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第七章『過去の幻影の大戦』
体に戻るアシュアーク
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頭の中へ、聞き慣れた響きを聞き、ゼイブンは咄嗟に馬車から飛び降りる。
ファントレイユが目を見開いてそれを見つめ、ゼイブンに問う表情をした。
馬車内でテテュスは、心配げにエルベスを見つめていたが、背後から突然飛び降りるゼイブンに気づき、そして…慌てて自分もその場を開け、背から馬車を下りながら暗い馬車内を、見守った。
ウェラハスが、アルファロイスを抱え突然現れ、アシュアークの横に居たレイファスを瞬時にゼイブンの居た場所へと移すと、開いた場所へ、ぐったりとしたアルファロイスの体をそっと、横たえる。
ほん少しの振動でも、アルファロイス右将軍は苦しげに眉寄せ、ウェラハスが心話で必死に説得していた。
『ひどいお怪我です…。
貴方がた、人間の瞳には映らない怪我ですが…。
我らの目を通せば重症…。
魔の瘴気は…生体エネルギーを極端に蝕みます』
テテュス、そしてゼイブンの頭の中にすら、ウェラハスの視界にあるアルファロイス右将軍の体が、あちこち黒く爛れ、抉れたように陥没し、その周囲の筋肉が、焼け焦げた炭のように縮んでいる様が、浮かび上がる。
テテュスは光の塔付き連隊で、ゼイブンは神聖神殿隊付き連隊で、それぞれ『光の民』との交流があったし、魔の瘴気に晒された者は人間の瞳では、どこも傷ついて見えずとも、『光の民』の瞳を通せばひどい怪我をしてる。
と言う話は、聞いた事があった。
が、目の当たりにした時、こんなひどい状態だとは思いもせず、二人共がぞっ…と鳥肌立てた。
ファントレイユが、それを見て頭の中でウェラハスに、心話でそっと問う。
『では…エルベスも同様、貴方がたの瞳から見ると…』
途端イメージが、“気”を向ける全員の頭上に浮かび上がった。
エルベスは全身のあちこちが黒く覆われているように見え…が、アルファロイスのような、抉れたような陥没は見られなかった。
肌が、着ている服ごと染まっているかのように黒く、その黒さがエルベスをひどく苦しめ、消耗させていると分かる。
『…“影"の瘴気に当たると…こんな風に傷つくんですね…』
テテュスの、泣き出しそうな震えるか細い呻きに、ウェラハスは頷きながらも光で、重症の三人を包み込む。
ゼイブンが、シェイルを抱く青い顔のローフィスに、頷く。
「ウェラハスが馬車に、来てる。
重症のアルファロイス右将軍を、伴って」
ローフィスは頷き、シェイルは抱きつくローフィスの、胸元で頭を揺らした。
そしてシェイルは、頭の中のイメージに“気”を、向ける。
馬車の中、ウェラハスはエルベス、アシュアーク、そしてアルファロイスを光で包み込み、癒していた。
ただ…エルベス、アルファロイスはその、ひどく重い体の中で気絶寸前に項垂れていたが、アシュアークは…空っぽに見えて、シェイルは咄嗟に瞳が、潤むのを止められなかった。
顔を上げ、ローフィスを見る。
ローフィスですら…目を、閉じても見える頭の中のイメージに、シェイルの言いたい事はとっくに解っていた。
が、どうシェイルを言いくるめようかと、無言で言葉を必死に、高速で思い巡らせていた。
が…やはりイメージだったが、そこにアイリスが、アシュアークを伴って来ているような気がし、つい尋ねる。
『何とか、出来そうか?アイリス』
ローフィスのその声が頭に響き、ゼイブンはぎょっ!として振り向きローフィスを
『正気か?』
と見つめ、ローフィスはそんなゼイブンを、呆けて見返す。
「…俺の…気のせいか?」
途端、ワーキュラスがローフィスの疑問に応えた。
“アイリスは今、私の中に居て…回路からは外れているから、多分君等からは空間で隔てられ、歪み、正常には姿が見えないし言葉も繋がらないだろうが…。
君は、私の中のアイリスを、見つけられたんだな?ローフィス”
ゼイブンが見ているとローフィスは、吐息吐くように返答した。
「…幽霊を、見たかとも思ったが…アイリスが、死んでる感じがしない」
“強い意思があると、通じるようだ。ローフィス。
君が見ている視線を、私は感じたから”
その響く声色に、ゼイブンがブスッ垂れた。
「…ワーキュラスがしゃべってる風に聞こえるが…実はお前なんだな?
