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学年無差別剣の練習試合当日、講堂に姿を現す大物達

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 続々と、生徒達が朝食を終え講堂に集まり来る。
皆、練習用の剣をたずさえて。

大貴族達は皆、自分専用の剣を持っていたが、平貴族ひらきぞくは練習場にある剣で済ます。
もちろん、手に馴染なじまないのは言うまでも無い。

長方形の、天窓始め大きな横窓から陽の差し込む、広大な講堂。
真ん中は広く空き、周囲を取り囲む、後ろに行くほど高くなる階段状の長椅子。
東西南北に配置された長椅子に、学年事に固まって座り始める。

ヤッケルが音を立てず、不安げな表情を覗かせながらも続々と詰めかける、猛者らを見守るシェイルの横に、腰掛ける。
学校一美しいと評判を取る、美麗なシェイルの顔を覗き込んで尋ねた。

「実力者達は全員、まだだな?
…ローランデを除いて」

講堂では並び始める面々が、早々に講堂内入りし、居住まいを正すローランデを意識してチラチラと盗み見る。

ヤッケルの横に座る、フィンスまでもがそっと、反対隣のローランデに屈むと囁く。
「去年と違い、随分注目されている」

ローランデはフィンスの表情が心配げなのに気づき、思わず微笑む。
「それでも勝たなければ、真の実力じゃ無い。
負ければ私に、その能力ちからが無かったと言うだけだ」

ヤッケルは感心してシェイルに向き直る。
「…だってさ!
落ち着いてら!」

フィンスとローランデは同時にそう言ったヤッケルに振り向き、くすくすと笑った。

が…シェイルはそっと入り口を見やる。
義兄ローフィスが、入って来る。
オーガスタスの取り巻き達としゃべりながら。

けどオーガスタスの、奔放な赤毛なびく、目立つ長身は見あたらない。

ローフィスはいつも学年最後の四人には残るものの、それ以上勝ち上がるのに興味無い。
「どうせオーガスタスが一番だ。
かなうはずが無い。
大事なのは無様ぶざまに負けない事と
『こいつにだけは負けたくない』
相手に勝てれば、それでいい」

ローフィスの『こいつにだけは…』って相手はもちろん、グーデン配下の男達。

幸い馬鹿力の能無しばかりだったから、ローフィスの器用な小回りに付いて行けず、いつもローフィスは勝ちを取っていた。

練習用の剣はもろい。
幾度も力任せに振っていると、相手の剣を折る前に、自分の剣が折れる。

もちろん、力任せの馬鹿力共の剣をまともに喰らっていたら、先に剣が折れるのはこっちだったが。

殆どが集合しざわめくその場に、ディングレーが姿を見せる。
いつも道理、三年の大貴族にその周囲を隙無くぐるりと、取り囲まれながら。

皆が学校勢力でも、大物達のその一団に、敬意すら払い、見つめる。

が………。

「編入生はどこだ?」
「金髪の長身が居ない」

ヤッケルがそのざわめきに、肩を竦める。
「ギュンターとディングレーの対決を、みんなそれは、楽しみにしてるんだな?」

フィンスとローランデがまた、おどけたその言いざまに、くすくすと笑った。

一年のアイリスが入り口から姿を見せる。
やはりその色白の美少年は
『高嶺の花』
と、上級生達のため息を誘った。

が当人はゆったりと優雅そのもので、落ち着き払ってる。
「…あいつ…見物だぜ?」
ヤッケルが言うとシェイルは反論した。

「だって、体が弱いと聞いた。
一年のトップはやっぱり大貴族の、スフォルツァだろうって」

がヤッケルは、濃い栗色の緩やかにくねる長髪で、色白の顔の周囲を覆う、済ましきった表情の気品あふれる美少年をめ付け、ささやく。
「…見かけ通りのタマじゃ、絶対無いさ!」

がフィンスが言い返す。
「奴もここに来る以上、それなりに鍛えられてるはずだ。
腕はそれなりには、確実にあるだろう?」

確かに一年の中では長身に見えた。
が入学して年が経つにつれ、猛烈な勢いでその背を伸ばす上級生達からしたら、小柄そのもの。

ざわめきまくる中、ようやく学校のボス、オーガスタスがその長身の威風堂々とした姿を入り口から現す。

いつも道理、小顔の口の端に笑みを浮かべ、誰よりも高い背とその素晴らしい体格で一斉に注目を浴びても、気にする様子すら無い。

がその鳶色の瞳の奥には戦闘意欲が満ち溢れ、全身から滲み出る、野生のライオンのような迫力に、皆が固唾を飲んだ。

次第に騒ぎは、収まりつつあった。

シェイルは三年席、最前列に座るディングレーを見る。

昨日アスランを託され、そのアスランを、試合に出ないグーデンに留守中に狙われては。
と、講師の一人に預けた。
今朝ディングレーがこっそり忍んで来て
『マレーも頼む』と託されたから…マレーも講師に預けた。
二人が講師の横に、無事いる姿を見ていたら…ディングレーと目が合った。

シェイルは、無言で頷く。
途端ディングレーは頷き返し、気に病む事が無くなったとばかり、その気迫をいや増す。

堂とした体格の、押し出し満点の気品溢れる王族の、黒髪の男前は。

オーガスタスに継いでその存在感を見せつけているようで、皆が一斉にその迫力に、視線を引き寄せられた。

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