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追い出されたディングレーとギュンターの、その後
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ローランデはその朝、飛び起きた。
夢の中で、ギュンターがオーガスタスと裸でキスしまくってて、その後横からやっぱり裸のディングレーが、ギュンターの腕を引いて振り向かせ、キスをし。
しまいに、オーガスタスとディングレーが両側から、裸のギュンターを抱きしめ、ギュンターは二人に首筋や頬に口づけられ、艶然と微笑んでる…夢を見たから。
暫く、ローランデは呆然とした。
「(…でも…でもみんな、自分の説を声高に叫んでる…って…。
つまり私の説は…オーガスタスとディングレー、二人でギュンターを…)」
しかし、沈痛な面持ちで顔を下げ、一番物の分かった召使い、ランディットがノックの後、部屋に入ってきた時。
尋ねる。
「…あの…夢…って…人の願望とか、現してると思う?
それとも自分の知らない事実と言うか、真実を見ると…思う?」
召使いはカーテンを開けて整えてたけど、それを聞いた途端、目を見開いて振り向く。
ローランデは驚いてどう返答していいか分からない召使いの、見開かれた青い瞳を見、項垂れて言った。
「ごめん…忘れて?」
召使いはほっとしたように、水色の布が垂れ下がる天蓋付き寝台に寄ると、微笑んで告げる。
「まだ…お休みですか?」
ローランデは慌てて寝台から身を滑り下ろし、室内履きをはくと、ガウンを手にして扉へ向かう。
「仕事を続けて」
召使いは頷くと、寝乱れたローランデの寝台の、クリーム色の布団を綺麗に整え始めた。
ディングレーがふらつく足取りで自室に戻る途中。
大貴族用食堂に、朝食取るため集っていた取り巻き大貴族らは、そんなディングレーを凝視した。
髪も乱れきり、衣服も埃だらけで、くたびれきっていた。
ディングレーが何も無い所でつっかかり、転びそうになって身を立て直す様を見て。
デルアンダーが慌てて椅子から立ち上がり、そっと寄って告げる。
「よければ今日は私が、一年の三人をスフォルツァに、送り届けましょうか?」
ディングレーはそう言ったデルアンダーを、朦朧とした顔で見る。
むっつり頷くと、言葉を返す。
「そうしてくれると、凄く、助かる」
デルアンダーを伴って、ディングレーは自室の扉を開ける。
アスラン、ハウリィ、マレーは一斉に振り向き、一晩帰らなかったディングレーを心配そうに見つめた。
マレーがそっ。と寄って尋ねる。
「何か、ありましたか?」
ディングレーはマレーの心配げなヘイゼルの瞳を見た後。
その後ろでこちらを心配げに見つめてる、ハウリィを見た。
ふんわりした明るい栗色巻き毛の、小兎のような愛らしい…大きな青い瞳の華奢な美少年。
その頼りなげな小さな肩を見ると…アンガスの言った、残酷なお遊びを思い出し、また火山が噴火したように怒りが湧き上がる。
が、努めて平静な声で囁いた。
「大丈夫だ。朝飯は?
