アースルーリンドの騎士 幼い頃

あーす。

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第八章 『中央護衛連隊長就任』

中央護衛連隊官舎

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 全員が騎乗し、近衛官舎に辿り着くと、入り口大門を潜る。
ローランデがふと、今夜の宿が無い事に気づき、ギュンターに振り向く。

真っ直ぐ見つめ来るローランデに、ギュンターが思いの籠もる紫の視線を向けた。

が直ぐ、アルファロイスの声が飛ぶ。
「エルベス殿の采配で、ギュンターの部屋はもう既に空っぽに成って、荷は全てここの裏の、中央護衛連隊官舎に移されている筈だ」

ギュンターが即座にアルファロイスへ顔を向ける。
アルファロイスは見つめ来るギュンターを見返す。
「中央護衛連隊官舎に出向けば、案内の者が部屋へ通してくれる」

横のディアヴォロスが、口開く。
「ディングレー、ローランデ。
君達も良ければ私の邸宅に泊まりなさい」

ディングレーはディアヴォロスのその申し出が、超高級酒のシュランゴン酒を好きなだけ振る舞う。
と聞こえて、高貴ないとこの顔を、内心の歓喜堪えてじっ。と見た。

ディアヴォロスはそんなディングレーに零れるように微笑みながら、ディングレーの横のオーガスタスにも告げる。
「良ければオーガスタス、君にも」

オーガスタスも意味が解って、俯く。
「俺の部屋は邸宅内にあるから…礼服は直ぐに取りに行けるが」
ディングレーが即座に頷く。
「使いを出して近衛宿舎から、届けさせる」

そして、ディングレーはローランデを見つめた。
「超高級酒のシュランゴン酒が堪能できる、数少ない機会だ」
ローランデは目を丸くしたが、頷く。
「私もご賞味させて頂けるのか?」

ディアヴォロスがオーガスタスを顎で差して、ローランデに呟く。
「彼がどこにあるかも知っているから。
出して、好きなだけ飲みなさい。
但し、翌朝の式に出席出来る程度に」

ディングレーがオーガスタスを見、オーガスタスがやれやれ。と、ローランデを見た。
ローランデはその視線を受け、少し狼狽えて呟く。
「ディングレーの深酒を、私が止めろ。と?」

オーガスタスが、投げやりに言った。
「ローフィスが居ないからな」
ディングレーがオーガスタスを少し睨む。
「…あんたも今夜は飲むのか?」
オーガスタスは俯いたまま唸る。
「フォルデモルドを殺れてない」

ディングレーは頷き、ローランデを見、ローランデはその、ガタイのデカい二人のお守りを任され、目を見開いた。

アルファロイスが、スフォルツァとラフォーレンに視線を振る。
二人は即座に気づくと
「…私も、よろしいか?」
とスフォルツァが申し出、ラフォーレンも告げる。
「アシュアークを配下の色男に押しつけたら、直ぐ出向けます」

オーガスタスが、二人にぼそりと呟く。
「式の礼服を、持参して来い」
言われた二人は、顔を見合わせた。

ギュンターだけは、潜った大門へと引き返そうと馬を回し、オーガスタスはその背に怒鳴る。
「良い子で酒飲むんなら、後でこっちに、来ても良いぞ!」

ギュンターは振り向き、ディングレー横の馬上で佇むローランデを、未練たっぷりに見つめたが、友の声に小さく頷く。

アシュアークだけは、叔父のアルファロイスの馬に取りすがるように併走し、文句垂れた。
「…どうして私だけ、仲間外れだ?」
「だって君、絶対誰かに迫るだろう?」




 ギュンターが、中央護衛連隊官舎門を潜ったその場は、深夜に関わらずごった返していた。
その官舎前の広場を、数多くの人がやたら行き来してる。

「…………」
ギュンターはともかく厩を見つけると、降りて馬丁に手綱を手渡そうとし、ふ…と気づく。
「中央護衛連隊長って、ここに馬預けていいのか?」

馬丁は顔を上げ、ギュンターの顔をたっぷり見つめ、首横に、振った。
「左のずっと奥に、中央護衛連隊長の邸宅があります。
ここで馬から下りると、そこ迄歩くのは大変ですよ?」

ギュンターは吐息交じりに俯きながら頷き、再び愛馬に跨がった。


 表官舎左奥へと、馬を進める。
表官舎のほぼ後ろに位置する場所に、中央護衛連隊騎士らの宿舎があり、その横を更に左に曲がると小綺麗な庭に出て、その更に奥に、二階建ての邸宅を見つける。

