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順位決定後の騒動

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 フィフィルースとディオネルデスは戦いの手を止め、一瞬スフォルツァに視線を注ぐ。

正直、それと悟られずに剣を折る技は、正攻法を王道と仰ぐ者らにとっては、姑息。
が、はっきり言えば、『教練キャゼ』の試合では驚異。

が、はっ!と互いに向き直る。

そしてどちらとも無く剣を振り入れ、再び戦いに戻る。

カン…!カンカン…!

先に勝ち上がったスフォルツァに遅れを取るまいと、両者の熱は一気に燃え上がり、激しく打ち込み始める。
フィフィルースは鋭く、ディオネルデスは学年一高いその長身から、激しい剣を振り下ろす。

ディオネルデスは濃い栗毛の細かな巻き毛を散らし、額の高く彫りのとても深い顔立ちで、端正な大人顔。
背も高く落ち着き払い、日頃はとても穏やかな性格で、年よりうんと年上に見える。

が対するフィフィルースも身長では、ディオネルデスに僅か低いだけ。
どっちもスフォルツァより、僅差だったが高さではまさっていた。

だがどういう訳か…スフォルツァはどっしりし、大きく見える。
実力の伴う自信が満ち溢れ、落ち着き払った態度が、スフォルツァを大きく見せていた。

アイリスは自分の後継者に選んだスフォルツァが自慢で、彼に見惚れた。

先に勝ち上がったと言うのに態度も変えず、二人の攻防を目前に、動揺も焦りも無い。

だが対戦している二人は突然はっ…と気づく。
フィフィルースは既にスフォルツァに負けてる。
例えこの対戦で勝ち上がったとしても、スフォルツァとの対戦無く、二位。

ディオネルデスは『勝つのは自分だ!』とばかり、上背から剣を振り下ろす。
が、鋭く素早い一撃で、先に剣を吹き飛ばしたのはフィフィルース。

がっっっっ!
からん…!

今度は折れたのではなく、激しい一撃でディオネルデスの手から剣が、吹っ飛んだ。

かん…!かんかんかんっ!

剣は床に音を立てて転がる。
ディオネルデスは咄嗟、痺れた右手を左手で押さえ、苦渋くじゅうの表情で顔を下げた。

ハァ…ハァ…!

荒い息で肩を波打たせながら、フィフィルースは勝って振り向き、スフォルツァを睨め付ける。
がスフォルツァは静かな眼差しで見つめ返し、すっ…と背を向けた。

一位決戦無く、三位、四位決定の戦いのみで、ディオネルデスとラッツが戦いを始める。

アイリスに勝ち上がったラッツは、この戦いでは当然勝つだろう。
と、上級達の注目を集め始める。

そして、既にラッツに負けているアイリスは。
もしラッツがディオネルデスに負け、四位に成れば自動で五位。

勝ち上がり対戦は、消えて無くなる。

皆が自分に期待をかけてるのに、ラッツは内心驚いた。
講堂中の猛者らが、もう一度アイリスの戦いぶりが、見たいのだと解って。

正直、焦りもあった。
しかもディオネルデスは、フィフィルースとの対戦直後。
腕の痺れは残るものの、負けていきり立っていた。

スフォルツァより背の低いラッツは、長身から振り下ろされるディオネルデスの剣を、軽快に足を使って避ける。
振り下ろされる剣は、少しも腕の痺れなど連想させないほど、激しかった。

普段の穏やかさは姿を消し、気合い十分で背の高いディオネルデスに、ラッツは気圧される。
良く鍛錬された大貴族のディオネルデスに、隙は殆ど無い。

ラッツが一瞬、足を滑らせ、隙を逃さぬディオネルデスは好機を逃さず、一気に剣を振り下ろす。
ラッツは避けようと頭を横に倒しかけた所に、ディオネルデスの剣が喉元に突きつけられ、動きを止め…。
「それまで!」
講師の声に、ラッツは呆気なく負けた。

項垂れるラッツの姿を見、講堂中がため息で満たされる。

学年一はスフォルツァ。
二位がフィフィルース。
三位にディオネルデス。ラッツは四位。

筆頭と思われていた注目株アイリスは、なんと五位。

講堂中が、期待萎む静けさに包まれかけた時。

スフォルツァが講師に詰め寄り、耳元に何か告げる。
二人が自分を見ているのに、アイリスは気づいて顔を上げた。

講師はスフォルツァの腕を引いて、説得しているようだった。
だが今度ははっきり、スフォルツァの声が聞こえた。
彼が、怒鳴ったので。

「アイリスと決着を着けられないなら、俺は一位を降りる!」

がこの言葉に、わっ!と講堂中から拍手と歓声が沸き上がる。
「いいぞ!」
「それでこそ、男だ!」

フィンスもシェイルも同時に、ヤッケルを呆れて見た。
叫び、盛大に拍手で対戦を促し、はやし立てていたので。

ローランデを見ると彼は、顔を下げてこっそりくすくす、笑いっぱなしだった。

納得しろ。とスフォルツァの腕を引こうとする講師の手を激しく振り払い、スフォルツァは更に怒鳴る。

「この声が聞こえないのか?
俺より誰もが注目してるのはアイリスだ!
彼に勝たなきゃ、真の一位とは言えない!」

「良く言った!」
「いいぞ!」
「男を上げたな!」
四年から、一斉に声が飛ぶ。

鎮まり駆けた講堂内は、一気に沸き立ち始めた。

四人の講師は仕方無しに、集まると話合い始める。

そして…座っているアイリスの元に一年の講師はやって来て告げる。
「…やれるか?」

アイリスは周囲を見回した。
次々と皆が席を立ち上がり、拍手と歓声の大騒ぎ。
今や、講堂中が揺れていた。

「…やらないと、皆納得しないでしょう?」
講師は項垂れて一つ、吐息を吐いて、頷いた。

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