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ヤッケルと対戦するフィンス
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四位を決する戦いが始まる。
と同時に二位、三位を決する戦いも。
けれどグランドルは倒れた拍子に鼻血を出し、講師が布を手渡し、その様子を伺うものの。
未だ血は止まらず、伺うシェイルに待て。と視線で告げる。
一方その横では、笑うヤッケルが。
フィンスを対戦相手として迎えていた。
二人は剣を持ち、向かい合う位置につくなり突然歩を横に滑らし、戦い始める。
ヤッケルは進む。と見せかけいきなり後ろに飛び、フィンスは構わず突っ込んで行った。
懐に飛び込むフィンスを、ヤッケルは体を横に回し避けながら、くるりとフィンスの背後に回って後ろから剣を叩きつける。
直ぐフィンスは振り向き、剣が合わさる。
がっ!
「…息の合った剣舞みたいだ…」
アイリスの感想に、スフォルツァは眉間を寄せる。
「ヤッケルは、厄介だ。
身軽な上、剣筋を途中幾度も変えて来る。
彼と、剣を合わせられるだけでも、大したもんだと思う」
アイリスは呆れた。
「だって君ぐらいの腕なら、難なく出来るじゃないか」
スフォルツァは、躊躇ったが言った。
「…俺なら間合いを取る。
間違いなく。
剣筋が少し、読めるようになるまでは近づけない」
アイリスはその謙遜に、肩を竦めた。
が確かに、対戦は見物だった。
ヤッケルは右か。と思わせ一瞬で剣を持ち替え左から襲い、それを叩き込むかと思えば上に振り上げ、それでも真上からでなく斜めから剣を振り下ろす。
そんな技を毎度使うものだから、上級生達はヤッケルが剣を持ち替え、振ろうとする度。
顔を動かし、ヤッケルの動きを目で追った。
「…まだ…かよ!」
「まだ振らない!」
「次だ!絶対振るぞ!」
が寸止めしたと思うと、剣を引き。
背に回して背後で持ち替え、左手に握った途端間を詰める、フィンスの腹を横に薙ぎ払った。
「早い…!」
がっ!
一瞬で、フィンスは剣を立て、それを防ぐ。
かん!
弾かれた、瞬間にヤッケルは飛んだ剣の柄を右手でさらい、再度フィンスの腹を、薙ぎ払おうとした。
フィンスの剣は外に大きく振られ、今度は間違いなく止めるのに間に合わない!
誰もがそう、予測した。
がフィンスは剣ではなく体を捻り、外に振った剣を身ごと戻し。
再度、ヤッケルの剣を剣を立て、止めた。
がっっ!
「…間合いから、引く気無く攻防続ける腹か…!」
リーラスがため息とともに唸る。
がオーガスタスはああいう攻防が大好きだったから、くすくす笑う。
「楽しそうだな!」
ローフィスもリーラスも。
つい呆れて、笑うオーガスタスを見た。
どっちもその場で上体を左右に振り、出来た間に互いが剣を、振り入れていた。
歩数も数歩、移動するだけ。
なのに手数は多く、見ている目が追いつかない程剣の軌道が変わり、どうしてあの振りであそこで剣が合わさってるんだ?