が、夜で暗くて全貌は解らず、やはり入り口は広く開け放たれて、人が大勢忙しく出入りしていた。

横の厩に馬を進め、馬丁に手綱を渡す。
「…ご用の御方で?」
ギュンターは聞かれ、むっつりと告げる。
「明日、中央護衛連隊長に成る」

馬丁は慌てて姿勢を正す。
「閣下。
では特別に、お手入れさせて頂きます。
明日の騎乗はこの馬で?」

ギュンターは振り向く。
「…この馬しか、持ってない」
馬丁は、ギュンターの腕しっか!と掴むと、奥へと引っ張り奥の戸を開け、重厚な焦げ茶の艶のある木に彫刻の施された素晴らしい室内の、仕切りの奥にずらり。と並ぶ名馬を見せて言う。

「…これら全てが、中央護衛連隊長の馬です」

ギュンターが、一目で高級な名馬達と分かる、手入れの行き届いた馬らを見た。
栗毛から黒毛。
クリーム色の馬。
全部で…。

「何頭居る?」
「前護衛連隊長が、それでも三頭連れて行かれましたので…六頭は残っております」

ギュンターは馬達を、見た。
王族のディングレーが乗りそうな、気位高く血統の良い、高価な馬ばかり。

ギュンターは自分の愛馬、ロレンツォが苦労しそうな気がして、そっと囁く。
「…俺の馬は彼らとは、少し離した場所で休ませてやってくれ」

ロレンツォは馬丁に引かれ、その見た事無い高級な厩と気位高い馬達に、ちょっと怯えたように小声でヒヒン…と鳴いて、ギュンターに振り向く。

ギュンターが、ロレンツォに小声で告げる。
「俺が一番だと、奴らに胸張ってやれ」

が、ロレンツォは居並ぶ仕切りの向こうの馬達の、見事に手入れされ艶やかで気位高い様子を見、馬丁に引かれ通り過ぎる度、思い切り顔下げて俯く。

ギュンターはそれ見て、内心呟いた。
「(明日は俺も、同様の身か…。
中央護衛連隊の上級幹部は皆、身分が高いと聞くしな…)」

それを、束ねていかなければならない立場に、ギュンターも項垂れきった。


玄関を入ると、人が入れ替わり物を運んでる。
ギュンターは横目で見、中へと入る。
直ぐ、とても理知的な若者が寄って来る。
「大公家の者です」



ギュンターは、道理で。
と彼を見つめる。
若くて見目が良いが、隙が無い。

彼に、一階左の離れに案内される。
彼は扉をノックし
「入れ」
の言葉と共に扉を開けた。

「副長。
明日、中央護衛連隊長に就任されるギュンター殿をお連れしました」

副長は年配の者だった。
が、明らかに王族だと解る程の威厳がある。
黒髪に黒い髭。
皺は在ったが、歴戦の強者に見える。

ギュンターは思いきり、怖じけた。
「(こんな人材が副で、どうして俺が長だ?!)」

が、彼は寄るとギュンターの手を握り、囁く。
「ダーフスから、話は聞いている。
暫くは俺も補佐するが、慣れたら新しい人材を用意してくれ」

ギュンターはつい、じっ。と、そう言う高貴な副長を見つめた。
副長はじっ。とギュンターを見返す。
「それは…つまり…あんたはもう、引くって事か?」

言葉使いが、高貴な相手にはマズイ。とは思った。
が、副長は気にする様子無く、頷く。
「中央護衛連隊長が辞任と同時に、補佐殿迄引かれた。
補佐殿がやり手だと、副長はまだ、楽だ。
が、補佐が不慣れだと、ほぼ全部の仕事が副の私に回って来る」

ギュンターは今だ握られた手に、冷や汗かくのを感じる。
「今度の補佐殿は、ライオネスの弟なんだろう?
噂は聞いている。
で、私が辞職した後の副は、ライオネスを任命してもよろしいか?」

ギュンターはただ、頷いた。
副長の、声が弾む。
「良かった!
近衛から長が出るのは前例があるが、補佐は大概、中央護衛連隊から出ていたからな!
まるで不慣れな補佐の場合、とてもしっかりした副が必要だ!」

