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シェイムとの情事を堪能するアイリス
しおりを挟むアイリスは補習を終えて、自室に戻りソファに倒れ込むようにへたり込む。
シェイムが微笑を浮かべ、室内に入るとアイリスに囁く。
「直ぐ、浸かれますが、お風呂になさいます?」
アイリスはすっ!と立ち上がり、シェイムの横を微笑を浮かべ、通り過ぎながら言葉を返した。
「相変わらず、気が利くね」
シェイムは頷く。
アイリスは浴室の扉に手をかけて振り向く。
長身でスレンダーな、シェイムの立ち姿。
さらりと肩に流れる栗毛。
琥珀色の瞳を向けられると、シェイムの男の色香溢れる胸元に、引き寄せられるように視線が吸い付き、彼の腕の中で抱かれる事を想像した、だけで熱い熱情に包まれる…。
アイリスはつい、微笑浮かべるシェイムの魅惑的な立ち姿に見惚れ、囁く。
「…最近…誰か、抱いた?」
シェイムは少し、形の良い眉を寄せて告げた。
「報告する義務が、あります?」
アイリスは気まずくて顔を下げた。
「いやその…凄く色香が溢れてて。
なんか見てるだけで、こっちが欲情しそう…」
シェイムは眉を寄せたまま、つぶやく。
「それは単に。
貴方が欲求不満なのでは?
最近はスフォルツァ殿に振られるため、彼の申し出をずっと断ってるでしょう?」
アイリスは首を傾げる。
「…スフォルツァと居る時は、こんなにならない」
シェイムは肩を竦めた。
「そんなに気分が盛り上がってるんですか。
…ではこの間のレッスンの、続きをなさいます?」
アイリスはぱっ!と顔を輝かせた。
いつもここ『教練』で、アイリスは。
濃い栗色巻き毛に囲まれた、楚々とした、深窓の令嬢のような美少年に見えた。
が、大公エルベスの側近として働いていた時、見かけたアイリスは。
年の割に背の高い方で、大人びていて。
態度も年よりしっかりし、肝が据わっていて。
けれどいったん笑うと、誰をも魅了するチャーミングな笑顔を見せる、魅力ある将来有望な人物。
シェイムはちょくちょくエルベス大公家に、報告に出かけていた。
この間大公の言った言葉。
「珍しく、同年代の少年ばかりに囲まれているから。
逆にアイリスは戸惑い、手こずってるようだね?」
そう言ってくすくす笑う、大公の笑い声を思い出す。
浴室へ、アイリスの髪を洗いに行こうと布を手に取ると。
アイリスはもう、濡れた髪と体を乱雑に布で包んで、浴室から出てくる。
シェイムはため息を吐き布をテーブルに戻すと、戸口に居るアイリスに、手を差し伸べる。
アイリスは早足で駆け寄り、シェイムの胸に、飛び込んだ。
「あ…ん…っ!」
めくるめく。とはこんな事を言うのか。
シェイムとの情事は、いつもぼーっとする。
抱く腕はほぼ優しいのに、時折強引に足を引かれ、態勢を取らされ…。
が屈辱なんか感じる間も無く、そのうっとりする美男の顔が間近に寄り、唇を塞がれる。
長く毛先の反り返った睫に囲まれた、どきっ!と心臓を跳ね上げる琥珀の瞳。
高い鼻が頬に触れ、唇をしっとりと押しつけられるとうっとりし、けれど舌が唇を割って滑り込んで来ると…もうしなだれかかるように、シェイムの舌に舌を寄せてしまう。
くねり始める情熱的な動きに誘われ、腕をシェイムの首に巻き付け、つい…足を開いてシェイムを受け入れようとしてしまう…。
シェイムは数度、ジラし…蕾の端を先端でなぜるから、ついアイリスは自分から…シェイムを飲み込もうと、腰を押しつける。
けれどシェイムは巧みに外す。
口づけされながらもシェイムの…彼自身が欲しくて。
その事しか考えられず、つい…じんじんと奥が疼いて、たまらなくなって…。
口づけを繰り返すシェイムに、ねだるように身をすりつける。
けれど口づけを外し、言葉でねだる事はしない。
だってシェイムのキスは…甘く…あまりに甘く…素敵だから。
けれど高まって、我慢出来ない。
「んっ…」
思わず腰を捻ると、シェイムはようやく入って来る。
「あ…んっ…」
待ち焦がれたシェイムが挿入されると、予想以上で。
いい場所に、触れるか触れないか。
幾度かやはりジラした後、すっ…となぜられると、喉が鳴る。
「んっ…!」
『もっと…!』
そう、追いかけると今度は。
脳天が痺れるほど強く、擦り上げられるから。
つい
「ああっ!」
その激しい刺激に、声を上げて仰け反ってしまう。
まるでシェイムの腕の中で、好きに料理される兎のよう…。
けれど身を預けきって、シェイムに好きにされることが、悦びに変わる。
強く擦られた後、またなぜるように擦り上げられ、その羽毛のような感触に、体が溶けていく感覚を味わう間もなく。