と皆一斉に、首を捻る。
翻弄してるのはヤッケルだったが、フィンスは軌道を変えるヤッケルの間に幾度も、止めを入れるぞ!と短く剣を突き出しては、牽制かけていた。
「ムウ…器用だな。
あいつとやるよりは、フィンスの方がマシだ」
ディングレーは横の、取り巻きの男の言葉につい、眉間を寄せる。
「あれを防げる。と言う事はフィンスも厄介だ。と言う事だ」
ディングレーにそう言われ…。
ディングレー自身が全うな剣筋で決して相手に振り入れたりしないのを思い返し、暫くの間たっぷり、その取り巻きはディングレーを見つめ。
終いに吐息と共に、口を閉じた。
二年、三年は熟知していたが、この年度初めの試合は始まり。
この後幾度か、合同講習が行われ、学年を超えて幾度も剣を交える機会が出て来る。
その合同講習で練習試合も行われるから、上級生達は必死で、腕の立つ下級生のチェックに余念が無かった。
万が一、授業の練習試合で下級生相手に無様に負けると、年上の権威に関わるから。
特に三年は二年、一年を教授する学年となり、去年のように上級生相手に突っかかり、相手を少しでも引きずり下ろそう。
と生意気してる立場から一変。
今度は下級生らに、生意気される立場となる。
一・二年はまず三年相手に立ち向かい、そしてたまに…最上級生、四年と剣を交える機会を持つ。
大抵四年相手に一二年は、遊ばれて終わるのが常。
四年相手になりそうなのは、三年くらいのものだった。
この試合はその品定め。
だからこそ…四年も三年も、ギュンターの姿が見えない事をいぶかった。
彼らの目玉は一年学年筆頭アイリスの戦いぶりともう一つ。
編入生の腕前だったから。
そして…ローランデが今年はどれだけやるか。
期待道理かそれとも…体格、迫力共に倍増したディングレー、オーガスタスに、勝てるのかどうかだった。
どっちも去年結局、ローランデに剣を折られて負けた。
だから「単に器用なだけ」
…そうローランデにレッテルを貼りたい所だったが、ディアヴォロスが居た…。
ほぼ数度剣を振り入れただけで相手に勝つディアヴォロスが、ローランデに立ちはだかって初めて。
ローランデはその実力を見せた。
瞬殺するディアヴォロスの剣を、幾度も信じられない素早さと体の柔軟さで避け続け。
剣を持たれ正面に立たれただけで怖気る、ディアヴォロスに決して怖じず。
果敢に淡い栗毛に濃い栗毛の幾筋も混じる、独特の美しい髪をなびかせ、突っ込んで行く姿が。
皆の視界に刻み込まれていた。
あの、優しげな外観に不似合いな。
勇敢を超えた度胸。
結局、負けはした。
が幾度間合いから引かされようが、攻めることを止めぬローランデの勇姿に、猛者らは身震いし、試合を終えたローランデを、熱狂的な歓声で包んだ。
ディアヴォロスと剣を交えた、当時二年のオーガスタスですら。
ディアヴォロス相手に、ローランデほどの戦いぶりは見せなかった。
が。
オーガスタスはそれから技も増え、剣技も隙が無い。
だがそのオーガスタスと戦うには、三年のディングレーに、ローランデは勝たねばならない。
去年は油断したとはいえ、練習試合でオーガスタス相手に。
一歩も引かぬ気合いを見せるディングレーの激しい剣は、凄まじい。
今年はローランデを強敵と睨むディングレーに、ローランデは勝てるのだろうか?
皆興味津々で、対戦をせず脇に控えるローランデを、三学年も四学年もが盗み見る。
ローランデの、静かなたたずまいはディアヴォロスを彷彿とさせた。
ディアヴォロスもまた…下が決戦する間、静かに成り行きを見守り。
そして勝ち上がった相手と戦い、あっと言う間にこれを下し、学年一の座を勝ち取っていた………。
次元が違う。
ディアヴォロス相手に、『教練』中の猛者がそれを感じていた。
だが果たして…ローランデも、そうなのか?
カン!
カンカンカン!
はっ!と皆、目前の対戦に引き戻される。
決して間合いから引かないフィンスが、とうとう立て続けにヤッケルに、仕掛けてた。
先を読んで鋭い剣を入れ、身軽なヤッケルの逃げ場を塞ぐ。
ヤッケルから、微笑が消える。
そして…狙い澄ましているのが。
皆に解った。
シェイルはつい、手を握り込む。
グランドルはまだ血が止まらず、糞!と戦うフィンスを睨め付ける。
ヤッケルは身を返し間をとる間も与えず、剣を振り込むフィンスに。
良く剣を合わせ、防いでた。
けど…。
フィンスの剣は重い。
ヤッケルは手が痺れきる前に、フィンスの剣に剣をぶつけ折りたい!
けどフィンスは、ヤッケルが剣をぶつけ来る前に剣をぶつけ、刃を折るヤッケルの振りを牽制してる。
二人の手数が増す毎に、その一瞬の駆け引きに、見てる者らの身が竦む。
また…!またフィンスは防いだ。
がヤッケルは諦めない。
何とかフィンスの猛攻に、剣を振り入れ折ってやろうと剣を振る。
がっ!
がっっっ!
フィンスの太刀筋は、どんどん鋭くなって行く。
練習ではよく、ヤッケルに勝ちを譲る彼だった。
が、本番では決して手を抜かない事を、シェイルもヤッケルも熟知していた。
ヤッケルの瞳が鋭さを増す。
頭を素早く下げ間合いを詰め、斜め下から早い剣を振る。
びゅんっ!