みんなもう、食ったのか?」
マレーが代表して、こっくり。と頷く。
マレーの視線がまだとても心配そうで、ディングレーは気づくと微笑んだ。
「疲れてるだけだ。
今日はデルアンダーが送ってくれる。
悪いが、彼に付いて行ってくれるか?」
マレーは頷き、デルアンダーがさあ…!と扉に促す。
ディングレーはデルアンダーの気遣う視線で、よほど自分が酷い顔をしてるな。と分かった。
ディングレーは扉を開けて三人を部屋から出すデルアンダーに振り向くと、言った。
「ああ悪いが…。
講師に昨夜俺は、消えた知り合いを一晩中探し、一睡もしてないから。
午前の授業は休み、午後から出ると。
そう、告げてくれるか?」
デルアンダーは無言で頷いた。
ディングレーはその後、着替えもせずに寝室の扉を開けると。
寝台に顔から突っ伏し、意識不明に陥った。
デルアンダーは三人を伴って大貴族用食堂を抜ける際、見つめてる明るい栗毛で女顔の、テスアッソンに囁く。
「ディングレー殿は、消えた知り合いを一晩中探し、一睡もされてない」
テスアッソンは横の、真っ直ぐの黒髪を背に流すオルスリードと、顔を見合わせる。
デルアンダーが出て行くと、明るい栗毛の麗人、モーリアスがみんなに尋ねた。
「信じるか?」
四角顔で真っ直ぐの栗毛の、ラッセンスがぼやく。
「当然、口実だろう?」
銀髪巻き毛の美形、シャウネスが異論を唱える。
「だが、ハウリィの義兄を…どうにかしてたんだろう?」
テスアッソンが呆れる。
「一晩中?」
皆、途端に黙り込む。
オルスリードが、ぼそりと言った。
「…まさか…ここに帰る途中、ギュンターに出会うか…待ち合わせとかして。
茂みでずっと、くんずほぐれず。
野外で一晩中、ふけってたとか…。
みんな、考えてナイよな?」
テスアッソンが、胸中的中されたような、すっとんきょうな声上げて否定する。
「そんな事、考える訳ナイだろう?」
モーリアスは薄ら笑いして同意する。
「…だよな?」
ラッセンスも、笑って頷く。
「お前、考えすぎ」
ただ一人、シャウネスだけが。
「…俺は、考えた」
と自白した。
オルスリードが見回すと、唯一正直だったシャウネスを除く他の全員は。
オルスリードと目を合わせようとせず、決まり悪げに目を、伏せた。
ギュンターは人目に触れない草むらを見つけると、倒れ込んでそのまま意識を失くした。
昼頃目が覚め、例の建物に、取って戻る。
四年達はまだみんな、そこにいた。
一人がぼやきながら、突っ込んで腰を揺すってる。
「半端無いな、この薬」
もう一人がローフィスに文句垂れる。
「本当に、感じてる内は犯すのか?
だってキリ無いぜ。
意識朦朧としてる癖に、入れるとよがってる…」
もう一人はだれきって呻く。
「…そりゃローフィスがスープに、たっぷり媚薬盛ったから…」
「で!
塗り薬の方も、まだ塗るのか?!」
聞かれて側で様子見していたローフィスは、頷きまくって言った。
「たっぷりな!」
ギュンターはついローフィスに寄ると、尋ねた。
「昼飯って、あるのか?
無いなら大食堂に…」
ローフィスは親指を準備室に向けるので、ギュンターは戸を開けて小部屋を覗く。
たっぷりの食べ物が運び込まれていて、人もいない。
ギュンターは思わず床に座り込むと、食べる事に没頭した。
隣室では四年らのぼやきが聞こえて来る。
「この人数分で、一番面倒な10課題。
ホントに用意出来るんだよな?」
「その後も、優先して見てくれるって…確か言ってたよな?」
「俺もそう聞いたぜ…」
暫くしてローフィスの返答。
「ちゃんと用意出来るし、優先して添削と参考課題渡してやる」
「よしっ!」
「俺は暫く机から離れるぜ!」
「俺も久々に酒場に顔が出せるぜいっ!」
ギュンターがたらふく食べて、また戸を開けて中に入ると。
ローフィスがアンガスの汚れた尻を拭き清め、新たな塗り薬をたっぷり、塗り込んでいた。
しばらくしてアンガスは
「ひぃぃん!」
と馬のように腰を振って、よがりながら鳴く。
「おっぱじまったぜ」
言って四年の一人は、側に来るギュンターの腕を、ポン!と叩く。
「出番だ」
が、ずっとここで犯し続けていた四年の二人が叫ぶ。
「ディングレーは、戻って来るのか?」
「精力剤をくれ!
当分女を見ても勃たない!」
ギュンターはやれやれ。と項垂れて、犯す四年の、輪の中に加わった。
ディングレーは寝ぼけ眼で目を覚ます。
昼時なのか、まだ寝室に居る自分に、気を利かせたコックがまかないを、横のテーブルに置いといてくれた。
いい臭いに釣られ、身を起こし。
トレーを持ち上げ腿の上に乗せ、スプーンで掬い上げる。
一気に空腹を思い出し、ディングレーは思い切り、がっついた。
寝室から出ると、召使いのドンデが眉間を寄せてつぶやく。
「浴槽には湯が、入っております」
「(…つまり、風呂に入れと言う事か…。
俺はそんなに、汚れ…)」
横の鏡を見た途端、ディングレーは顔を下げ、風呂場に直行した。
体を拭き上げ、用意された新しい衣服に袖を通す。
「…お待ちを!」
ドンデに言われ、振り向く。
まだ濡れた髪に櫛を入れられ、ディングレーは呻いた。
「そんなに乱れてたか?」
召使いは、思いっきり頷いた。
「これで良し!