アイリス。
何でローフィスに見えて、俺には見えない!」
“ローフィスの方がアシュアークの身を、真剣に心配してるから。
シェイルにどう言い訳しようと、困ってたろう?”
シェイルが青い顔のローフィスを見上げ、ローフィスはだが、しっかりした声音で問うた。
「…お前の横にアシュアークが見える。
何とか、出来るんだろう?
アイリス。お前なら」
が途端、ワーキュラスの荘厳に響く声色で、アイリスのぶすったれた言葉が聞こえる。
“幾らワーキュラスの中に居ても私は神じゃないんだ。
生き返るかどうかは、アシュアーク次第さ!”
それを聞いてゼイブンは吐き捨てるように言い、にやりと笑う。
「…なら貰ったも同然だ!
お前に取ってアシュアーク騙すなんて、赤子の手を捻るより簡単だろう?」
ワーキュラスが、自分の中でふてくされるアイリスにくすくす微笑い、アイリスに言い諭す。
“彼らの言葉はどちらも悪いが、君をとても、頼ってる”
途端、やはりワーキュラスの声色で、アイリスが告げた。
“…分かってはいるが、言いようってモンがあるだろう?”
ローフィスは吐息混じりに呟く。
「“最高の詐欺師”じゃ、賞賛に成らないか?」
ゼイブンも微笑う。
「…まあもっと凄い。と褒めて欲しいんだろう?」
“…そう…。
アシュアークが戻れなければ、今ここに居る君達も死ぬ。とあらば、君等の賞賛はアイリスの所業に全く値せず、あまりに少ない”
その声は戦場の、オーガスタス、ディングレー、ギュンターらにも聞こえたようで、彼らが闘いながらも“気”を向け、耳を研ぎ澄ましているのが、解った。
『誰か一人が、死んでも駄目か?!』
オーガスタスの、声にならない意識での問いに、ワーキュラスは言った。
“全員が、揃ってガスパスの自室続き広間に、入る事が条件の一つだ”
言ってる間に馬車の中で皆を癒していたウェラハスが、人の目には見えない空間に存在するワーキュラスに、そっと頷く。
ワーキュラスが空気でアシュアークをそっと押して促し、アシュアークはアルファロイスの横に眠る、自分のぐったりする体を上空から宙に浮かび見つめ、躊躇う。
が、アイリスはその空間から見える、素晴らしい輝きを纏った、神聖騎士ウェラハスに顎をしゃくる。
“彼を、信頼出来ない?”