首を薙ぎ払うヤッケルの剣を、フィンスは屈んで避けた。
が直ぐ腹に突っ込むヤッケルの剣を。
フィンスは瞬時に身を横にずらし避ける。
ヤッケルは逃げるフィンスの、剣を狙おうと剣を振り入れかけ…。
けれど突然、ぴたっ…!とヤッケルは、動きを止めた。
皆、ヤッケルの上に振り上げられた剣に注目していたから、フィンスの動きを見損ない、なぜ動きを止めたのか、目をこらす。
瞬時に身を屈めたフィンスの、手に握られた剣が。
ヤッケルの腹に、突き付けられていた。
講堂中が、息を吹き返したようにそこら中で、大きな吐息が漏れる。
「…やっと、決まったか………」
リーラスが手に汗握り、はらはらした緊張状態から解放されたように脱力してるのに、オーガスタスもローフィスも顔を見合わせる。
「まあ…お前は直情型だから。
ああ言う手合いもローフィスも、苦手だよな!」
リーラスはオーガスタスに言われ、ローフィスを睨んだ。
「こいつは詐欺師だ!
絶対真っ当な剣士じゃない!
あんなんで勝ったと思うなよ!!!」
オーガスタスにじっ…。と見つめられ、ローフィスは肩を竦めリーラスに呟く。
「その詐欺師に勝つ相手は、もっと上行く詐欺師だろう?」
そう呟いてオーガスタスを見る。
オーガスタスは途端、顔を背けた。
が、リーラスはぶつぶつ言う。
「こいつはリーチが長いし、力も半端ない。
これだけ突出してると、文句も引っ込む」
オーガスタスが視線を戻してローフィスを見、にかっ!と笑うと。
ローフィスは険悪な目付きで、首を横に、振りまくった。
講堂内は、ヤッケルの速さの上を行ったフィンスに、賞賛の拍手を降らせ。
同様、フィンスを揺さぶりまくったヤッケルの剣技も、拍手で讃えた。
ぱちぱちぱちぱちぱち…!
だが誰もが手を叩きながら、こっそり囁き合う。
「…フィンスには、負けても言い訳は立つが…」
「ああ俺も。
ヤッケルとだけは、やりたくない。
凄く無様に負けそうで」
と同時に二位、三位を決する戦いも。
けれどグランドルは倒れた拍子に鼻血を出し、講師が布を手渡し、その様子を伺うものの。
未だ血は止まらず、伺うシェイルに待て。と視線で告げる。
一方その横では、笑うヤッケルが。
フィンスを対戦相手として迎えていた。
二人は剣を持ち、向かい合う位置につくなり突然歩を横に滑らし、戦い始める。
ヤッケルは進む。と見せかけいきなり後ろに飛び、フィンスは構わず突っ込んで行った。
懐に飛び込むフィンスを、ヤッケルは体を横に回し避けながら、くるりとフィンスの背後に回って後ろから剣を叩きつける。
直ぐフィンスは振り向き、剣が合わさる。
がっ!
「…息の合った剣舞みたいだ…」
アイリスの感想に、スフォルツァは眉間を寄せる。
「ヤッケルは、厄介だ。
身軽な上、剣筋を途中幾度も変えて来る。
彼と、剣を合わせられるだけでも、大したもんだと思う」
アイリスは呆れた。
「だって君ぐらいの腕なら、難なく出来るじゃないか」
スフォルツァは、躊躇ったが言った。
「…俺なら間合いを取る。
間違いなく。
剣筋が少し、読めるようになるまでは近づけない」
アイリスはその謙遜に、肩を竦めた。
が確かに、対戦は見物だった。
ヤッケルは右か。と思わせ一瞬で剣を持ち替え左から襲い、それを叩き込むかと思えば上に振り上げ、それでも真上からでなく斜めから剣を振り下ろす。
そんな技を毎度使うものだから、上級生達はヤッケルが剣を持ち替え、振ろうとする度。
顔を動かし、ヤッケルの動きを目で追った。
「…まだ…かよ!」
「まだ振らない!」
「次だ!絶対振るぞ!」
が寸止めしたと思うと、剣を引き。
背に回して背後で持ち替え、左手に握った途端間を詰める、フィンスの腹を横に薙ぎ払った。
「早い…!」
がっ!
一瞬で、フィンスは剣を立て、それを防ぐ。
かん!