どこにお出かけになられても、王族の品位が保てます!」
ディングレーは顔を下げ、扉を開けて私室を後にした。
午後の授業に出る前、つい気になって、廃屋になった旧校舎に顔を出す。
まだアンガスは喘いでいて、皆はげっそりし、それでも犯し続けていた。
ディングレーは呆れてローフィスを見つけ、囁く。
「あれだけ立て続けに掘られ続け、良くあいつ、尻が保つな?」
ローフィスはディングレーに振り向くと、言った。
「薬を塗ると、あら不思議。
それまでが無かったかのように、元に戻るんだ」
そして、声をひそめて囁く。
「…広がりすぎてがばがばとか言われてる、年増の貴婦人や男娼、娼婦の必需品」
ディングレーは思わず、顔を下げて尋ねる。
「そんな…薬、あるのか?」
ローフィスは頷く。
「それに媚薬も混ぜてあるから、締まるわ。快感だわで。
大人気の幻の薬で、入手困難」
ディングレーがローフィスをまじっ…と見ると、ローフィスはぼそりと言った。
「…プレゼントしても喜ばれるから。
好き者でやり放題の相手に惚れたら、入手してやる」
ディングレーは思いっきり、顔を下げた。
アンガスはもうヨダレを口の端からタレ流しながら、ひんひん言って突っ込まれ、よがり狂ってる。
列に並ぶ四年の一人と目が合うと、ディングレーは慌てて背を向け、戸口に駆け出し叫ぶ。
「午後の授業に出ないと!」
出て行く背に、釘刺される。
「戻って、来るな?!」
「俺達を、見捨てて逃げるほど、恥知らずな奴じゃないはずだ。
兄貴と違って、立派な王族ならな!」
ディングレーは痛いとこ突かれ、建物を出た後。
がっくりと、首を落とした。
夢の中で、ギュンターがオーガスタスと裸でキスしまくってて、その後横からやっぱり裸のディングレーが、ギュンターの腕を引いて振り向かせ、キスをし。
しまいに、オーガスタスとディングレーが両側から、裸のギュンターを抱きしめ、ギュンターは二人に首筋や頬に口づけられ、艶然と微笑んでる…夢を見たから。
暫く、ローランデは呆然とした。
「(…でも…でもみんな、自分の説を声高に叫んでる…って…。
つまり私の説は…オーガスタスとディングレー、二人でギュンターを…)」
しかし、沈痛な面持ちで顔を下げ、一番物の分かった召使い、ランディットがノックの後、部屋に入ってきた時。
尋ねる。
「…あの…夢…って…人の願望とか、現してると思う?
それとも自分の知らない事実と言うか、真実を見ると…思う?」
召使いはカーテンを開けて整えてたけど、それを聞いた途端、目を見開いて振り向く。
ローランデは驚いてどう返答していいか分からない召使いの、見開かれた青い瞳を見、項垂れて言った。
「ごめん…忘れて?」
召使いはほっとしたように、水色の布が垂れ下がる天蓋付き寝台に寄ると、微笑んで告げる。
「まだ…お休みですか?」
ローランデは慌てて寝台から身を滑り下ろし、室内履きをはくと、ガウンを手にして扉へ向かう。
「仕事を続けて」
召使いは頷くと、寝乱れたローランデの寝台の、クリーム色の布団を綺麗に整え始めた。
ディングレーがふらつく足取りで自室に戻る途中。
大貴族用食堂に、朝食取るため集っていた取り巻き大貴族らは、そんなディングレーを凝視した。
髪も乱れきり、衣服も埃だらけで、くたびれきっていた。
ディングレーが何も無い所でつっかかり、転びそうになって身を立て直す様を見て。
デルアンダーが慌てて椅子から立ち上がり、そっと寄って告げる。
「よければ今日は私が、一年の三人をスフォルツァに、送り届けましょうか?」
ディングレーはそう言ったデルアンダーを、朦朧とした顔で見る。
むっつり頷くと、言葉を返す。
「そうしてくれると、凄く、助かる」
デルアンダーを伴って、ディングレーは自室の扉を開ける。
アスラン、ハウリィ、マレーは一斉に振り向き、一晩帰らなかったディングレーを心配そうに見つめた。
マレーがそっ。と寄って尋ねる。
「何か、ありましたか?」
ディングレーはマレーの心配げなヘイゼルの瞳を見た後。
その後ろでこちらを心配げに見つめてる、ハウリィを見た。
ふんわりした明るい栗色巻き毛の、小兎のような愛らしい…大きな青い瞳の華奢な美少年。
その頼りなげな小さな肩を見ると…アンガスの言った、残酷なお遊びを思い出し、また火山が噴火したように怒りが湧き上がる。
が、努めて平静な声で囁いた。
「大丈夫だ。朝飯は?