アシュアークが見ると、神聖騎士の手からその素晴らしい輝きは放射され…自分とその両横。
エルベスとアルファロイスにも届き、自分の体同様全身をその輝きで、覆い尽くしているのが見えた。
そして気絶寸前のエルベスも、叔父アルファロイスも…包まれた光に癒され、激しい苦痛がどんどん、薄らぎ行くのを感じる。
がそれでもアシュアークは幼子のように、横のアイリスを見上げる。
『傷が、すっかり治った、後じゃ駄目?』
その声に、ウェラハスが顔を上げ、透けたアシュアークを見つめ、微笑む。
アイリスは横のアシュアークが、惹きつけられるようにウェラハスに、吸い寄せられて行くのを見た。
ウェラハスの目前で一瞬彼は、気絶したように目を閉じ仰け反り…そしてそのまま、ウェラハスの正面に坐す、自分の体へと吸い込まれて行った。
途端、『光の里』に眠るアシュアークの本体が、透けたような頼りなさから実態を取り戻し、確固として輝き出すのを見、ワーキュラスと通じてる“里”の癒し手達が、狂喜乱舞する様子が解り、アイリスは思わず全開で微笑った。
シェイルは空っぽだったアシュアークの体に、胎児のように小さく、丸く成って眠る、アシュアークの存在を見つけ、目が潤んだ。
その赤子のようなアシュアークは安らかで…無邪気にすら見え、明るいオレンジとピンクの光に、守るように包まれ、微笑っているようだった。
ローフィスは、嬉しさのあまり激しく泣き出しそうなシェイルを見、一安心とほっと安堵し、目を上げて視線を移すとテテュスが、その長身で俯き、端正な横顔に感激を浮かび上がらせ、伏せた目を、潤ませるのを見た。
そしてファントレイユがそっ…とテテュスに寄り
『良かったな』の代わりに労るようにその肩に手を、乗せるのも見た。
がその父ゼイブンは、横で見えないアイリスに、ひたすら微笑みかけている。
ローフィスはつい、俯く。
だってアイリスは、とっくにそこには居なかった。
ゼイブンはまだアイリスがそこに居るように微笑いかけ、言った。
「まあお前が出張ると必ず、悲嘆に暮れる場面が喜びに一変するのは、毎度凄技だとは思ってる!
間違いなく!!!」
「………………………」
ローフィスは、言おうかとも、思った。
真実を。
が尚もにこにこと、見えないアイリスに微笑いかけるゼイブンがあんまり嬉しそうで、面倒くさくなって彼に、告げるのを止めた。
どうせ滑稽なゼイブンを知ってるのはせいぜい、自分とワーキュラス。
そして当人のアイリスくらいだろう。
が、視線を感じ振り向くと、ファントレイユが、次いでテテュスが。
そしてシェイル迄もが顔を上げ、にこにこと空間に笑い続け、見えない人物の、肩をも叩こう勢いな程嬉しげなゼイブンを、無言で見守っていた。
ファントレイユが目を見開いてそれを見つめ、ゼイブンに問う表情をした。
馬車内でテテュスは、心配げにエルベスを見つめていたが、背後から突然飛び降りるゼイブンに気づき、そして…慌てて自分もその場を開け、背から馬車を下りながら暗い馬車内を、見守った。
ウェラハスが、アルファロイスを抱え突然現れ、アシュアークの横に居たレイファスを瞬時にゼイブンの居た場所へと移すと、開いた場所へ、ぐったりとしたアルファロイスの体をそっと、横たえる。
ほん少しの振動でも、アルファロイス右将軍は苦しげに眉寄せ、ウェラハスが心話で必死に説得していた。
『ひどいお怪我です…。
貴方がた、人間の瞳には映らない怪我ですが…。
我らの目を通せば重症…。
魔の瘴気は…生体エネルギーを極端に蝕みます』
テテュス、そしてゼイブンの頭の中にすら、ウェラハスの視界にあるアルファロイス右将軍の体が、あちこち黒く爛れ、抉れたように陥没し、その周囲の筋肉が、焼け焦げた炭のように縮んでいる様が、浮かび上がる。
テテュスは光の塔付き連隊で、ゼイブンは神聖神殿隊付き連隊で、それぞれ『光の民』との交流があったし、魔の瘴気に晒された者は人間の瞳では、どこも傷ついて見えずとも、『光の民』の瞳を通せばひどい怪我をしてる。