弾かれた、瞬間にヤッケルは飛んだ剣の柄を右手でさらい、再度フィンスの腹を、薙ぎ払おうとした。
フィンスの剣は外に大きく振られ、今度は間違いなく止めるのに間に合わない!
誰もがそう、予測した。
がフィンスは剣ではなく体を捻り、外に振った剣を身ごと戻し。
再度、ヤッケルの剣を剣を立て、止めた。
がっっ!
「…間合いから、引く気無く攻防続ける腹か…!」
リーラスがため息とともに唸る。
がオーガスタスはああいう攻防が大好きだったから、くすくす笑う。
「楽しそうだな!」
ローフィスもリーラスも。
つい呆れて、笑うオーガスタスを見た。
どっちもその場で上体を左右に振り、出来た間に互いが剣を、振り入れていた。
歩数も数歩、移動するだけ。
なのに手数は多く、見ている目が追いつかない程剣の軌道が変わり、どうしてあの振りであそこで剣が合わさってるんだ?
と皆一斉に、首を捻る。
翻弄してるのはヤッケルだったが、フィンスは軌道を変えるヤッケルの間に幾度も、止めを入れるぞ!と短く剣を突き出しては、牽制かけていた。
「ムウ…器用だな。
あいつとやるよりは、フィンスの方がマシだ」
ディングレーは横の、取り巻きの男の言葉につい、眉間を寄せる。
「あれを防げる。と言う事はフィンスも厄介だ。と言う事だ」
ディングレーにそう言われ…。
ディングレー自身が全うな剣筋で決して相手に振り入れたりしないのを思い返し、暫くの間たっぷり、その取り巻きはディングレーを見つめ。
終いに吐息と共に、口を閉じた。
二年、三年は熟知していたが、この年度初めの試合は始まり。
この後幾度か、合同講習が行われ、学年を超えて幾度も剣を交える機会が出て来る。
その合同講習で練習試合も行われるから、上級生達は必死で、腕の立つ下級生のチェックに余念が無かった。
万が一、授業の練習試合で下級生相手に無様に負けると、年上の権威に関わるから。
特に三年は二年、一年を教授する学年となり、去年のように上級生相手に突っかかり、相手を少しでも引きずり下ろそう。
と生意気してる立場から一変。
今度は下級生らに、生意気される立場となる。
一・二年はまず三年相手に立ち向かい、そしてたまに…最上級生、四年と剣を交える機会を持つ。
大抵四年相手に一二年は、遊ばれて終わるのが常。
四年相手になりそうなのは、三年くらいのものだった。
この試合はその品定め。
だからこそ…四年も三年も、ギュンターの姿が見えない事をいぶかった。
彼らの目玉は一年学年筆頭アイリスの戦いぶりともう一つ。
編入生の腕前だったから。
そして…ローランデが今年はどれだけやるか。
期待道理かそれとも…体格、迫力共に倍増したディングレー、オーガスタスに、勝てるのかどうかだった。
どっちも去年結局、ローランデに剣を折られて負けた。
だから「単に器用なだけ」
…そうローランデにレッテルを貼りたい所だったが、ディアヴォロスが居た…。
ほぼ数度剣を振り入れただけで相手に勝つディアヴォロスが、ローランデに立ちはだかって初めて。
ローランデはその実力を見せた。
瞬殺するディアヴォロスの剣を、幾度も信じられない素早さと体の柔軟さで避け続け。
剣を持たれ正面に立たれただけで怖気る、ディアヴォロスに決して怖じず。
果敢に淡い栗毛に濃い栗毛の幾筋も混じる、独特の美しい髪をなびかせ、突っ込んで行く姿が。
皆の視界に刻み込まれていた。
あの、優しげな外観に不似合いな。
勇敢を超えた度胸。
結局、負けはした。
が幾度間合いから引かされようが、攻めることを止めぬローランデの勇姿に、猛者らは身震いし、試合を終えたローランデを、熱狂的な歓声で包んだ。
ディアヴォロスと剣を交えた、当時二年のオーガスタスですら。
ディアヴォロス相手に、ローランデほどの戦いぶりは見せなかった。
が。
オーガスタスはそれから技も増え、剣技も隙が無い。
だがそのオーガスタスと戦うには、三年のディングレーに、ローランデは勝たねばならない。
去年は油断したとはいえ、練習試合でオーガスタス相手に。
一歩も引かぬ気合いを見せるディングレーの激しい剣は、凄まじい。
今年はローランデを強敵と睨むディングレーに、ローランデは勝てるのだろうか?
