口なんか、聞いてなかったな…」

スフォルツァが深いため息を吐くので、ギュンターも思わず項垂れた。
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