次に激しく突かれて、全身を雷に打たれたように痙攣が駆け抜け…。
たまらなくってシェイムにしっかりと、しがみつく。
その後は。
角度を変えて連続して突かれ、アイリスは堪能する間無く、感覚に支配され高まり続けて自分の吐息ですら熱く感じ、意識が薄れ行くほどの快感に包まれ、脳裏は薔薇色に染まりきる…。
「あんっ!あ…ああっ!」
ほぼ意識が消えかかり、体が蕩けきった頃。
激しい攻めは止み、股間が濡れ、開放感に包まれ…。
シェイムの唇が再びしっとり、押しつけられ、力の抜けきった腕は上がらず、シェイムの腕に包まれたまま、寝台に横たえられ…。
そして抱きしめられ、そっと額に口付けられると、まるで自分が“お姫様”になった気分になってる…。
うっとりした気分にさせられ、彼から与えられる快感に酔いしれきって脱力する。
一度本当に腕のいい料理人のフル・コースを味わった。
がどれも隙無く、組み合わされる食材の相互効果の素晴らしさ。
デザートまで一分の隙無く、これでもか。と思う程完璧な美味しさだったが、どうしても…シェイムと過ごした後は、その食事を思い出す。
ブルーベリー、ストロベリー、桃、クランベリー…チェリー。
デザートのアイスは、色んな味が絶妙なハーモニーを醸しだしてたけど、シェイムの突きも同様。
単調にがんがん突かれるんじゃなく、角度を毎度変えて絶妙な感覚を引き出しつつ、一気に高める。
「(…どうして、そんな事が可能だ?)」
腰を、捻って角度を変えてる。
までは、かろうじて分かるけど…。
打ちのめされた気分だが、極上の余韻を毎度、伴う…。
打ちのめされる事がこれほど、心地よいのか。と思うほどに。
が、シェイムの腕に抱かれたまま、耳元で囁かれる。
「スフォルツァ様にはちゃんと、訳を話し納得頂けましたか?」
アイリスは夢から覚めたように、突然少し、不機嫌になった。
「…それもテク?
相手を自分に、惚れ込ませないための?」
口をとがらすと、シェイムは微笑う。
「私の付き合ってた女性達は、首尾がどれほど悪くても嘘をつきましたよ?
『問題無いわ。
第一私が貴方を好きなんだから。
彼だって納得するわよ』
…大抵その後、彼女言う所の納得した“彼”から毎度、怒鳴りこまれましたが」
アイリスはシェイムの胸に顔を埋め、抱きついて返答を返す。
「スフォルツァは君に怒鳴り込んだりしないさ。
代わりにディングレー相手に、突っかかってたから」
「………………それは…気の毒な」
アイリスはシェイムの、そのぼそりとした一言に、思わず彼の胸から顔を上げる。
「どっちが気の毒?」
「ディングレー様に決まってる。
…あの方、直情一本やりで、駆け引きも交わし方も…それは下手でしょう?」
アイリスは吐息吐き、シェイムより身を離し、俯き片手で乱れ髪を、漉き上げる。
シェイムは立ち上がり、衣服を身手に取り、身に付けながら顔だけ振り向く。
「私の方が、対処し慣れてるから。
私が、話をつけたい所だが…。
貴方はスフォルツァ様の『御姫様』のまま、彼とは付き合いを止めたいんですよね?」
アイリスは顔を思い切り下げて、白状する。
「…当然スフォルツァは。
自分の代わりに私が、君やディングレーと寝てると思ってる…」
衣服を付けたシェイムに、まだ迫力ある琥珀の瞳で、じっ…と見つめられ。
アイリスはとうとう、フテながらも譲歩した。
「ああもう!
上品な言い回しなら、私の本性をバラしてもいい!
もちろん学年筆頭を、彼を騙して押し付けた事だけは、絶対バラさないでいてくれたら!」
シェイムはクスクス笑って、アイリスを見つめる。
「口を開くと幻滅だ。
抱いてる最中の貴方は、最高に素晴らしいのに」
アイリスは手の上に顎を乗せ、フテきってぼやく。
「最中に最高に素晴らしいのは、君だ。
いつだって冷静で、いようとして…出来た試しが無い」
シェイムは裸のまま寝台上でフテる、アイリスに歩み寄って、顔を寄せる。
「私は最後まで冷めた不感症の相手と抱き合うなんて、最悪に白けた時間を過ごすのは、真っ平御免です。
…情事というのは、相手が蕩けないと。
する、意味がない」
シェイムに色香溢れる琥珀の瞳で見つめられ、言い含められてアイリスはまだぼやく。
「…『その力量が無きゃするな』
と聞こえる」
シェイムは戸口に歩きながら告げる。
「だってそうでしょう?
そんな白けた時間を過ごすくらいなら、自分一人で処理した方が、よほど快感を得られる」
シェイムに振り向かれ、アイリスはその大人な感想に、思い切り肩を竦めた。
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