ギュンターはその語尾のきつさに、小声で囁く。
「…それはつまり…乱暴者のディンダーデンの、手綱を取る者が必要と言う事か?」

高貴な副長は、頷く。
「噂は色々…いや、散々!聞いている。
運営を確かにする為にも、次期副長にはディンダーデンの兄、ライオネスが適任だ!」

あまりの迫力の言い切りに、ギュンターは思わず頷く。
が、副長はにっこり、笑った。
「長は強気で良い。
強さを前面に押し出す男が相応しい。
士気も上がるし、中央護衛連隊長にはそれが、何より似合いだ。
ディンダーデンは長に向いてるが、嫌だと言ったとか」

ギュンターは俯く。
確かに、柔な自分の面より、ディンダーデンの方が迫力在って態度もデカく、押し出し満点だ。

副長は、少し気の毒そうに言った。
「大丈夫だ。
近衛の隊長の経歴で、君を綺麗な顔の柔な奴。
と見下す男は居ない」

ギュンターはその、高貴な副長に少し…決まり悪げに囁く。
「…俺が長でその…あんたに迄職を引かせてその…」

が、副長は目を、見開いた。
「前の長が引く事で、こっちも引く準備を進めていたところだ。
大丈夫。
直ぐ次に私が腰掛ける椅子は、宮廷高等院だから」

ギュンターは言った、副長を見た。
副長はにこにこ笑い、告げる。
「中央護衛連隊副長より、遙かに高位だ」

ギュンターは、頷いた。
多分、ダーフスとエルベスらが皆の不満が出ないように次のポストを用意し、勢力交代が滞りなく進むよう手を回したらしい。

大公家の案内人に促され、ギュンターが部屋を出ようとする時、副長が告げる。
「ああ…中央護衛連隊は大所帯だ。
まとめて行くには大変苦労する。
いざと成れば、睨め!
どれだけご託を捏ねられようが、睨み付けて意志を通せ!
議会の長らの意見をあんまり真面目に聞くと、停滞しきって何一つ事が、決まらないからな!」

ギュンターは促されながらも暫くそう言った副長から、目が離せなかった。


ようやく二階の、長の私室に辿り着く。
大公の侍従はてきぱきと室内を案内し、自室から運び込んだ場所を示す。

ギュンターは室内を歩き、ふ…と尋ねる。
「…やたら広いな。一体何室あるんだ?」
「長の私室ですし。
私室だけで…他に客間も備えていますし、執務室は更に向こう。
ええと…何室でしたかな?
ともかく…寝室、食卓。応接間。
広間もありますし…」

ギュンターは項垂れきって呟く。
「もういい…」
「どこにお通し致します?」
「寝室は、どこだ?」

ギュンターは開けられた部屋の広さ。
天蓋付き寝台の大きさ。に絶句した。
しかも何もかもかが凄く、洒落ている。
木が剥き出しの質素な壁は、一つも無い。

「当然布団は、新しく取り寄せました。
お気に召さなければ、お好きな配色をおっしゃって下さい」

ギュンターは疲れ切って尋ねる。
「あんた、いつ迄居てくれるんだ?」
大公の若い侍従は、にっこり。と笑った。
「勿論、貴方が慣れる迄はお世話させて頂きます」

ギュンターは、それを聞いてどれだけほっとした事か。
「名前を聞いてないな」
「アンガスト」

ギュンターは頷き、彼をもう一度、見た。
長い栗毛を後ろで束ね、ダークグリーンの整いきった容姿の、だが落ち着き払った若者。

背は顔一つ、自分より低かった。
ものの、不測の事態では相手を投げ飛ばすくらい、しそうだった。
「…当分、よろしく頼む。
俺は何せ、不案内だ」
「ではこちらに。
明日の、式の説明をさせて頂きます」

寝室の横の扉が開くと、衣装室の真ん中のテーブルの上に、幾多の紋章やら杖といった宝飾品が、やたら仰々しく飾られていた。
その全てが、金と宝石でこれでもか。と飾られ、恐ろしく豪華。

ギュンターは顔下げたいのを我慢し、それらを身に付けて参列する式の説明を聞き始め、アンガストに
「おや?
お怪我ですか。
気がつかなくて済みません。
直ぐにお手当を」

と言われ、たったさっきザースィンと派手にやりあった、気ままで気楽で雑多な近衛が、心から懐かしく感じられて俯いた。

よくよく考えたら、中央護衛連隊長なんてローランデが座ってる椅子、北領地[シェンダー・ラーデン]護衛連隊長同様の高位。

彼のような身分高い男が苦労して座ってる椅子だ。

ギュンターは改めて、今から座る中央護衛連隊長の、高い椅子の苦労に下げた顔が、上げられなかった。



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