と言う話は、聞いた事があった。
が、目の当たりにした時、こんなひどい状態だとは思いもせず、二人共がぞっ…と鳥肌立てた。
ファントレイユが、それを見て頭の中でウェラハスに、心話でそっと問う。
『では…エルベスも同様、貴方がたの瞳から見ると…』
途端イメージが、“気”を向ける全員の頭上に浮かび上がった。
エルベスは全身のあちこちが黒く覆われているように見え…が、アルファロイスのような、抉れたような陥没は見られなかった。
肌が、着ている服ごと染まっているかのように黒く、その黒さがエルベスをひどく苦しめ、消耗させていると分かる。
『…“影"の瘴気に当たると…こんな風に傷つくんですね…』
テテュスの、泣き出しそうな震えるか細い呻きに、ウェラハスは頷きながらも光で、重症の三人を包み込む。
ゼイブンが、シェイルを抱く青い顔のローフィスに、頷く。
「ウェラハスが馬車に、来てる。
重症のアルファロイス右将軍を、伴って」
ローフィスは頷き、シェイルは抱きつくローフィスの、胸元で頭を揺らした。
そしてシェイルは、頭の中のイメージに“気”を、向ける。
馬車の中、ウェラハスはエルベス、アシュアーク、そしてアルファロイスを光で包み込み、癒していた。
ただ…エルベス、アルファロイスはその、ひどく重い体の中で気絶寸前に項垂れていたが、アシュアークは…空っぽに見えて、シェイルは咄嗟に瞳が、潤むのを止められなかった。
顔を上げ、ローフィスを見る。
ローフィスですら…目を、閉じても見える頭の中のイメージに、シェイルの言いたい事はとっくに解っていた。
が、どうシェイルを言いくるめようかと、無言で言葉を必死に、高速で思い巡らせていた。
が…やはりイメージだったが、そこにアイリスが、アシュアークを伴って来ているような気がし、つい尋ねる。
『何とか、出来そうか?アイリス』
ローフィスのその声が頭に響き、ゼイブンはぎょっ!として振り向きローフィスを
『正気か?』
と見つめ、ローフィスはそんなゼイブンを、呆けて見返す。
「…俺の…気のせいか?」
途端、ワーキュラスがローフィスの疑問に応えた。
“アイリスは今、私の中に居て…回路からは外れているから、多分君等からは空間で隔てられ、歪み、正常には姿が見えないし言葉も繋がらないだろうが…。
君は、私の中のアイリスを、見つけられたんだな?ローフィス”
ゼイブンが見ているとローフィスは、吐息吐くように返答した。
「…幽霊を、見たかとも思ったが…アイリスが、死んでる感じがしない」
“強い意思があると、通じるようだ。ローフィス。
君が見ている視線を、私は感じたから”
その響く声色に、ゼイブンがブスッ垂れた。
「…ワーキュラスがしゃべってる風に聞こえるが…実はお前なんだな?
アイリス。
何でローフィスに見えて、俺には見えない!」
“ローフィスの方がアシュアークの身を、真剣に心配してるから。
シェイルにどう言い訳しようと、困ってたろう?”
シェイルが青い顔のローフィスを見上げ、ローフィスはだが、しっかりした声音で問うた。
「…お前の横にアシュアークが見える。
何とか、出来るんだろう?
アイリス。お前なら」
が途端、ワーキュラスの荘厳に響く声色で、アイリスのぶすったれた言葉が聞こえる。
“幾らワーキュラスの中に居ても私は神じゃないんだ。
生き返るかどうかは、アシュアーク次第さ!”
それを聞いてゼイブンは吐き捨てるように言い、にやりと笑う。
「…なら貰ったも同然だ!
お前に取ってアシュアーク騙すなんて、赤子の手を捻るより簡単だろう?」
ワーキュラスが、自分の中でふてくされるアイリスにくすくす微笑い、アイリスに言い諭す。
“彼らの言葉はどちらも悪いが、君をとても、頼ってる”
途端、やはりワーキュラスの声色で、アイリスが告げた。
“…分かってはいるが、言いようってモンがあるだろう?”