みんなもう、食ったのか?」
マレーが代表して、こっくり。と頷く。
マレーの視線がまだとても心配そうで、ディングレーは気づくと微笑んだ。
「疲れてるだけだ。
今日はデルアンダーが送ってくれる。
悪いが、彼に付いて行ってくれるか?」
マレーは頷き、デルアンダーがさあ…!と扉に促す。
ディングレーはデルアンダーの気遣う視線で、よほど自分が酷い顔をしてるな。と分かった。
ディングレーは扉を開けて三人を部屋から出すデルアンダーに振り向くと、言った。
「ああ悪いが…。
講師に昨夜俺は、消えた知り合いを一晩中探し、一睡もしてないから。
午前の授業は休み、午後から出ると。
そう、告げてくれるか?」
デルアンダーは無言で頷いた。
ディングレーはその後、着替えもせずに寝室の扉を開けると。
寝台に顔から突っ伏し、意識不明に陥った。
デルアンダーは三人を伴って大貴族用食堂を抜ける際、見つめてる明るい栗毛で女顔の、テスアッソンに囁く。
「ディングレー殿は、消えた知り合いを一晩中探し、一睡もされてない」
テスアッソンは横の、真っ直ぐの黒髪を背に流すオルスリードと、顔を見合わせる。
デルアンダーが出て行くと、明るい栗毛の麗人、モーリアスがみんなに尋ねた。
「信じるか?」
四角顔で真っ直ぐの栗毛の、ラッセンスがぼやく。
「当然、口実だろう?」
銀髪巻き毛の美形、シャウネスが異論を唱える。
「だが、ハウリィの義兄を…どうにかしてたんだろう?」
テスアッソンが呆れる。
「一晩中?」
皆、途端に黙り込む。
オルスリードが、ぼそりと言った。
「…まさか…ここに帰る途中、ギュンターに出会うか…待ち合わせとかして。
茂みでずっと、くんずほぐれず。
野外で一晩中、ふけってたとか…。
みんな、考えてナイよな?」
テスアッソンが、胸中的中されたような、すっとんきょうな声上げて否定する。
「そんな事、考える訳ナイだろう?」
モーリアスは薄ら笑いして同意する。
「…だよな?」
ラッセンスも、笑って頷く。
「お前、考えすぎ」
ただ一人、シャウネスだけが。
「…俺は、考えた」
と自白した。
オルスリードが見回すと、唯一正直だったシャウネスを除く他の全員は。
オルスリードと目を合わせようとせず、決まり悪げに目を、伏せた。
ギュンターは人目に触れない草むらを見つけると、倒れ込んでそのまま意識を失くした。
昼頃目が覚め、例の建物に、取って戻る。
四年達はまだみんな、そこにいた。
一人がぼやきながら、突っ込んで腰を揺すってる。
「半端無いな、この薬」
もう一人がローフィスに文句垂れる。
「本当に、感じてる内は犯すのか?
だってキリ無いぜ。
意識朦朧としてる癖に、入れるとよがってる…」
もう一人はだれきって呻く。
「…そりゃローフィスがスープに、たっぷり媚薬盛ったから…」
「で!
塗り薬の方も、まだ塗るのか?!」
聞かれて側で様子見していたローフィスは、頷きまくって言った。
「たっぷりな!」
ギュンターはついローフィスに寄ると、尋ねた。
「昼飯って、あるのか?