皆興味津々で、対戦をせず脇に控えるローランデを、三学年も四学年もが盗み見る。
ローランデの、静かなたたずまいはディアヴォロスを彷彿とさせた。
ディアヴォロスもまた…下が決戦する間、静かに成り行きを見守り。
そして勝ち上がった相手と戦い、あっと言う間にこれを下し、学年一の座を勝ち取っていた………。
次元が違う。
ディアヴォロス相手に、『教練』中の猛者がそれを感じていた。
だが果たして…ローランデも、そうなのか?
カン!
カンカンカン!
はっ!と皆、目前の対戦に引き戻される。
決して間合いから引かないフィンスが、とうとう立て続けにヤッケルに、仕掛けてた。
先を読んで鋭い剣を入れ、身軽なヤッケルの逃げ場を塞ぐ。
ヤッケルから、微笑が消える。
そして…狙い澄ましているのが。
皆に解った。
シェイルはつい、手を握り込む。
グランドルはまだ血が止まらず、糞!と戦うフィンスを睨め付ける。
ヤッケルは身を返し間をとる間も与えず、剣を振り込むフィンスに。
良く剣を合わせ、防いでた。
けど…。
フィンスの剣は重い。
ヤッケルは手が痺れきる前に、フィンスの剣に剣をぶつけ折りたい!
けどフィンスは、ヤッケルが剣をぶつけ来る前に剣をぶつけ、刃を折るヤッケルの振りを牽制してる。
二人の手数が増す毎に、その一瞬の駆け引きに、見てる者らの身が竦む。
また…!またフィンスは防いだ。
がヤッケルは諦めない。
何とかフィンスの猛攻に、剣を振り入れ折ってやろうと剣を振る。
がっ!
がっっっ!
フィンスの太刀筋は、どんどん鋭くなって行く。
練習ではよく、ヤッケルに勝ちを譲る彼だった。
が、本番では決して手を抜かない事を、シェイルもヤッケルも熟知していた。
ヤッケルの瞳が鋭さを増す。
頭を素早く下げ間合いを詰め、斜め下から早い剣を振る。
びゅんっ!
首を薙ぎ払うヤッケルの剣を、フィンスは屈んで避けた。
が直ぐ腹に突っ込むヤッケルの剣を。
フィンスは瞬時に身を横にずらし避ける。
ヤッケルは逃げるフィンスの、剣を狙おうと剣を振り入れかけ…。
けれど突然、ぴたっ…!とヤッケルは、動きを止めた。
皆、ヤッケルの上に振り上げられた剣に注目していたから、フィンスの動きを見損ない、なぜ動きを止めたのか、目をこらす。
瞬時に身を屈めたフィンスの、手に握られた剣が。
ヤッケルの腹に、突き付けられていた。
講堂中が、息を吹き返したようにそこら中で、大きな吐息が漏れる。
「…やっと、決まったか………」
リーラスが手に汗握り、はらはらした緊張状態から解放されたように脱力してるのに、オーガスタスもローフィスも顔を見合わせる。
「まあ…お前は直情型だから。
ああ言う手合いもローフィスも、苦手だよな!」
リーラスはオーガスタスに言われ、ローフィスを睨んだ。
「こいつは詐欺師だ!
絶対真っ当な剣士じゃない!
あんなんで勝ったと思うなよ!!!」
オーガスタスにじっ…。と見つめられ、ローフィスは肩を竦めリーラスに呟く。
「その詐欺師に勝つ相手は、もっと上行く詐欺師だろう?」
そう呟いてオーガスタスを見る。
オーガスタスは途端、顔を背けた。
が、リーラスはぶつぶつ言う。
「こいつはリーチが長いし、力も半端ない。
これだけ突出してると、文句も引っ込む」
オーガスタスが視線を戻してローフィスを見、にかっ!と笑うと。
ローフィスは険悪な目付きで、首を横に、振りまくった。
講堂内は、ヤッケルの速さの上を行ったフィンスに、賞賛の拍手を降らせ。
同様、フィンスを揺さぶりまくったヤッケルの剣技も、拍手で讃えた。
ぱちぱちぱちぱちぱち…!
だが誰もが手を叩きながら、こっそり囁き合う。
「…フィンスには、負けても言い訳は立つが…」
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凄く無様に負けそうで」
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