ローフィスは吐息混じりに呟く。
「“最高の詐欺師”じゃ、賞賛に成らないか?」
ゼイブンも微笑う。
「…まあもっと凄い。と褒めて欲しいんだろう?」
“…そう…。
アシュアークが戻れなければ、今ここに居る君達も死ぬ。とあらば、君等の賞賛はアイリスの所業に全く値せず、あまりに少ない”
その声は戦場の、オーガスタス、ディングレー、ギュンターらにも聞こえたようで、彼らが闘いながらも“気”を向け、耳を研ぎ澄ましているのが、解った。
『誰か一人が、死んでも駄目か?!』
オーガスタスの、声にならない意識での問いに、ワーキュラスは言った。
“全員が、揃ってガスパスの自室続き広間に、入る事が条件の一つだ”
言ってる間に馬車の中で皆を癒していたウェラハスが、人の目には見えない空間に存在するワーキュラスに、そっと頷く。
ワーキュラスが空気でアシュアークをそっと押して促し、アシュアークはアルファロイスの横に眠る、自分のぐったりする体を上空から宙に浮かび見つめ、躊躇う。
が、アイリスはその空間から見える、素晴らしい輝きを纏った、神聖騎士ウェラハスに顎をしゃくる。
“彼を、信頼出来ない?”
アシュアークが見ると、神聖騎士の手からその素晴らしい輝きは放射され…自分とその両横。
エルベスとアルファロイスにも届き、自分の体同様全身をその輝きで、覆い尽くしているのが見えた。
そして気絶寸前のエルベスも、叔父アルファロイスも…包まれた光に癒され、激しい苦痛がどんどん、薄らぎ行くのを感じる。
がそれでもアシュアークは幼子のように、横のアイリスを見上げる。
『傷が、すっかり治った、後じゃ駄目?』
その声に、ウェラハスが顔を上げ、透けたアシュアークを見つめ、微笑む。
アイリスは横のアシュアークが、惹きつけられるようにウェラハスに、吸い寄せられて行くのを見た。
ウェラハスの目前で一瞬彼は、気絶したように目を閉じ仰け反り…そしてそのまま、ウェラハスの正面に坐す、自分の体へと吸い込まれて行った。
途端、『光の里』に眠るアシュアークの本体が、透けたような頼りなさから実態を取り戻し、確固として輝き出すのを見、ワーキュラスと通じてる“里”の癒し手達が、狂喜乱舞する様子が解り、アイリスは思わず全開で微笑った。
シェイルは空っぽだったアシュアークの体に、胎児のように小さく、丸く成って眠る、アシュアークの存在を見つけ、目が潤んだ。
その赤子のようなアシュアークは安らかで…無邪気にすら見え、明るいオレンジとピンクの光に、守るように包まれ、微笑っているようだった。
ローフィスは、嬉しさのあまり激しく泣き出しそうなシェイルを見、一安心とほっと安堵し、目を上げて視線を移すとテテュスが、その長身で俯き、端正な横顔に感激を浮かび上がらせ、伏せた目を、潤ませるのを見た。
そしてファントレイユがそっ…とテテュスに寄り
『良かったな』の代わりに労るようにその肩に手を、乗せるのも見た。
がその父ゼイブンは、横で見えないアイリスに、ひたすら微笑みかけている。
ローフィスはつい、俯く。
だってアイリスは、とっくにそこには居なかった。
ゼイブンはまだアイリスがそこに居るように微笑いかけ、言った。
「まあお前が出張ると必ず、悲嘆に暮れる場面が喜びに一変するのは、毎度凄技だとは思ってる!
間違いなく!!!」
「………………………」
ローフィスは、言おうかとも、思った。
真実を。
が尚もにこにこと、見えないアイリスに微笑いかけるゼイブンがあんまり嬉しそうで、面倒くさくなって彼に、告げるのを止めた。
どうせ滑稽なゼイブンを知ってるのはせいぜい、自分とワーキュラス。
そして当人のアイリスくらいだろう。
が、視線を感じ振り向くと、ファントレイユが、次いでテテュスが。
そしてシェイル迄もが顔を上げ、にこにこと空間に笑い続け、見えない人物の、肩をも叩こう勢いな程嬉しげなゼイブンを、無言で見守っていた。
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