無いなら大食堂に…」
ローフィスは親指を準備室に向けるので、ギュンターは戸を開けて小部屋を覗く。
たっぷりの食べ物が運び込まれていて、人もいない。
ギュンターは思わず床に座り込むと、食べる事に没頭した。
隣室では四年らのぼやきが聞こえて来る。
「この人数分で、一番面倒な10課題。
ホントに用意出来るんだよな?」
「その後も、優先して見てくれるって…確か言ってたよな?」
「俺もそう聞いたぜ…」
暫くしてローフィスの返答。
「ちゃんと用意出来るし、優先して添削と参考課題渡してやる」
「よしっ!」
「俺は暫く机から離れるぜ!」
「俺も久々に酒場に顔が出せるぜいっ!」
ギュンターがたらふく食べて、また戸を開けて中に入ると。
ローフィスがアンガスの汚れた尻を拭き清め、新たな塗り薬をたっぷり、塗り込んでいた。
しばらくしてアンガスは
「ひぃぃん!」
と馬のように腰を振って、よがりながら鳴く。
「おっぱじまったぜ」
言って四年の一人は、側に来るギュンターの腕を、ポン!と叩く。
「出番だ」
が、ずっとここで犯し続けていた四年の二人が叫ぶ。
「ディングレーは、戻って来るのか?」
「精力剤をくれ!
当分女を見ても勃たない!」
ギュンターはやれやれ。と項垂れて、犯す四年の、輪の中に加わった。
ディングレーは寝ぼけ眼で目を覚ます。
昼時なのか、まだ寝室に居る自分に、気を利かせたコックがまかないを、横のテーブルに置いといてくれた。
いい臭いに釣られ、身を起こし。
トレーを持ち上げ腿の上に乗せ、スプーンで掬い上げる。
一気に空腹を思い出し、ディングレーは思い切り、がっついた。
寝室から出ると、召使いのドンデが眉間を寄せてつぶやく。
「浴槽には湯が、入っております」
「(…つまり、風呂に入れと言う事か…。
俺はそんなに、汚れ…)」
横の鏡を見た途端、ディングレーは顔を下げ、風呂場に直行した。
体を拭き上げ、用意された新しい衣服に袖を通す。
「…お待ちを!」
ドンデに言われ、振り向く。
まだ濡れた髪に櫛を入れられ、ディングレーは呻いた。
「そんなに乱れてたか?」
召使いは、思いっきり頷いた。
「これで良し!
どこにお出かけになられても、王族の品位が保てます!」
ディングレーは顔を下げ、扉を開けて私室を後にした。
午後の授業に出る前、つい気になって、廃屋になった旧校舎に顔を出す。
まだアンガスは喘いでいて、皆はげっそりし、それでも犯し続けていた。
ディングレーは呆れてローフィスを見つけ、囁く。
「あれだけ立て続けに掘られ続け、良くあいつ、尻が保つな?」
ローフィスはディングレーに振り向くと、言った。
「薬を塗ると、あら不思議。
それまでが無かったかのように、元に戻るんだ」
そして、声をひそめて囁く。
「…広がりすぎてがばがばとか言われてる、年増の貴婦人や男娼、娼婦の必需品」
ディングレーは思わず、顔を下げて尋ねる。
「そんな…薬、あるのか?」
ローフィスは頷く。
「それに媚薬も混ぜてあるから、締まるわ。快感だわで。
大人気の幻の薬で、入手困難」
ディングレーがローフィスをまじっ…と見ると、ローフィスはぼそりと言った。
「…プレゼントしても喜ばれるから。
好き者でやり放題の相手に惚れたら、入手してやる」
ディングレーは思いっきり、顔を下げた。
アンガスはもうヨダレを口の端からタレ流しながら、ひんひん言って突っ込まれ、よがり狂ってる。
列に並ぶ四年の一人と目が合うと、ディングレーは慌てて背を向け、戸口に駆け出し叫ぶ。
「午後の授業に出ないと!」
出て行く背に、釘刺される。
「戻って、来るな?!」
「俺達を、見捨てて逃げるほど、恥知らずな奴じゃないはずだ。
兄貴と違って、立派な王族ならな!」
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